【動画あり】中川晃教×平野綾×橋本さとし×濱田めぐみが熱唱、日本版『マーダー・バラッド』がヴェールを脱いだ

2016.10.10
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ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表 (左から)濱田めぐみ、中川晃教、平野綾、橋本さとし

 
【動画】10/10 ミュージカル★『マーダー・バラッド』スペシャルミニライブより↓
 


ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表が10月10日、都内・青山のイベントスペースで行われた。日本ミュージカル界屈指の歌唱力を誇る中川晃教×平野綾×橋本さとし×濱田めぐみの全キャストが、本番同様のフルバンドで《本邦初公開》の劇中ナンバーを5曲披露する豪華イベントとあって、抽選で選ばれた約100名の観客も会場に詰めかけ、小さな空間が熱気にあふれた。

ジュリア・ジョーダン(脚本・歌詞)&ジュリアナ・ナッシュ(音楽・歌詞)という二人の女性によって作られたこのミュージカルは、2012年にニューヨークのマンハッタン・シアター・クラブで初演され、その後、ファンたちの熱い要望により2013年にユニオン・スクエア・シアターで短期間だけ再演された。また、その上演を観た韓国の俳優でプロデューサーのキム・スロが自国でのライセンス上演を即決し、同年11月にはソウルのロッテカードアートセンターで韓国語版をスピード上演。その後もキャストを変えて上演される人気作品へと成長した。さらに、ロンドンのウエストエンドでは本年9月29日からジ・アーツ・シアターで上演(12月3日までを予定)、ミュージカル・スターのケリー・エリスや、日本でも人気のラミン・カリムルーらが出演とあって、こちらも最もホットな新感覚ミュージカルとして注目を集めている。

この話題作がいよいよ日本初上陸となる。「ノンストップ★ソング・スルー・ロック・ミュージカル」のキャッチコピーどおり、たった4人のキャストによる全編歌のみの90分。だからこそ、歌唱力には絶対の実力のあるキャストで上演されなければならない。

さてこの日のイベントは、ミニライヴから始まった。

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表でのミニライブ

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表でのミニライブ

「MURDER BALLAD(マーダー・バラッド)」(トム:中川、サラ:平野、マイケル:橋本、ナレーター:濱田)
「Narrator 1(ナレーター1)」(トム:中川、サラ:平野、ナレーター:濱田)
「I Love NY(アイ・ラヴ・ニューヨーク)」(トム:中川、サラ:平野)
と、『マーダー・バラッド』冒頭1曲目から3曲目までが立て続けに披露された。

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表でのミニライブ

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表でのミニライブ

続いては詩の博士号を持つというマイケルのソロ。ということで橋本が登場。「歌詞の内容が詩的で……。自分でも何を歌っているかまだわかりません(笑)。そんな状態を楽しんでいただければ」そんな軽妙なトークの続きで曲のタイトル「Sugar Cubes and Rock Salt(角砂糖と岩塩)」を紹介すると、それだけでも爆笑をさらった。

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表でのミニライブ

続いて「Mouth Tatto(タトゥーのようなキス)」をトム:中川、サラ:平野、ナレーター:濱田の三人が熱唱し、ミニライヴは終了。ほんの10分ではあったが、迫力ある歌唱で『マーダー・バラッド』の持つ熱が観客にも十分に伝わったのではないだろうか。

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表でのミニライブ

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表でのミニライブ

続く会見には四人とキャストに加え、日本版の本作を演出する上村聡史(文学座)も登壇した。2015年に第22回読売演劇大賞最優秀演出家賞、第17回千田是也賞(2014年度)を受賞した演劇界の注目株。そんな上村は「この世界的ヒット作の日本初演にかかわれて大変光栄です。殺人をめぐる愛憎の物語ですが、それを大きく展開させる過去の想い、ほとばしる情愛が大きなポイントになっています。過去の自分が今の自分を美しくもはかなくも恐ろしくも変化させる。そういった追憶のエネルギーを41曲のロックチューンに乗せて、まるでスタイリッシュなモノクロ映画を観ているような感覚でお届けできれば……そんな演出プランで挑んでいます」と抱負を語った。

ミュージカル『マーダー・バラッド』日本版の演出家・上村聡史

自由に生きる男トムを演じる中川は「稽古前に、どんな作品か聞いたり見たり読んだりと、情報を詰め込んだけれど、稽古が始まったらこの4人で物語を進める、それが全ての醍醐味です。そんな新たな挑戦を観ていただけたら」。

