田代万里生、ホリ・ヒロシ、浅野 祥が語った ~ ジャンルを越えて、ここでしか味わえないコラボ『Clementia』シリーズ第3弾!

2016.11.16
インタビュー
クラシック
舞台

左から 田代万里生、ホリ・ヒロシ、浅野 祥


 2014年にダンサーの大貫勇輔とマリンバ奏者のSINSKEという意外な顔合わせでスタートした『Clementia』シリーズ。2015年には、この二人にさらに宮尾俊太郎(バレエ)、尾上菊之丞(日本舞踊)、藤原道山(尺八)という各界の第一人者が加わり、刺激的で豊かなコラボレーションを披露して喝采を浴びた。その『Clementia』シリーズが今年、新たな顔合わせで第3弾を企画。今回は第1弾から引き続き出演する大貫に加え、田代万里生(テノール、ピアノ)、ホリ・ヒロシ(人形舞)、桑山哲也(アコーディオン奏者)、浅野祥(三味線プレイヤー)、クリヤ・マコト(ジャズピアニスト)という、さらにジャンルの枠を大きく超越した面々が集うことになった。本格的な稽古を前に、田代、ホリ、浅野の3人に『Clementia』第3弾はどんなステージになりそうか、話を聞いた。


――みなさん、このシリーズには初参加ですね。

田代 はい。僕は大貫くんに振付をしてもらったこともあるし、仕事の関係性では近い位置にいるのに、これまでがっつり共演したことがなかったんです。だけどお互いの舞台はもちろん観ていますので、一番うってつけだと思って声をかけていただけたんじゃないでしょうか。

ホリ 僕はみなさんと初共演になるんです。田代さんのことは『エリザベート』を拝見していますが、観客として観ていただけなので、まさかこういう形で出会えるとは思いもしていませんでした。今回のメンバーでは浅野さんが一番若いんですよね?

浅野 はい、そうです。

ホリ YouTubeで浅野さんの三味線演奏を聴いたら、あまりにもエネルギッシュだったのでショックを受けましたよ。人形は声を持たないですから、今回は田代さんの声、あるいは浅野さんの弾く三味線の音が人形の魂の声になるわけです。お二方だけでなく今回の出演者のみなさんがそれぞれ力になってくださったら、きっと面白いものができるはずだと思いますね。

浅野 僕は実は14、15歳の時にたまたまですけど、クリヤ・マコトさんがツアーで僕の地元にいらした時に声をかけていただいて、何度かセッションしたことがあるんです。でも他のみなさんは、僕の中では映像や舞台上でしか見たことのない方々ばかりで。今回、そんな一流のみなさんと一緒に1から作品を作れるなんて、本当にうれしいです。

浅野 祥

――今回も二幕構成で、一幕ではストーリーのあるお芝居を、二幕ではいろいろな組み合わせでコラボレーションをやられるとか。

浅野 そうみたいですね。僕は大衆演劇に何度か出演させていただいているので、セリフをしゃべるということ自体は経験があったりします。大根ですけど(笑)。三味線を弾きながら殺陣をやったこともありますし。

田代 ええ~、それはすごい!(笑)

ホリ 必殺仕置き人みたいじゃないですか!

浅野 ハハハ、でもそれでごまかしていただけで。それが今回はロック好きの若者という役柄で、セリフもあるみたいで。

――ご自身に近い役柄、という感じですか。

浅野 ゆとり世代の象徴みたいな設定なので、完全に僕ですね(笑)。役が半分、自分半分という感じなので、どこまで表現できるか。

田代 役名はみんな自分の名前、そのままなんですよ。僕だったら漢字で田代万里生ではなくて、カタカナで“マリオ”ですけど。だから半分は演じている部分ですが、半分はアーティストとしてみんなが普段表現している部分なので、それが混ざった感じになるのかもしれないから面白そうですよね。

田代万里生

――その中に、ホリさんが遣うお人形も加わってくるわけですね。ちなみに今日お持ちいただいた、このお人形のお名前は?

ホリ 人形はそれぞれ舞台の役名をつけて作る場合と、抽象的なイメージから作る場合があって。今日持ってきたこれは“鳳凰(ほうおう)”です。鳳っていうのがオスで、凰っていうのがメスなので、鳳凰というのは雌雄合体ということなんです。つまりは光と影とが一緒で、陰陽一体、善悪もひとつということで“調和”をイメージしているんです。『Clementia』とは“相受け入れること、寛容”という意味ですから、この人形が合うかと思ったんですよ。しかも、ちょうど来年は酉年ですしね(笑)。鳳凰が飛ぶことは吉祥の兆しでもあると昔から言われていますので、この12月の年納めの時季に来年に向けて羽ばたく姿を見ていただいて、新しい年を迎えていただけたらと思います。

ホリ・ヒロシ

――お芝居の中では女性として登場するんですか?

ホリ 一幕の劇中で遣うのはこれとは別の人形なんですよ。万里生さんの頭の中のイメージというか、回想の女という感じかな。

――では、何体も遣われるわけですね。

ホリ まだハッキリ詰めてはいないんですが、おそらく5人の共演者それぞれに似合う人形を遣いたいと思っています。今回の構成、演出、振付は川崎悦子先生なんですが、本当に思わぬ発想が出てくるんですよ。相手役の人に人形の手を遣わせながら一緒に踊る、とかね。先日、先生とチラッとお話していたんですが、どうやら人形を奪われて、僕だけひとりぼっちで残されるかもしれなくて(笑)。

田代・浅野 ハハハハ!

