『オワリカラ・タカハシヒョウリのサブカル風来坊!!』 タカハシヒョウリ×小中和哉監督 ウルトラ対談
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(左から)タカハシヒョウリ、小中和哉監督 撮影:岩間 辰徳 (C)円谷プロ
大人向けウルトラマン!? 最新作『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』
小中和哉監督に会いにいった! そして幻の企画『新ウルトラマン』とは……!?
ロックバンド『オワリカラ』のタカハシヒョウリによる連載企画『オワリカラ・タカハシヒョウリのサブカル風来坊!!』。毎回タカハシ氏が風来坊のごとく、サブカルにまつわる様々な場所へ行き、人に会っていきます。第二回となる今回は、『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』のメイン監督・小中和哉氏との対談インタビューです。
「ウルトラの歴史に一種の革命を起こせると思ったんです」
タカハシヒョウリ(以下、タカハシ): 今回の『ウルトラマンオーブ』のテレビシリーズには参加していらっしゃらないじゃないですか。
小中和哉(以下、小中): そうですね。
タカハシ: テレビシリーズについてはどういう印象だったのでしょうか?
小中: だんだんお話が進むにしたがって、ドラマ性が増していると思うんですけど、第1話の頃なんかは、すごく明快な明るいキャラクター性と、ヒーローが強くてスカッと勝つみたいな、ある種『ウルトラマンタロウ』に近い印象を持っていて。
タカハシ: ああ! そうですね。たしかにかなり、第2期ウルトラっぽいですよね。
小中: 僕はストレートな第1期世代で、『帰ってきたウルトラマン』が始まったのはワクワクして見ていたんですけど、『タロウ』の頃にはちょっと引き気味だったんですよ。年代的にね。
タカハシ: 63年生まれというと、『タロウ』は10歳ぐらいでいらっしゃる。
小中: 「もうウルトラはいいかな……」って気になりかけたのが『タロウ』で、その辺りからオンエアをあまり見なくなって。でも中学生になって、早朝の再放送で『タロウ』を見返して面白いと思って再注目するんです。そういう意味で、タロウも好きなウルトラマンなんですけど、今、子供達に「王道のウルトラマン」を見せるとしたら、「タロウの豪華なヤツ」がいいんじゃないかっていう思いはすごく共感できて、『オーブ』のテレビシリーズがああいう形でスタートしたのは好感持って見ていました。
タカハシ: 『ORIGIN SAGA』では、プレスリリースの中でも「大人向け」という言葉が出てきますよね。先行している東映さんの『仮面ライダーアマゾンズ』もすごくビターな作品ですけど、その辺のスタンスっていうのは、テレビシリーズとは結構変わっていく感じなんですか?
小中: 『アマゾンズ』とは違った意味での大人向けだと思うんですけど、もともとウルトラマンって、始まった当初は、日曜の夜7時、子供番組というよりは一般の人も観られる……
タカハシ: SFドラマっていうか。
小中: それをうたって始まったんで、決して子供向けではなかったんですよ。子供向けではなくて、大人も子供も楽しめるっていう間口の広さがあった。でもやっぱり第2期以降、おもちゃを買ってもらうということを含めて子供のための番組っていうのがどんどん強化されていったと思うんですよね。それで今に至っているんですけど、それが、Amazonプライム・ビデオ配信っていう新しいメディアの中で、大人でも見られるという環境で新作が作れるっていうのは、ウルトラの歴史に一種の革命を起こせると思ったんです。「原点帰り」ができるフィールドだと。
タカハシ: なるほど。
小中: 大人も見てもらえるウルトラの新作が作れるっていうのは、まさにウルトラの原点に帰ることになるんじゃないかな。50年目の節目だし、原点に帰ってウルトラをやりたいっていうか、もともとウルトラってそうだったから、本来的な意味での「大人も観られるウルトラにもしたい」という思いです。
撮影:岩間 辰徳
タカハシ: 小中監督は63年生まれですけど、3歳の時の『ウルトラQ』の本放送を見てましたか?
