ミュージカル『八犬伝―東方八犬異聞―』二章に出演、安里勇哉に訊いた

2016.11.4
インタビュー
舞台

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『ミュージカル『八犬伝―東方八犬異聞―』二章』の開幕がせまってきた。ファンから「ミュ八犬伝」と略されるのも、初演が多くのファンのハートを鷲掴みにして好評を博したからだろう。原作は、雑誌『エメラルド』で連載中のあべ美幸の同名コミックで、現在は15巻まで発売されている。2013年にはTVアニメ化もされた人気作だ。
 
犬塚信乃や犬川壮介ら8つの玉に導かれた若者たちが、自らの信念を貫き通そうと、もがきながら共闘していくファンタジー。
SPICEにて早くから注目していた舞台の続編だけに、稽古前というタイミングであったものの、インタビューを敢行した。今作では、舞台の中心人物になるであろう犬阪毛野役に抜擢され、『弱虫ペダル』、『黒子のバスケ』などの舞台でも強烈な個性を放つ安里勇哉に直撃取材を行い、役どころや舞台の見所について大いに語ってもらった。

――原作の『八犬伝―東方八犬伝異聞―』は、現在15巻まで続いており、アニメ化、さらには舞台化もされている人気コミックです。安里さんは今回の続編からの登場となります。プレッシャーはありますか。

そうですね。プレッシャーより楽しみの方が大きくて。もちろんプレッシャーもあるんです。でも、初演の「ミュ八犬伝」が、みなさんにすごく人気で評価を得ているし、原作も15巻まで続いているので、原作の力と初演のパワーをもらって楽しんでやりたいですね。初演のメンバーからもいろいろ話を聞かせてもらって、初演の時は現場も熱くて、学ぶこともあったと聞いたので、稽古場から楽しみです。

――今回の作品を引き受けるにあたっての決め手となったもの。あるいは原作をご覧になって感じたことはありますか。

僕は二章の出演が決まってから一作目を観たんです。もともと僕自身は歌が好きで、ミュージカルということで、そこでトキメキつつ……。

原作の『八犬伝』は「妖(あやかし。主人公たちに取り憑いた異形の存在)」だったり、漫画やアニメもそうなんですけど、綺麗な感じなんです。なんていうのかな、例えば「村雨(むらさめ)」が現れるところが、舞台上で綺麗に表現されて、それはパフォーマーの皆さんが肉体で表現されているのですが、すごく画面越しでも伝わってきて。生で観ておいたらよかったと思うぐらい、エネルギーが伝わってきました。

みんなでこの作品を盛り上げていこう、楽しんでいこうというのが伝わってきて、第二弾の新メンバーとして参加できるのが嬉しいですね。

――近年、漫画を原作にした舞台ではプロジェクション・マッピングを扱うことが多い気がしますが、この舞台は体当たりで演じている感じがしますね。

舞台役者として、1カ月間、2カ月間を稽古してきて、千秋楽を迎えた時の達成感、みんなで作り上げてきた感が映像作品と違った醍醐味です。

1個のプロジェクトの「学校」というか、みんなで頑張って作って「卒業」するということをより感じます。

役者としてすべてを肉体で表現する。たしかに、僕が出演した原作ものの作品で流行りのプロジェクション・マッピングを使用していて「すごい!」と思ったりします。ですけど、肉体で表現する役者の力を、スタッフさん、演出家さん、みんなが信じて、身体だけで表現しようというのは、すごくやりがいもあって、僕は好きです。

――なるほど。

大変ですけどね(苦笑)。どういう風に見えてるんだろうという意味では、「ミュ八犬伝」は初演で、認めていただいているので、僕ら新キャストは浅井さんの演出方法を信じて、身を投げ出して、一生懸命やろうと思いますね。

――犬阪毛野は、女性とも見間違う美貌の持ち主という役ですが、ご自身が演じるにあたって、気をつけていることはありますか。

いやー、これはもうメイクさんの力を信じて(笑)。本当に難しい。衣装をビジュアル撮影の時に着させてもらったんですけど、巫女さんみたいな格好をさせてもらいました。普段のお仕事は、それを着て踊る能楽師という役どころなんです。今回は舞台上に女性キャストの方々がいらっしゃるじゃないですか。

――はい。

たぶん横には九重(ここのえと読む。妖の夜叉姫。)がいると思うんですけど、僕がとなりにと並んだ時にどう見えるかですね。すごい長髪なんですよ。しかも綺麗な金の色をした髪で、だけど声は男なんですよね。

