【SPICE対談】ラジオの中の人[関西編] FM802・DJ土井コマキ×番組ディレクター但馬康友

インタビュー
2016.12.13
土井コマキ

土井コマキ

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“ラジオの中の人”企画第3弾は、前回に引き続きFM802・飯室大吾氏にインタビュアーとなってもらい、独自のフィルターで今年で15周年という節目を迎える『MIDNIGHT GARAGE』(毎週火曜日24:00~27:00)。この番組を担当する土井コマキ氏と番組ディレクターである但馬康友氏に登場して頂き、ラジオDJ目線で番組に対して感じることを聞いてもらった。

――まずは『MIDNIGHT GARAGE』(以下GARAGE)、15周年おめでとうございます。

土井・但馬:ありがとうございます!

土井:10月で丸15年になりました。

――番組のイメージは、インディーズにスポットを当てる番組の“元祖”です。

土井:でもGARAGEが始まった15年前には、すでにちわき(まゆみ)さんが『パワーコード802』っていう、インディーズにスポットを当てる番組をやってはったんです。だからうちが元祖じゃなくて、ちわきさんの番組が元祖で。GARAGEは、その番組よりさらに小さめのライブハウスに出るような人たち、もしくはちょっとテイストの違うアーティストをピックアップして(そういう音楽の)入口になれる番組に……っていう感じ。小さいライブハウスにも行ってみて!というね。

但馬:そうですね。だからこそFandango(大阪・十三のライブハウス)の回数券とかをプレゼントしてね……。

土井:ず~っとやってた。みんな、お金ないの知ってるから。

――ほんま思いますよね。ライブ行く子ってフェスだ!遠征だ!って大変。

土井:GARAGEが始まった頃、週3~4でライブハウスに行ってて、取材で入れてもらってるんですけど、それでもドリンク代も交通費もいるし、それがきつくて(笑)。みんなどうしてるんだろう?って思っていました。

――電車代とか結構圧迫する!ってね(笑)。あれはGARAGEの名物プレゼントでしたね。他に昔やってた企画は?

土井:当時のディレクターと2人で、会いたい人たちに会えるようにしたい!っていうんで、私たちが好きなレーベルを取り上げる、MGホットラインってコーナーを始めたんです。昔は(レーベルやアーティストとの)パイプがなかったので、それを作るというのも踏まえて。UK Project、Bad News Records、KOGA(RECORDS)、ESCALATOR RECORDSの4つに週替わりで電話をつないで、リリースとかイベントを紹介してもらったりしてました。

――FM802的にそこにパイプがなかったってことは、メイン(の音楽シーン)はそこじゃなかったってことですね。

土井:そうですね。もう一つ今と違うのは、15年前は日本のそういうアーティストって、どっか洋楽ファンから見下されてた感じがあって、洋楽ファンは洋楽しか聴かないし、いわゆるメジャーなJ-POPしか日本の音楽を知らない。J-POPを否定するわけではないけど、でもそうじゃない面白いシーンが日本にもいっぱいあってカッコイイから、そっちも聴いてもらいたいなって……。その頃は、ライブハウスに人が入らないっていう時代だったんですよね。だから番組が始まった時にプロデューサーから言われたんです。そこ(小さいライブハウスに人が入るようになること)を目標にしてくださいって。

土井コマキ

土井コマキ

――ちなみに、インディーズレーベルとの橋渡しの役になったということだと思うんですけど、FacebookやTwitterでメッセージも送れなかった当時、どうやってたんですか?

土井:CDの後ろを見て電話すんねん(笑)。もうドキドキ。今は本当に便利!

――DIY的というか……(笑)。

土井:でもそうやって動き出して、みんなが信頼してくれるようになると、誰かが誰かを紹介してくれるようになって……

――それでできた土井ちゃんのつながりが番組にフィードバックされると。

土井:もちろんディレクターの築いたつながりもあります。自分の足で行けるのは知れてるからみんなで手分けして動いてました。

――そうですよね。他に昔の企画で覚えているものは?

