「ロックバンド流のクリスマスライブ」は昼夜2公演・全44曲! BIGMAMAのXmasライブを完全レポート
-
ポスト -
シェア - 送る
BIGMAMA 撮影=高田梓
BIGMAMAnniversary 2016~2017 MAMonthly Special
「BIGMAMA 2016 Xmas Special Live」 2016.12.23 赤坂BLITZ
初のCDリリースから10周年である2016年、そして現メンバーになってから10周年となる2017年。どっちだって大切なんだ!という何ともこのバンドらしい理由でこの2年間を『BIGMAMAniversary 2016~2017』と題し、まるっとアニバーサリーイヤーにしてしまったBIGMAMA。今年2016年は毎月自主企画ライブを行ってきたわけだが、そのラストを飾ったのが今回レポートする『BIGMAMAnniversary 2016~2017 MAMonthly Special「BIGMAMA 2016 Xmas Special Live」』である。クリスマスワンマンは近年このバンドにとって恒例となっているが、今年はさらにちょっと特別。2012年に開催された昼夜2公演制のクリスマスライブを現在のBIGMAMA流に再現するという趣旨のものだという。各回で異なるプログラムが繰り広げられるということだったので、昼夜通して赤坂BLITZに潜入してきた。計4時間近く、メドレー内の楽曲を含めると全44曲! 言うまでもなく、超濃密なライブだった。
BIGMAMA 撮影=高田梓
昼の部 ~帰ってきたHoly Xmas~
まずは、BIGMAMAの中でもとりわけロマンティックなナンバーを中心とした、カップルおすすめセットリストで構成された「Holy Xmas」。リースやツリーなどクリスマス仕様の飾りつけがなされたステージへ視線を向けながら、開演を待つフロアの雰囲気もどことなく穏やかだ。
BIGMAMA 撮影=高田梓
定刻を少し過ぎた頃、「交響曲第9番」(ベートーヴェン)の聴き慣れた旋律が組み込まれたSEをバックにメンバーが登場。5人が定位置についたあと、柿沼広也(Gt/Vo)のカッティングを機に大きな歓声が溢れ出した。1曲目は「ダイヤモンドリング」。クリスマスとはまた別の、皆既日食という“聖夜”を描いたこの曲は、確かにロマンティック必至。フロアの空気が一気にほころんだところで、「メリークリスマス、赤坂!」と金井政人(Vo/Gt)が挨拶した。以降、5曲目「A KITE」まではメンバーいわく「例年通り厳かでクリスマスっぽい流れ」。対して、歌い出しの時点で会場がざわついた「We have no doubt」(2007年リリースの1stフルアルバム『Love and Leave』より)からの3曲は、「ロックバンド流のクリスマスライブ、おもてなしを」「今日は懐かしい曲も用意してますので」という言葉通りの選曲。モッシュもクラウドサーフも発生してもみくちゃ状態のフロアをさらに焚きつけるようにリアド偉武(Dr)が8ビードを刻み、金井がダメ押しのようにシンガロングを促した。
BIGMAMA 撮影=高田梓
そしてクリスマスならではの演出も二つあった。一つ目は、短いインターバルを挟み、5人がサンタ姿に衣装チェンジしたあとに行われた、毎年恒例のプレゼントコーナー。これは入場時に回収された
BIGMAMA 撮影=高田梓
リアド:サイン入りドラムヘッド&自作カレンダー(8月に期間限定で営業していた「BIGMAMA Cafe & Bar」で展示された写真を使用)
東出真緒(Vn):実際に愛用していたワンピース&ストール
柿沼:MV撮影で着用した靴&オフィシャルグッズのキャップ
安井英人(Ba):スタバのコーヒー&ブーツ型のお菓子セット(クリスマスの時期によく見かけるあれです)&DVD
金井:取材などで着用したセットアップ
BIGMAMA 撮影=高田梓
因みに金井のプレゼントは、「大きいのと小さいの、どっちがいい?」という質問に対して当選者が「大きい方!」と答えたためこういう結果に。小さい方のプレゼントは夜の部に持ち越されることとなった。そしてこの日ならではの企画二つ目は、中盤に披露されたカバー曲。「Last Christmas」(ワム!)も良かったが、個人的にはファンクやAORに寄せた「夜空ノムコウ」(SMAP)の大人っぽいアレンジが印象に残っている。弾むようなリズムのループ、バイオリンのピチカートによる響き、語尾を止めるような歌い方……など新鮮な要素多数で、バンドの新たな表情を垣間見ることができた。
BIGMAMA 撮影=高田梓
さらにこの日ライブが初披露の新曲「Make Up Your Mind」と前日にMVが公開されたばかりだった「Merry-Go-Round」も演奏。アンコールでは来年3月に7thアルバム『Fabula Fibula』を発売すること、2月10日の恵比寿リキッドルームワンマン(この5人で初めてステージに立ったのが10年前の同じ日、同じ会場なのだという)、春にまわる全国ツアーの日程など、この先が楽しみになる告知も解禁されたのだった。
