ノット&東響 モーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》(演奏会形式)
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2014年4月から東京交響楽団の音楽監督を務めるジョナサン・ノットは、就任前の取材時にこう語っていた。「モーツァルトの『ダ・ポンテ3部作』を演奏会形式でやりたい」。ドイツの歌劇場でキャリアを開始した彼は、オペラにも造詣が深く、13年のルツェルン音楽祭では、《ニーベルングの指環》の全曲上演(演奏会形式)で話題を呼んでいる。今年12月、ミューザ川崎と東京芸術劇場で行う《コジ・ファン・トゥッテ》は、そんな彼の念願が叶った待望の上演だ。
本公演にはいくつかポイントがある。まず東響にとってモーツァルトのオペラは、新国立劇場での経験と、名物企画「モーツァルト・マチネ」で培った演奏様式が融合する最上の演目であること。また演奏会形式によって、愉しくも緻密なアンサンブル・オペラ《コジ》の真価がより明確に表出されること。ノットも「一丸となって聴衆に向かい合い、巻き込みながら一緒にコンサートを作るという特別な体験」(チラシより)と語る。加えて、レチタティーヴォをノット自身がハンマークラヴィーアで演奏する点も見逃せない。そして舞台監修とドン・アルフォンソ役を、現代最高のバリトン歌手の一人、トーマス・アレンが務めるほか、歌手陣にも、ミア・パーション、マイテ・ボーモン、ヴァレンティナ・ファルカス、ショーン・マゼイ、マルクス・ウェルバと、ザルツブルク音楽祭やウィーン、METなどで活躍中の豪華な実力派が揃う。
これは、持ち前の精緻さに立体感を加えて評価も高いノット&東響の、3シーズン目の進化を知ると同時に、演奏会形式での上演が意外に少ないモーツァルト・オペラを再発見する機会でもある。さあここで、傑作の真の愉しさを味わおう。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年7月号から)
指揮&ハンマーフリューゲル:ジョナサン・ノット
管弦楽:東京交響楽団
舞台監修&ドン・アルフォンソ:トーマス・アレン
フィオルディリージ:ミア・パーション
ドラベッラ:マイテ・ボーモン
デスピーナ:ヴァレンティナ・ファルカス
フェルランド:ショーン・マゼイ
グリエルモ:マルクス・ウェルバ 合唱:新国立劇場合唱団
問合せ:ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200
http://www.kawasaki-sym-hall.jp