小中: 見てましたけど、どこまでが最初の放送の記憶で、どこからが再放送かってもはや自分の中で定かではないんです。ものごころ付く前から見ていて、毎年のようにリピートしていたから、だんだん記憶が固まっていったという感じですね。
タカハシ: ウルトラファンに一番聞いちゃいけない質問なんですけど(笑)、一番好きなシリーズってあるんですか。
小中: 初代『ウルトラマン』ですよね。
タカハシ: 初代!
小中: うちの二つ上、というか学年は一つ上なんですけど、兄貴(脚本家の小中:千昭さん)が『セブン』好きなんですよ。その微妙な年の差がね、すごく分けていると思うんですよ。最初の刷り込み体験っていうか。
タカハシ: その頃見ていたウルトラ作品のエピソードの中で、いわゆる大人向けって観点で好きだっていうのはどれかありますか。
小中: 実相寺(昭雄)監督の回とかはだいぶ、大きくなってからですけど、実相寺さんっていう名前を意識して特別な思いで見てましたけど。なぜ僕が初代『ウルトラマン』が好きかっていうと、すごく明るい雰囲気が好きだったんですよね。
タカハシ: はいはい!
小中: ちっちゃい頃見たからだと思うんですけど、『セブン』ってムードが重いじゃないですか。
タカハシ: 重いですねー。
小中: で、ちょっと大人びた子供はそこに惹かれて。でも僕は最初に触れた時に、『ウルトラマン』の明るさにすごくワクワクした世代なんですよね。
タカハシ: 小中さんが監督された作品って、やっぱり基本的に爽やかさであったりとか、ファンタジックであったり、ジュブナイルな感じがすごくあるけれど、それは『ウルトラマン』の思い出も影響あるんですかね。
小中: そうですね。どちらかというと、兄が実相寺監督派で、僕が飯島(敏宏)監督派っていうテイストの嗜好っていうか。
タカハシ: あと、見てると「もしかしてレオ好きなのかな……」って思うんですけど。
小中: そうですか?
タカハシ: 『ゼアス2』特訓するじゃないですか。熱い『ウルトラマンダイナ』とか見た時も、実はレオも好きかなって思ったんですけど、そういうわけじゃないんですね(笑)。
小中: それはないですね。『ゼアス2』っていうのは、第2期ウルトラをやるっていう想いで作っていたので、そういう意味ではちょっと入っていますけど。
タカハシ: 『ゼアス2』って一番最初の氷山の戦いのところで、もういきなり負けるじゃないですか。あの絶望感が、『レオ』1話、2話の最初のセブンが負けるところっぽくて。結構僕見ていると、いつも小中監督の作品は、最初に戦いから始まるのがすごく多いじゃないですか。月面の戦いから始まったりとか、あの辺が第2期っぽいかっこよさだなって思って見てたんですけど。
小中: 映画って最初の掴みが大切ですからね。まあ、『007』と一緒で、最初にクライマックスがバンときてからタイトル、という掴みを作るには戦いから入るわけです。
タカハシ: そういうことだったんですね。あれを見てて、すごくワクワクしましたけどね、最初に戦いが来るっていう。
小中: 『ゼアス2』は『ウルトラマンティガ』と同時期に作っていたので、ある種、『ティガ』と差別化しようというスタッフの想いがあって。『ティガ』がどちらかというと『セブン』テイストだと思うんですよ。ハードボイルドSF志向だったから、こちらはそれに対抗して。『ティガ』は近未来っていう設定になったんで、あんまり町場でロケしてなかったんですよ。だから『ゼアス2』は今の現実の街の風景の中で怪獣とウルトラマンが出てきて戦うっていうのを、描こうと。『帰ってきたウルトラマン』ってそういうシリーズでしたよね。
タカハシ: ああ、そうですね。当時の現代ですもんね。
