異例の小劇場でのロングラン公演、斬新なチケットの売り方も!? 平野綾×富田麻帆が語る、韓国発の新作ミュージカル『シルヴィア、生きる』の見どころとは?
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左から 平野綾、富田麻帆
唯一死後にピューリツァー賞を受賞したアメリカの女性作家、シルヴィア・プラスの人生を初めてミュージカル化したミュージカル『シルヴィア、生きる』が2026年4月2日(木)から、東京のザ・ポケットにて上演される。
本作は、3カ月連続上演企画『conSept2026:シーズンReBORN』の一つ。シルヴィアはその生涯で3度自殺を試みたという。批評家アルバレスによると、10年ごとに試みられたその行為は、死へ向かうものではなく新たな生に対する“生き直し”だった。本作ではその点にフォーカス。“死”ではなく、“生”を探し求めるという願いを込めて、“生”にたどりつく物語として、彼女が残した詩と小説を彼女の人生に重ね合わせ、誰もが生きていく中で感じ得る閉塞感や「何者でもなく、何者かになる」という想いを歌と音楽で紡ぐ。
今回、SPICE編集部は、シルヴィア役を主演する平野綾、そしてシルヴィアと一心同体のヴィクトリア役の富田麻帆にインタビュー。実は幼少期から知り合いだというお互いの印象や、作品の見どころなどを語ってもらった。
ーーあらためて、本作の出演を決めた理由を教えてください。
平野:いろいろな理由がありますが、まずは小劇場での上演が今まであまり経験がなかったので、これはすごく自分のためになりますし、勉強になると思ってチャレンジしたいと思いました。その中で、
もちろん、(演出を務める)藤岡(正明)さんからご指名いただいたということもあって……それもすごく嬉しくて。というのも、実は今まで共演は10年以上前の井上芳雄さんのライブでの「ホール・ニュー・ワールド」をデュエットしただけなんです。なぜ私なんだろうと思いましたし、オファーは意外でした。でもせっかくお声がけいただいたのだから、絶対期待に応えたいと思っています。
富田:私は韓国ミュージカルが大好きなんですね。これまでも300~400人規模の韓国ミュージカルをやらせてもらって、その魅力に取り憑かれているということは大前提としてあるんですが……今回はお話いただいたときに、まず(平野)綾ちゃんの名前があって! 子どもの頃から知っているのに、アニメ関連のイベントで1日だけ一緒になったぐらいで、なかなか一緒にやる機会がなかったんです。
もちろん存在は知っているし、舞台も観ていて、そんなご活躍中の綾ちゃんとやっとご一緒できる機会だと思って、出演を決めました。実は年齢も一緒ということもあって、お互いいろいろな道を通ってきたけれど、今あらためて出会って、一緒に作品をやる意味が絶対あるだろうなと思って、「やりたいです!」と二つ返事でした。本当に楽しみです!
平野綾
ーー脚本を最初に読んだときの感想を教えてください。どんなところが見どころになりそうでしょうか。
平野:現時点ではまだ決定稿ではなく、準備稿を読んだ感想になってしまうのですが、ともすると、一瞬「ファンタジーなのか?」と思うようなシーンがあるんです。時系列や世界が飛ぶんです。なので、出来上がったらすんなり受け入れられるとは思うんですけど……理解するまでがすごく難解だなとは思っています。
それに、シルヴィア・プラスの詩の言葉の選び方がかなり独特だなと思って。登場人物の詩人たちの会話とか、会話のクオリティーが高いんですよね。これはかなり気合を入れないと、この会話劇についていけないぞ……!?と思って、ちょっとヒヤヒヤしています(笑)。本当に早く台本も曲も欲しい! そこにどんな日本語が紡がれるのか、かなり気になっています。
富田:本当に綾ちゃんの言うとおり。もともとシルヴィアたちが使っている言葉も独特だけれど、それを日本語に置き換えると、また別の難しさや繊細さが生まれるのかなぁと想像しています。決定稿ができたら、きっと1行1行、みんなで話し合いながら、ああじゃないか、こうじゃないかと考えて作っていくんだと思います。
とはいえ、現段階でも、分からないなりに、最初から最後まで言葉に取り憑かれたようにどんどん読み進めたくなる感覚はあって。私の中にあるこの感情は一体何なんでしょう。それがある意味シルヴィア・プラスという人の魅力なのかなぁ。一言で言えば「面白かった」ということなんですけど、取り憑かれたような、見透かされたような、自分との新たな出会いもできたような、そんな感覚になる本でした。
富田麻帆
ーーその中で演じる役についても伺います。共感するところや演じる上でのポイントになりそうなところはありますか。
