構成・演出に初挑戦!『早乙女友貴 20th Anniversary Event Vol.2 in 杉田劇場』 早乙女友貴インタビュー
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早乙女友貴が20歳になった記念として、初めて構成・演出を手がける舞台、『早乙女友貴 20th Anniversary Event Vol.2 in 杉田劇場』が10月14日から上演される。(19日まで)
切れ味鋭くスピード感のある剣捌きでは若手俳優の中でも傑出している早乙女友貴。時代劇や2.5次元舞台も数多く出演していて、最近では『新・幕末純情伝』の岡田以蔵役で強烈な個性を発揮、11月には『あずみ 戦国編』の最上美女丸の役が待っている。
今回の公演は、兄の早乙女太一とともに中心をつとめてきた劇団朱雀で培った「大衆演劇」のテイストを、1人の役者として数々の舞台で身につけた新たな表現とミックスして見せていく舞台だ。
葵陽之介や鈴花奈々をはじめとする劇団朱雀の元メンバーたちも登場するこの公演について、座長で構成・演出を手がける早乙女友貴に語ってもらった。
大衆演劇でやってきたことを新しい世界感で見せる
──この杉田劇場の公演は、どういう経緯で企画が始まったのですか?
最近あまり大衆演劇をやっていなかったので、本公演でない形でも観ていただく機会を作りたいなと思っていたところに、周りからも20歳になった記念イベントとしてどうだろうという提案があって、それでこういう形でやることに決まりました。
──劇団朱雀の解散後、ほかの大衆演劇の一座にも、時々出演していたそうですね。
はい。たまに知り合いの劇団にゲストで出る程度でしたが。
──そういう舞台に出るとやはり血が騒ぎますか?
というか、素直に懐かしいなという気持ちですね。
──今回の舞台は、葵陽之介さんはじめ劇団朱雀にいたメンバーたちが沢山参加しますね。かなり大衆演劇テイストが詰まったものになりそうかなと?
大衆演劇テイストではあるんですが、大衆演劇でやってきたことを、僕なりの新しい世界感で見せられたらと。今までやったことのない踊りとか、新しい曲で以前やったものを作り直したりするので、また違った感じの舞台になると思います。
──劇団朱雀のファンだったお客さんも、喜んでいるのでは?
やはり「またやってほしい」という声も聞こえてきましたから、そういう方たちのためにも、期間限定のイベントという形で楽しんでもらえればいいなと思っています。
──20歳になったことで、自分の原点を見つめ直すという気持ちもありますか?
そうですね。僕の原点は大衆演劇なので、初心を忘れないという意味もありますし、そこで培ってきたもの、そこにいたからこそ得たものが今の僕を作っているし、僕の一部でもあるので。もう1回見つめ直すではないですけれど、忘れないようにしたいと思っていますし、そのためにも今回、ちゃんと大衆演劇と向き合ってみたいという気持ちなんです。
殺陣は好きだったのでとことん極めたいと
──友貴さんは1歳半から舞台に出ていて、日常の中で色々な技術を身につけてきたわけですね?
日本舞踊とか芝居は、小さい頃から教わりながら出させてもらって、殺陣もいつのまにかやるようになりましたが、でも誰からも教わった覚えがなくて、独学なんです。それからダンスは1年くらい習いに行って、そのあとは他の舞台とか劇団で踊る機会があったので、いつのまにか身についていました。そういう自分の技術も、改めてこの公演で観ていただきたいと思っています。
──劇団朱雀の公演では、太一さんと友貴さん2人の殺陣を見せる場面があって、華やかで、また、凄まじい迫力でしたが、あの見事な殺陣は独学だったんですね
殺陣に関しては誰かに教わるということはまったくなかったです。でもすごく好きだったし、好きになったものはとことん極めたいほうなので、うまい方の殺陣を見て、こういうやり方もあるんだとかこういう動きもあるんだとか研究して、それに自分で考えて作った形で動きを加えていって、今の僕のスタイルが出来上がってきた感じです。
──以前、太一さんが、小さい頃の遊び道具は舞台で使う扇子や刀だったと話していましたが、そのぶん手に馴染んでいるのでしょうね。友貴さんもまるで手と刀が一体化しているように見えます。
自分ではそういう感覚が当たり前になっていますけど、他の方から見たら普通ではないらしいですね。
──その殺陣は今回の公演でも見せてもらえるのですね?
殺陣もありますが、殺陣だけ見せるというより、以前、兄の公演でやっていたように、日本舞踊とかダンスと組み合わせて、ショー的に演出して見せられたらいいなと思っています。
──基本の構成は日本舞踊とダンスと芝居だそうですが、芝居も劇団の持ちネタがたくさんありますね。「弁天小僧」とか「身替わりカンパチ仁義」「伊太郎旅日記」とかを日替わりでやって、コメディ場面やアドリブ部分で楽しませていましたが、今回もそれは観られるのでしょうか?
芝居は日替わりにしたいと思うので、どの演目にしようか考えているところです。劇団朱雀の財産なので残していきたいですけど、まるごとそのままやるのではなく、アレンジを加えるとか、またちょっと違った見せ方ができるんじゃないかと思っています。演じる人が変わるだけで違うものになりますし。色々、今の僕ならではの新しいアイデアを入れながら作っていくつもりです。
人間から出るエネルギーで見せる「つか作品」と出会って
──今回、初の構成・演出ということで、やはり意識が違いますか?
