誰もが幸せな気持ちになれる舞台『ア・ラ・カルト』が “移動レストラン”としてリニューアルオープン
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高泉淳子 撮影=荒川潤
年齢も性別もさまざまな愛すべきキャラクターを場面ごとに演じ分ける女優、高泉淳子を中心に、チャーミングな芸達者たちをゲストに迎えるスタイルで1989年のスタート以来、長きに渡り多くの人々の心を温めてきた『ア・ラ・カルト』。レストランを舞台に繰り広げる心温まるドラマと楽しい歌で綴られる、年末恒例の風物詩ともいえるステージだ。
東京公演ではずっと本拠地にしていた青山円形劇場の閉館にともない、2013年にはファイナル公演、2014年にはアンコール公演を行った後、昨年は新たな挑戦として『ア・ラ・カルト Live Show』として場所を変えてモーション・ブルー・ヨコハマで上演をおこなった。
そしてこの2016年のクリスマスシーズンには東京芸術劇場 シアターイーストという新天地で“移動レストラン”『ア・ラ・カルト -美味しいものは心を動かすところにある-』としてリニューアルオープンすることになった(大阪公演はこれまで同様、近鉄アート館で上演)。もちろん今回も台本を執筆し役者として出演する高泉に、公演への想い、どんなステージになりそうかを語ってもらった。
撮影=荒川潤
――今回から劇場が変わって、改めて新装開店ということになりますね。
本拠地だった青山円形劇場を離れて今回からは新たな劇場での再出発になりますし、これからはどんどん色々なところをまわるんだろうなあ、と考えていたら “移動レストラン”という言葉が頭に浮かんできて。昨日まで何もなかった場所に、ふと気づくとレストランができていて、静かな街が毎晩賑わいだして……、だけどある朝なくなっていて……。あのレストランは本当にあったんだろうか……? みたいなそういうイメージが湧いてきました。
去年、初めて、ライブレストラン『モーション・ブルー・ヨコハマ』で上演したのですが、私たちが夢見ていた、劇中で食べているお料理と同じお料理をお客様に食べて頂いて、同じワインを味わってもらう、ということが実現できて、これが最高に面白かったんです。だって、私が演じている高橋というサラリーマンの役が、お芝居の途中でワインを持って「乾杯!」って立ち上がったら、お客様もみなさん立ち上がってくれて、「乾杯!」って!
――それはちょっと感激しますね。
それに、舞台上で食べているのと同じ料理が実際に目の前に出てくるというのは、やっぱり面白いですよね。演じているこちらも、テンションが上がってくるんですね。メニューの説明にしても、お客さんも知っているメニューになるわけですから。
そんなこともあって、すっかり味をしめてしまいまして、12月のこの公演のあと年が明けた1月末に3日間だけですけどまたモーション・ブルーでお客さまも一緒にお料理を食べながら、ワインを飲みながらという“Live Show”スタイルの公演も決行する予定なんです。なので、まずは12月に劇場で観ていただいて、2回目は同じシーンをレストランで料理とワインの味を共有しながら楽しむ、なんて贅沢なんでしょう(笑)。よろしければそちらのほうもぜひチェックしていただけたらと思います(笑)。
撮影=荒川潤
――その12月の劇場バージョンのほうは、内容的にはどんな感じになりそうですか。
もちろん、これまでの『ア・ラ・カルト』を引き継いでいるので、舞台はレストラン。お店にやってくる人々の人間模様、テーブルでのギャルソンとの会話、という形は変えないつもりです。以前は、きっちりしたフレンチレストランというイメージだったと思いますが、今回はそういう風にしなくてもいいのかなとも考えていて。始まり方と終わり方は今までと少し違う雰囲気になるかもしれません。
――そうなると新しいキャラクターが現れそうな気がしますが、それでもやっぱり、おなじみのキャラクターも登場しますよね?
そうですね、そうなると思います(笑)。日替りゲストとして、今回初めて参加される方は三谷幸喜さんだけなんですが、初めてとはいえ三谷さんのことはまったく心配していません。昨年、シアターコクーンでやったリーディング公演『アンゴスチュラ・ビターズな君へ』で父親の役をやっていただいたんですが、これが歌も含めて本当に素晴らしかった。さすがです。
三谷さんは以前から「いつか『ア・ラ・カルト』に出たい」と言ってくださって。そのコクーンの時にも「来年はやりますかね? 僕、出たいなあ、出たいなあ」とおっしゃるので「本気で言ってます?」ということで今回、大河も評判いいですし、書き上げる頃にお願いしてみたんです(笑)。そしたらね、「僕が出たら、たぶん面白くなると思います」というお返事がきました(笑)。嬉しかったです!