ホリ こんなこと、自分では決して考えられないので。禁断の手、ですよね。

――ご自分の中で、今回これはチャレンジだなと思っていることは。 

田代 さっきも言っていた一幕のお芝居の部分ですね。半分演じて半分リアルという感じが、自分としては今までやったことがないので。あとは、音楽のジャンルもやったことがなかったり、単純に初めて挑戦する新曲が多いんです。ホリさんとのコラボレーションでは『トスカ』の『歌に生き、恋に生き』という、歌姫トスカが歌うアリアがあるんですけど、それを男性の僕に歌ってほしいとホリさんが提案してくださって。女性の曲を歌ったことは何度かありますけれども、『トスカ』の大アリアを男性が歌うというのは聞いたことがないですし、それに合わせて人形が舞うなんて自分からは生まれなかったアイデアですし。これこそ『Clementia』を象徴するナンバーになるんじゃないかなと思ったりもして、新しい自分に出会えそうだなと思っています。

田代万里生

ホリ そうそう、実は浅野さんもビックリするくらいいい声なんですよ。

浅野 (発声練習風に)あー、あー(笑)。

一同 (笑)。

田代 じゃ、デュエットしようか。

浅野 お許しが出れば、ぜひ(笑)。

浅野 祥

――ぜひ、していただきたいです(笑)。

ホリ 川崎先生によると、これまでは男たちだけでやっていたこの『Clementia』に、女がひとりでも入ると不協和音になってしまいそうだから、今回は人形でというアイデアを出してくださったみたいなんです。ですからこの5人の男に対して、5人の女を僕が色分けをしながら遣っていければと。そういう意味では今まで僕の舞台を観てくださっていたお客様にはすごく新鮮でショックかもしれないけど、きっと喜んでいただける舞台になるんじゃないかな。とても贅沢な作り方で、これだけの大作を、それも新作で上演するなんてことは今の時代、なかない機会ですしね。

ホリ・ヒロシ

浅野 僕の中では、表現という部分が一番の課題だと思っています。技術は誰にも負けないぞという自負はもちろんあるんですけれど、やっぱり音楽は技術だけではないですしね。今回もホリさんや万里生さん、そして大貫さんたち、表現者の皆さまとご一緒に作品を作らせていただく中で、たとえばこの動きに対してどういう三味線の音色をつけたらもっといい融合ができるのかなとか、そういった刺激をたくさんいただきながら、僕もぶつけていきたいです。ワクワク感もすごくありますし。そこが一番の挑戦だなとも思っています。

ホリ この6人の顔合わせって、この『Clementia』という公演がなければ実現しなかったかもしれないですよね。そんな6人の、別々のところで磨いてきた力をひとつにするということは、6倍ではなくて6000倍になるかもしれなくて。

田代・浅野 アハハハ!

ホリ そういう力が生まれると確信しつつ、相手を受け入れながら自分の良さもそこで引き出してもらいたいですよね。本当に皆さん、とてもあったかい方たちばかりですし。きっと、アツい舞台になるんじゃないかなという予感があります。前回の第2弾は物語としては『桃太郎』がベースでしたが、今回はもっと愛の世界というか。それも大人の、官能美みたいな、そういうところが表現できればなとも思うんです。R-18指定にしてもいいくらいのね(笑)。

田代・浅野 おぉ~(笑)。

ホリ 僕だけでなく、みなさんの禁じ手も披露して、これまで開けたことのない扉をそれぞれがチラッと見せてくれたらいいですよね。

――他のステージでは見られないものがたくさん目撃できそうです。

浅野 この『Clementia』は、誰も見たことがない、演じる側の私たち自身でさえもまだ見たことのない景色が観られる舞台だと思います。ぜひ、いろいろな概念を取っ払って遊びにいらしていただきたいなと思いますね。

田代 今までやったこともなければ、今後もやらないようなパフォーマンスもありますから。今回の『Clementia』を観に来ないともう観られないものや、きっとこの舞台でしか歌わない曲も絶対にありますしね。これを見逃したら、それらはたぶん一生観られないだろうし、聴けないよ!ということはここで断言しておきます!(笑)

田代万里生、ホリ・ヒロシ、浅野 祥

(取材・文:田中里津子  写真撮影:荒川潤)

公演情報
『Clementia(クレメンティア)Vol.3』
 
■日程:2016年12月9日(金)~12月11日(日)
■会場:天王洲 銀河劇場 (東京都)
■出演:
田代万里生 テノール、ピアノ
大貫勇輔 ダンサー
ホリ・ヒロシ 人形舞
桑山哲也 アコーディオン奏者
浅野 祥 三味線プレーヤー
クリヤ・マコト ジャズピアニスト
■構成・演出・振付:川崎悦子
■主催:ホリプロ/銀河劇場
■企画制作:ホリプロ
■公式サイト:http://hpot.jp/stage/clementia
 
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