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表での会見

マイケルとトムの間を揺れ動くサラを演じる平野は「さっき歌っただけでも、まだ震えています。それくらいサラの魂が入ってくるし、それでいて作品に魂を吸い取られるような……バンドの方々と歌わせていただいてそれを実感しました。皆さんが思っている以上にリアルで生々しいお話ですが、そこは楽しんでいただけるように頑張りたいです」

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表での会見

詩の博士号を持つ真面目で誠実なマイケルを演じる橋本は「(真面目で誠実、と紹介されて客席がどよめいたことに対し)そうですよ、真面目な役ですよ(笑)。今回の課題は、どれだけ地味キャラでいけるかだと思っているんですが、今、ちらっと曲を聴くだけで、この青山という街がNYに変わった。次は天王洲アイルという街で、皆さん一緒にNYにトリップしましょうよ! 参加してください。一緒に最高のミュージカルを創りましょう!!」

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表での会見

そして物語の進行役であり、謎の存在でもあるナレーター役と紹介された濱田は、「どうも~、謎の存在を演じます濱田です!(場内爆笑)今お三方と上村さんのお話を聞いていて浮かんだ言葉は『事実は小説より奇なり』。舞台の上は虚構の世界ですが、私たち演じている役者たちは本当にリアルに事件を感じ、衝動で人を殺そうとしたり、憎んだり喜んだりをまざまざと舞台上で実感しています。それを掻き立てるロックミュージックが私たちの心と身体に染みてくる。初日までにどのように仕上がって、皆様の前にお披露目できるか。必死に頑張って最高のものをお届けしたい」と語った。

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表での会見

続いて質疑応答。これまで数々のミュージカルに出演してきた中川は『マーダー・バラッド』というロックミュージカルと4人のハーモニーについて問われると「まず、この4人が集まった(大事なことなので3回言う中川)。それが何よりも最大の魅力。そこに上村さんの演劇的な要素が加わってくる。全編歌でセリフはないけれど、森雪之丞さん(訳詞)のワードの持つ力が、この4人の力と音楽と相まってハーモニーとなった瞬間、今まで見たことのない世界が見えてくる。ハーモニーは、ただ美しいだけでなくザラッとした感じが生かされるといいな。綺麗なものを求められる日本のミュージカルのパターンとは真逆のものを、声やハーモニーにあてがって、本人たちの持っている声質やバンドのサウンドを借りながら、さらにロックミュージカルのライヴ感がプラスされることで最強のものになる。女性は子宮で、男性は……全身で(笑)感じていただけたら」と熱弁をふるった。

サラに似ている部分を問われた平野は「女性だったら一度は夢見るかな。こんなイイ男に囲まれて、どっちにしようかな、という女性の憧れを一身に背負って体当たりで演じたい。動きが激しいのですでにアザだらけで、アクロバティックなスポーツのような感覚もあって飽きない。ステージ上に客席があるのも初めてなので、いろんなところから見られている感覚を役作りに反映できれば」

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表での会見

サラに振り回される誠実なマイケルについて橋本は、さきほどカッコよく決めたのに「衣裳が学ランに見えた」と平野に言われたそうで、皆がツッコミ上手であることを披露。「今まで演じたことのない役柄で、僕にとってチャレンジ。詩という夢をつかみきれず、でも家族という幸せを求めて大事にする誠実さにメッチャ憧れます。皆が共感してくれるキャラにしたい」

すべてを司る存在のナレーターを演じる濱田は、稽古場の雰囲気について「各々の雰囲気やイメージ、皆の色をすり合わせることによって、空気感、色味、音の感じ、匂い、ザラつき、身体で感じる以外のもの、肌触り感が出てくる作品だと思う。今稽古場では、皆の心の奥底にある『マーダー・バラッド』的な部分が出てきてる。それがどういう色味で出てくるのか。今、作品の中のナレーターと、作品をどう創るかという(役者の)濱田めぐみがどんどんリンクしてきています。いろんな感触が味わえる作品だと思います」

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表での会見

演出の上村は、歌声を聴いた手ごたえについて「実はミュージカルは初演出。とにかく皆さんキャリアと経験があり、板の上にどう居るか熟知しているので、役に入ったときのエネルギーがすごくこちらに伝わってくる。それと歌が重なったときに、“物語なんかどうでもいいんじゃね?”と演出家としてあるまじきことを思ってしまうのですが(笑)、舞台芸術ってライヴだと思う。ミュージカルの枠を超えて提示したい、今感じている手ごたえ以上のことをやってやりたい、と燃えたぎっています」と語った。