――ということは、三谷さん以外はみなさんゲスト経験者の方々。
近藤良平さんは2011年に出ていただいたんですが、5年も前ですからほとんど初参加みたいなものですね。私にとっては実は一番ドキドキなんです。以前出ていただいた時にものすごくハラハラした記憶があるので。思い切り裏切ってくれますからね(笑)。山田晃士さんは去年ライブバージョンで初めて出ていただいたんですが、お芝居をするのは初めてで相当ドキドキだったろうとは思いますけど、心優しいサラリーマンを演じてくれてよかったです。もうとにかく歌が素晴らしいですから、必見です!
イケテツ(池田鉄洋)さんにはもう何回も出ていただいているし、『ア・ラ・カルト』のスタイルにとても合っている役者さんだと思います。今回もどう出てくるか楽しみですね。
(春風亭)昇太さんにはわたしのお芝居にも出演して頂いたりして。アラカルト初登場のときから最高の掛け合いをしてくれて、お客さんとの間合いもさすがです。もう、今一番ノっている方ですからね。なんたって『笑点』の司会者ですもの。来年の大河ドラマにも出演ですし、その辺りのネタに関しても楽しみです(笑)。
撮影=荒川潤
――ROLLYさんはレギュラーのようなイメージもありますが。
2010年の『ア・ラ・カルト2』になって以降はROLLYが毎年レギュラーゲストで、一緒に盛り上げてくれていて、本当に感謝しています。最初に出てくれた時、彼に「サラリーマンをやってください」って頼んだんです。きれいな金髪でしょ。私が「髪を普通にしてメイクもやめて、カラーコンタクトもはずして……。できますか?」って言ったら「ムムムムム! 僕はメイクしないでいるとパンツいっちょでいるような気分なんですよ」って言いながらも、「いいでしょう!」って引き受けてくれて(笑)。去年は髪がロングだったんですね。さすがに切ってくださいとも言えず、通販で見つけたウィッグをつけてもらったら、それが驚くほどピッタリでね(笑)。最高ですよ、あのウィッグ。
――では、今年もそのウィッグを?
かぶってもらいます(笑)。それから……、去年は中西(俊博)さんが首を痛めてバイオリンが弾けなかったんですね。今年は無事に復活します! それは私にとって、メンバーにとっても、大きな喜びです。それと今回から釆澤(靖起)くんが初参加してくれるんですが、彼は実は『ホロヴィッツとの対話』(2013年)の時にセリフのチェックをしてくれるスタッフとして参加していて。セリフ合わせ、協力してもらいました。当時は彼が文学座の役者だと知らなかったんです。舞台観に行ったらいいんですね。私がやっているワークショップに参加するようになって、リーディングのステージやライブのワンシーンに出演してもらったりして。
息子のような年ですよね(笑)。彼のような若い世代にも『アラカルト』のスタイルの舞台を体感してもらって、これから先の時代、挑んでもらいたいな、なんて想う今日この頃です。こういった点でも、今回はずいぶん雰囲気が変わるんじゃないかと思います。
――新しい味わいが楽しめるリニューアルオープンになりそうですね。では、最後にお客様へお誘いのメッセージをいただけますか。
アンコール公演も入れると26年間、青山円形劇場でやってきたわけですが、私たちもそこで最後になるのかな、このあとはもうできないのかなと思ったこともありました。去年はモーション・ブルーという劇場とは違ったところでやり、今年はまた劇場に戻るんだけれども新たな場所で、新しいメンバーも加わることになりました。正直私たちもどうなるのか、ドキドキしています。
だけどまた、こうして年末に『ア・ラ・カルト』として再びお客様に会えることはとにかく本当にうれしいです。去年、観られなくて2年ぶりという方も多いでしょうし、今年『ア・ラ・カルト』初めてといった方もいるでしょう。初めての劇場で、新しいメンバーも加わって、新たな気持ちで、それでもやっぱり「お待たせしました、今年はここで開店します、ボナペティ!」という気持ちは大事にしたいし、ぜひ大勢の方に来ていただきたいです。
「みなさん、開店ですよ!」 撮影=荒川潤
インタビュー・文=田中里津子 撮影=荒川潤
ア・ラ・カルト -美味しいものは心を動かすところにある-
日程:2016年12月16日(金)~26日(月)
会場:東京芸術劇場 シアターイースト
【大阪】
日程:2016年12月28日(水)~29日(木)
音楽監督:中西俊博
音楽家:中西俊博(vl) 竹中俊二(g) ブレント・ナッシー(b)
ゲストミュージシャン:パトリック・ヌジェ(acc)
出演:高泉淳子 山本光洋 釆澤靖起
日替わりゲスト(50音順)=池田鉄洋、近藤良平、春風亭昇太、三谷幸喜、山田晃士、ROLLY