心ときめくスリリングなダンスカンパニーDAZZLE『鱗人輪舞(リンド・ロンド)』ゲネプロレポート
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舞台写真
DAZZLEは、1996年に明星大学在学中の長谷川達也と宮川一彦を中心に結成されたダンスカンパニーだ。彼らは「すべてのカテゴリーに属し、属さない曖昧な眩さ」をスローガンに、映画・コミック・ゲームなどからジャパニーズカルチャーの要素を積極的に取り込んだ物語に、コンテンポラリーダンスから伝統的なダンスまでを融合させた、オリジナルな存在として世界でも高く評価されている。そんな彼らが、結成20周年を記念した新作『鱗人輪舞(リンド・ロンド)』を10月14日(金)から23日(日)まで池袋・あうるすぽっとにて上演する。今回は、初日に行われたゲネプロの様子をレポートする。
開演直後、DAZZLE(長谷川達也、宮川一彦、金田健宏、荒井信治、飯塚浩一郎、南雲篤史、渡邊勇樹、高田秀文)のメンバーが横一列に並び、神妙な面持ちで「君たちには投票権がある」と観客に問いかけ舞台が始まる。
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緊張感が高まるなか、ステージが暗転。重厚な照明と共に、彼らは一心不乱に踊り始め、この舞台のダークな世界観を表現し始めた。一部の隙もなくダンサーが、絡み合い、ジャンプし、時にはもつれ、そして激しく律動する。統制のとれたダンスに圧倒された。
フォーメーションは完璧だ。ダンスは感情豊かで、怒り、喜び、悲しみ、それらを目紛しく表現し、一息もつくことなく彼らの踊りに目を見張ってしまい、思わず客席で前のめりになってしまう。
コンテンポラリーダンスも、ブレイクダンスも、歌舞伎役者の坂東玉三郎が演出した『バラーレ』(2015年)で磨き上げられたのだろうか。伝統的な踊りも取り入れた、見たことのないようなまったく新しいパフォーマンスだった。
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彼らが踊り終えると、緊迫した状態のまま物語が展開していった。大気が汚染され、海も枯れ果てたディストピアな世界を舞台に、人々が水を奪い合う殺伐とした環境で人を信じられなくなったロンドと、千年もの間生きながらえた人魚のリンドが出会うところから物語は始まる。
ロンドは、水の朽ちた街で唯一、水の出る井戸を牛耳る男の息子だったが、とある陰謀に巻き込まれ父親殺しの汚名を着させられ逮捕されてしまう。
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一方リンドは、あるきっかけで人魚になり、地下水のありか、つまり井戸の場所がわかるという特殊な能力の持ち主だ。
そんな彼らが困難を迎えるたびに喧嘩をし、和解をしながらストーリーが進行していく。彼らは、荒んだ環境で生きることを余儀なくされ、他人の思惑や悪意に晒されながらも、手を取り合いなんとか生きながらえていく。現代の世界に満ちている暴力や悪意を、言葉よりもダンスで体現していた。
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そして二人は運命の糸に引き寄せられるように、街を揺るがすような事件を起こすのだが……。そこで待っていた結末とは?
本作は、DAZZLE史上初の観客参加型のマルチエンディング方式が取られている。思わず唸ってしまうような仕掛けが待っているので、これは直接劇場で体験することをおすすめする。
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結成20周年だけに役者一人一人の体から発する熱量がみなぎっていて、こちらも体が自然と汗ばんでくる。痛みに満ちた世界観の中で、彼らの踊りやセリフと、リンドとロンドの胸が疼くような悲しいストーリー展開に、思わず心が震えてしまう。一度足を踏み入れれば、観客は『鱗人輪舞(リンド・ロンド)』の一員になってしまうのだ。
特筆するのはダンスだけではない。今回の舞台で音楽プロデュサーを務めた、林ゆうきの音楽の存在である。近未来の機械文明の荒廃した街を象徴するようなインダストリアルな曲や、リンドやロンドの感情に寄り添った荘厳なストリングスの曲はひときわ輝いていた。それらを作曲した林を含む4人のメンバー(奥野大樹、小畑貴裕、深見有沙、吉村駿也)が奏でる音楽は、悲劇的な世界に差し込む希望の予感を見事に表現していた。
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以前、長谷川が林のことを「新体操経験者ということで、パフォーマンスのことが分かっていることが大きい」と話していたように、ダンスを際立たせるための構成が成されているのだ。
なかでもオープニング後に流れる「CIMERA」という曲は、荒廃した都市のイメージを見事に描写していた。今回の舞台で使用されている楽曲は、どの曲も捨て曲なし。音楽も本作の魅力になっている。
さらに、彼らが絶大な信頼を寄せる矢鍋智子は、2004年以降、彼らのすべての単独公演の照明を担当している。彼らのダンスやセリフを、時には目を凝らさなければわからないほど暗く、激しいダンスシーンではパッと明るくまぶしいほどの光量で、舞台のスペクタクルを表現していた。
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シーンの重要なところではプロジェクションを取り入れ、現代的な要素も十分に兼ね備えつつも、荒廃した世界を演出していたその技術にも頭が下がる。幽玄的で、どこか幻想的。それは彼らが今作で提示したかったテーマが明確であるからだと思う。
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ダンスだけでなく、演出、照明、音楽、すべてが一つになったこの舞台は、スタッフと演者の信頼感が満ちている。彼らは20年の歴史を積み重ね、日本で唯一無二のカンパニーになっていた。
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ぜひ彼らの絆で結ばれたカンパニーが織りなす新感覚のダンスや音楽を体験してみよう。きっとあなたの心にある希望を見つけられるだろうから。
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(取材・文・撮影:竹下力)