鈴木舞と岩崎洵奈、ヴァイオリンとピアノで物語るクラシックのドラマ性

レポート
クラシック
2017.1.25
鈴木舞(ヴァイオリン)&岩崎洵奈(ピアノ)

鈴木舞(ヴァイオリン)&岩崎洵奈(ピアノ)

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鈴木舞&岩崎洵奈が物語る楽曲の“ドラマ” 第50 回“サンデー・ブランチ・クラシック”2016.10.30ライブレポート

eplus LIVING ROOM CAFE&DININGで毎週日曜日に開催されている『サンデー・ブランチ・クラシック』。毎週、様々なアーティストが登場してくれているが、50回目となるこの回には、『サンデー・ブランチ・クラシック』に初出演となるヴァイオリニストの鈴木舞と、3度目の出演となるピアニストの岩崎洵奈と共に登場した。

ドレッシーな装いで、揃ってステージに登場した2人が、音を合わせ、呼吸を合わせ、まず演奏してくれたのはシューマン作曲(アウアー編曲)の『献呈』。作曲者であるシューマンが、妻クララと結婚する際に贈った曲と言われる愛の詰まったメロディを、豊かなヴァイオリンの音色と優しいピアノの旋律で奏で上げる。

1曲目を終えると、鈴木が「今日はたくさんの方にいらして頂きまして、ありがとうございます。今日はピアニストの岩崎洵奈さんと一緒に、名曲の数々を演奏させていただきます」と挨拶を述べた。2012年度のシャネル・ピグマリオン・デイズ・アーティストで一緒になったことをきっかけに交流をしてきたという鈴木と岩崎は、演奏中も時折視線や笑顔を交わし、仲の良い関係を伺わせた。

鈴木舞

鈴木舞

ここからは、それぞれのステージへ。まずは、鈴木がヴァイオリンのソロを聴かせる。最初の曲はバッハ作曲「無伴奏パルティータ」3番プレリュード。この曲は、テレビなどのBGMとして耳にしたことがある方も多かったのではないだろうか。

続いては、イザイ作曲「無伴奏ソナタ」第2番 1楽章を選曲。この曲には、バッハの「無伴奏パルティータ」からの引用が含まれている。さらに、鈴木は「この曲には、バッハの曲だけでなくグレゴリオ聖歌の『怒りの日』が(循環主題として)入っています」と解説し、そのメロディの一節を披露してくれた。このメロディは、イザイの「無伴奏ソナタ」だけでなく、リストやサンサーンスなども取り入れている。そんな楽曲の関連性を感じるのも、クラシックの一つの楽しみである。

岩崎洵奈

岩崎洵奈

続いては、岩崎がソロとしてステージに立った。「この曲は、私にとってとても思い出深い曲なんです」と、ソロ曲として選んだのはショパン作曲「幻想即興曲」。なぜ思い出深かったかというと、「とても好きな曲だったんですが、聴くばかりで演奏する機会はピアノに触れてからかなり経ってからで……。改めて楽譜を見て、本当に驚いたんです」と衝撃を受けたからだという。岩崎が衝撃を受けたのは「左手と右手の紡ぐそのリズムがずっとズレている」という点。

ショパンのこの曲は、右手が四拍子、左手は三拍子で進んでいく。ここで岩崎は「『幻想即興曲』の右手と左手の拍が揃っていたら?」という“もしも”を実演。すると……あの美しいメロディが、なんとも言えないめちゃくちゃな曲に! 思わず首をかしげたくなるその流れに、会場からは思わず笑いがもれた。「あえてのズレた拍子だからこそ、時が経っても愛される続ける名曲なんですね」と、改めて名曲を奏でてくれた。

鈴木舞&岩崎洵奈

鈴木舞&岩崎洵奈

ソロを終え、再びデュオとして2人がステージに揃うと、フォーレ作曲「子守歌 ベルスーズ」。この曲について、鈴木は「フォーレは、ある人の子どもに毎年1曲ずつプレゼントしていて、この曲はその子の1歳の誕生日に贈られた曲です。その子の母親とフォーレは交際をしていたと言われているんですが、当時フォーレもその女性も結婚していて……」と、曲の持つドラマ性を教えてくれた。音楽の持つ普遍の魅力と裏に潜む物語。クラシックは奥深い。