土井:FUNKY BAR LIVE!

――お~。FM802の井戸端会議スペース的な場所で行うライブですね。そこにアーティストが来てライブしてくれる。たまにリスナーも入ったり……。

土井:土曜の夜中に生放送(笑)。当時はアーティストが自分でできるレコーディング技術が今ほどよくなくて。だからデモCDとライブの迫力が全然違うんですよ。絶対にライブの方がいい。だからそれをそのまま放送したいと思って、さらには局の人たちに見てもらいたくて。

――そういう草の根のこともあったんですね。

土井:だって音源を配ってもみんな忙しいからなかなか聴けないだろうし、ましてやライブに来てくれなんて言えない。じゃあ局でやろう!ってなったんですよ。

――GARAGEって、そうやって新しいことを始めるところがいいですよね。レーベルと直接パイプをつなぐことも、やってるんです!っていうのを局内の人たちにもちゃんと見せるっていうことも。

土井:ハハハ! 違うねん、私ほんまに土曜の夜中しかFM802に来ないから、そういうアピールをしとかないと私も忘れられるし、GARAGEも忘れられる(笑)。とはいえ、一番念頭にあったのはGARAGEで取り上げるアーティストをみんなに紹介したいっていうことで。今も感じてるけど、昔は必要以上に責任を感じてて。なんかアーティストの面倒みないと!みたいなのがすごくて、なんで売れへんのやろう?って悩んでいろいろやりましたね。

土井コマキ

土井コマキ

――そこまで背負ってしまうと。

土井:でも、しまうでしょ? 『RADIO∞INFINITY』(飯室担当の番組、以下INFINITY)もそうやと思うけど、アーティストとの距離が近いから人となりが見える。人となりが好きで紹介してるわけではなくて、その人の音楽が好きで紹介をしてるんやけど、どんどん好きになるし……。

――おこがましい意味じゃないところで責任が自然にわいてしまうというかね。

土井:ね(笑)。

――うん(笑)。さて、タジー(但馬)ですが、GARAGEに携わってどれくらい?

但馬:GARAGEに関わってからは10年弱くらい。ディレクターになってからは5~6年ぐらかいかな。

――番組15年の歴史のなかでディレクターをやってるから、番組が築いてきたものを意識しながらも、タジーらしいディレクションをしないといけない……そういうバランスはどうしてるの?

但馬:じゃあ、ええ話を一つ。

土井:……(笑)。

但馬:僕、学生のころインディーズのロックが好きで、でもそういうのはラジオではかからないと思っていて……。

――ラジオはヒット曲がかかるもんやからと。

但馬:そうそう。でもたまたまGARAGEを聴いている時に、好きだったRiddim Saunterが流れてきて、「このラジオ、ヤバい!」ってなって、GARAGEを聴き出したんです。

土井:作戦成功!(笑)

――そういうリスナーの心境ね! INFINITYもコレかけてくれんの?……みたいなのが大事やったりする。他に何かけるんやろ?っていう心理になるよね。

但馬:なりますね。それにちょっと優越感にひたるんですよね。俺の知ってるRiddim saunterをかけてる、この番組!っていう(笑)。

土井:わかる(笑)。

但馬:ま、そういう感じで聴き始めて。で、当時行っていた専門学校が、FM802で実際に働いてる人が講師に来てくれる学校やったんですよ。それが、今自分が働いているKISS CORPORATION(制作会社)の人で、どんな番組を担当しているんですか?って聞いたら、GARAGEを制作していると!

土井:まじで!

但馬:さらにGARAGEに興味が湧くじゃないですか。そんな縁があって、KISS CORPORATIONに入りました。

――じゃあ、ディレクターになるきっかけ自体がGARAGEってこと?