小中: 近未来の設定だった『セブン』に対して、『帰ってきた~』の舞台は現代で、すごく下町っぽい町工場が出てきて、夕日の中でウルトラマンが戦っている画っていうのも含めて当時のリアルな風景だったんですよね。だから『ゼアス2』は『ゼアス1』とも変えて、あえて下町を舞台にしました。その中で怪獣とウルトラマンが出てきて、その中でガソリンスタンドが基地になっちゃうって画を作っていって。
タカハシ: なかなかビックリする画作りですよね、あれ。
小中: 第2期っぽいテイストでやろうっていうのが、『ゼアス2』のテーマだったんですよね。僕が一番好きな第1期を『ティガ』がやっていたんで、ウルトラマンの幅を広げるっていう意味では、あえて第2期をやろうと。
タカハシ: すごいバランス感覚の中でやっているっていう部分もあるんですね。ウルトラマンシリーズ全体を見て。
小中: 当時の映画班とテレビ班っていうのは、別編成なんです。テレビシリーズを作っている同時期に映画を作らなくちゃいけないから、別スタッフでやって。僕は行ったり来たりしてましたけど、割と対抗意識的な物もあるんですよ。プロデューサーもスタッフも別ですから、それぞれに思惑があって。
タカハシ: ライバル的な感じもあるんですね。
『ORIGIN SAGA』のドラマ、センスオブワンダー
タカハシ: あと『ゼアス2』だと、当時見てて、高岡由香さんがものすごく可愛かったんですけど、ああいう配役の部分は、どれくらい噛んでいるんでしょうか。
小中: 噛む場合と噛まない場合がありますね。
タカハシ: 僕、小中監督の作品は基本少女が可愛い、女性が可愛いっていうイメージがあって、劇場版『ティガ ダイナ&ガイア 超時空の大決戦』の斉藤麻衣さんでしたっけ、あの作品でも可愛かったじゃないですか。彼女はあの作品がデビュー作なんですよね。先述の通り、小中監督の作品って少女が美しいっていうのがあるんですけど、ああいうのも結構自分で配役を選んだりするものなんですか。
小中: 割と少女ファンタジーを撮ってきたので、女の子のキャラクターをどう描くのか?っていう意味では、キャスティングは重要です。
タカハシ: 今回の『ORIGIN SAGA』でも少女キャラ的な方もいるんですか。
小中: メインになる女性キャラとしては、惑星カノンっていう宇宙の惑星が舞台なんですけど、アマテ女王というキャラクターを演じるのが福田沙紀さんなんです。彼女がヒロインの中心的存在で、しかも彼女が変身する設定があって、戦神(いくさがみ)っていう、惑星を守る守護神のような存在。
タカハシ: へえー! ウルトラの戦士的な。
小中: そうなんですよね。ある種、女性ウルトラマンに近いアマテというキャラクターがいて。主人公のガイがテレビシリーズ以前の話なんで、初めてオーブの力を手にするシーンから始まるんですけど、ルーキーウルトラマンの成長話っていう意味では僕の中では『ダイナ』とかと一緒なんです。キャラが違うので、ダイナとの雰囲気とは全然違うんですけど。アマテっていうのは、代々女王が化身して、「戦神」という惑星を守る巨大な戦士として戦わないといけないっていう血筋を持った人物なんですが、自分が戦士になって戦うことに対して躊躇しているんです。自分の身を案じているというよりも、それによって民が巻き込まれて苦しむということも知っているので。そこがガイと共通する部分で、ある種のルーキーウルトラマン同士が、お互いに同じような立場で、お互いに生き方に葛藤していくという。和泉元彌さんが敵役のドクター・サイキっていう狂気の科学者を演じるんですが、その侵略を受けている危機的状況に追い込まれているカノンを守らなくちゃいけない。だけど、本当に戦うことが正しいんだろうか、戦いを避けることはできないのかということをギリギリまで葛藤するアマテという人物と、ガイも誰一人として犠牲者を出さない戦いをしたいと思うのに、どこかで誰かを助けきれていないみたいな思いを抱えて戦っている。そういう2人が出会うという話で、戦うことをどう捉え、どう自分の中で折り合いをつけていくか、というシリーズなんですよね。
