京の花街の風情と芸妓姉妹の美しさで魅せる! 明治座公演『祇園の姉妹』

2016.11.10
レポート
舞台

明治座『祇園の姉妹』


檀れいと剛力彩芽が、花街で生きる姉妹役で明治座初出演を果たした舞台、『祇園の姉妹』が11月4日に幕を開けた。(27日まで)

初舞台から25周年を迎える檀と初舞台の剛力を、松平健、山本陽子をはじめとする実力派共演陣が支える豪華顔合わせの作品で、昭和11年の溝口健二監督のヒット映画を原作に、祇園で生きる姉妹それぞれの思いと、花街とそれを取り巻く社会や変わりゆく時代を描き出している。

【あらすじ】

昭和十一年春。経済恐慌のあおりをうけた不景気や二・二六事件におちつかない世の中にも、桜の季節がやってきた。京都、祇園は花見小路に近い路地の奥、芸妓梅吉(檀れい)とおもちゃ(剛力彩芽)姉妹の家に、街ゆく人の声が響く。「室町の木綿問屋、古沢商店が倒産や」

古沢新兵衛(松平健)は、かつて梅吉の旦那であったが、それが本妻の知るところとなり梅吉のもとから足が遠のいていた。離れても新兵衛のことを想い続けている梅吉。

一方、新兵衛の仕打ちを男の浮気心によるものと納得いかないおもちゃは、そんな姉の態度に常々はがゆさを感じていた。古沢商店倒産の知らせに動揺する梅吉のもとに、新兵衛がふらりと現れる。行きどころがない新兵衛はおもちゃの反対をよそに、姉妹の家に転がり込むが─。 
 
檀れいは姉の芸妓梅吉役で、古き良き日本女性の女心を細やかに見せてくれる。一度は離れたかつての旦那、新兵衛を思い続け、彼の苦境には「御恩返し」と親身な手助けをする古風な良い女だ。日本物の美しさに定評のある檀だけに、着物の着こなしはもちろん、物腰柔らかく芯は強い京女を姿と動きと声で表現、見事な出来栄えだ。

一方、着物姿が初々しい剛力は、現実的で勝気な妹娘おもちゃを嫌味なく、可愛げを感じさせながら演じてみせる。映画やドラマでの実績があるだけに初舞台ながらも度胸は満点で、男を手玉に取る若い芸妓おもちゃを生き生きと見せ、今後の舞台での活躍も期待できそうだ。

檀と剛力の姉妹2人の場面が多く、役の上でも女優としてもタイプの違う2人がぶつかることで引き立てあう良い相性で、2人が日本髪にお引きずりで並んだ姿は絵のように美しい。

梅吉が心を寄せる大店の主人古沢新兵衛役の松平健は、頼れる男前といういつものイメージを覆して、典型的な「つっころばし」ぶりを発揮してみせる。身代をつぶした後処理を妻に任せて梅吉の家に逃げ込み、のほほんと裁縫箱を横に着物をほどく姿など、意外だが似合っていて面白い。
 
新兵衛の本妻おえみ役には山本陽子。おえみがしっかりしてきついほど新兵衛の行動にも説得力が出る役どころ。梅吉と対峙する場面ではそのきつさの中にも人間性をにじませ、短い出番ながら立ち姿だけで身分や気性が伝わってくるという、流石の役作りをみせる。

新兵衛の店の番頭・定吉役の葛山信吾は、実直な昭和の奉公人らしい控えめな人物を造形して好印象を残す。ほかに梅吉に岡惚れする金持ち聚楽堂役の鶴田忍、新兵衛の妹役の大河内奈々子、置屋の中居役の田中綾子らが、人間関係を彩って物語をふくらませている。
 
また、石井みつるの装置が京都の景色を魅力的に作り込み、最終場では八坂神社の大晦日を描き出すなど、物語の魅力を増している。女性の心根や季節ごとの風景といった日本の美しさとともに、溝口映画ならではの、日々の暮らしを必死で生きる人々の姿が心に残る舞台となっている。

