2部構成・36曲、DOESが赤坂BLITZに刻んだ10年間の軌跡と、終わり、そしてはじまり

2016.9.25
レポート
音楽

DOES 撮影=新保勇樹

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DOES 10th Anniversary Live 「Thanksgiving !」in AKASAKA BLITZ 2016.9.18 赤坂BLITZ

2016年9月18日、赤坂BLITZ。2週間前に無期限活動休止を発表したDOESの、一つの大きな時代を締めくくる重要なライブ。会場に入るなり、これまでとは場内の空気が違うことを感じる。オーディエンスの表情が違うのがわかる。開演を待つ高揚したざわめきの中に、鋭い緊迫感がにじむ。SEが鳴り、客電が落ちる。沸き上がる手拍子と大歓声の中、3人が姿を現す。17時40分、一期一会のロック・ショーの幕が開いた。

DOES 撮影=新保勇樹

DOESの歴史がわかるように二部構成でやるから、楽しんでくれよな。長丁場になるけど、いけるか!」
インディーズ時代から歌い続けている「ステンレス」で一気にテンションを上げ、氏原ワタル(Vo&G)が笑顔で叫ぶ。さらに10年前のファースト・アルバム『NEWOLD』のトップを飾った「ウォークマン」、セカンド・アルバム『SUBTERRANEAN ROMANCE』からの「戯れ男」と、初期の代表曲を立て続けに。赤塚ヤスシ(B)の速射砲ベースはあくまで太く速く、森田ケーサク(Dr)の重戦車ドラムはひたすら前のめりに突進する。ワタルは終始笑顔。歌うのがうれしく仕方がないという表情だ。
「昔の曲をやると、いろんなことを思い出すね。すごく新鮮だし、沁みる。みなさん同じ気持ちだと思うけど」

サイケデリックでドリーミーなセカンド・シングル「赤いサンデー」から、明るい高速ロック・チューン「バスに乗って」、さらにロマンチックなバラード「ダンス・イン・ザ・ムーンライト」へ。九州男児の無骨なロックバンドというイメージの強いDOESだが、彼らが様々な時代のロックを消化した実に幅広い音楽性を持つバンドだということを、長年のファンはみな知っている。「ワンダーデイズ」はソウル・ミュージックの、「色恋歌」はオールディーズの香りがする。「三月」は強力なパンク・チューンだ。「色恋歌」の一節を<赤坂の夜は~>と替えて歌い、降り注ぐ大歓声にサムアップで応えるワタル。歌もギターも絶好調だ。

DOES 撮影=新保勇樹

ここから、予期せぬ展開へと突入する。“DOES中期には外せない人”というワタルの呼び込みでステージに現れたのは、2011年から数回のツアーに参加したサポート・ギターのオサムだ。ワタルが白いSGから黒いテレキャスへと持ち替える。パンク・チューン「黒い太陽」、ディスコ・ビートの「ユリイカ」、メランコリックな「夜明け前」と、サウンドが一気に分厚くなる。「わすれもの」ではオサムが実に味わい深いカウンター・メロディを奏で、ロック・バラード「ライカの夢」では、ミラーボールの強い輝きが曲調のせつなさを際立たせる。ステージ演出は照明だけでほかに何もないが、いい曲といい演奏には過剰な調味料はいらない。DOESの曲にはシンプルな味付けが一番よく似合う。

そろそろ第一部も終盤だ。『劇場版・銀魂』のエンディング曲だった「僕たちの季節」のグルーヴィーなリフから、ストップ&ゴーを多用して加速する爽快ロック・チューン「S.O.S.O」へ。ヤスがこの日初めてステージ最前線へ躍り出て、オーディエンスを煽るように叫びをあげる。『NARUTO-ナルト-疾風伝』オープニング曲の「紅蓮」で、オーディエンスの熱狂にさらに油を注ぎ、ラストは力強いエイトビートの「今を生きる」。「10年間たくさんライブをやってきたけど、今が一番楽しい!」とワタルが叫ぶ。僕らの日々が、明るい光で包まれてたらいいな。少年の無垢な願いのような歌詞が、今こそ胸に沁みる。時刻は19時15分、ここで第一部の幕が下りた。