鈴木舞

鈴木舞

最後は、クライスラー曲「踊る人形」、「愛の悲しみ」、「愛の喜び」を3曲続けて演奏してくれた。「踊る人形」は、クライスラーの楽曲の中ではあまり有名な曲ではないが、鈴木は幼い頃から大好きな曲だと紹介。フランス人形がくるくると踊っているような、そんなイメージを連想させる軽快な音色を響かせた。そして、対となる「愛の悲しみ」と「愛の喜び」では、それぞれの“愛”の形を表現。素晴らしい楽曲が誕生した裏には、作曲者の感情が潜んでいる。それを知ることで、なんとなく耳にしていたメロディがドラマを持つ。鈴木と岩崎は、鮮やかな演奏でその“ドラマ”を物語った。

インタビューの様子

インタビューの様子

30分の演奏を終えた鈴木は「お客様がすごく身近に感じられて、楽しんで演奏させて頂きました」と笑顔で語った。岩崎も「今までソロで出演させて頂いていましたが、今日は鈴木さんと一緒に、おうちにいるようなリラックスした雰囲気で演奏できました」と振り返る。

また、この日の最後には、鈴木から「2017年に、CDをレコーディングさせて頂けることになりました!」と嬉しいお知らせがあった。CDについて、鈴木は「フォーレの作品など、フランスものをメインとしたものにしたいなと思っています」と明かしてくれた。

CDに焼きつけた一瞬、そして、プログラムの組み合わせや演奏者の呼吸などで生まれる生演奏のドラマ。それぞれの形で、音楽という‟物語”に触れて楽しんでほしい。

岩崎洵奈(ピアノ)、鈴木舞(ヴァイオリン)

岩崎洵奈(ピアノ)、鈴木舞(ヴァイオリン)

毎週日曜日、渋谷のカフェで行われる『サンデー・ブランチ・クラシック』。食事を楽しみながらクラシックが聞ける唯一の空間だ。


取材・文=友成礼子 撮影=荒川 潤

プロフィール
鈴木舞(ヴァイオリン)
2005年大阪国際コンクールグランプリ、2006年日本音楽コンクール第二位、2007年チャイコフスキー国際コンクール最年少セミファイナリスト。 2013年ヴァツラフ・フムル国際ヴァイオリンコンクール(クロアチア)で第一位、オーケストラ賞。オルフェウス室内楽コンクール(スイス)第一位。2016年スピヴァコフ国際ヴァイオリンコンクール(ロシア)第二位。 東京芸術大学附属高校から同大学に進んだのち、ローザンヌとザルツブルクでピエール・アモイヤル氏に師事。在学中より内外でリサイタルやコンサートに出演し、小林研一郎、円光寺雅彦、飯森範親、金聖響、ニコラス・ミルトン、ヨルマ・パヌラ、イヴァン・レプシックらの指揮で、読売日響、東響、日本フィル、東京シティフィル、山形響、日本センチュリー響、名古屋フィル、広島交響楽団、神奈川フィル、ホーフ響、クロアチア放送響、ザグレブ・ゾリステン、ドブロブニク響等と共演し、バッハ、ベートーヴェン、パガニーニ、ラロ、シベリウスなどの協奏曲を演奏している。
最近ではフィンランド・クオピオ交響楽団と共演したショスタコーヴィチ第1番、チェコ・モラヴィアフィルとのモーツァルト第5番、クロアチア・ザグレブフィルとのメンデルスゾーン、スイス・ローザンヌ室内管とのプロコフィエフ第2番などが好評を得ている。 東京交響楽団と録音したベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲?第3楽章、マスネ:タイスの瞑想曲が日経ミュージックセレクションCD「モーニング・イン・クラシックス」に収録されたほか、山形交響楽団とのモーツァルト第4番は、e-onkyo musicのネット配信で聴く事ができる。将来を嘱望される新世代のヴァイオリニストとして、2012年度シャネル・ピグマリオン・デイズ・アーティストに選ばれた。2012年、2013年度、文化庁芸術家在外派遣研修員。2015年度、公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション奨学生。
使用楽器は1683年製のニコロ・アマティ。ミュンヘン在住。