原作では(犬田)小文吾が結構長い間、男であるということに気がつかないので、そこは小文吾役の畠山遼くんに、心の底から僕が女だって思ってもらわないと。初めての長髪ですが、着物はユニット(TOKYO流星群)で着慣れているので、みなさんには着物ならではの所作の美しさや、日本人ならではの見せ方で魅せれたらなと思いますね。

――おっしゃられた通り、役どころは能楽師。微妙な所作がとても大切なような気がします。

舞台上でどれだけ動いたり、どれだけダンスするのかは、今の段階(稽古は取材後に始まる)ではわからないんです。ただ、転んだりすることは絶対に避けたいですね。

――たしかに。

例えば、美しくみせるには、どうするか、浅井さやかさんと話していきたいですね。女形をやっている役だとすれば、内股で歩いたり、そういう所作や女形ならではの踊りがあるんです。でも、毛野はすごい美貌の持ち主だと間違われているだけで、どちらかというと今回出てくるキャストの中では割と男っぽい方だと思うので、九重さんの隣に立つかもしれないですし、どういう風に見せるのかは、稽古が始まったら考えたいですね。

――さらに、蒼(あおと読む。犬川荘介と瓜二つの顔をした荘介の影。)に家族を殺され、彼に憎しみをもつ存在となります。かなり心境的に複雑な役ですが気をつけたことは。

そこはもう全力で倒しに行くつもりで(笑)。そうですね。登場人物みんなそうなんですけど、心の中に何かしらの傷を持っていて、僕はほんとに蒼に対して復讐心しかないんです。ただ、「絶対に復讐してやる」ということがありつつも、みんなと出会うにつれて、また違った一面が見えてきます。

舞台では犬川荘介と蒼は、松村龍之介が演じるんですね。そうしたら、のすけ(松村龍之介の愛称)も相当大変だと思うんです。初演を超えるつもりで、たぶん挑んでくると思うんです。しかも今回、顔は一緒なんですけど、性格は全く違うという一人二役を演じるので、蒼の想いとかそこはのすけと話していきたいですよね。

――コミュニケーションを図って。

そうですね。のすけとは、プライベートのコミュニケーションはとれているので、そういった意味でも、割とすんなりと役どころの話ができると思います。まだ脚本をもらっていないのでわからないですが、話の流れの中でも、まずは荘介と僕が出会って、蒼と勘違いをして……そういうところが描かれると思うので、そこは話し合って芝居を楽しみたいなと思っています。

――九重という妖は宝塚の帆風成海さんが演じますが、お会いした時の印象は。

ビジュアル撮影の時に少しだけお会いしまして、ご挨拶させていただきました。宝塚の方なので、やはり、歌やミュージカルにことおいては、トップというか、超一流の方だと思うので、胸をお借りするわけじゃないんですけど……役どころも毛野の心臓は九重の心臓なので、命の恩人。九重(帆風)さんとも、どれぐらい舞台で歌うかわからないですけれど、わからないことがあったら、いっぱい聞かせてもらったり、力をお借りして一緒に犬阪毛野と九重という2個1の存在感を舞台上で出していきたいですね。

――お二人のキャスティングを見ていると、歌うことがとても大切な役どころのような気がします。

歌もダンスもそうですけど、歌は人を感動させられるコンテンツの1つだと思うので、もしかしたら、2人で歌ったりとか、あるのかな? そうなってくると、逆に負けじと……いやー、負けるんだろうな(笑)。僕も負けない気持ちで歌ったり、いろんな表現方法があると思うので、早くお話してみたいですよね。

――出演者のみなさんで一言づつ歌詞を考えた「MY WISH」という曲があるそうですね。

そうなんですよね。今回のメンバーで「MY WISH」はあるのかな? 浅井さんとはまだお会いしていないので、初演を観てもわかる通り、20何曲もあって、それだけで盛りだくさんになるので、うまくお芝居を歌と絡めつつみせていけたらいいなと思っています。

――浅井さんに期待されるところや望んでいるところはありますか。

演出・音楽が一緒だというのは珍しいですよね。浅井さんは演出にしろ、音楽にしろ、すごい熱い人だと聞いているので。

――ぶつかり稽古みたいな。

そうやって話合ってくれる人だと聞いているので、僕はこう思うということを一回お伝えして、話し合っていきたいと思うので、それは楽しみです。割となんでも話せますね。

――安里さんはいろいろな方と打ち解けられる性格なんでしょうね。

もちろん、僕らは役者なので、最終判断は演出家さんに任せて、試すというかチャレンジするものを持って行ってみせる。でも、演出家さんとお話できる稽古場環境は、役者にとってすごいありがたいです。

――脚本の話になります。脚本のほさかようさんは、生と死というとても大きなテーマをモチーフにすることが多いように思います。今回も、なぜ生きるのかということがテーマになっているように感じられました。そういったテーマを演じるにあたって気をつけていることはありますか。