DOES 撮影=新保勇樹

暗転した場内で、スクリーンには懐かしい写真が映し出されている。2006年、まだ初々しい3人の表情。ワタルの髪が短い。シリアスな表情の、ライブ中のヤスがかっこいい。ケーサクはいつの時代も“オチキャラ”だ。10年間、本当にいろんなことがあった。それはDOESの歴史であり、ここにいる僕やあなたの歴史でもある。

19時20分、第二部開演。3人は服を着替え、ケーサクは束ねていた髪をほどいてロン毛になった。ここは年代順ではなく、盛り上がる曲を立て続けにぶっ放すパートだ。「後半はパーティーやで!」とワタルが叫ぶ。最新アルバム『INNOCENCE』の1曲目を飾った「晴天」を皮切りに、「カリカチュアの夜」「刹那」「ロッカ・ホリデイ」と、イケイケのナンバーでぐんぐん加速する。「ロッカ・ホリデイ」でのケーサクのスティックさばきは、熟練の包丁人のように恐ろしいスピードで切れ味鋭い。極めつけは「ジャック・ナイフ」。スピード、キレ、せつなさ、ロマン、男くささ、文学性、DOES王道の要素をすべて盛り込んだ強烈な1曲。

DOES 撮影=新保勇樹

激しいのが続いたから、アコースティックで。そう言って歌ったのが「君の好きな歌」と「ハッピー・エンド」。こうした穏やかでフォーキーな世界もDOESの、というか氏原ワタルの得意技だ。張りつめた空気がふっとなごむ。MCが脱線して、なぜかヤスとケーサクがべたべた抱き合う。ワタルが腹をかかえて笑う。いつまでも少年のような3人のたたずまいに、楽しさと少しの淋しさが入り混じる。

「ラストに向けて怒涛の展開を見せます。準備はいいか!」
聴き馴染んだイントロが聴こえてきた。2008年のシングル曲「陽はまた昇る」だ。これもDOESらしさのすべてを詰め込んだ代表曲。「ヘイヘイヘイ」では、ソウルフルなビートに乗って全員がジャンプ。「レイジー・ベイビー」はヤスの歪み切ったベースが、掘削機のような轟音を叩き出す。そして、言わずと知れた「修羅」は、2007年の『銀魂』エンディング曲でDOESの最初の大ヒットだ。ワタルとヤスが揃ってステージ最前線へ進出する。場内は熱気にまみれ、誰もが声をあげて歌っている。第二部のラストを飾ったのは、最新シングル「KNOW KNOW KNOW」だった。ライブ・バンドとしての屈指の実力を見せつける12曲、1時間。時計の針は20時20分を指し、開演からそろそろ3時間が近い。だがまだ終わらない。終わらせたくない。

DOES 撮影=新保勇樹

アンコール。ひとあし先に戻ってきたケーサクがつぶやく。「こんなにDOESって、愛されてたんだね」。ワタルが言う。「すべての曲に思い入れがあるけど、その中でも特に思い出深い曲を」。アンコールは、互いの思いの深さを確かめあう場だ。まずは「サブタレニアン・ベイビー・ブルース」。リリース当時にヒット曲にはなれなかったが、5作目のシングルとしてDOESの本質を見せつけた重要な曲。「世界の果て」も同様のプロフィールを持つ、情念のこもった1曲だ。

