The Best Album 2016 -大塚広子が選ぶ3枚-

2017.1.26
コラム
音楽

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日頃から“新譜チェック”に余念がない方たちが、各々の視点と尺度で『2016年のベスト3作』を選出。今回は、DJ・プロデューサー・音楽ライターとして活動する大塚広子が選ぶ3枚をお届けします。

ブルーノート・レーベルの現代ブラック・ミュージック・チームの作品(デリック・ホッジのセカンドや、ロバート・グラスパー・エクスペリメントの新作)が期待されたり、ア・トライブ・コールド・クエスト、コモン、デ・ラ・ソウルなどヒップホップ・スターたちの最新作もDJ周りで話題になった年でした。ヒップホップ・サイドもミュージシャンを起用し、ストリング・アレンジを取り入れたりメロディに特化したヴォーカル曲を多くみせたりと、いよいよボーダレスになってきたなぁという印象。新譜からフロア・アンセムが生まれることを期待しています。個人的にはシカゴ発信の若手ミュージシャンたちの動きが気になっています。

 

rabbitoo

the torch

2015年夏頃、このアルバムのラフを聴かせてもらい、年末に発売した私のコンピレーションに未発表として1曲を収録。その待ちに待ったアルバムが2016年2月に完成。ギタリスト市野元彦氏率いる気鋭のジャズ集団、rabbitooが、ポストロック的ミニマルな路線を突き進めて音響的アプローチをさらに強化したセカンド・アルバム。トライバルで異空間に連れて行ってくれるような音世界に惹かれました。ジャズのバックグラウンドを自在に広げながら ボーダレスな活動を続けるメンバーの活躍に今後も期待。

 

Jeff Parker

The New Breed

2016年明けにトータスの新作がリリースされて話題になりましたが、さらに初夏には同バンドのギタリスト、ジェフ・パーカーのソロ・アルバムが12年ぶりのリリース。彼は、2015年のベストに選んだシカゴのドラマー、マカヤ・マクラバン作品にも参加していたので、しばらくジェフ・パーカー尽くし…。柔らかい清涼感と、いなたく催眠的なムードが入り混じるギターと重厚なベース、アーシーなビートの反復が心地良く耳に焼きついています。

 

Marcus Strickland's Twi-Life

Nihil Novi

マーカス・ストリックランドのエレクトリック系ユニットTwi-Life名義の久々の新作。キーヨン・ハロルド、ロバート・グラスパー、BIGYUKI、クリス・デイヴ、ミシェル・ンデゲオチェロなどこの手のメンバーが集結してのブルーノート・レーベルリリース。2007年作の『Twi-Life』でマーカスを知ったようなものだったので、ストレート・アヘッド系の作品を経ての本作は個人的にも嬉しいニュース。東欧音楽と J・ディラ・ビートの融合や、マリの民族楽器奏者を意識した曲など土着的なグルーヴを都会的に響かせています。

 

大塚広子
DJ/プロデューサー/音楽ライター
ブラックミュージック、和ジャズ、レアグルーヴのレコード音源発掘から、現代ジャズなどをメインにDJ歴約20年。メディアでの執筆、レーベルの選曲監修を手がける。クラブシーン以外にも、老舗ジャズ喫茶や評論家とのコラボレーション、伊勢丹新宿店での音楽イベント・プロデュースや、自身のレーベルKey of Life+で新世代ジャズ・ミュージシャンを取り上げた活動も行う。
http://djotsuka.com