分島花音 自身のライフワークとも言える『The strange treat!』で見せた“スイングしていく連帯関係”
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撮影:IDE, maco
分島花音 The strange treat ! holy night aquarium
2016.12.14(wed) 日本橋三井ホール
分島花音がライフワークの用に定期的に行っているコンセプトライブ『The strange treat!』。今回は「holy night aquarium」と銘打って行われた。
舞台をレストランに見立て、お客様をシェフ(=アーティスト)たちが音楽でおもてなしするという作りのこのライブだが、会場となった日本橋三井ホールはライブハウスと言うにはちょっとシックな作り。客席も前方はスタンディング、後方は自由席で座っても楽しめるという形になっていた。開演前から会場ではミラーボールがくるくると回りつづけ、スノードームのような雰囲気を醸し出す。
分島花音が一筋縄では行かないアーティストなのはよく知っている。アニソンシンガーとしても有名な彼女だが、チェロを弾きながら奏でる音楽は多種多様だ。ロック、ジャズ、クラシックの文法も取り入れた楽曲たちも今回のライブではシェフの腕前でどう輝くのか。
撮影:IDE, maco
レストランの開店を模したようなバンドのセッションのあとに登場した分島。一声目は「いらっしゃいませ!」とコンセプトに沿った言葉を放ち、1曲目に「The strange treat!」を振る舞う。トランペット、トロンボーン、アルトサックス、テナーサックス、バリトンサックスの金管が8本。それにピアノ、ギター、ベース、ドラムという豪華編成だ。一音目からわかる豪華さ、場所、セット、音、コンセプト、全てが合わさり、まるでムーランルージュのようなグランドキャバレーにいるような錯覚を覚える。
「本日のフロアリーダー分島花音です。今日は最高に美味しい音楽をお腹いっぱい召し上がれ!」
楽しげにMCをする分島。サブタイトルの「holy night aquarium」に関しては「水槽と、吹奏楽をかけたという……シャレみたいなもんなんですけど」とちょっと気恥ずかしそうに笑う。どこかクールな印象がある分島花音の茶目っ気が見え隠れした。
2曲目には観客と一体になる決め曲の1つ「RIGHT LIGHT RISE」。ライブ後半で演奏されることの多いこの曲が2曲目に披露されたことで客席からはちょっとしたどよめきが。分島ライブグッズの必須アイテムでもある旗を使った旗振りゲームが印象的なこの曲。序盤からホール全体がひとつにまとまっていく。
撮影:IDE, maco
「平凡な僕」、「Unbalance by Me」と立て続けに演奏した後に披露されたのは代表曲でもある「killy killy JOKER」。ブラス編成で鳴らされたイントロでは客席からは驚きの声もあがる。聞き慣れた楽曲が楽器やアレンジを変えることによって違う印象を持つこともある。頭ではわかっていても実際目の前でそれを提示された時の新鮮さ。まさにシェフの腕の見せ所だ。
あくまでも筆者の主観であるが、掛け値抜きでこの日の分島花音の歌は、ここ最近の彼女のライブの中でも抜きん出ていた。前々からライブでは披露され、最新アルバムで遂に音源化したファン人気の高い「odette」や、アニメ『ストライク・ザ・ブラッド』後記EDテーマである「signal」で響いた彼女の声はこれまでとは比べ物にならないほど遠く、広く響き渡る。シンガーの成長を感じるというのはあるが、まるで突然変異のように開花したその歌は胸に突き刺さる。
撮影:IDE, maco
分島花音は事あるごとに「CDを売る時代はもう過ぎ去っていて、ライブに来てもらうことこそがアーティストとして提供すべきものだと思う」と発言している。その覚悟からなのか、“こうしなければならない”の殻を破った彼女はこんなにも自由で、こんなにも楽しげで、人の心を共振させていく力を秘めていた。
ライブ仕様で演奏された「さんすくみ」などはその最たるもので、原曲ではデジタルポップの雰囲気をもった可愛らしいこの曲が、アーバン感たっぷりのグルーヴィなバンドサウンドに早変わりしていた。驚きとともに既存の楽曲の新たな良さも発見できるアレンジはバンマスのsugarbeansによるもの。ライブ直前までビッグバンド用にアレンジを作り続けた彼の労力は会場の歓声と拍手によって少しは労われていれば良かったのだが。