(前段左から)剛力彩芽、松平健、檀れい(後段左から)葛山信吾、山本陽子

【囲みインタビュー】

この公演の初日前日に通し稽古がプレスに公開され、檀れい、剛力彩芽、松平健、山本陽子、葛山信吾が揃って登場、囲みインタビューに応えた。

──初日を前に一言いただけますか。

明日初日というのが信じられないくらいの状態なのですが、皆さんとともに1ヵ月お稽古してきたものが、お客様が入ってどういう風に成長していくか楽しみですし、良い舞台になるように頑張っていきたいと思います。

剛力 実感が湧いていないです。明日初日なんだと緊張はしているのですが、どうしたらいいか分からないというか。今日もメイクとか鬘とか、自分のことで精一杯なので。皆さんに助けられながら、稽古もなんとかやってこられたので、本番も皆さんに助けていただいてばっかりだと思うんですけど、お客様に楽しんでいただけるように頑張りたいと思います。

松平 今回は久し振りに人情もの、昭和初期の京都祇園の雰囲気を、舞台でお客様に観ていただけるというのは、明治座さんならではの雰囲気のお芝居ではないかと思います。京都弁がちょっと大変でしたけれど(笑)。

山本 とても良いお芝居ですので、是非多くの方に観ていただきたいと思います。檀さんも剛力さんも松平さんも初めての共演ですので、私自身も楽しみにしております。ただ、夫(役の松平)とは劇中でお会いするところが無いものですから。私が出てきちゃうとややこしくなりますので(笑)、なるべく控えめにしています。これから1ヵ月間楽しくやらせていただきたいと思います。

葛山 今は緊張しているばっかりですけれど、華やかな共演者の皆さんと自分も楽しんで、お客様とともに良い舞台になるように全力で頑張ります。

──今日の檀さんと剛力さんの艶やかな姿ですが、松平さんどうですか?

松平 祇園そのままやないでしょうか。

一同 (笑)。

松平 思わず行きたくなっちゃいます。

なかなかこういう格好をさせていただくことは無いので、自分自身も嬉しいです。劇中で何回かお引きの着物を着るので、お客様に目で見て楽しんでいただきたいなと思います。

剛力 こうやってお着物でお仕事することはあまり無いので、すごく嬉しいのですが、着物の捌き方が難しいです。まずはお引きの時など特に裾を踏まないように、ちゃんと出来るようにしたいです。妹とお姉ちゃんの色の違いも楽しんでいただけると思います。皆さんもすごく綺麗なので、そこも楽しみにしています。

──剛力さんは初舞台ですが、舞台という仕事についてはどうですか?

剛力 ずっとやりたかったお仕事なのでありがたいです。初舞台でお着物を着たり、京都弁だったり、一気に初めてのことが来てしまったので、始めは「出来ない」とネガティブなことを言うくらい、落ち込んだ時期もあったんです。でも、皆さんも「何かあったら言ってね」とか、褒めてくださる方ばかり。それに支えられながら、楽しくやらせていただいています。生でお芝居を観てもらうのが初めてなので、お客さんが入ってどういう風になるか想像がつかなくて。すごく緊張していますけれど、そこが楽しみな部分でもあります。

──檀さんは芸能生活25年で初めての明治座出演になるわけですね?

あまり大っぴらにはしていないのですが、宝塚で初舞台を踏んで25年です。自分のなかでも節目の時に、いつか立ってみたいと思った明治座さんに立たせていただくことができて本当に嬉しいです。人情物の素敵なお芝居に出会えたことに感謝しています。

──舞台稽古が始まって、明治座の舞台に立ってどうでしたか?

2階席、3階席の高さからお客様が観た感じ、奥行きとかサイドの客席も見学もしました。なんといっても嬉しかったのが、明治座の玄関のところにのぼりが立っていたのを観た時で、すごく嬉しかったです。やっと明治座の舞台に立てる!と思って。

──あれはやはり明治座らしいという感覚があるんですか?

