南條愛乃が創る“私の見え方” 声優として、アーティストとして、活躍を続ける彼女がパシフィコ横浜で見せたパフォーマンスとは
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南條愛乃
『南條愛乃 LIVE TOUR 2016"N"』 2016.9.19(月・祝) パシフィコ横浜国立大ホール
音楽ユニット・fripSideのボーカルだけでなく、ソロアーティストとしても活躍中の南條愛乃ワンマンライブツアー『南條愛乃 LIVE TOUR 2016"N"』がパシフィコ横浜国立大ホールにて開催された。今回は7月に発売された2ndフルアルバム『Nのハコ』を引っ提げてのライブツアーとなっており、楽曲は南條とゆかりのある人たちが作詞を担当している。彼女と親しい声優、アーティストが綴った歌詞に、南條はどのようなパフォーマンスを見せてファンを魅了したのか。当日のパシフィコ横浜公演の模様をレポートする。
南條愛乃
昨年1stフルアルバム「東京 1/3650」をリリースし、東京と大阪でのワンマンライブで成功をおさめた南條愛乃。1年ぶりとなる今回の1stライブツアーでは、愛知公演を皮切りに、福岡、大阪、神奈川、宮城の全5箇所に及ぶライブツアーを開催した。アルバム『Nのハコ』の楽曲をメインにセットリストが組まれ、南條に対する作詞をした人たちの想いが込められている。開演前でも伝わってくる観客の雰囲気からは、期待と楽しさで満ち溢れていた。
開演時間と同時に照明が落とされ、私たちの視界を暗闇が覆いつくす。真っ暗な闇と静けさが会場を包みこんでいくが、次の瞬間、ステージ中央が明るく照らされ、黒い衣装を着た南條が視界に飛び込んできた。オープニングナンバー「きみからみたわたし」のメロディが流れ、静寂さの中から、南條のソプラノボイスが会場中に響きわたっていく。まるで子守歌を聞いているかのような音色に“癒し”を感じ、観客も我を忘れてステージに集中。開始早々、南條の独唱に思わず引き込まれる。
南條愛乃
「こんばんは、南條愛乃です! いくぜ横浜!」
先ほどの曲調とは打って変わり、客席に向かって放たれた南條の一声にオーディエンスたちも大声を張り上げ、一気に会場の温度を上昇させる。軽快な音楽が奏でられ、「灰色ノ街ヘ告グ」へと突入した。瞬間、ステージを覆い隠していた紗幕が落とされ、南條とバンドメンバーが姿をあらわにする。観客全員、手に持ったペンライトを南條に向かって振りかざし、彼女の登場を迎え入れた。先ほどはステージから南條が歌声を届けていたが、今度は客席から彼女に向けて声援が送られる。緩急をつけるセットリストに、スタートから叫びたい感情を抑えていたファンの気持ちが一気に爆発。ここから南條のライブ演出が繰り広げられていった。
南條愛乃
MCをはさんで「Oh my holiday!」「Recording.」と立て続けに2曲披露する南條。「Oh my holiday!」では、アップテンポなリズムに合わせて、弾むような歌声をのせて、観客をあおっていき、オーディエンスのテンションを上げていく。間奏では、南條がインスタントカメラで自らシャッターを切るというサプライズを行った。ステージ上でもファンとの交流を図ろうとする姿に、応援してくれる人を大切にしたいという彼女の人となりがわかる。続いて「Recording.」では、南條が歌詞のワンフレーズを観客に向けて叫び、問いかけるようなシーンを見せて、観客の歓声を沸き起こした。1曲ごとの合間に、ファンとのやり取りが描かれ、親しみあるライブを展開していく。
南條が歌声から楽しませてくれる場景、観客との掛け合いで見せてくれる笑顔。視覚や聴覚のどちらからでもハイテンションになるライブパフォーマンスに、より一層“親しみ”を感じさせてくれる。
南條愛乃
何よりもライブ中に会場全体から伝わったのは、南條愛乃とファンの一体感だ。彼女がラジオで話していた曲中でのコールを、リハーサルなしで見事に一致団結して成功させる様はまさに圧巻だった。南條もMC中に「みんな曲が身体の中に溶け込んでいるから、自然と反応してくれるみたい!」と驚きをあらわにする。