最新アルバム『luminescence Q.E.D.』から披露された新曲「ノットフォーセール・フォッシル」と「the BEAST can’t BE STOpped」はアルバムの中でも激しいサウンドの2曲。チェロからギターに持ち替えた分島が歌う姿は新鮮であり、掛け値抜きのロックサウンドを見せつける。続く「Love your enemies」や「ツキナミ」では今まで以上に伸びやかに歌い上げる。「ツキナミ」では楽しさのなのか、後奏のチェロを一瞬弾き忘れるハプニングも。
撮影:IDE, maco
「人の人生ってものに音楽というドレッシングをかけたら、もっとドラマチックに豊かに出来るんじゃないかな?」
音楽無しでは行きていけないという分島が言葉に出した「音楽というドレッシング」には、今の彼女が感じるユーザーに対しての向き合い方のような物を感じた。
自分が提供する音楽に彼女は不安を持ちながらも、自信を持って提供していると思う。それはこのライブを見れば伝わることで、こういうやり方、こういう楽曲はどう?私はこんな思いを込めているよ!今こう感じているよ!と一音一音ビリビリ伝わるようなサウンドを投げかけてくる。
しかしそれをどう捉えるかはお客様次第、どう感じて何を持って帰るかはやはりフロアにいる我々が感じ取るものなのだ。そこには同じ空間で同じものを共有した、ライブ会場だからこそ生まれる連帯感がある。
撮影:IDE, maco
「ザ ドールハウス!」、「スイングしなけりゃ意味ないね」、「芸術家のかわいい想像たち」と立て続けに披露する、分島花音率いるsnowdome bigbandは正に会場全体を“スイング”させていく。アニソンシンガーと言われる人のライブでこんなにも心地よくフロアが横揺れしているのは初めて見たかもしれない。
思い切り拳を突き上げ飛ぶライブも最高だが、こんな平日の夜、緩やかに好きな音楽を聞いて、揺れながら一杯飲むなんて最高の時間じゃないか。声に出してそう言いたくなる空間がそこにはあった。
撮影:IDE, maco
「Drink Drunk Music」で高らかに歌われる<お疲れの皆様 音楽を一杯どう? 身も心も癒されて 飛ばしてみない?>という歌詞。まさにこの通りの内容となった素晴らしいライブだった。
カーテンコールではお馴染みとなりつつある「プリンセスチャールストン」でお開き。最後まで会場のスイングは止まらなかった。いや、きっと今も分島花音の音楽は僕達の心を揺らし続けている。それは大きな波紋となり、波になって音楽界に変革をもたらすかもしれない。そんな願いを持ってみたって良いじゃないか。だって人生は“スイングしなけりゃ意味ない”のだから。
撮影:IDE, maco
文・レポート=加東岳史
02.RIGHT LIGHT RISE
03.平凡な僕
04.Unbalance by Me
05.killy killy JOKER
06.odette
07.signal
08.さんすくみ
09.ノットフォーセール・フォッシル
10.the BEAST can't BE STOpped
11.Love your enemies
12.ツキナミ
13.ザ ドールハウス!
14.IT DON'T MEAN A THING
15.芸術家のかわいい想像たち
16.Drink Drunk Music
<Encore>
En1.プリンセスチャールストン
会場:東京/渋谷 WWW
時間:17:30 / 18:00 OPEN / START
日程:2017/3/25(土)
会場:京都 MOJO
時間:17:30 / 18:00 OPEN / START
「BLUE BEAST BIOLOGY Q.E.D. ver.」
会場:福岡 DRUMBe-1
時間:17:30 / 18:00 OPEN / START
日程:2017/4/30(日)
会場:広島/セカンドクラッチ
時間:16:30 / 17:00 OPEN / START
日程:2017/5/14(日)
会場:仙台 MACANA
時間:16:30 / 17:00 OPEN / START
日程:2017/5/20(土)
会場:名古屋 SPADE BOX
時間:17:30 / 18:00 OPEN / START
日程:2017/5/21(日)
会場:大阪 / umeda AKASO
時間:16:00 / 17:00 OPEN / START
日程:2017/7/17(月・祝)
会場:東京 /TSUTAYA O-EAST
時間:17:00 / 18:00 OPEN / START