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表での会見

さらに、出演者4人に期待することについて問われた上村は、まず中川について「今回はなかなかないタイプの色のある役。中川さんの中に眠る、『自分が滅びてでも人を食ってやりたい』というところを引き出したい」。これに対し中川は「上村さんは、これまで天使とか人間じゃない役を演じる自分を観てくれていたのかな(笑)。しかし今回は20代前半から35歳まで演じるので、自分(今年34歳になる)と遠くない年齢設定。上村さんは、熱さの種類や食らいつく種類を1つじゃなく10個見せる中で、『今のがいい』『もっとこうしてほしい』と具体的に言ってくれる。だから僕が持っているものから、もっと男らしい歌・芝居・存在で表現できる。新たな中川を観ていただけるのではないか」と答えた。

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表での会見

「今までにない激しい役なので、新たな魅力を稽古場で創りたい」と上村から言われた平野は「子どもがいる役、というのは生身では無かった。毎日が挑戦です。4人しかいない中で、憧れの俳優さんたちがキャスティングされている中で、“なんで平野が?”と思われないように、“平野が演じることに意味があった”と思われるように、自分からぐいぐい積極的に挑戦していきたい」

一方「演劇的な部分で一緒に楽しんでいければ」と演出家に言われた橋本は「演劇的なところで、と言っていただきましたが、これ……全編歌なんですよね(場内爆笑)。でも例えば間奏や小節の間に集中力を切らさず、かつ相手の歌をセリフとして聴いて、どう感じて自分の歌に持っていくかが演劇的要素だと思う。歌の中にドラマ性があるようにしていきたいと思っていたので、演劇的な部分を一緒に、と言われて嬉しかったし、合ってます!」

「これまでの数々の主演作の中、ロックというテイストはなかなかない。ライヴ感覚を醸し出す居方をともに創りたい」と上村からリクエストされた濱田は「取り扱い説明書がないと大変なことになるすごい面白い3人なので、一緒にいるだけでインスピレーションやアイデアが出てきちゃう。この感覚を忘れずに、舞台上で、生のロックバンドとともに居る中で、上村さんとチャレンジしたいのは、『ナレーターとしての時間軸を生きる』。他の3人の時間軸と、お客さんが観ている『マーダー・バラッド』の時間軸と、ずれたところにあるナレーターとしての思考の3本軸を創って、生のライヴで擦り合わせて、リアルに起こっているようなライヴ感を出したい」と語った。

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表での囲み取材

また、ニューヨークへの4ヶ月の留学を終えたばかりの平野は「NYの空気や匂い、情景描写を歌の中に表現したい」とも意気込んだ。

筆者も2013年にNYと韓国、2015年に韓国で計3度観劇しているが、情熱と嫉妬と愛情がもつれ合うスリリングな関係性、4人の圧倒的歌唱力、随所に施された+αのお楽しみ、そして観客がノリノリになってしまうカーテンコールは、ミュージカルというよりも“演者と一緒に楽しむタイプのパフォーマンス”だと感じた。また、重低音の効いた生バンドや、日本版では中川晃教が演じるトムのエロティックで危険な視線には、終演後もしばらく何度も思い出してしまう中毒性がある。まさに“体感”する「HOT&SEXYな90分」だと思う。ちなみにこの物語の結末は、筆者には一切想像がつかないものだったことも報告しておこう。そんな、一筋縄ではいかないライヴ・エンターテインメントなのである。

ミュージカル★『マーダー・バラッド』は、2016年11月3日(木)~6(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、11月11日(金)~11月27日(日)天王洲銀河劇場で上演される。

ミュージカル『マーダー・バラッド』製作発表

(取材・文:ヨコウチ会長 写真撮影:安藤光夫)

公演情報
ミュージカル『マーダー・バラッド』

■日時・会場:
兵庫>2016年11月03日(木)~06日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
東京>2016年11月11日(金)~27日(日) 天王洲銀河劇場
■出演:中川晃教・平野綾・橋本さとし・濱田めぐみ
■訳詞・上演台本:森雪之丞
■演出:上村聡
■音楽監督:島健
■公式サイト:http://hpot.jp/stage/murderballad
■主催:ホリプロ/スポーツニッポン新聞社/WOWOW/銀河劇場
■企画制作:ホリプロ
 
【アフタートークショー開催!】
●11月13日(日)17:30公演後
中川晃教×平野綾×橋本さとし×濱田めぐみ
●11月20日(日)17:30公演後
中川晃教×平野綾
●11月23日(水)17:30公演後
橋本さとし×濱田めぐみ
※該当公演のをお持ちのお客様全員がご参加いただけます。
※イベント出演者は変更となる可能性がございます。予めご了承くださいませ。 

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