タカハシ: そこにジャグラーも味方側として出てくるってことですね。
撮影:岩間 辰徳
小中: そうですね。テレビシリーズでは敵対する二人ですが、この『ORIGIN SAGA』のトップシーンでは、ウルトラマンの力を巡って競っていたライバル同士として描かれています。結果的にガイがその力を手に入れるんですけど、ジャグラーもバディー(相棒)として、ガイをサポートするミッションを与えられ、二人で共闘していけということで、ことに当たるんです。その共闘関係からはじまって、シリーズが進む中で、だんだん二人の関係に亀裂が生じていきます。
タカハシ: 『スター・ウォーズ』エピソード1~3っぽい感じですね。
小中: 宇宙が舞台なんで、『スター・ウォーズ』は意識せざるを得ないんですけど、でも日本人が『スター・ウォーズ』もどきをやっても物量では絶対に勝てないし、独自の魅力がないと世界配信した時に見向きもされませんから、そういう意味ではすごい和風テイスト全開にしています。惑星カノンという場所自体が、カリカチュアというか、日本文化を宇宙の中で展開させた、異世界の日本なんですよ。日本刀をさしてたりとか、甲冑を着てたりとか、名前もアマテというのは、天照なんですけど。みんな漢字変換できそうな名前にしていて。
タカハシ: ものすごく意外ですね、英文字のタイトルから洋風な感じだと。
小中: ビジュアルはある種、和風寄りで、ある意味『宇宙からのメッセージ』なんかに近い感じかもしれないですね、和風スペースオペラという意味では。
タカハシ: それはめちゃくちゃおもしろそうですね。テレビシリーズを作る時には、まず子供がターゲットだと思うんですけど、今回のスピンオフを作るにあたって、例えば、「これくらいの年齢層のウルトラファン」とか、ないし「ウルトラファンでない層」とかっていうような、狙いの世代っていうのはあったりするんですか。
小中: あんまり、年代っていうのは意識していないんですけど、もともとウルトラマンって一般の人が見る、間口の広いシリーズだったから、一般的な映画ファンが見て楽しめるレベルを常に目指していますね。子供が見て、置いてけぼりにならないシリーズにしなくちゃいけないけど、一般的に映画として見たものとしても楽しめる内容にしたいなと思っているんですよね。
タカハシ: 常にそれは小中監督の作品を見ているとあると思います。
小中: そうですね。ジュブナイルであっても、子供は当然のこと、大人が見ても楽しめる作品にしたいと思っていますけど。
タカハシ: 僕、『ティガ ダイナ&ガイア』すごく好きなんですけど。あれって、子供が主役じゃないですか。だけど、その頃を思い出したら甘酸っぱい気持ちになれるというか、まあ、僕が30歳なんですけど、30歳で見ても面白いんですよね。
小中: ちょっと違うけど、あれもやっぱり、大人が観られるものは目指していますね。当時子役だった濱田岳くんが主役なんですけど。
タカハシ: すごいですよね。変わらない。