そのまま「ヒカリノ海」や「そらほしひとつ」、「ヒトビトヒトル」など、緩やかなリズムの楽曲で観客を穏やかな気持ちにさせた。さらに中盤に差し掛かると、TVアニメ『グリザイアの果実』EDテーマ「あなたの愛した世界」でアッパーチューンの楽曲を披露。途切れることなくメドレー形式でTVアニメ『グリザイアの楽園』「カプリスの繭」編EDテーマ「黄昏のスタアライト」、「ブランエールの種」編EDテーマ「きみを探しに」と、次々とキラーチューンを放っていく。リズミカルなナンバーに、場内はヒートアップしていき、南條と共にオーディエンス全員でシンガロングを炸裂させるなど、圧倒させる展開を見せつけた。
南條愛乃
その後、白のパーカーとニット帽に衣装チェンジした南條が再びステージに登場し、ポップなミュージックの「idc」を歌い、ダンサーたちと息の合ったダンスを繰りひろげていく。ジャンルに関係なく、様々な楽曲を披露し、楽しい雰囲気を生みだした。まさに会場に集まった5000人のオーディエンスと笑顔の時間を共有しているかのようだ。一緒の時間を共に堪能できるからこそ体感できる賑やかさ。アットホームなムードに思わず酔いしれそうになってしまう。
さらに新鮮さを感じさせてくれたのは、ボサノヴァテイストの「NECOME」でモダンな空間を生み出したときだ。アコースティックギターの音色に、アップテンポな歌を観客に届ける。彼女のライブはステージから放たれるパフォーマンスだけじゃない。見る、聞く、楽しむ、の3つが合わさってこそのステージングなのだ。何よりも集まってくれたファン全員で盛り上がることを第一に考えられた構成になっている。
南條愛乃
「“Nのハコ”は今の南條愛乃がどんな風に見えているのかをコンセプトに作られました」
MC中に語った南條の言葉を聞いて、ここまでのライブ演出の意味を理解することが出来た。今回の2ndアルバムは南條愛乃とゆかりのある人たちが、それぞれの楽曲の作詞を担当している。役者として、アーティストとして、1人の人間としての南條を知っている人たちが、彼女の姿を言葉にした。このライブで感じたことは、南條愛乃という女性がどのような人間なのかだ。筆者はこれまで彼女のことを、大舞台でマイクを握る人気アーティストと思い込んでいた。しかし、実は気さくで、親しみを感じさせてくれる女性だということがわかる。初めて彼女の人柄を知って、距離感があると誤解していた自分が恥ずかしくてならない。そして、もっと一緒にライブを通して様々なことを分かち合うことができるのではないかと、より南條愛乃に対して興味を抱くことが出来た。
南條愛乃
そして、南條が最後にセレクトしたナンバーは「今日もいい天気だよ」だ。ブログのタイトルにもなっている1曲に、「どんなに悪い天気だとしても、大事な人(=君)とその「天気」を共有して会話が弾めば、嫌だったはずの天気も良い天気だと感じられる。これからも近くに君(=ファン)がいてくれて、様々なことを共有できたら」という彼女なりの想いが込められている。まさに“Nのハコ”のコンセプトを汲み取ったかのようなラストナンバー。歌を聞いているはずなのに、会話をしているかのような感覚を覚えたのは、南條がファンに向けて放った気持ちを感じ取ることが出来たからだ。
南條愛乃
ステージを後にした南條だったが、このままライブを終わりたくないファンの気持ちが大歓声となって、パシフィコ横浜の場内に響きわたる。その後、アンコールへと進展し、「Gerbera」「0-未来-」の2曲を歌い切り、見事にパシフィコ横浜公演を大成功に収めることが出来た。去り際に南條が「明日からもがんばるんだよ! また会おうね!」と笑顔でファンに送った表情から、人懐っこさを感じる。それもまた、南條の魅力なのだと発見することが出来た。
南條愛乃
スタートからペースを崩さず、笑顔を絶やさない彼女からエネルギーをもらう。ライブを通して南條と繋がり、お互いの気持ちを共有した。きっと、相手のことを考えられる彼女だからこそ成し遂げることが出来たステージだろう。そして何より、自分のことをどのように見ているのかを教えてくれる仲間がいた彼女だからこそ、その姿をファンに伝えることが出来た3時間だったと思う。
撮影=江藤はんな/HAJIME、レポート・文=野島亮佑
M1.きみからみたわたし
M2.灰色ノ街へ告グ
M3.Oh my holiday!
M4.Recording.
M5.ヒカリノ海
M6.そらほしひとつ
M7.ヒトビトヒトル
M8.あなたの愛した世界
M9.黄昏のスタアライト
M10.きみを探しに
M11.idc
M12.NECOME
M13.ツナグワタシ
M14.ガーネット
M15.Dear..
M16.ゼロイチキセキ
M17.Simple feelings
M18.今日もいい天気だよ
M19.Gerbera
M20.0-未来-