古典作品の新たな創造 OSK日本歌劇団DANCE REVUE『ROMEO&JULIET』開幕!


王道のレビューはもちろん、多彩なミュージカルにも精力的に取り組んでいるOSK日本歌劇団が、シェイクスピア作品に挑む意欲作、DANCE REVUE『ROMEO&JULIET』が、大阪阿倍野の近鉄アート館で上演中だ(27日まで。東京銀座博品館劇場でも12月2日~4日上演)。

今なお、世界中でその作品が上演され続けている大劇作家ウィリアム・シェイクスピアの数多い傑作の中でも、最も一般に親しまれている作品が、この『ロミオ&ジュリエット』なのではないだろうか。最早あらすじを書く必要もないほど著名な、14世紀のイタリア、花の都ヴェローナで仇同士の家に生まれた男女が恋に落ち、互いの思いの強さ故に死出の旅へとひた走る悲恋を描いたこの物語は、王道の舞台化、映画化、バレエ化ばかりでなく、小説やアニメ作品の中で、主人公たちが文化祭の出し物として演じるなど、数えきれないほど多くの形で様々なジャンルに登場している。

作品の舞台を1950年代のニューヨークに置き換えたブロードウェイミュージカル『ウェストサイドストーリー』は、すでに古典の趣さえ持った傑作ミュージカルだし、近年ではフランス産のミュージカル『ロミオ&ジュリエット』が日本でも大評判となり再演を重ね、フランスからの来日公演も行われるなど、人気を博しているのも周知のことだろう。そんな活況の中で、OSK日本歌劇団が打ち出したのが、DANCE REVUEとしての『ROMEO&JULIET』。ダンス力に秀でた人材を豊富に有する歌劇団ならではの切り口で臨む、新たな創造に大きな期待と注目が集まっての上演となった。

まず、舞台に接して驚くのが、これだけの大作を13人という少人数で演じきってしまうOSK日本歌劇団個々メンバーの力量だ。しかも、観ている間にはその出演者を倍にも、もっとにも感じさせるのが、OSKここにありの美点として、常のことながら感心させられる。更に、脚本・演出・振付を手掛けた上島雪夫が、思った以上に原典を尊重していて、世に広く知られたシェイクスピア作品ならではの名台詞を豊富に取り入れつつ、物語を大胆に要約していくバランスがなかなかに巧み。1幕50分、2幕50分というコンパクトな上演時間の中に、ロミオとジュリエットの駆け抜ける恋模様を鮮明に浮かび上がらせていた。

役柄や、状況、物語が進行する場面の説明などが、全て台詞の中に織り込まれているシェイクスピア作品は、どう切り取るか?が現代の上演の鍵になるから、その面では非常に面白くできあがっていたと思う。坂部剛の音楽も耳に馴染む美しさがあり、世界的に評判を取っているミュージカル版が先行している中で、よく健闘している。そうした利点が大きいだけに、観る側に欲も出て、この美しい音楽に乗せたダンスをもっと盛り込んで欲しいとの願いも生まれる。特に1幕の切れのタイミングがやや難しくなっていて、物語が悲劇へと向かう決定的な場面だけに、その衝撃を激しいダンスで魅せるなどの方向性も考えられるのではないか。十分その要求に耐えるだけの出演者たちだし、様々な形で繰り返されるロミオとジュリエットのデュエットダンスなどは、あっと驚くバリエーションもあって見応えがあるだけに、作品にもまだまだ伸びしろがありそうだ。その意味でもますます進化していくだろう今後に期待が膨らんだ。

そんな中で、初主演でロミオ役に扮した楊 琳の熱演が一際目に鮮やかだ。改めて初主演なのだと言われると、そうだったのか?とむしろ意外なほどに印象的な役柄を多く演じてきている人だが、その蓄積がこのロミオ役で一気に花開いていて、生来の陽性な持ち味に繊細さを加味したロミオ像が生まれている。ロミオという役柄には、ナイーブで青白いイメージもあると思うが、実際には若さ故の向こう見ずな猪突猛進が欠かせない役でもあって、ジュリエットへの思いの激しさがストレートに伝わってくる熱さが楊ならでは。歌唱力、ダンス力共に万全な揺るぎない主演ぶりだった。

一方のジュリエットの舞美りらは、持ち前の愛らしさと秀でたダンス力に裏打ちされた動きの美しさ、役が憑依してくるタイプの突き詰めた演技と、どれをとっても実に魅力的。何より出て来ただけで視線を引き付けずにはおかない、ヒロイン力の高さが抜群で、万事に納得のジュリエットだった。この作品で歌唱力も更にアップしたと感じさせ、進境著しいのも頼もしい。