小中: 僕の枠品に影響を与えたものとしてはウルトラマンシリーズと、もうひとつNHK少年ドラマシリーズっていうのがあって。第一作が『時をかける少女』が原作の『タイムトラベラー』なんですけど、NHKが少年向けジュブナイルをドラマ化する上で、テーマ主義を打ち出していたんですよ。『タイムトラベラー』だったら、初恋の甘酸っぱさをSFで描くとか、『謎の転校生』だったら、核戦争の恐怖をパラレルワールドの転校生という設定を活かして描くとか。ちゃんと伝えるべきテーマをSFドラマとして表現するというのをやっていて。特撮をあまり使わずに、SFってこんなに面白くできるんだ!っていうことに目を見開かされたっていう思いがあります。お話でどうワクワクさせられるかという、普通の街を撮っているのに、異世界として見えるビジュアルのセンスオブワンダーっていうのもあるなっていう。『タイムトラベラー』が小学校4~5年ぐらいから始まったんで、ちょうどいいタイミングで見始めて、ウルトラで培った思いをね、ちょっと違う部分で見開かされて、今に至っていくんですけど。お話でワクワクしたっていう部分で言えば、ウルトラでも怪獣が格闘し始めてからはそんなに好きではなくて。
タカハシ: ドラマの部分が良かった。そういう意味でも第1期が良かったんですね。
小中: いろんな怪獣が出てきて。どんな奴でどんな設定で生まれてっていうのが、毎回ワクワクして。ウルトラマンが登場してからは大体同じだから。
タカハシ: まあそうですね。3分間のプロレスが(笑)。
小中: そういうワクワク感が好きだったんで、まあ、自分が作るときも、お話のワクワク感を一番考えているところなんですけど。
タカハシ: ちなみに、好きな怪獣ってあるんですか。
小中: これが大好きっていう怪獣があんまりないんですよね。こだわるのは世界観的なところなんでね。
タカハシ: そうなんですね。設定でこの怪獣が好きっていうこともない。いわゆる怪獣マニアではないんですね。
小中: そうなんですよね。
撮影:岩間 辰徳
大林宣彦監督、怪獣映画――
そして『星空の向こうの国』と『君の名は。』
タカハシ: 見てて思うのが大林宣彦監督っぽいと思う時があるんですよ。尾道三部作っぽい感じ。尾道三部作の時は何歳ぐらいの時ですか。
小中: 僕が高校から大学の時ぐらいですね。
タカハシ: 大林監督作品っていうのはリアルタイムで見ていたんですか?
小中: 僕のもう一つの原点は大林監督で、『HОUSE』が中学一年の時かな。で、その時もうすでに8ミリを撮り初めていたんですけど、大林さんの作品を見た時に衝撃を受けて、『HОUSE』で。日本映画ってぜんぜん、自分とは関係ないものだって思って見ていたものが、『HОUSE』を見た時に、自分も撮れそうだって言ったら語弊があるけれども、すごく近いものを感じたんですね。すごく自主映画の匂いを感じたんですね。だからもう一人の師匠です。その後大林監督の娘さんとは自主映画仲間になって、今の嫁さんは大林監督の娘さんの友達で知り合った。
タカハシ: ええ! そうなんですか。
小中: 『青春デンデケデケデケ』ではセカンドユニットの監督としてクレジットさせてもらって、お手伝いとかしているんですけど、師匠ですね、もう一人の。
タカハシ: やっぱり『HОUSE』とかって、もう、ビジュアルイメージがすごいじゃないですか。家が人を食うっていう、その例えば、監督の近作の『赤々煉恋』も虫男のビジュアルがあるじゃないですか。そういう「画にして面白い」っていうところも常に外さないと思ったんですよね。小中監督の作品を見ていると。
小中: そうですね。まあ、『ウルトラマン』で育っているから、センスオブワンダーって、「SFは絵だ」ってSF作家の野田昌宏さんが言った言葉なんですけど、子供の頃知らなかったけど、割とそういう刷り込みを、やっぱり『ウルトラマン』とか怪獣映画で受けていたんじゃないですかね。
タカハシ: ちなみに怪獣映画は、映画館で見ていらっしゃいましたか。