但馬:ラジオでもこういう自分の好きなインディーズの曲もかかるんやって思ったのはGARAGEがきっかけですね。

但馬康友

但馬康友

――リスナー時代からGARAGE論というか番組のカラーはわかっていたわけやね。なるべくしてGARAGEのディレクターなってるね、あなた!(笑)

但馬:そうですね!(笑)

――ハハハ。2人は作っている人としゃべっている人、いわばキャッチャーとピッチャー。でも土井ちゃんが思ってるGARAGEとタジーが思ってるGARAGEには違いがあると思うんです。そういうお互いの頭の中の共有ってどうやってやってる?

土井:めっちゃしゃべったよね。

但馬:しゃべりましたね。最初は土井さんと先代ディレクターが作ってきたレールに乗るっていうのがスタートだったし、いろいろ引き継いでいくっていうのがまずあって、そこにプラス自分がやるなら?っていう感じでした。それを実現するのには結構長い期間かかりましたね。15年前とはインディーズシーンも違ってきてるから、時代に合わせていくというのもあったと思うんですけどね。

土井:ちょうど時代が変わったのと但馬がディレクターに代わった時期が重なってるね。今はみんな自分の家で録って自分で配信するし、メジャーとインディーズとの線引きももうない。小さなライブハウスのシーンにも注目してくれる人がすごく多いし、単純にFM802で言ってもINFINITYとかROCK KIDS 802とかそのシーンを取り上げる番組もいっぱいある。そしたら、もうそこはやらんでもいいんちゃうか?ってなりましたね。

左から、飯室大吾 / 土井コマキ / 但馬康友

左から、飯室大吾 / 土井コマキ / 但馬康友

但馬:GARAGEらしさ……根っこの部分の精神性とか土井さんのフィルターを通した音楽を真ん中に置いてっていうことは変えずに、今番組にできることをやるっていうのを3~4年かけて続けてきたって感じですね。

土井:やっと、最近見えてきたというか……すごい苦しかったな~、この5年くらい(笑)。何やったらいいかわからへん!みたいな。で、最近よくやるようになったのは、ものすごい特集……なんか変な特集で、長時間かけて堂々とやり切るっていうのをやってるんです。

――あ、行達也さん(元mona records代表、現タワーレコード)にシティ・ポップを解説してもらうっていうのね。あれでGARAGE変わったなと思ったんですよ。これまでの音楽ラジオ番組とちょっと違うというか……音楽をかけて伝えるというよりも、少しアカデミックになって、しっかりしゃべって伝えるというか。でも、これって大事かもって思いました。

土井:(放送時間が)平日の深い時間にもなったし、録音で聴いてる人もいるのかなっていうのもあり、寝ちゃう人は寝ちゃうから、だったらやりきって、気になった人は録音してでも聴いてください!っていう感じです。GARAGEは自分たちが面白いと思うことを濃くやったらいいのかな。だから、洋楽も場合によってはかかる。それでもいいと思うのは、今15年前と逆になってみんな洋楽を聴かない。だったら例えば星野源をきっかけに(彼のルーツとなった)古いブラック・ミュージックをかけるというのをやってみたりしてね。

但馬:オンエアする曲をきっかけにして、いろんなアーティストを好きになってもらえたらいいなって。今、GARAGEは(中高生がメインリスナーの)『ROCK KIDS 802』の後(の放送)だから、若い子が流れで聴いてくれる可能性も踏まえて、そういう特集をすることによって(音楽を)幅広く提示できて、広がればいいなっていう感じです。

――FM802の専門番組における、おすすめ精神ですよね。

但馬:そうそう。音楽を好きになってほしいってことですね。

――では最後に……GARAGE、これからどないしていきまんのや?(笑)

土井:……

飯室・但馬:ハハハ!

土井:だって来週、再来週のことでさえ、わからんよね?(笑)

但馬:そうっすね~(笑)。

――じゃあ、新しく出てくる人たちを紹介するっていうことが使命であって、でも例えばホムカミ(Homecomings)とか付き合いの長いバンドも丁寧に応援していくっていう、この2つのバランスをどうしていくんですか?