蒼に殺されて心臓を抜かれ、九重の心臓を入れて生き返るというのは現実の世界では実際に不可能なことなんです。でも、僕は、基本的になんでもそうですが、自分の中に置き換えて、キャラクターをリンクさせて、僕だったらどう思うんだろうなと想像します。今まで毛野のように復讐してやると思った事は実際にはないですが、例えば、両親が殺されたり、家族を殺されたというのを想像した上で、どういう風に表現していくのかとなるんです。

――なるほど。

僕は話を聞いたんですけど、犬飼現八役の前内孝文さんがそうだったんですね。前回、敵に囚われているところからのスタートですが、ずっと袖で何分前から袖の灯りを消して、一人で役に入るっていうのを聞いて驚きました。

――(笑)。

僕も似たようなところがあって、1回役に入っちゃうと、ずっとその役でいるわけじゃないんですけど、その時は本当にその役ばかり考えているので。

――なるほど。役に没入していくんですね。

そうですね。ただ、毛野には九重という家族同然の存在がいて、それでもなお、蒼に対しては復讐心を持っているという、すごいピンと張った糸みたいな精神状態を保ちつついるのは、どんな精神状態なんだろうと思いますね。舞台ではどう描かれるかまだわかりませんが、稽古が始まるのが楽しみです。

――ご自身ではバンドを組んでいたり、キーボードを演奏されて、ビートルズのカバーもやっていますね。そのあたりで役立ったことはありますか。

昔から歌が好きだという意味では、確実に役に立っていると思います。楽しみながら歌える自信があって、歌うことが好きということが前提で、お客様にも伝わっていく感動があると思いますし、母親が歌好きだったんですよ。

ちっちゃい頃からよくカラオケに行ったり、歌を聞いたりしていて、僕は沖縄の出身なので、周りにおじいちゃんが三線弾いていたり、そういった環境はありがたいですね。

――では、最後にSPICEの読者に、今回の見どころ、意気込みなどをお願いいたします。

初演を観て頂いた方はわかると思うんですが、とてもパワフルな作品で、かつ、繊細さや全体の雰囲気が綺麗な世界観を持っています。なので、伝えるところは伝える、見せるところは見せる、といううまくバランスのとれた作品になっているので、今回から観るという方でもとても楽しんで頂けると思います。

今回新しいキャストが半分ぐらいいるけれど、初演からいる方達の力を借りて、そして『八犬伝』というもともと持っている作品の力を借りて、初演を超えるような、作品にしたいと思っています。みなさん、11月23日(水)から27日(日)は、スペース・ゼロでお会いしましょう。

公演は、11月23日(水)から27(日)まで全労済ホール/スペース・ゼロにて全8公演。彼の声ひとつひとつに耳を傾けて、あなたも「ミュ八犬伝」のファンになりませんか?

(取材・文・撮影:竹下力)

プロフィール
安里勇哉(あさと・ゆうや)俳優。1987年12月4日生まれ、沖縄県出身。
ショーボーイズ、TOKYO流星群のメンバー。主な舞台出演作にミュージカル『DEAR BOYS』、『ベースボーーール ハムレット!』、『DIABOLIK LOVERS』など。2016年も『神様はじめました THE MUSICAL♪2016』、『リバース☆ボーイ』、『黒子のバスケ』、『明治東亰恋伽~朧月の黒き猫(シャノワール)~』、『泪橋ディンドンバンド』などに立て続けに出演。
『弱虫ペダル』では舞台版、TVドラマ版(BSスカパー!)ともに寒咲通司役を演じている。

 

公演情報
ミュージカル『八犬伝―東方八犬異聞―』二章​
 

⒞2016 あべ美幸/株式会社KADOKAWA「八犬伝―東方八犬異聞―」 ⒞2016 あべ美幸・株式会社KADOKAWA/古那屋一座

■日時:2016年11月23日(水・祝)~27日(日)
■場所:全労済ホール/スペース・ゼロ
 
■原作:あべ美幸「八犬伝―東方八犬異聞―」(株式会社KADOKAWA発行/ASUKA COMICS CL-DX刊)
■脚本:ほさかよう
■演出・音楽:浅井さやか
 
■キャスト
犬塚信乃:坂口湧久
犬川荘介・蒼:松村龍之介
犬飼現八:前内孝文
犬田小文吾:畠山 遼
犬阪毛野:安里勇哉
犬山道節:山本一慶
浜路:田上真里奈
九重:帆風成海
琥珀:岡村さやか

 
■公式Twitter:@Mu_hakken_den