小中: そうですね、テレビとかで見はじめて、ゴジラなんかは映画館でかかると追いかけていた世代ですね。
タカハシ: 映画館で見ていた時はどのくらいの時ですかね。『ゴジラ対ヘドラ』の時ぐらいですか。
小中: チャンピオンまつり世代なんで。
タカハシ: 『オール怪獣大進撃』からの、一番ゆるーい時ですね。
小中: そのときに昔のやつも短縮版で見たりとか。
タカハシ: ああ、そうか。モスラもやってますよね。『モスラ対ゴジラ』とか『キングコング対ゴジラ』も。一番楽しい時ですね(笑)。
小中: 『ガメラ』は割とリアルタイムで見ているかな。結構ガメラ好きだったんですよ。
タカハシ: じゃあやっぱり明るいというか、突き抜けたものがあるものが好きなのかもしれないですね。子供心にゴジラを見てから、昭和ガメラを見ると、割となかなかすごいじゃないですか(笑)。今になってみれば楽しめるけど、小学校ぐらいの時にやっぱりゴジラを見たくて背伸びしたい気持ちでガメラを見ると、なかなか……。子供が歌うガメラのマーチが流れて。
小中: ほんとに年の微妙な差で変わるんですけど、僕は「ガメラマーチ」を歌えたギリギリの世代なんですよ。そういう気持ちになれた子供時代に出会っていますからね。
撮影:岩間 辰徳
タカハシ: いいですね。あの謎の無国籍感っていうか、必ず外人の子供が出てくる感じというか、すごい第1期ウルトラっぽいですよね。
小中: そうですよね。
タカハシ: 結局あの時代がいつの時代なのかわからない感じの子供の出かたというか。
小中: そうですね。海外売りを意識した時代だったんですよね。
タカハシ: お会いしたら聞きたいと思っていたことが一つあってですね、小中監督の『星空の向こうの国』が今話題になっていることをご存知ですか。
小中: まあちょっと。
タカハシ: 『君の名は。』ってご覧になりました?
小中: 観ました。
タカハシ: ちょっと似ているという意見もありますね。
小中: SNSの書き込みでそういう話題が盛り上がっているのでそういう先入観で見たら、そんなに似てないなっていうのが印象だけど、コンセプト自体は同じところがあって、赤い糸の伝説をどうロジックを作って、お話にするかっていうのは同じじゃないですかね。
タカハシ: なるほど。新海監督も結構ジュブナイル的な人ですね、SFファンタジーと日常の生活を合体させるところとか。そういう意味で、時代が変わって、相似形のものが出てきてるっていう感じがすごくしましたね。それが聞けてよかったです。観たんですね。
小中: どうでした、『君の名は。』?
タカハシ: 僕は面白かったですね。
幻の企画、『新ウルトラマン』
タカハシ: ちなみに『ウルトラマンG(グレート)』にも企画段階で関わっておられるとか?
小中: グレートそのものっていうよりも、『グレート』の前段階で、『新ウルトラマン』っていう企画があってテレビ局にプレゼンするために企画書を作ろうって呼び集められたんですよ。そのために若手の監督として僕が呼ばれて、ライター陣としては僕が兄貴を呼んで、あとは會川昇さんがいて、それで、小中兄弟でプロットを作ったんですよ。
タカハシ: ええ!!
小中: 『新ウルトラマン』のプロット。それで企画書は一度作られたんですけどテレビ局へのプレゼンがうまくいかなくて、一回解散になって、その後『新ウルトラマン』とは違う形で『グレート』の企画が立ち上がった。ライター陣が残って『グレート』の脚本に参加して、監督が海外の監督になったんで僕は呼ばれなかったという経緯があったんですけど。
タカハシ: 『グレート』の始まりと『ダイナ』の始まり方って、似ているじゃないですか。火星から始まるっていうのは、プロット出した段階からあったんですか?