更に、この作品を豪華なものにしたのが、特別出演という形でティボルト役に真麻里都が登場したこと。ジュリエットの従兄弟で、敵対するモンタギュー家の1人息子ロミオに、キャピュレット家の代表として立ちはだかる役どころだが、出番は決して多くない。特に今回の上演台本では1幕で命を落とすから、相当の存在感を要求されるだけに、ここに真麻が配された効果は大きかった。キレのある殺陣に加え、「この通りは俺のもの!」と誇示するナンバーも力強く、作品に豊かさと厚みを与える絶大な効果をあげていた。

もう1人、作品を贅沢にしたのが、ロミオの親友ベンヴォーリオ役に扮した悠浦あやと。芝居の世界の中で、友人思いの良い人という設定の役柄を印象的に演じるのは、実のところかなり難しいものだが、そこは抜群のプロポーションに加え、得難い華とスター性のある悠浦のこと。常にロミオを思い、周りの状況も的確に判断することのできる好青年を、過不足なく表出することに成功している。ジュリエットの死をロミオに伝えるべきかと懊悩するナンバーも、伸びやかに歌い上げて場を浚った。

そんな、OSK日本歌劇団の未来を担うスターたちに伍して、マキューシオ役を溌剌と演じた栞さなも印象的だったし、キャピュレット夫人を格を持ちつつしとやかに表した朝香櫻子、語り部的役割も担うロレンス神父とキャピュレットを二役で演じ分けた緋波亜紀の、特別専科陣はやはりOSK日本歌劇団のこうした挑戦に欠かせない存在。ジュリエットの乳母の和紗くるみ、ヴェローナ大公の登堂結斗、ジュリエットの求婚者パリスの朔矢しゅうらも、持ち役だけでなく各場に登場。アンサンブルとして作品を底支えした千咲えみ、柚咲ふう、椿りょうの大活躍も見逃せず、出演メンバーの一致団結ぶりが爽やかな熱を生み出していた。

何より、シェイクスピアの古典に新風を吹き込んだOSK日本歌劇団ならではのDANCE REVUE『ROMEO&JULIET』が登場したことは、歌劇団の裾野を広げる力になると思う。斬新な挑戦を続けて着々と地力を高めているOSK日本歌劇団の充実ぶりを、1人でも多くの人に体感して欲しい。

【囲みインタビュー】

初日を控えた11月18日通し舞台稽古が行われ、主演の楊琳と舞美りらが囲み取材に応えて公演への抱負を語った。

──ゲネプロを終えての感想と本番に向けての意気込みをお願いします。

やはりお稽古場と違って、舞台ですと照明やセットも入りまして、昨日からお稽古をしていますが、初めてのことばかりですので、すごく緊張して、少し浮ついた感じもあったので、これから地に足を付けて皆様に楽しんで頂ける舞台になるよう頑張っていきたいと思います

舞美 セットが加わってやりやすくなった部分と、これまでお稽古場ではしなかった着替えなどもありますので、その間にもジュリエットの気持ちを忘れないでいないと、すぐにバルコニーのシーンになったりなど、わかっていたつもりだったのですが、実際にやってみると舞台裏にいる部分が自分の中でまだまだ出来ていないなと感じましたので、その点を含めて明日から挑んでいきたいなと思いました。

──楊さん、主演ということになるといつもの舞台との違いを感じますか?

全然違いますね。いつも手を抜いている訳では決してないのですが、やはり主演と言うのは責任感が絶大にある分、如何にこれまで自由奔放にさせて頂いていたのかと。表現が難しいですが、今回は身が何万倍も引き締まる思いです。

──『ROMEO & JULIET』は色々な舞台や映画になっていますが、 演じるにあたり何かご覧になったものは?

私達で観ようねと言ったのが、1968年の映画です。

──オリヴィア・ハッセーの主演のバージョンですか?

そうです!その映画を観ました。ジュリエット役の方が本当に可愛らしくて素敵でした。あとは先生が持ってきてくださったロイヤルバレエの『ROMEO & JULIET』も拝見させて頂きました。

──それらを意識することで、演じる上にどういうプラスが?

映画から頂いたインスピレーションというのは世界観であったり、二人の恋の燃え上がり具合がすごく激しいですよね? そういうところと、夢夢しいところ、また急に現実には悲劇になってしまうところなどを感じました。バレエからは今回はDANCE REVUEなので、ダンスの美しさや、結婚式のシーンで二人で踊っているところは「儀式的に踊って欲しい」と言って頂いたので、そういうところはバレエの動きをすごく参考にさせて頂きました。

舞美 先生は原作に近いイメージをされていると思いますので、現代風にならないように、シェイクスピアの台詞をそのまま使っていらっしゃったりもするので、古典の原作に忠実にできたらなと思って、映画や本なども見ました。

──役作りをする上で一番大切にされていることは?

