“完成”しないアートが初来日! 『リビングルームⅡ』ミシェル・ブラジー展をレポート
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『リビングルームⅡ』ミシェル・ブラジー展 ©girls Artalk
人は時に、「いま、この瞬間はもうこない」ということを忘れてしまいます。同じ服を着て同じ場所に行っても、髪の毛は毎日少しずつのびているし、場所に流れる空気も毎日毎分毎秒違う。考えれば当然のことなのに、いつのまにかそのことを忘却してしまう。そんな、忙しく生きる現代の人々に今一度大切なことを気づかせてくれるアーティストが初来日しました。
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ミシェル・ブラジー(Michel Blazy)はモナコ生まれで、フランス・パリ在住にて活躍するアーティスト。1990年代より、日用品や自宅の庭などで採取した植物などを用いた作品を制作しています。「自然とテクノロジー」「有機物と人工物」といった相反するものを調和させる世界を提案するアーティストです。そんな彼の展覧会が、2016 年9月16 日(金)~ 2016 年11月27日にかけて銀座メゾンエルメス フォーラムにて開催されているとのことで、さっそく取材してきました。
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正方形のガラスが沢山埋め込まれたような、光が部屋に美しく降りそそぐ銀座メゾンエルメスの8階。夜と昼では全く異なる表情になるこの空間は、訪れた鑑賞者にタイトル通りの”リビング”のようなくつろぎをもたらします。
まず、向かって正面に大きくかけられたカーペットには、なにやら曲線が大胆に描かれています。よく近づいてみるとそこにはカタツムリが数匹……!
Le lâcher d’escargots |2009 かたつむり、カーペット|サイズ可変| Edition 2/3 Snails, carpet |Dimensions variable | Edition 2/3 Photo: Martin Agyroglo / Frac Île-de-France, Paris Courtesy of the artist and ART :CONCEPT,Paris ©girls Artalk
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次の部屋にある一見泥絵のように見えるこの作品も、説明を読んでびっくり。なんと茶色い部分はチョコレート、白い部分は生クリームでできているとのこと。さらにはネズミがかじった跡も刻まれています。
ブラジーは作品制作時に、衛生的ではないイメージの持つ生き物に役割を与え、自由に参加させることがあるそうです。クリーンで静的なギャラリースペースというイメージを覆すブラジーによる展示空間は、まさに”実験室”のよう。そして、ブラジーの名を一躍アート界に轟かせた「日用品×植物」のシリーズからは、人の手が加えられているのになぜか違和感がなく、”オシャレ”な印象を受けます。
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さらに会場にある全4脚あるイスには、四季にちなんだ名前がついていて、それぞれ異なるフレーバーのスモークが優しく香ります。座ることもできるので、ぜひこの香りに包まれてみてください。
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筆者が特に好きだったのが《ワインを飲む壁》というこちらの作品。
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上の写真が初日で、下の写真が4日後。壁には、実際に赤ワインが入れられたグラスが埋め込まれており、ワインのシミがじんわりと拡がっているのです。どの作品も一般的な絵画とは異なり、いつ観ても常に完成形ではない、見る時間や日によって成長したり腐敗したりする要素を秘めているのです。現代人が彼の作を「詩的だ」と表現するのもうなずける展示でした。
触ることこそNGですが、会場では写真撮影OK! 近づいてよく観ることもできるので、ゆったりと鑑賞してみてください。入場は無料、会期中にも変化し続ける展示なので、何度でも是非足を運んでみてください。
文=山口 智子 写真=丸山 順一郎・山口 智子
開館日: 2016年9月16 日(金)~2016年11月27日(日)
開館時間:
月~土 11:00~20:00(最終入場は19:30まで)
日 11:00~19:00(最終入場は18:30まで)
休館日: 不定休 (エルメス銀座店の営業時間に準ずる。)
入場料: 無料
会場: 銀座メゾンエルメス フォーラム (中央区銀座 5-4-1 8 階 TEL: 03-3569-3300)
主催: エルメス財団
協力: Art : Concept
後援: 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
HP:http://www.maisonhermes.jp/ginza/gallery/