小中: 『新ウルトラマン』ではそれはなかったんですけど、『新ウルトラマン』の内容は『ダイナ』にも反映しているし、『ティガ』にも反映しています。『ダイナ』で似ているシーンは、宇宙空間でウルトラの光と遭遇するっていうのが第1話であるんですけど、あれは『新ウルトラマン』の企画にもあったシーンだし、海底で超古代の文明に出会うっていう『ティガ』の設定も、『新ウルトラマン』でもあったんですよね。
タカハシ: 『グレート』でも古代生物が出てきますもんね。
小中: 『新ウルトラマン』をやる時は、『ウルトラマン80』以降のウルトラマンをもう一回テレビでやろうっていう時期だったから、僕らウルトラで育った世代が、ようやく作り手としてね、20代前半だったけど、参加できる立場にようやく立てた、最初の舞台だったんです。いかにウルトラ好きでも、それまでとは趣を変えなきゃいけないというのもあって、SFとしてウルトラマンをどう再構築できるのかということを考えた時に、一瞬にして50メートルの巨人に変身するときに、どういうロジックで、どう解釈したら良いんだろうということを、「超進化」というコンセプトで考えて。『ウルトラマンガイア』では光を主人公が自分で作った容器に収納して変身アイテムを作る設定があるんですよね。光と遭遇して、光の中で、人間の内なる進化の可能性を最大限に伸ばす光と合体することによって、瞬時に、超進化して50メートルの巨人になり、それが解けるとまた人間に戻れるみたいなロジックを作って。『新ウルトラマン』ではそういう、後々に分散して生かされていくアイデアが結構集約してあって。
タカハシ: すごいですね!
小中: それが僕と兄貴が作った最初のウルトラのたたき台というか原点があって、そこから派生したものをかなり内包しているんですよ。『ティガ』も『ガイア』も。
撮影:岩間 辰徳
タカハシ: 僕ら世代的に、本当にウルトラマンの放送が無かったんで、『グレート』の存在がすごくデカかったんですよね。『グレート』がなかったら、もっと早く卒業していた可能性があったんですよね。『グレート』があって、『グリッドマン』、『パワード』をはさんで、『ティガ』、『ダイナ』からの流れがあったのが、同じ企画からスタートしているのは感慨深いですよね。
小中: やりたいことを詰め込んだ企画書が流れちゃったんで、まあ、それを隙を見て紛れ込ませたっていうような。
タカハシ: 『電光超人グリッドマン』は2本だけ監督として関わっておられますけど、あれは、企画には関わっていないんですか。
小中: 関わってないですね。ご縁があって円谷プロさんとは付き合いがあったんで、呼ばれていって、本当はローテーションに入れればよかったんだけど、二本でお終いになっちゃんたんですけども、その時ご一緒した特技監督の佐川和夫さんとは、『ダイナ』でも組ませていただきました。
タカハシ: 『ダイナ』はまさに「超本格的なウルトラマン」ですもんね。『ダイナ』の1話2話、最終3話って、やっぱ、ウルトラマンシリーズで一番ぐらいの盛り上がりだと思うんで。
小中: 僕は『ティガ』は参加してなかったんですけど、『ダイナ』は『ティガ』の続編に位置づけられる二部作だったから、そういう意味では「二部作をちゃんと終わらせる『ダイナ』の最終回」っていう意味合いが強かったんで。『ダイナ』は『ティガ』とは違う明るい主人公の冒険ものだったんですけど、とはいえ『ティガ』の続編でもあるし二部作だから、着地点は『ティガ』を意識した重めにもしなくちゃいけないと。そういう思いでいたんですよ。
タカハシ: あれを見ると、すごい職人技だと思うんですけどね。前の作品の要素の使い方のうまさとか、すごいなと。
小中: そこは僕だけじゃなくて、『ティガ』をやってきた(脚本の)長谷川圭一さんとかも含め、ウルトラ愛っていうか作品愛として、「『ティガ』とは違う雰囲気に『ダイナ』はしてくれ」と言われながらも「変えちゃいけない」みたいな思いが僕らにはあって、すごい葛藤があったんですよ。変えなきゃいけないけど、ここは守らなくちゃいけない、みたいなね。その辺は映画とテレビも同じで、『ティガ』『ダイナ』と『ガイア』って、また全然違う世界観じゃないですか。
タカハシ: そうですね。