私はずっと上島先生から「冒頭から暗くなってしまっている」ということを指摘して頂いていたので、恋に悩んだ嬉しさを新鮮に保とうと頑張っています。

舞美 上島先生から「理想を持っている分、そこに近づけようと変に力んで頑張ってしまう部分があって、そういう思いが強くなるほど違う方向に行ってしまう」と言って頂いて「本当に自分の気持ちが動くまで何も言わないでいいから、きちんと気持ちが動いたら(台詞を)言ったらいい」と言って頂いたので、本当に自分の心を一つずつ動かして、ジュリエットとして舞台上で生きられたらなと思います。

──たくさんの『ROMEO & JULIET』がある中で、OSK日本歌劇団ならではの『ROMEO & JULIET』の魅力は? 

 本当にたくさんの作品があり、映画は歌はあるけれどもダンスはそこまでないし、一方バレエは台詞と歌がないですよね。また、フランスのミュージカルは「愛と死」という象徴的なものが二人の関係を表していると思うのですが、私たちは本人同士がダンス、歌など、DANCE REVUEならではのものを使って表現していると思うので、そこが魅力なのではないかと思っています。

舞美 私も楊さんと同じで、DANCE REVUEなのですがダンスも歌もセリフも何一つ欠けてはなりたたない作品だと思います。ミュージカルのいいところがギュッと詰まった作品になっていると思います。

──DANCE REVUEということでダンスで表現するシーンもたくさんあって、デュエットダンスもたくさんありますね。

色々なパターンでさせて頂いています。

──特に最後の場面のデュエットダンスには驚きもありまたが、お二人はどういうところを見せていきたいですか? 

デュエットダンスが何種類もあるので、ひとつひとつ違う色合いで表現出来たらいいなと思っています。最後のデュエットダンスは本当に究極の愛だと思っています。よほどのことがないとできることではないと思うので、そこを頂点にして、そこに持って行く過程を、烈しく、究極に演じたいと思います。

舞美 私は踊ることが好きなので、今までは歌と踊りとお芝居を、それぞれ別々に捉えていたところがあるのですが、今回は上島先生に「踊らない」「歌わない」「しゃべらない」「変に何かをしようと思わないで」と言って頂きました。踊りも会話をしているように出来たらいいなと思っていて、その場面に相応しい踊りとして作って頂いているので、自分でも「ここから踊りです」という感じにならないように、踊りたくなって踊っているという感覚で、全て日常生活のことのように自然に出来たらなと思います。 

──今もこうやってお二人が見つめ合って雰囲気が出来あがっていますが、お互いに向けての一言を舞美さんからお願いします。

舞美 えぇ、そんな改まって(笑)。いつも我がままで、頑固でどうしようもない私を呆れず見捨てず、いつも優しい心で…。

(爆笑しながら)こんな内容どうやって記事にするんですか!?

舞美 本当にありがたく思っております。ジュリエットとして最後まで見捨てず、よろしくお願い致します。

そうですね、十分可愛いので、可愛くしようとしすぎないでください(笑)。以上です!

──最後に楽しみにされている方達にメッセージを。

私達OSKならではのDANCE REVUE『ROMEO & JULIET』。心に響いて残る作品にして参りたいと思いますので、どうぞ何度も足をお運び頂けたら幸いです。よろしくお願い致します。

舞美 1人でも多くの方に観て頂きたい作品になっております。皆さんそれぞれ『ROMEO & JULIET』と言ったら、こういうお話で、と思い浮かべておられると思いますが、このメンバーが創るOSKの『ROMEO & JULIET』を楽しんで頂きたいなと切に思います。どうぞご期待ください。

【取材・文・撮影/橘涼香】

公演情報
OSK日本歌劇団
ウィリアム・シェイクスピア没後400年
DANCE REVUE 『ROMEO&JULIET』
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原作◇ウィリアム・シェイクスピア
作・演出・振付◇上島雪夫
出演◇楊 琳、悠浦あやと、舞美りら、和紗くるみ、千咲えみ、栞さな、登堂結斗、朔矢しゅう、袖咲ふう、椿りょう/真麻里都(特別出演)/朝香櫻子、緋波亜紀(特別専科)
●11/19~27◎近鉄アート館
●12/2~4◎博品館劇場
〈料金〉SS席7,500円 S席6,000円 A席(自由席)4,000円 A席学割(自由席)2,000円 U-25(S席)5,000円、 はじめて割(S席)6,000円 学生3人割(自由席)4,500円(税込)
〈お問い合わせ〉OSK日本歌劇団 06-6251-3091(平日10時~17時)
www.osk-revue.com

 
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