土井:正直、早く卒業してほしいんですよね。例えば星野(源)くんとかはSAKEROCKの時からずっとゲストだ、マンスリー企画だと、あれこれと付き合って貰ってきたけど、ま、もう、たくさんの媒体で取り上げられるわけだし、どうせガレージでピックアップするんだったら、さっき言ったような特集を組んだりして、より深く他とは違う聴き方ができたら面白いかなって。だからホムカミ……って、なんでホムカミやねん(笑)っていう感じやけど、でもホムカミもそういう感じになったらいいのになって思います。

土井コマキ

土井コマキ

但馬:うん。でも実は新しいのをどんどん紹介しなくちゃいけないってのは、あまり今思ってないですね。

土井:思ってない。もう、入り口はやめました! ほかにも入り口はたくさんあるから。

但馬:逆に今、リスナーさんの方が早いですからね。どっちかというと共有みたいなイメージですね。似た感覚を持った人たちが共有する場所になればいいかなって。

土井:放っておいてもそうなりがちやけど。例えば私のことを好きと思ってくれてるリスナーは、自分と同じものを応援している音楽友達みたいな感覚で私のことを好いてくれているし。

但馬:だからピックアップするものをハズせないんですよ。その人たちがちょっとでも違うなって思う曲がかかったらダメ。そのラインはすごく考えてますね。

――共有というキーワードでの選曲になってくると。

土井コマキ / 但馬康友

土井コマキ / 但馬康友

但馬:ジャンルとかではないですね。

土井:でもリスナーのみんなが好きでも、自分たちが好きじゃないと……っていうのもあるし。

但馬:難しいですね(笑)。あ、1つ話いいですか?

土井:なんやそれ!(笑)

但馬:例えばラーメン屋さん。20、30年とやってる店で、10年ぶりくらいにその店に行ったとして、お客さんが「大将、相変わらずうまいね」「全然味変わってないわ、最高」と。でも大将は実は味をちょっとずつ変えていってるという。そういう番組になりたいんですよ! だから5年後くらいに番組を聴いても、相変わらずええ曲かけてるわ~ってなって、でも実はかけてるアーティストも雰囲気も全然変わってるという(笑)。

土井・飯室:ハハハ! 

土井:でも、ディレクターが但馬に変わってから、いろんなことを変え出したんですよね。私も歳を重ねたからライブキッズたちと同じ目線ではライブを見られないし、同じ耳でも聴けない。それは良い悪いではないと思うけど、そうなった時に途中から入って来た但馬の目線は大事で、但馬が気付いてくれたというか。どうしたらいいのか悩んだ時に、入口をやめたらいいんちゃうかっていうのも、但馬としゃべって出たことだしね。

但馬:そうですね。

土井:早くインディーズ専門番組みたいな肩書きをやめたいね(笑)。でも、新しい言葉が見付からないんですけどね。

――今日はいろいろな話をありがとうございました! 最後に非常にいい感じの言葉も出たしね(笑)。

土井・但馬:ラーメン?(笑)

土井:ラーメン、全然意味わからへん!(笑)


インタビュアー=飯室大吾 取材・撮影=K兄 文=服田昌子

■第1回『FM802・DJ飯室大吾×ディレクターたっちゃん』はコチラ
■第2回『FM802・DJ落合健太郎×番組ディレクター・スマイル』はコチラ

 

番組情報
MIDNIGHT GARAGE
放送日時:毎週火曜日24:00〜27:00
番組Twitter  @FM802_MG ハッシュタグ  #802MG
Facebook https://www.facebook.com/fm802garage

BEAT EXPO
放送日時:毎週月曜~木曜19:00〜21:00(月火DJ 竹内琢也/水木DJ 土井コマキ)
番組Instagram @fm802_beatexpo
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