飯守泰次郎(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団 名匠ならではのドイツ・ロマン派と湯浅譲二の深き世界

2016.11.25
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クラシック

 日本フィル12月定期には、ドイツ音楽の巨匠・飯守泰次郎が4年ぶりに登場する。飯守は若き日に、マンハイム、ハンブルクとドイツの名門歌劇場で活動、1970年代以降はワーグナー音楽の総本山・バイロイト音楽祭でも経験を積むなど、現場叩き上げのマエストロだ。現在は新国立劇場オペラ部門芸術監督として腕を振るい、昨年から始まった《リング》全曲上演では自らタクトをとって間然とするところのないリードをみせた。

 さて、その飯守が今回組んだプログラムは、ブラームス、シューマンというロマン派の大家に、日本作曲界の長老・湯浅譲二を組み合わせたもの。

 湯浅の「始源への眼差Ⅲ」は、宇宙、人類のはじまりに鳴っていた音楽に理知的にアプローチする。管弦楽の特性を生かし、湯浅らしい明晰な思考がダイナミックに展開される。飯守&日本フィルが2005年に初演しており、再演となる今回は一層クリアな表現へと研ぎ澄まされていくのではないだろうか。

 ブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」では、アシスタント・コンサートマスターの千葉清加、そしてソロ・チェロ奏者の辻本玲がソリストとして登壇する。今後の日本フィルの未来を担う二人の俊英のお披露目として、楽団の期待を反映した起用だろう。

 渋めのブラームスの後はシューマンの交響曲第3番「ライン」。デュッセルドルフの管弦楽団の音楽監督として同地に赴任した折り、シューマンはライン川の光景やそれにまつわる様々に大いに触発された。この曲にはそんな当時のシューマンの大らかな気分があふれている。

文:江藤光紀
(ぶらあぼ 2016年12月号から)


飯守泰次郎(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団
第686回 東京定期演奏会


12/9(金)19:00、12/10(土)14:00
サントリーホール
問合せ:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
http://www.japanphil.or.jp/