平野:彼女が残してくれたものに全部ヒントが込められていて。こんなにも当たり前のように言葉を紡いでいくのは、本当に非凡な人だなと思っています。でも、彼女は人生で9回死のうと思ったと詩に書いているんですよ。それはすごく矛盾していて……10年ごとに亡くなろうとしているので、ということは、人生100年計画で、ものすごく長生きしようとしているわけなんです。10年ごとに何かリセットが必要だったんですね。彼女の中に流れる感情の暗黒面を、海外だからなのかもしれないんですけど、すごくカラッと空虚な感じで客観的に見ている。そこがまた面白いなと思いながら、これから役作りをしていけたらと思っています。
富田:私の演じるヴィクトリアは、とてつもなく謎めきすぎていて、もうどうしたらいいんだろう……というのが、今の率直な気持ちです。シルヴィアの“鏡”というか、同じ道をたどっている部分がいっぱいあるのですが、一緒にいるようでいなかったりもして、本当に役の作り方によって見え方・感じ方が180度変わるような役だなと思っています。まだ稽古が始まる前なので、なんとも言えない部分はありますが、シルヴィアと同じく作家だったということで、いろいろ共通点はあると思うので、そんなところをヒントに、シルヴィアを通して見たヴィクトリア像みたいなところも考えながら、作品に深みを与えられたらと現段階では思っています。
平野:藤岡さんにこの2人の役の最初と最後を聞いたんです。詳しくはお楽しみだけど、私は、うわ〜!と思って!(笑)
富田:確かにね。最後はスッキリするはず。そんな気がしております(笑)。
ーー本作は「生き直しの願望」が一つのトピックかなと思うんですけど、その辺りで思うことはありますか。
平野 :少し前まで「人生は1度きりしかなくて、やり直しがきかないから頑張る!」みたいな発想が多かったと思うんですけど、最近は「人生は1回しかないから、何度でもチャレンジして、何度でもやり直せるよ」という方向に変わったと思っているんです。……ただ、シルヴィアが計画的にそれを考えられる心境がまだ完全には理解できていないです。そういう時でも、衝動的ではなくて、ちゃんと計画性があるんですよね。
富田:やり直したいなと思う瞬間って、誰しもあると思うんですけど、いざそれを、シルヴィアのように冷静に計画して、実践できるかという話で。そこには強さがあるなと思うんです。私は弱いから、いろいろなことを考えてしまって、何もできないと思うんですけど、シルヴィアはいろいろ考えた上で、その決断をしているんです。それは探究心なのかな。だからこそ、輝いている言葉を紡げるのかな。今、シルヴィア・プラスを知れば知ろうとするほど、素敵な自分に出会える気がしています。稽古場でもみんなで探っていけたらいいなと思います。
ーーお二人は付き合いが長いそうですね。あらためてお互いの印象などを教えてください。
平野:いや、もう子役の大先輩ですし、全ての子役が目指していた憧れの存在ですよ。昔の話をしていいのか分からないですけど、ミュージカル『アニー』のモリー役から、アニー役に昇格したすごい人だ!と(笑)。
富田:確かに、それはよく言われます(笑)。
平野 :私は子役としてはスタートが遅くて、『アニー』のオーディションも身長制限でダメで、1番年上のダフィしか受けられないと言われて……。だからもう憧れの塊です。それから何年か経ってから、まさかアニメの世界でご一緒するとは思わなかったですね。当時、アニメの世界に入りたてで、右も左も分からなくてオロオロしていたんですけど(笑)、私がキャストとして入った作品で、麻帆ちゃんが主題歌を歌われていたんですよ。もう居方(いかた)が違うし、本当に格好いいですよね。
富田:綾ちゃんが「Springs」というユニットを組んだときに、そのメンバーの一人が子役仲間だったことから、私は初めて綾ちゃんを認識しまして……なんだ、この可愛い子は!しかもセンターで!可愛い!!となってました(笑)。少し語弊があるかもしれないですけど、当時の子役って元気さえあればいい風潮があって、私も元気キャラで売っていたんですけど、その路線とは違って、こんなに美しい子がいたら、私は惚れてしまうと思いました(笑)。アニメの現場でご一緒したときもすごく華があって……! だからこうやってお会いできることがめちゃくちゃ素直に嬉しいですし、自分が成長していることも見せられるように頑張らなきゃなという感覚もあって、嬉しさと緊張といろいろな気持ちが混ざっています。
平野:しかも2人とも年齢も身長も一緒なんです。藤岡さんも、この二人だからこそやる意味がすごくあると思うと仰ってくださって、二人三脚でこの作品を作っていきたいなと思っています……!
富田:私もそう思っています! 本当によろしくお願いします!
