【サマソニ】メインの裏で輝く「名脇役」なマウンテンステージの魅力
-
ポスト -
シェア - 送る
主人公属性より、美味しいポジションの脇役を好む筆者。
漫画でも映画でもスポーツでもそうだが、主役級のキャラクターのほかに名脇役、あるいは好敵手枠というものが存在する。これは知名度が低すぎたり、渋すぎたり、個性的すぎてはならない。ときには主役を食うほどの輝きを見せるポテンシャルを発揮しつつ、あくまでも影の存在でなくてはいけない。
個人的感覚だが、ドラゴンボールだったらベジータ、ピッコロ。ダイの大冒険だったらヒュンケル、バラン。るろうに剣心なら斎藤一、蒼紫だ。
俳優でいえば滝藤賢一さんとか吉田鋼太郎が演じているイメージか。野球でいったら……ON時代のノムさんとか?(古いけど)
やはり主役の魅力は、脇を固める存在や、魅力的な敵キャラがいてこそ増すのである。そして自然と「名脇役・ライバルポジション」をこよなく愛してしまう習性をもつ層も一定数いるはずで、かくいう僕もその一人。
本題のサマソニでいうと、一般的に主役はマリン(オーシャン)=メインステージのトリ、つまりヘッドライナーのバンド・アーティストということになる。そう簡単な話でもないが、その仮定で話を進めたい。
では「名脇役・ライバルポジション」はどのアクトか。
それはマウンテンステージのトリだと思う。
時間帯は若干ずらしてあるものの、夕方近くの時点でマウンテンとマリンの行き来はかなり困難となる。よって両方のトリを観るのは事実上不可能。
参加者はあらかじめメイン=主役級か、マウンテン=名脇役・ライバルか、選択を迫られるわけである。
どちらもすごく観たいという年も確かにあるはずだが、「不思議と毎年マウンテンのほうが観たい出演者なんだよなぁ」というあなたは、僕と同じく根っからのひねくれ者なのかもしれない。
今回はこれまでのサマソニでマウンテンステージを沸かせたアーティスト達ーーときには主役を食うほどのポテンシャルと知名度を秘め、その実力も認められながらも何故かメインよりマウンテンがしっくりくる面々と、今年のマウンテンステージのトリを務める2組について書く。
まずは2003年。歴代最高ともいわれるこの年。まだマウンテンステージという名称ではなかったものの、メインアクトの裏でトリを務めたのは、トラヴィス。
同日のヘッドライナーはブラー。正直言って、この年でなければ、トラヴィスはメインのトリだって全然おかしくないし、彼らのセンチメンタルな美メロと美しいギターサウンドがメインステージの夜空に響く様は想像に難くない。それを阻む形となったのが奇しくも同じUKロック勢というのはなんだかドラマチックだ。ただ、ブラーの裏で一味違った輝きを放ってこそのトラヴィスという気もしてくるから不思議だ。
続いて2007年。前年の初出場から一気にヘッドライナーへと上り詰めたのはアークティック・モンキーズだ。そんな最年少による快挙の裏でマウンテンをブチ上げたのはオフスプリング! このUSパンクの象徴的存在なオヤジたち(失礼!)は、00年代のロックアイコンとなっていく若者たちがの裏で、陽性パンクを思いっきりぶちかまし、存分に暴れまくってくれた。そういうのって本当にカッコイイ。
余談だが、この年のもう一日はブラックアイドピーズがヘッドライナーだったのだが、その裏は(ソニックステージの方だが)またしてもトラヴィス。
もう一つ記しておきたいのが2012年。この年のヘッドライナーはグリーンデイで、3回目となるサマソニで、パンクロックというカテゴリにまったく収まらないほどの圧巻のステージを見せつけたのだが、その裏は……
対照的にもほどがあるポストロックの旗印、シガー・ロス。マウンテンをひたすら静謐に、静かな熱狂で包んでいく様はロックというジャンルの持つ多様なスタイルとその魅力を知らしめるには十分であったし、彼らの世界観を表現する場としては、ワイワイ騒ぎたいタイプも集うであろうメインステージは機能しなかっただろう。まさにマウンテンだからこそ体験できたステージであった。
このように、華やかなメインステージの裏にも、裏だからこそ味わえる名演が毎年繰り広げられている。
彼らのステージがあるからこそ、サマソニの多様性は保たれているし、サマソニをどんな嗜好の音楽ファンも魅了するフェスティバルへと押し上げたのは、花火の上がるメインの裏で一味違う締めくくりのステージを展開してきたマウンテンステージの存在によるものだといっても良いかもしれない。
もちろんソニックにもビーチにも同じことがいえるのだけれど、「名脇役・ライバルポジション」という括りでいうと、マウンテンが一番しっくりくるのである。
そんな今年のマウンテンのトリは、以下の2組が務めることとなっている。
マリリン・マンソン
言わずと知れたヘヴィロック界の奇才は、ソニックマニアへの出演に続き、マウンテンのトリを飾る。それぞれのステージにどのような違いがあるのか、どんな演出で我々の度肝を抜いてくれるのか、本当に楽しみ。
ディアンジェロ
昨年、およそ15年ぶりとなる復活をはたしたディアンジェロ。R&B好きには伝説といっても良い彼のステージは当然注目すべきところだが、彼と同世代のアーティストであり、その新作にも真っ先に賛辞を贈った同日のヘッドライナー、ファレル・ウィリアムスの裏でのマウンテン出演であることも忘れてはならない。
マウンテンの魅力、少しは気になっていただけただろうか。
一年に一度のサマソニである。観たいものを観るのは当然として、もし迷っている方がいたら、今年はマウンテンで締めてみるのも一興かも。
ちなみに僕は今年もマウンテンのどこかにいます。