芝居小屋という感じで。本当にお芝居が好きなお客様がワクワクしながらお芝居を観て、休憩にはお弁当を食べたり、お土産を買ったり、すべて丸ごと楽しめる空間なのかなと。

──25周年を振り返っていかがですか?

振り返って?(笑) もうこんなに経ったんだと。あっという間でしたけど、25年と言われると長かったと思います。よくここまで続けることができたと自分でもびっくりしています。

──剛力さん25年前は?

剛力 生まれていないですよね。

姉妹の設定ですから(笑)。親子じゃないから!(笑)

(左から)剛力彩芽、松平健、檀れい

──檀さんと姉妹役はいかがですか?

剛力 本当に頼りになるので、お稽古中からずっと隣のお席で色々聞いたりしながら。居てくれるだけで安心するんです。「おもちゃ」はなんでもかんでも「お姉ちゃん」に言っちゃうのですが、そこは愛情があるからこそで。受け止めてくださるので安心してなんでも言わせていただいています。

──妹はどうですか?

お稽古場の時から一生懸命さが伝わってきて。傍で見守ることくらしかできないんですけれども、初めて舞台に立つのですから良い舞台になってほしいですし、舞台のことが好きになってもらいたいなと思っています。

剛力 既に好きです。最初ちょっと焦りましたが、今すごく好きです。終わる頃にはもっとやりたいと言っているんじゃないかなと思います。

──数々の舞台に出てこられた松平さんから見て全体の雰囲気はいかがですか?

松平 皆さんお芝居に対して真面目に取り組んでいる姿勢があって、特に剛力さんは人の倍、二倍、三倍稽古して努力しているなと思います。姉妹役の対比の面白さもあります。私も本妻と芸妓の梅吉との、強さと優しさっていうんでしょうか(笑)、その間に挟まれての苦労とか、いろんな見どころがありますので、良い芝居になっていると思います。雰囲気もとっても良いです。

──檀さん、旦那さんは観劇にいらっしゃるんですか?

はい、来ます。この舞台をとても楽しみにしています。今日も「頑張って舞台稽古いってらっしゃい」と言われ、勇んで来ました。

──最後に意気込みとお客様へメッセージをお願いします。

この『祇園の姉妹』を観てくださったお客様が、「ああ来てよかったな」「楽しかったな」「また観たい」と思ってもらえるような舞台になりますよう、一所懸命頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。

剛力 私は初めての舞台で、いらっしゃるお客様のほうが明治座さんの舞台を見慣れていて、色々なことを知っている方が多いかもしれないのですが、そこは優しく見守っていただきながら(笑)、このお芝居も楽しんでいただけると思います。まだ舞台を観たことがないという方にも来ていただけたら嬉しいなと思っています。緊張しながらも皆さんに支えていただきながら、人の温かさとか愛を伝えていけたらいいなと思っています。宜しくお願いします。

松平 東京の浜町で、古き良き時代の京都の風情、人情を是非味わっていただきたいと思います。どうぞお越しください。

山本 姉妹の美しさとかわいらしさがふんだんに出ております。お着物もそうですし、セットもそうですが、明治座さんの舞台にすごく合ったお芝居でございます。楽しみに来ていただけると思います。何回も観にきていただけましたら嬉しゅうございますね。

葛山 陽子さんがおっしゃった通り、出演者も華やかですけれど、舞台の美術、照明が本当に綺麗です。そして、皆さんがいろんな愛情を持って、それがぶつかったり、思いが交錯する、そういうお話です。楽しんでいただけると思いますので、是非劇場に足を運んでいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【取材・文/佐藤栄里子 写真提供/明治座】


〈公演情報〉

■原作:溝口健二
■脚本:依田義賢
■潤色:堀越真
■演出:丹野郁弓
■出演:檀れい、剛力彩芽、松平健、葛山信吾、山本陽子 他
■日程:2016/11/4(金)~2016/11/27(日)
■会場:明治座
■料金:S席12,000円 A席8,500円 B席6,000円(全席指定・税込)
■問い合せ:明治座センター 03-3666-6666(10:00~17:00)
■公式サイト:http://www.meijiza.co.jp




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