ダンスの魅力全開!OSK日本歌劇団『CRYSTAL PASSION 2016 ~情熱の結晶~』

2016.9.11
レポート
舞台

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「ダンスのOSK」と讃えられるOSK日本歌劇団が、更に劇団の中から選りすぐった精鋭ダンサーを集め、洋舞ショー2本立てという形態の公演『CRYSTAL PASSION 2016 ~情熱の結晶~』を日本橋の三越劇場で上演中だ(11日まで)。

近年、多彩なミュージカル作品でも大きな成果を挙げているOSK日本歌劇団だが、分けても真骨頂と言えるのは高い技術と豊かな表現力で展開されるダンスの力。「踊って、歌って、踊って、踊る!日本を夢中にさせるため、さあ踊ろう!It's SHOW&SHOW TIME」と謳われたこの公演では、その神髄を余すところなく堪能できる構成となっている。

第1部「Higher ~空へ~」振付家として、ミュージカル、レビューの世界で大活躍を続けている麻咲梨乃の作・演出・振付作品。全体の構成は5章から成り、「地、水、火、風、空」という自然に求めたテーマに添って、悠久のアジアを思わせるダンスシーンが展開されていくのだが、全く途切れなく緊密な空気を保ったまま、流れるように、また押し寄せるように連なる場面、場面は、適度な緩急がありながらも一気呵成。まばたきさえ忘れる求心力に満ちている。

弓、扇と布を使った水の表現、鮮やかな赤の祭り傘、棒など小道具の使い方も面白く、ポイントで歌われる歌も力強い。全体に麻咲が創り上げた世界観が秀逸で、統一された衣装も美しい効果を挙げている。

取り分け素晴らしいのは、その世界観を体現した真麻里都以下、精鋭メンバーたちのダンス力と、表現力。こうしたダンス、ダンスに特化されたステージというのは、時に技術力の応酬に走る傾向が見受けられるものだが、そこはミュージカル作品も着々とこなし、「歌劇」の表現も身に着けているOSKの面々。各場面にドラマがあり、ダンスが単なる身体能力の披露に終わらないから、ショー作品でありながら更に物語を観た感覚にも包まれる。場面のポイントで登場する麗羅リコの白鷺が、ラストシーンで全員が空に向かう場面に昇華されるなど、緻密な作りに関心した。幕が下りたあとの充足感には格別なものがあった。

一転して、バラエティに弾ける2部「BLACK AND GOLD」は、ジャズ、シアタージャズの優れた踊り手であり、また振付家でもある三井聡の作・演出・振付。楊琳の堂に行った客席との掛け合いからはじまるオープニングで、新人の柚咲ふうと雅晴日を巧みに紹介する温かさからはじまり、如何にも「歌劇」らしいシーン、むしろ男女で踊られるような、男役・娘役の域を超えた技術に驚かされるダイナミズムなシーン、粋なジャズ、迫力のタンゴ、また時にコケティッシュな表現と、出演者の様々な表情が楽しめる。

特に、ダンスでありつつやや哲学的な表現も併せ持っていた「MOON LABBIT」から、この長い歴史の中で何度も嵐の時を経験してきたOSK日本歌劇団が、今ここで輝いて踊ってくれていることに、胸熱くならずにはいられない、人生の、舞台の光と影を描いた「exist」で、感情を揺さぶられたあとに、明るく弾けるOSKならではの高速ロケットと、華やかなフィナーレに突入する流れは謂わばレビューの王道。名曲のアレンジも独特で、ここにしかないショーとしての存在感が、面白い。

もちろん、真麻里都の目を惹きつけずにはおかない踊る魅力は全開だし、歌も芝居心もたっぷり。楊琳の華やかさ、愛瀬光の温かさ、恋羽みう、舞美りらが供に魅せる、グラマラスなゴージャス感と可憐さの同居、等々にはじまり、12人のメンバーがそれぞれに個性豊かに踊り、歌い、舞台に躍動する魅力は圧巻。男役と女役が対等な存在として舞台で火花を散らし、更に熱量を高めるのはOSK日本歌劇団ならではの美点だろう。

何よりも、2つの作品が全く違うテイストで、洋舞×洋舞の2本立てを飽きさせないどころか、たっぷりとした充足感を味わえるのが貴重で、OSK日本歌劇団の底力を感じさせる舞台となっている。
 

〈公演情報〉

『CRYSTAL PASSION 2016 ~情熱の結晶~』
第一部 Higher ~空へ~
 作・演出・振付◇麻咲梨乃
 音楽◇竹内一宏
第二部 BLACK AND GOLD
 作・演出・振付◇三井聡
 音楽◇麻吉文
出演◇真麻里都、楊琳、恋羽みう、愛瀬光、舞美りら、遥花ここ
翼和希、麗羅リコ、千咲えみ、壱弥ゆう、柚咲ふう、雅晴日
●9/9~11◎三越劇場
〈料金〉7,500円(全席指定)
〈お問い合わせ〉
 OSK日本歌劇団 06-6251-3091(10時~17時)
 三越劇場 0120-03-9354(10時30分~18時)
〈OSK日本歌劇団HP〉http://www.osk-revue.com/
 
【取材・文・/橘涼香 撮影/アラカワヤスコ】