ーー先ほどからお話が出ている演出の藤岡さんについても伺います。本作においてのオーダーなどはすでにありましたか?
平野:割と色々お話させていただいていて、人間ドラマにしたいんだよねと仰っていたことが印象に残っています。フィクションやファンタジーの方に安易に行きたくないし、もっと人間の中身を描きたい、と。作りたいものを明確にお持ちなので、もう私としてはそれに付いていくだけです。非常にありがたいことです。現場でも頼れるアニキだと思うし……お手製のラーメンをご馳走してもらうことが目標です(笑)
富田:それは絶対作ってくれると思う(笑)。私は藤岡さんと20歳のときに出会っていて、作品でご一緒したり、家が近かったりして、喋る機会が結構ありました。韓国だとこの作品は女性の演出家さんが演出されているので、「そこに男性目線も織り交ぜながら演出することになるし、それが俺が演出する意味だと思うんだよね」とおっしゃっていて。だから、どんな演出をされるのか、すごく楽しみです。
また、藤岡さんが頭の中で思い描いているものを言葉にしたときに、私はそれをキャッチするのが早かったらしくて。自分としてはそんな自覚はなかったんですけど、藤岡さんからは「汲み取りが早くて信頼しています」と言われて、そうなんだ!と思っているところです(笑)
平野:それは言ってました! 麻帆ちゃんは昔からよく知っていて、本当に信頼しているって。
富田:それはすごく嬉しいです! 藤岡さん自身、外部で演出するのが初めての作品で、そのタイミングで声をかけていただけたのは、やはり何かしら期待を持ってくれていると思うから、その期待にはちゃんと応えられる自分であり続けたいですよね。きっといろいろなアイデアを求めていると思うし、キャスティングを見るといろいろアイデアを出せる人間が集まっていると思うので、みんなで作品を作り上げていきたいですね。そして、一人も欠けることなく、千秋楽まで駆け抜けられたらいいなと思っています。
ーーますます楽しみになってきました。最後に観劇を楽しみにされているみなさんに、一言いただけると幸いです。
平野:昨今、短期とはいえこれだけの公演回数をシングルキャストでやらせていただけることがすごく有難いですし、挑戦だと思っています。自分にとってこれだけ大きなチャンスをいただけたのがすごく嬉しいし、藤岡さんも「絶対当たり役になると思う」と言ってくださっていて……。私自身、主演をやらせていただくのがかなり久しぶりなので、今できることを精一杯全力でぶつけていきたいです。
シルヴィア・プラス自身、女性からの共感がものすごくあったり、作品自体も今の世の中を表していると思うので、少しでも興味を持っていただけたら。「早割」みたいな制度があって、
富田:日本の演劇で、これぐらいのキャパシティーだと、だいたい5日間〜1週間ぐらいで終わってしまう舞台がほとんどだと思うんですけど、今回は1カ月もあるんですよ! 開幕直後に来て、また千秋楽間近に来てもいいですし、「都合がつかなかった」は言い訳になりません(笑)、ぜひ興味を持っていただけたら気軽に観に来てほしいですね。大劇場の公演だと「きっちりしなきゃ」と敷居の高さを感じる人もいると思いますが、その点小劇場はもっとラフに観に来られると思います。
あらすじとか含めて、なんか重た〜いイメージあると思いますけど、ミュージカルということで音楽を聞きに来るだけでもいいですし、自分を見つめ直してみたいなと思ったときにちょうどいい作品なのかなとも思います。ぜひ遊びに来てください!
平野:そうね。思っているほど、暗くないと伝えておきたいね!(笑)
富田:そうそう! 特に前半は結構ラフだよね!(笑)
平野:明るい気持ちで観ていただける作品だと思います! 劇場でお待ちしています!
取材・文=五月女菜穂 撮影=池上夢貢
メイク=中山麻美(平野綾)、田中エミ(富田麻帆)
スタイリスト=鈴江英夫、越田真奈(平野綾)
公演情報
LiteraTheater vol.2 ミュージカル『シルヴィア、生きる』
日程:2026年4月2日(木)~4月26日(日)
会場:ザ・ポケット(東京・中野)
作曲:キム・スンミン
日本語上演台本・訳詞:吉田衣里
演出:藤岡正明
出演:
シルヴィア:平野綾
ヴィクトリア:富田麻帆
テッド:鈴木勝吾
アルバレス他:伊藤裕一
ルース他:原田真絢
演奏(pf):久田菜美 井村玲美
製作支援:杉本事務所
企画・製作・主催:conSept
ステップ・プライス:https://consept-s.com/step-price
ステプラ=ステップ・プライスとは、
(平日 12:00~17:00)
ハッシュタグ:#シルヴィア生きる
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