BIGMAMA 撮影=高田梓
夜の部 ~帰ってきたLonely Xmas~
昼の部終演からわずか1時間半後、18時になると早くもこの日二度目の開場時間。そこからピッタリ1時間後には、世の中の浮かれたムードを吹き飛ばす殺伐とした楽曲を中心とした、おひとり様おすすめのステージ「Lonely Xmas」のスタートだ。
「みなさん、大暴れする準備はできてますか!?」と金井が問いかけるまでもなく、エレキギターとバイオリンがせめぎ合う「荒狂曲"シンセカイ"」のイントロが鳴らされたその瞬間から、人の波がステージ目がけてグワーッと押し寄せる。あまりの凄まじさに若干驚きつつも笑顔で応えるのが東出、一心不乱に楽器を掻き鳴らしてはオーディエンスをさらに高揚させるのが柿沼だ。昼間とはだいぶ違うテンションのフロアを目の前に、バンドも野生的なアンサンブルで応戦。「よくこんな日にライブハウスを選んでしまったね。そんな貴様らにちょうどいい、僕らなりに最高にロンリーな曲をお送りします」と、金井のMCも毒っ気が多い。
BIGMAMA 撮影=高田梓
昼の部と同じく、8曲目のあとには衣装チェンジとプレゼントコーナーが。5人が用意したプレゼントはもちろん昼の部とは異なるが、先ほどと大きく違った点は、安井が金井をマネして大小選択制のプレゼントを持参したこと(お客さんは大きな方を選んだあと、小さな方の中身は100円だったことを明かし、場内がざわつく……笑)。さらに、金井が用意した小さな方のプレゼントが「あなたのテーマソングを制作して贈ります」という“形のないプレゼント”だった(!)ことが明らかになったこと。
BIGMAMA 撮影=高田梓
また、夜の部では、「ここにいる方々ならついてこれると思うんですよね。だんだん分かってくると思うので」という意味深な言葉のあと、計10曲を一繋ぎにしたメドレーが披露された。とはいえただ単に10曲を連続して演奏するのではなく、「CPX」から始まったかと思えばサビには行かず「"MISSION 481"」のサビにワープする、「走れエロス」の<Melos spring has come>というフレーズから「little cloud」を挟んで「春は風のように」に繋ぐ、「I Don't Need a Time Machine」から「神様も言う通りに」へと繋げストーリー性を持たせる、など流れがとにかく秀逸。終わったあと、フロアからは興奮の声がたくさん上がっていく。
BIGMAMA 撮影=高田梓
嵐のようなメドレーの最中、次が何の曲かを察する度に嬉しそうにリアクションするオーディエンスを見ていたからか、金井が「もう信頼できる」と呟き、「次の曲もあんまり知ってる人はいないけど、みんなついてきちゃうんでしょ?」と「Make Up Your Mind」へ。新曲とは思えないほどの大きなシンガロングを巻き起こした同曲以降の5曲は、昼の部を踏襲した選曲だ。ジェットコースターのような急展開を見せる本編ラストブロックは、演奏的には数時間前よりも地に足がついているような感じがしたが、リアドが立ち上がってオフマイクで叫んだり、ステージ上をひらひら行き来する金井と柿沼があわや衝突しそうになって笑いあっていたり、メンバーのテンションの昂りが読み取れる場面は多数。「最後に心から……笑おうぜ赤坂ー!」という金井の叫びを前に無数の拳が上がった「Sweet Dreams」、歓喜の爆発のような光景を生み出した「MUTOPIA」と、ハイライトをハイライトで塗り替え続けながら本編は幕を閉じた。
BIGMAMA 撮影=高田梓
――という2本のライブには、「Holy Xmas」「Lonely Xmas」という対をなすコンセプトが象徴する通り、BIGMAMAの愛すべき歪さがよく表れていた。そういうこのバンドの“らしさ”がそのまま出ていたのが、この日のライブが素晴らしかった大きな理由のひとつだと思う。
例えば、昼の部序盤、徹底的に“二人”の世界を構築していく曲が続く中で改めて実感したのは、このバンドの曲はいくらロマンティックだろうと、甘さの裏に存在するある種の強かさを忘れずに描いているということだった。真っ白な糸を真っ赤な嘘で染め上げて“運命”に仕立て上げたり、血まみれになろうともガラスの靴に自分の足をねじこんだり――と、曲の中の登場人物たちは少々クレイジーなのだが、つまり幸福を掴みに行くためにはそれだけのエネルギーが必要だということ。“不変の絆なんて存在しない”“運命なんて信じきれない”“他人同士ならば完全に理解しあえることなどない”という気持ちがバンドの根本に存在しているからこそ、今のBIGMAMAが膨らませる幸福感の中には常に適度な緊張感が混ざっているのだと思う。
BIGMAMA 撮影=高田梓