岩崎洵奈(ピアノ)
東京藝術大学器楽科ピアノ専攻卒業。ウィーン国立音楽大学ピアノ科にてヤン・イラチェック氏に師事。室内楽、伴奏法をマインハルト・プリンツ氏に師事。2003年第14回彩の国埼玉ピアノコンクール一般部門金賞受賞、埼玉県知事賞受賞、ヤマハ賞受賞、2003年第2回名古屋国際コンクール、ファイナリスト、奨励賞受賞。2005年第15回八千代音楽コンクールファイナリスト、奨励賞受賞。2008年第4回ウィーン国立音楽大学ヨーゼフ・ディヒラーコンクール第2位。2010年ヴァル・ティドーネ国際音楽コンクール(イタリア)第5位、シュリッツピアノアカデミー国際コンクール(ドイツ)第3位、ライプツィヒ・シューマンハウス賞、ヘッセンムジークアカデミー賞受賞、ロータリークラブ奨学金授与。2010年第16回ショパン国際ピアノコンクール(ワルシャワ)においてディプロマ賞受賞、審査終了後、審査員のマルタ・アルゲリッチ氏より賞賛を受ける。2011年トレロドネス国際音楽フォーラムフェスティバル(マドリード)に招待されショパンのピアノ協奏曲1番を演奏。2011年11月には、岡崎市コロネットにてザ・プレミアムトーク~世界一流のマエストロ ウラディミール・アシュケナージ氏を迎えて~に出演、賞賛を受ける。また、仙台フィルハーモニー管弦楽団、NHK交響楽団のメンバーと室内楽で共演。平成21年度文化庁新進芸術家海外研修生。これまでに、オーストリア(ウィーン、ザルツブルク)、スペイン(マドリード、バルセロナ、バレンシア)、ポーランド(ワルシャワ)、ベルギー(アントワープ)、ドイツ(フランクフルト)でのリサイタルに出演。2012年度、CHANEL Pygmalion Daysアーティストに選出。2013年、2月、NHK-FM「リサイタル ノヴァ」に出演。これまでに三ツ橋敬子指揮セントラル愛知交響楽団定期演奏会、名古屋フィルハーモニー管弦楽団、現田茂夫指揮神奈川フィルハーモニー管弦楽団等と共演。2015年9月には、東京文化会館にて第515回日本モーツァルト協会例会演奏会にて、ヴァイオリニストのセルゲイ・マーロフ氏と共演、「音楽の友」誌にて、絶賛される。2013年4月より、ベーゼンドルファージャパンにて、インペリアルピアノレッスン講師。2015年日本アコースティックレコーズより、デビューCD「J First」をリリース。これまでに藤井博子、笠間春子、青柳晋、田部京子、フェルナンド・プチョール、海老彰子、アキレス・デレ=ヴィーニェの各氏に師事。
 

 

鈴木舞 出演情報
鈴木舞 ヴァレンタイン・コンサート
 日時:2017年2月5日(日)19:00
 会場:銀座 コンチェルティーナ
 共演:實川風
 HP: http://www.konzertina.jp/products/pg338085.html

スイーツタイム コンサート
 日時:2017年2月15日(水)13:30
 会場:名古屋 宗次ホール
 共演:實川風
 HP: http://www.munetsuguhall.com/20170215S1.pdf


 
サンデー・ブランチ・クラシック情報
1月29日
米津真浩/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE:500円
 
2月5日
竹山愛/フルート
13:00~13:30
MUSIC CHARGE:500円
 
2月12日
布谷史人/マリンバ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE:500円

3月5日
海瀬京子/ピアノ
13:00~13:30

MUSIC CHARGE:500円

3月19日
松田理奈/ヴァイオリン&中野翔太/ピアノ

13:00~13:30
MUSIC CHARGE:500円
 
■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
  ※祝前日は通常営業
■公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html​
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