小中: 『ティガ・ダイナ&ガイア超時空の大決戦』の時、『ティガ』『ダイナ』は同じ世界観だけど、『ガイア』と共演させて欲しいというオーダーが来た時は困りました。どっちの世界にも悪い影響を与えない作品にするためにはどうしたらいいんだろうみたいな部分は、長谷川さんと僕が考えつつ、テレビの『ガイア』のシリーズ構成をやっていた兄貴に相談して「パラレルワールド設定でいくしかないだろう」といったアドバイスをもらったりしてました。その辺は作り手側が「作品を守ろう」という意識で協力していた部分です。
タカハシ: ちょっと『グリッドマン』の話に戻っちゃうんですけど。中盤で、地上に出そうになる話がありますよね。あれって、佐川監督的には、もっと本格的なウルトラみたいな感じをやりたい、という現れなんですかね。
小中: やりたいけど、みたいな……ですかね。
タカハシ: やっぱりそうですか。
小中: やりたいけど、電脳空間でやり続けるしかないんですよね。僕ものちに『ウルトラマンネクサス』で経験するんだけど、予算がない時に、ビル街を作って壊したりとか毎回できないから。とはいえ電脳世界も石膏ビルを作っていましたけど、そこらへんは予算から割り出して、世界を広げられないかなっていうのは企画設定の時点での判断です。
タカハシ: 多分、ある意味でもめちゃくちゃ先取ってますよね。ウルトラマンエックスがデータの鎧を装着するのもグリッドマンがやってることでしたし。
小中: あの当時、そこまでインターネットが普及していなかったから、ネットで繋がってる家電みたいな設定が、当時は全然ピンとこなくて、なんで?っていう感じだったけど、今ようやく意味がわかるっていう。
タカハシ: そうですね。『グリッドマン』って今すごく熱い感じがしますけどね。
小中: 今、『グリッドマン』はリメイクしたらすごくハマりやすいですよね。
タカハシ: 僕子供の頃は落ちてるパソコンを拾ったりしてましたからね(笑)。なんか入ってんじゃないかって。ジャンク・パーツに憧れて。最後になりますが、『ORIGIN SAGA』についてコメントいただければ。
小中: 今回の『ORIGIN SAGA』はウルトラマンシリーズを見て来た方にもより楽しんでもらえるような内容なんですが、全くウルトラを知らないとか最近のウルトラを全然見てなかったという人も、予備知識ゼロで楽しめる作品を目指して作っています。「特撮もの」と構えずに、ドラマとしても楽しんでいただけるものにしているつもりなので、ぜひ見ていただければと思います。
撮影:岩間 辰徳
【インタビュー後記】
どうも、オワリカラ・タカハシヒョウリです。いよいよ『サブカル風来坊!!』のタイトルもついて、本格始動したこの連載。
モロボシ・ダンか、クレナイ ガイばりの、「どこからともなく風来坊」スタイルで、色んなとこに行って皆様にお届けしますよ。
そして、いきなりさまよい出たのは円谷プロ! 最新作『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』のメイン監督にして、平成ウルトラマンの立役者でもある小中和哉監督にお会いできました。いきなり最高潮すぎる。とにもかくにも、突然来訪した謎の特撮オタクミュージシャンに、とても丁寧に、じっくり答えてくれた小中監督に心から感謝しております。すばらしいお人柄に触れられて、楽しすぎる時間でした。
小中監督のシリーズ全体を見る丁寧な目線と、何よりどんな時も「明るく爽やかなウルトラ」を愛する存在が、平成ウルトラマンシリーズの幅を作り、その可能性を広めてきたと改めて確信。
『ORIGIN SAGA』もどんな作品になっていくか、楽しみです。入りましたよ! Amazonプライム。
聞きたいことをたくさん聞けたけど、しかし、今思い返すと『ULTRAMAN』や『ネクサス』の話もすれば良かった……と、まだまだ修業中の風来坊であった。さてさて、次回はどこにさまよって行こうか。ふーらりふらふら風来坊。次回に続く!
2016年12月26日よりAmazonプライム・ビデオにて配信開始
放送時間:月曜更新
放送期間: 2016年12月26日 -(12回)
監督:小中和哉、おかひでき
出演者:石黒英雄、青柳尊哉、福田沙紀、前川泰之、榎木孝明、和泉元彌、つるの剛士、杉浦太陽
公式サイト:http://m-78.jp/orb/saga/