また、曲の中で描かれているそういうマインドは、このバンドが聴き手と向き合う時の姿勢と通ずる部分も多い。目の前に広がる光景が永遠に続くなんて過信できないからこそ、年に何十回も訪れるライブという空間をただのルーティーンに終わらせないために、飽きず/飽きさせずの風通しの良い関係性を絶やさないために、彼らは思考を巡らせ、仕掛けを用意する。そうやって練り上げた部分が今回のクリスマスライブで言うプレゼントコーナーやカバー、メドレーなどの企画モノなのだが、一方で、人と人とが顔を突き合わせるライブの場ではどうしても感情が溢れてしまうことを自覚しているからこそ、新曲「Make Up Your Mind」は「みんなで作り上げる曲」だと紹介されたし、夜の部の本編ラストではああいう形でハイライトが生まれたのだろう。
BIGMAMA 撮影=高田梓
甘さの裏にある強かさ。幸福感の中にある緊張感。緻密に構築していく美学と、それをはみ出していく衝動の美しさ。矛盾の上を転がっていくことの楽しさを真っ向から見せられたライブだったからこそ、MCで金井が話していた『Fabula Fibula』の構想にもワクワクさせられた。独自の法律(ルール)を持った都市(まち)をそれぞれの曲を通して描いていく――という手法で作られたというアルバムは、ロマンティックな現実主義者であるこのバンドの、ややこしくて面白くて面倒くさくて愛おしい部分を存分に引き出してくれそうだ。「今何を強く思っているのかというと……他の誰かができること、別に俺がやらなくてもいいのかなって。BIGMAMAだからこそできることがあるという確信があるんです」と金井が手応えを語っていた次作の到着を、ひとまず今は楽しみに待っていたい。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=高田梓
BIGMAMA 撮影=高田梓
「BIGMAMA 2016 Xmas Special Live」 2016.12.23 赤坂BLITZ
1. ダイヤモンドリング
2. 最後の一口
3. 秘密
4. 春は風のように
5. A KITE
6. We have no doubt
7. Neverland
8. 計算高いシンデレラ
9. Last Christmas(カバー)
10. 夜空ノムコウ(カバー)
11. Make Up Your Mind
12. No.9
13. ワンダーラスト
14. Sweet Dreams
15. MUTOPIA
[ENCORE]
16. Merry-Go-Round
17. SPECIALS
18. My Greatest Treasure
1. 荒狂曲"シンセカイ"
2. アリギリス
3. #DIV/0!
4. Sleeping Beauty ~二度寝する眠れる森の美女~
5. I'm Standing on the Scaffold
6. かくれんぼ
7. alongside
8. Mr. & Mrs. Balloon
[メドレー]
9. CPX
10. "MISSION 481"
11. Overture
12. Swan Song
13. 走れエロス
14. little cloud
15. 春は風のように
16. I Don't Need a Time Machine
17. 神様も言う通りに
18. the cookie crumbles
19. Make Up Your Mind
20. No.9
21. ワンダーラスト
22. Sweet Dreams
23. MUTOPIA
[ENCORE]
24. Merry-Go-Round
25. Weekend Magic
26. My Greatest Treasure
2017年02月10日(金)
恵比寿LIQUIDROOM
OPEN 18:00 / START 19:00
一般発売日 2017年01月08日(日)
プレイガイド e+
TOTAL INFO. Livemasters Inc. 03-6379-4744
BIGMAMA「ファビュラ旅行記 2017」
05/14(日) 母の日 ZeppTokyo
05/27(土) 福岡DRUM Be-1
06/11(日) 仙台Rensa
06/17(土) 高松MONSTER
06/18(日) 広島CLUB QUATTRO
06/24(土) 大阪なんばHatch
06/25(日) 名古屋Zepp Nagoya
07/01(日) 札幌PENNY LANE24
07/08(土) 金沢EIGHT HALL
07/09(日) 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
...and more
一般発売日 2017年 04月 09日 (日)
プレイガイド e+ / ぴあ / ローソン
TOTAL INFO. Livemasters Inc. 03-6379-4744