ウィーン国立歌劇場2016年来日公演の開幕記者会見をレポート

2016.10.26
レポート
クラシック

左より)ドミニク・マイヤー総裁、ステファニー・ハウツィール、マレク・ヤノフスキ、グン=ブリット・バークミン、ダニエラ・ファリー、ステファン・グールド


2016年10月24日、ウィーン国立歌劇場2016年日本公演開幕記者会見が、東京文化会館大ホールの舞台上、『ナクソス島のアリアドネ』の舞台セットの中で、ひらかれた。記者たちは、ベヒトルフ演出の『ナクソス島のアリアドネ』で登場人物たちが劇中劇を観るその席に座らされる。見上げるとザルツブルクでの上演でも使われたスワロフスキーのシャンデリアがきらめく。

9回目となる今秋のウィーン国立歌劇場日本公演では、R.シュトラウスの『ナクソス島のアリアドネ』(ヤノフスキ指揮)、ワーグナーの『ワルキューレ』(アダム・フィッシャー指揮)、モーツァルトの『フィガロの結婚』(ムーティ指揮)が上演される。この日の会見には、今回のツアーの開幕を飾る『ナクソス島のアリアドネ『の出演者たちが出席した。

ウィーン国立歌劇場総裁ドミニク・マイヤーは、「モーツァルト、ワーグナー、R.シュトラウスという、我々の中心となるレパートリーを持って来ました。『ナクソス島のアリアドネ』は、今回上演する第2版(改訂版)が1916年10月にウィーンで初演されてからちょうど100年にあたります」と語る。

ドミニク・マイヤー ウィーン国立歌劇場総裁

『ナクソス島のアリアドネ』を指揮するマレク・ヤノフスキは、今夏のバイロイト音楽祭の『ニーベルングの指環』で大きな成功を収めたばかり。「東京・春・音楽祭」でもNHK交響楽団とともに『ニーベルングの指環』に取り組んでいる。

「ウィーン国立歌劇場日本公演を指揮できるのはたいへん名誉なことだと思います。『ナクソス島のアリアドネ』の第2版では、特に、プロローグで、ホフマンスタールの書いた見事なテキスト(歌詞)にインスピレーションを受けたシュトラウスが作曲した音楽が素晴らしいのです。バッカス役は旬で歌えるテノールが数少なく、アリアドネ役は低音域から高音域までとても難しく、ツェルビネッタはコロラトゥーラで、超絶技巧とカンタービレを必要としますが、今回はここにいる素晴らしい歌手たちと最高のクオリティでお聴かせします。オーケストラは、約36名の室内楽のような編成です。全員がソリストとして演奏しなければなりません。名高いウィーン・フィルと同じメンバーで構成されるウィーン国立歌劇場管弦楽団と一緒に演奏できることをたいへんうれしく思います」

マレク・ヤノフスキ

プリマドンナ&アリアドネ役はグン=ブリット・バークミン。2012年のウィーン国立歌劇場日本公演の『サロメ』でタイトル・ロールを歌いセンセーションを巻き起こした。今回もまたR.シュトラウスのオペラでヒロインを担う。

「またウィーン国立歌劇場の日本公演で、今度は違うシュトラウスの作品で、東京のみなさんに聴いていただけることがとてもうれしいです」

グン=ブリット・バークミン

ツェルビネッタ役のダニエラ・ファリーは、「私は4度目の来日です。これまでにウィーン・フォルクスオーパーやバイエルン国立歌劇場と日本を訪れましたが、今回は私の故郷であるウィーンの国立歌劇場とともに来られて、とてもうれしく思っています。私のツェルビネッタを聴いていただけるのが楽しみです」という。

ダニエラ・ファリー

作曲家役のステファニー・ハウツィールは、「私は初めての来日で、ワクワクしています。オペラでは男性役、いわゆるズボン役を演じます。音楽への理想に燃え、音楽への愛、ツェルビネッタへの愛を抱き、そして失望していく作曲家役を歌えるのを楽しみにしています」と述べる。

ステファニー・ハウツィール

テノール&バッカス役のステファン・グールドは、世界のワーグナー上演に欠かすことのできない、現代を代表するヘルデン(英雄的な)・テノール。新国立劇場や「東京・春・音楽祭」への出演により、日本でもお馴染みである。当初、テノール&バッカス役はヨハン・ボータが歌うことになっていたが、彼が9月8日に急逝したため、グールドが急遽、代役を務めることになった。

「みなさんご存知のように、私は9月から東京にいて新国立劇場の『ワルキューレ』でジークムントを演じました。そして台湾に行って、一昨日、台中でマーラーの『大地の歌』を歌い、また東京に戻ってきました。

私はウィーンに住んでいますので、ウィーン国立歌劇場とこのような機会に歌えるのはとても名誉なことだと思います。来日は10回目になります。しかし、今回どうして私がこのようにバッカス役を歌うようになったかを考えると、悲しくなります。ヨハン・ボータさんは私の友人でもありました。ボータさんの代わりは難しいと思います。でも、このプロダクションのウィーンでの初演を歌ったのは私です。私はこの作品や演出をよく知っています。私は、尊敬するボータさんの代役ではなく、東京でまたオリジナルな気持ちで歌いたいと思っています」

ステファン・グールド

(取材・文:山田治生 撮影:鈴木久美子)

公演情報
ウィーン国立歌劇場
 
『ナクソス島のアリアドネ』(プロローグ付1幕) R.シュトラウス作曲
■会場:東京文化会館大ホール (東京都)
■日程:2016年10月25日(火)~2016年10月30日(日)
■指揮:マレク・ヤノフスキ
■演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
■出演:
プリマドンナ/アリアドネ:グン=ブリット・バークミン 
ツェルビネッタ:ダニエラ・ファリー 
作曲家:ステファニー・ハウツィール 
テノール歌手/バッカス:ステファン・グールド 

 
『ワルキューレ』(全3幕) R.ワーグナー作曲 (≪ニーベルングの指環≫第1夜)
■会場:東京文化会館大ホール (東京都)
■日程:2016年11月6日(日)~2016年11月12日(土)
■指揮:アダム・フィッシャー
■演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
■出演:
フリッカ:ミヒャエラ・シュースター
ブリュンヒルデ:ニーナ・シュメンテ
ジークリンデ:ぺトラ・ラング
フンディング:アイン・アンガー
ヴォータン:トマス・コニエチュニー
ジークムント:クリストファー・ヴェントリス

 
『フィガロの結婚』(全4幕) W.A.モーツァルト作曲
■会場:神奈川県民ホール 大ホール (神奈川県)
■日程:2016年11/10(木)~16/11/15(火)
■指揮:リッカルド・ムーティ
■演出:ジャン=ピエール・ポネル
■出演:
伯爵夫人:エレオノーラ・ブラット
スザンナ:ローザ・フェオーラ
ケルビーノ:マルガリータ・グリシュコヴァ
アルマヴィーヴァ伯爵:イルデブランド・ダルカンジェロ
フィガロ:アレッサンドロ・ルオンゴ

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