SPICE編集、深夜のトム・ヨークにノックアウトされる
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トム・ヨークがその音で体現した、静かなるエグさ
サマーソニックの1日目を終え、多くの人が帰路につく中、入れ違いに多くの人が集まってくる。『HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER』の開幕である。
同イベントは2012年よりホステス株式会社をはじめとする複数の企業が共同でスタートさせた、『Hostess Club Weekender』の番外編的位置付けで、その名の通りサマソニ東京会場で行われるオールナイトイベント。
おもにエレクトロ、DJ系のアーティストが多く出演するのだが、なんといっても目玉はトム・ヨークに違いない。『トゥモローズ・モダン・ボクシーズ』を引っさげての登場に期待は高まる。
怪談をする稲川淳二を横目に見つつ、腹ごしらえを済ませ、まずはBAIOのアクトを観に行ってみる。
早くも満員に近いソニックステージに現れたBAIOは落ち着いた大人のサウンドを響かせ、集まったオーディエンスをゆらゆらさせる。このヴァンパイア・ウェークエンドのベーシストは見た目同様どこか優しい音で、更けていく夜にマッチしていた。
ずっと聴いていたいところであったが、ディアハンターのキャンセルを受けて急遽ロングセットを用意したというスピリチュアライズドが、どうにも気になる。
いったいどんなステージを見せるのか、ひとまずレインボーステージへ確認に向かうことに。
が、しかし!
到着してみると完全にガランとした会場。思わず係の方に「何時からでしたっけ」と尋ねると、「一応23:15なんですけどね…」と申し訳なさそうな返答。その時点で23:30。どうやら準備が押しまくっている様子。
こんなことならもう少しBAIOを観たかったと思いつつ、開演を待ってみるが……
……出てこない。
まさかロングセットとは口だけだったのでは?と多くの人が思ったかもしれない24:00、ようやくステージに現れたスピリチュアライズドに、待ちわびた観客は大きな声援を送る。
反復し繰り返されるリフとフレーズ、そこに合わさる少しビターで柔らかい歌声。ゆるやかに滑り出したステージは待った甲斐ありという感じであったが、開演が押したせいでもう時間がない。
あと15分でトム・ヨークの出番なのである。
再びソニックステージへと向かう。なんだかすごく忙しい。昼間マウンテンステージで山籠りしていただけに、深夜になってアクティブに移動するのはなかなか大変。
ソニックステージの観客はBAIOのときよりさらに数を増し、超満員となっていた。そしてほどなく現れたトム・ヨークは、ただただ凄かった。
出迎える歓声の中、時計の鐘のような音が等間隔に鳴りだし、そこに別のリズムのビートが乗ってくる。最初は音がずれていて「?」となるのだが、だんだんと重なってくるデジタルサウンドは、いつの間にか強制的に踊らせるような肉体的サウンドとなっていき、背後の映像もそれに合わせて変化していく。はじめは数色の縦縞模様だった図柄が複雑な幾何学模様へと変化していくのだ。
例えるなら、何もないところに描かれた「点」が点描画になっていき、それが動き出して動画になっていくのを見ているようなサウンド。そこに実際視覚からも追い打ちをかけられるので、観ていて陶酔感が半端ではない。
電子音のはずなのに、ここまで本能と肉体に訴えかけてくるのは何故なのか。一体この人の頭の中は何ビートでリズムが刻まれているのか……多分128ビートぐらいはあるはずだ。
しかもサウンドだけでなく、トムの歌声がファルセットだったり声を張り上げたりしながら乗っかってきて、さらに背後に何本も並んだギターを取っ替えひっかえ持ち出しては、不協和音的ノイズからアコギの綺麗なアルペジオまで多彩な演奏をみせていくのだから、もうお手上げ。
こちらが圧倒されているのをよそに、トムは曲の合間に「コンバンハー」とか、「オオキニー」「ドウモー(笑)」など日本語で話したり、曲中はぴょんぴょん跳ねたりくねくね踊ったりして、相当楽しそうなのであった。
わかっていたつもりだったけど、本当にこの人は凄まじい。
日時:2015/8/15(土)・16(日)
会場:
■東京
QVCマリンフィールド&幕張メッセ (千葉県)
■大阪
舞洲サマーソニック大阪特設会場 (大阪府)