日本のポップスとダンスミュージックを真面目に考える

特集
音楽
2016.12.2

いま日本のポップス・シーンでもっとも勢いのあるアーティストは? 日本初開催される「TOKYO DANCE MUSIC EVENT」をきっかけに、日本のポップスとダンスミュージックを真面目に考えてみた。

「いま日本のポップス・シーンでもっとも勢いのあるアーティストは?」と訊かれたら、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの名前を挙げる人は多いはず。

2010年のデビュー以来、シングルは軒並みトップ3入りし、今年3月に発表した最新アルバム『THE JSB LEGACY』はオリコンの2016年上半期アルバムランキングで1位を記録。11月にスタートしたばかりの全国ドーム・ツアーは計25公演を予定するなど、まさに破竹の快進撃を続けている。

 

三代目 J Soul Brothers


その人気の理由には当然、ルックスやパフォーマンスなどさまざまな要因が絡んでいるのだろうが、ダンス・ミュージック好きの視点から見ると、2015年のヒット曲“Summer Madness”でアフロジャックをプロデューサーに起用するなど、EDMの要素を採り入れた海外のトレンドと遜色のない音楽性による部分も大きいのではないかとも思う。

そう、いまや日本のポップ・カルチャーにおいて、ダンス・ミュージックとは切っても切り離すことのできない大切な要素となっているのではないだろうか。

 

Perfume


近年のトピックから代表例を挙げるならば、中田ヤスタカの存在がある。彼がほぼすべての楽曲を手掛けているPerfumeでは、近未来的なフォルムのテクノ・ポップでアイドル〜アニメソング界隈も巻き込んだ新たな潮流を作り、ハウス・ミュージックの流れを汲むスクエアなグルーヴの心地良さをお茶の間にまで浸透させていった。

 

CAPSULE


さらに、きゃりーぱみゅぱみゅとの〈原宿カワイイ文化〉を体現したようなエレクトロ・ポップで世界をも魅了し、中田ヤスタカ自身のユニットであるCAPSULEでは実験的な音響ポップからストレートなEDMまで幅広い作風を披露するなど、その音楽性の高さからあのマデオンもファンを公言するほどだ。

また、DTMを駆使したネット世代のクリエイターが、ここ数年で一気にメジャー・シーンへと進出している点も重要だろう。

YouTubeやSoundCloudといったインターネット・サービスの広まりは、それまでTVなどのマスメディアであまり紹介されることのなかったダンス・ミュージックへのアクセスを容易なものとしたし、DAWソフトの低価格化によって作り手の人口も一気に増加。

 

tofubeats


そういった環境のなかから、まだ高校生の時分に「WIRE」へ出演した経歴を持つtofubeatsや、「ULTRA JAPAN」をはじめとする大型フェスへの参加と並行して、最近は山下智久や湘南乃風の楽曲まで手掛けるbanvoxなどが登場し、いまや日本のポップスの最前線に立っている。

 

banvox


それは、主にニコニコ動画から発展したボーカロイドのシーンにも同じことが言えるだろう。

このムーヴメントからは、BOOM BOOM SATELLITESに多大な影響を受けたというryo(supercell)や、かつてゼッドの公式リミックスを手掛けたこともあるkz(livetune)を皮切りに、

 

kz(livetune)


エレクトロ系のサウンドを得意とする八王子P、トラップやフューチャー・ベースなどのテイストを消化したギガP(REOL)といった才能が浮上。

彼らデジタルネイティブ世代の生み出す音楽にとって、ダンス・ミュージックとは意識するまでもなく入り込むナチュラルな要素となっている。

 

電気グルーヴ


これら日本のポップス・シーンの変化は、そもそも90〜2000年代に下地が作られていた結果でもある。

例えば、90年代のJ-POPを席巻した小室哲哉のサウンドは、TRFを筆頭に当時のレイヴ・カルチャーを下敷きにしたものが多かったし(ちなみに中田ヤスタカは小室哲哉の大ファンとしても知られる)、電気グルーヴはユニークな音楽性によって広くサブカル方面にまでテクノ・ミュージックの魅力を知らしめた。

 

m-flo


さらに代表曲“come again”で2ステップのリズムを援用したm-flo、ヒップホップをメインストリーム化したRIP SLYMEなど、クラブ文化を根っこに持つアーティストがヒットチャートでも活躍する時代が到来したことにより、リスナーのダンス・ミュージックに対する距離感が一気に縮まったのだ。

 

SEKAI NO OWARI


そういった状況が、現在の三代目JSBを含むLDH勢の隆盛を後押ししたのだろうし、例えばSEKAI NO OWARIがニッキー・ロメロとコラボしたり(“Dragon Night”)・・・

 

安室奈美恵


安室奈美恵がソフィーと初音ミクを同じ曲で迎えたり(“B Who I Want 2 B”)、三浦大知がSeihoと曲を共作したり(“Cry & Fight”)といった変革を生んでいるのだろう。

 

三浦大知


この傾向は今後ますます強まっていくはずだし、この先、日本のポップ・カルチャーにさらに大きなうねりをもたらすはずだ。




12月1日(木)〜3日(土)に東京・渋谷の5会場で開催される、日本初のダンス・ミュージックに特化した音楽カンファレンス&イベント「TOKYO DANCE MUSIC EVENT」(TDME)には、上記の変革に関わってきた重要人物が多数参加する。

日本のハウス・シーンを黎明期から盛り上げてきたGTSのDJ GEEこと浅川真次や、このblock.fmを主宰するm-floの☆Taku Takahashi、そしてSeiho、banvoxなどがそうだ。

「TOKYO DANCE MUSIC EVENT」で彼らの考えや音楽に触れることは、ダンス・ミュージックの未来——ひいては日本のポップ・カルチャーの新しい未来を想像/創造することに繋がるだろう。

 

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Text by EDM MAXX編集部(Q)

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