「10年前の9月にデビューして、できるだけいい未来になるように頑張ってきました。今、9月、また違う未来に進んでいくつもりです」
ここで早くも新バンドの結成を宣言したワタル。今言うべきことではなかったのかもしれない。が、音楽家としての情熱がいささかも衰えていないことを、どうしても伝えたかったんだろう。ロックンロールは死なない。僕らも死なない。そう言って歌ったのは、『INNOCENCE』のラスト・チューン「ロックンロールが死んで」だった。今思えば、この曲を作った時には覚悟を決めていたのだろう。絶え間ない時の中で。変わるものと変わらないもの。果てしない繰り返し。それを僕らは生きると呼ぶ。DOESの原点、シンプル極めたエイトビートと、胸が熱くなるメロディを持つロックンロール。確かにここは、DOESの一つの到達点だった。

DOES 撮影=新保勇樹

「まだ終わってないからな。最後はみんな笑顔でハッピーになって終わろうよ」

「しばらくやらないと思うから、ちゃんと見ててくれよ」。ダブル・アンコールに応えて再びステージに上がり、ワタルの言葉に続いて歌われたのは「曇天」と「バクチダンサー」だった。どちらも『銀魂』テーマ曲で、DOES史上1、2を競う大ヒットとなった2曲を、渾身の力を込めてパフォームする3人。洋楽経由のオルタナ・ロックであり、日本語によるエモ・ロックであり、フォークソングや歌謡曲の要素もあるこの2曲が、アニソンとしてこれからも聴き継がれるのならば、DOESは確実に日本のポップ・ミュージックに爪痕を残したことになる。DOESがこの時代にいた意味。それを僕らが聴いたという意味。

DOES 撮影=新保勇樹

「これで終わりなんて、なんとなくつまんないけどさ。最後はこの曲で終わりだ。10年間本当にありがとう。またどこかでみなさんと会えることを信じて頑張ります。DOESでした」

話している時から、ああ、あの曲だと察しがついた。<なんとなくつまらないよ これで終わりなんてさ>。それは10年前のデビュー曲「明日は来るのか」のフレーズだった。DOES流の、せつない情緒、土着的なビートを織り込んだへヴィなロック・チューン。「最後に一緒に飛んでくれるか!」とワタルが煽る。ワン、ツー、スリー、ジャンプ。拍手、歓声、ハイタッチ。一瞬、時が止まった気がした。最後の瞬間まで3人は雄々しく、オーディエンスは熱狂的だった。肩を組む。笑顔を見せる。そしてワタルがマイクに向かう。

「ちゃんと生きてて待っててくれよな。どこかでまた会おう。最高の夜でした」

エンドロール、スクリーンに映った3人の笑顔は、どこまでも晴れやかだった。無期限活動休止という言葉の意味を、今日この会場に来る前までずっと考えていたのだが、確信した。これは解散ではない。DOESという音楽、DOESというスタイル、DOESという生き方に終わりはない。ひとまず、さらば。そしてまた会おう。2016年9月18日は、記念すべきはじまりの日になった。


取材・文=宮本英夫 撮影=新保勇樹

DOES 撮影=新保勇樹

セットリスト
DOES 10th Anniversary Live 「Thanksgiving !」in AKASAKA BLITZ
2016.9.18 赤坂BLITZ

<第1部>
01. ステンレス
02. ウォークマン
03. 戯れ男
04. 赤いサンデー
05. バスに乗って
06. ダンス・イン・ザ・ムーンライト
07. ワンダー・デイズ
08. 色恋歌
09. 三月
10. 黒い太陽
11. ユリイカ
12. 夜明け前
13. わすれもの
14. ライカの夢
15. 僕たちの季節
16. S.O.S.O
17. 紅蓮
18. 今を生きる
<第2部>
19. 晴天
20. カリカチュアの夜
21. 刹那
22. ロッカ・ホリデイ
23. ジャック・ナイフ
24. 君の好きな歌
25. ハッピー・エンド
26. 陽はまた昇る
27. ヘイヘイヘイ
28. レイジー・ベイビー
29. 修羅
30. KNOW KNOW KNOW
[ENCORE]
31. サブタレニアン・ベイビー・ブルース
32. 世界の果て 
33. ロックンロールが死んで
[ENCORE 2]
34. 曇天
35. バクチ・ダンサー
36. 明日は来るのか

 

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