やっぱり自分なりに、こういうものをやりたいとか作りたいという気持ちがあったので、それを実現することで、自分のこれからにも大きな経験になると思いますし、そのためにもしっかりやりたいなという思いがあります。
──この数年で、新感線からつかこうへい作品、2,5次元ものまで、ジャンルの違う舞台を経験していますが、その中でとくに影響を受けたものはありますか?
色々なジャンルの舞台に出していただけることには、すごく感謝しているんです。舞台に立てるというのは、決して当たり前のことではないし、有り難いことなので。そしてその中で結果を出していく、お客さんに良いものを見せていくということでやってきましたし、どの舞台からも刺激を受けてきました。でもとくに影響を受けたのはつかさんの作品で、この間も『新・幕末純情伝』(6月~7月)に出させてもらいましたが、お芝居って、やっぱり人間そのものを見せるものなんだなと改めて思いました。あの舞台は音響とか照明とかも派手でしたけれど、そういうものに頼らないで人間から出るエネルギーで見せていく部分が大きかったので、そういう意味で、つかさんの作品はすごく役者としての自分に刺激を与えてくれるなと思います。
──最初が2014年の「つかダブルス」で、『新・幕末純情伝』と『広島に原爆を落とす日』に出演して、また今年の『新・幕末純情伝』で、同じ岡田以蔵を演じましたね。前回も以蔵役は似合っていましたが、今年は凄みと深みがありました。
以蔵は本当に大好きな役で、最初の公演は、僕もつか作品のことを全くわからないまま演じましたけど、それでも好きな役でした。今回は本当に楽しくて、さらに大好きな役になりました。
──友貴さんは役者として今、一気に大きくなってきた感じがありますが、やはり意識などに変化があったのでしょうか?
たぶん気持ちの問題だと思うんですけど、以前と今では、仕事に対する取り組む意識が全然違います。正直いって5、6年前は、生まれたときからこういう世界で生きてきたので、舞台に立つことが当たり前、舞台に立てて当たり前で、とくに自覚もなかったんです。劇団以外の仕事もいただくようになって、そこでは早乙女友貴という1人の役者として扱ってもらうことで、責任感も感じましたし、本気で仕事と取り組む姿勢を気づかせてもらったと思います。
──ここまで活躍の場を広げてこられたのは、育った環境プラスこの仕事に向いている資質だと思いますが、この世界をやめたいと思ったことは?
小さい頃はありました。でも今はまったくないです。この世界で生きていく運命だったんだと自分でも思います。
大きな夢に向かって走っているというメッセージ
──多忙なスケジュールの合間に、あえて今回の公演をやりたいと思うのは、やはり原点とか自分のホームへの思いがあるからでしょうか?
たぶん皆さんからみて大衆演劇というのはちょっと特殊なジャンルだと思うし、その舞台の面白さとかあまり知られてないと思うんです。僕はそこで育った人間ですから、もっともっと大衆演劇を知ってほしい思う気持ちがあって、いつかちゃんとした本公演もやりたいし、その座長としてセンターに立つ人間として、まず自分が磨き上げられなくてはいけないと思っているんです。それに、たとえばいつかプロデュース公演などをやるためにも、今、たくさんの経験を積んでいかなくてはならない。そのために自分が1歩1歩、上を目指していかなくてはという思いがあります。
──大きな夢があって、そこへ行くためにもこのイベントを成功させて、ということなのですね。その大きな夢ですが、以前、太一さんが海外進出も含めての新しい展開という夢を語っていましたが、今はちょっと休止しているのかなと。その部分を少しでも引き継いでいこうという思いがあるのでしょうか?
引き継ぐというより、兄が言っていた大きな夢はみんなが揃わないとできないことなので、まだまだ先のことだと思います。今はまず、劇団朱雀時代から待っていてくださるお客さんのためにも、イベントという形で楽しんでもらって、僕がやりたいプロデュース公演や、兄の言っていた大きな夢に向かって、僕らは走ってますというメッセージになればいいなと。2年前の劇団朱雀の解散は、僕たちにとって終わりじゃなくて始まりだと思っています。それぞれの場所で成長して、ちゃんと集まるときにはすごいものをやろうよと。みんなそう思っているんです。
──ではこのイベントは、今の早乙女友貴の走っている姿を見せてもらえるということですね。楽しみにしています。
絶対に楽しんでいただけるものを作りますので、ぜひ皆さん観にきてください。
■さおとめゆうき
福岡県出身。97年、1歳半で父・葵陽之介が座長をつとめる劇団朱雀で初舞台を踏み、2015年の劇団解散まで所属。劇団公演以外にも舞台出演は多数。近年の主な舞台は『神州天馬侠』『早乙女太一 原点進化』『巴御前』『大和三銃士』『蒼の乱』『南の島に雪が降る』『つかこうへいダブルス』『オレノカタワレ』『AZUMI・幕末編』『THE SHINSENGUMI2015』『TRUMP』『椿説 おくのほそ道』『刀舞鬼 -KABUKI-』『新・幕末純情伝』『瞑るおおかみ黒き鴨』など。この杉田劇場公演のあとは11月に『あずみ 戦国編』で最上美女丸役が控えている。