[Alexandros]のツアーファイナル・幕張メッセにみた「最高の景色」と王者の姿

レポート
音楽
2017.4.26
[Alexandros] 撮影=西槇太一

[Alexandros] 撮影=西槇太一

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Tour 2016~2017 ~We Come In Place~ 2017.4.23 幕張メッセ 9-11ホール

それは王者の風格と呼ぶに相応しかった。アルバム『EXIST!』を携え半年にわたって行われた全国ツアーファイナルの会場となった幕張メッセのステージで、[Alexandros]は自らの追い求めるロックバンドとしての在るべき姿、そして詰め掛けた20000人(2日間で40000人)が彼らに対して抱く理想の姿を、見事に示してみせたのだ。

ステージ中央から前列ブロックを貫くように設けられた花道には、バンド名の[]を象ったアーチ状のオブジェ。それがゆっくりと上昇し始めたのがライブ幕開けの合図だった。おなじみのカウントダウンのSEではなく、優雅なストリングスによるサウンドをバックに、まるで映画のオープニングのような映像が映し出されると、場内は大歓声。ステージを覆う紗幕の向こうから川上洋平(Vo/Gt)の歌声が聞こえ、そのシルエットが浮かび上がった際には悲鳴にも似た歓喜の声がこだまする。オープニング映像の最後に“THIS IS THE FINAL”の文字が浮かび上がるという幕張仕様の演出から、「ムーンソング」へ。ダンサブルなリズムアプローチは、大会場に見合った即効性でもってフロアを揺らしていく。

[Alexandros] 撮影=岸田哲平

[Alexandros] 撮影=岸田哲平

本ツアー前にリリースされた6thアルバム『EXIST!』は、このバンドが元々もっている「必ずしもバンド編成での再現性に囚われない音楽的志向」をより推し進めた作品だったが、まずはその多彩な楽曲の数々においても最もハードな方向に振り切った「Kaiju」が前半のうちに投下された。和装の女性ダンサーたちが踊り、乱舞するレーザー光線に打ち上がる炎。ハンドマイクを手に花道からコンダクターのように会場全体を煽り操る川上。ベースを低く構えたクールなプレイスタイルから時折挑発的なアクションを決め、ニヤリと笑う磯部寛之(Ba)。このド派手な展開には興奮を覚えずにいられない。さらに「Claw」「Girl A」と攻めの楽曲を並べて畳み掛けたところで、ライブ冒頭で上昇したアーチが再度下降(ちなみにこのアーチ、この後も光を放ちながらバラバラに上昇下降を繰り返したりと、通常は左右、前後に限られがちな視覚_効果に上下という新要素をもたらしていた)。アーチを抜けた花道の先端へとフライングVに持ち替えた白井眞輝(Gt)が進み出て、鳴らされたイントロは「Kick&Spin」! この曲で川上はハンディカメラを手にしながら歌い、その映像はリアルタイムでスクリーンに映し出されていたのだが、時折「自撮り」の格好で自らをフレームインさせながらフロアを撮るというニクい演出も。間奏のメタリックな箇所では怒涛のバスドラ連打にあわせヘドバンの嵐が巻き起こるという、全くもって容赦ない前半ブロックの締めくくりとなった。

[Alexandros] 撮影=高田梓

[Alexandros] 撮影=高田梓

そこから一気に幻想的な陶酔へと場内を誘ったのは、「O2」の人力エレクトロとその上を漂うようなファルセットボイス。街の風景を切り取った映像を背にアーバンテイストなアレンジで踊らせた「Aoyama」。このあたりは前述した楽曲の多彩さと緩急自在のパフォーマンスにくわえて意表をつく演出が際立つ流れになっており、続く「Feel like」では「自由に楽しんじゃってください」との言葉とともに、MV同様金髪ボブ+サングラス姿のダンサー集団・[A]-GIRLSが登場し、曲とシンクロしたキッチュなダンスパフォーマンスでも楽しませてくれた。4人のみのシンプルなバンド編成でもスタイリッシュにしっかりと格好がつく彼らだが、いや、そういうバンドとしての骨格がしっかりできている彼らだからこそ、大会場ならではのスケールの大きな演出や遊び心を取り入れても、取ってつけたようにも過剰にうつるようなこともなく、ロックバンド的ダイナミズムも失われないのだろう。

[Alexandros] 撮影=高田梓

[Alexandros] 撮影=高田梓

およそ1年半ほど前、彼らが初めてこの幕張メッセの地でワンマンライブを行ったときのことを思い返せば、アルバム収録前の「Buzz Off!」や、まだ構成も歌詞もタイトルも決まっていなかったプロトタイプの「NEW WALL」が初披露されていたのだが、いまやそれらはすっかりライブの流れの中で欠かせない役目を追うようになっている。「Kaiju」「Feel Like」「Swan」あたりも同様だ。同時に、そういう新たなキラーチューンを次々に生み出すことでライブの姿を更新し続けてきたからこそ、中盤の「Stimulator」「言え」「Waitress, Waitress!」というちょっと懐かしめの楽曲3連打がとても新鮮に嬉しく思えたし、既存の定番曲たちに大胆なアレンジを施すことにも踏み出せたのではないだろうか。とりわけ「Run Away」~「Starrrrrrr」という代表曲2曲の生まれ変わらせ方は秀逸であった。トランス系ダンスミュージックを思わせるループの中心を担うタフかつ硬質なビートを庄村聡泰(Dr)が叩き出し、ときにはギターのカッティングパターンを強調するように原曲にはないパターンを刻んでいく。これには20000人のオーディエンスもメッセの場内を一層激しく揺らして応え、ライブはクライマックスへと向かう。

[Alexandros] 撮影=岸田哲平

[Alexandros] 撮影=岸田哲平

「最高の景色です。幸せ者です」「(ツアーで)32回めの今日が一番だって自信を持って言えます」と感慨深げに告げた川上に歓声が贈られ、<Hello Hello Hello>の大シンガロングが巻き起こった「NEW WALL」を経て、本編の最後を飾ったのは「Adventure」だった。この曲もまた声の限りともに歌うオーディエンス。ここまでほとんどMCもない怒涛の2時間だったのだが、川上のハイトーンボイスはむしろ前半以上に伸びやかに力強く響いていく。ひときわ明るく照らし出されるパンパンに埋まった会場内には、<大胆な作戦で 言葉にならないマスタープランで いつだって僕達は 君を連れて行く>という歌詞通り、彼らが僕たちを導いてきた先にあった、本当に輝かしい光景が広がっていた。

[Alexandros] 撮影=岸田哲平

[Alexandros] 撮影=岸田哲平

メンバーがステージから去った後も絶え間なく続く手拍子。と、突然スクリーンに会場入り口付近にあるフォトブースの様子が映し出され、そこには4人の姿が。音声はなく、カメラに向かって手を振ったり、記念撮影をしたり、[]型のオブジェにサインをしたりする様子をロードムービーのように映していく。ひとしきり4人の一挙手一投足に大いに湧いたころ、映像の中の彼らがそのまま会場後方から登場し、会場中央に設けられたサブステージでのアンコールとなった。まずは4人にキーボードのROSEとヴァイオリン・村田泰子のサポートミュージシャン二人を交えた、アコースティックVer.の「ワタリドリ」から。アイリッシュフォークやカントリーを思わせるような、どこかノスタルジックな音に生まれ変わっている。シンプルで味わい深いアレンジと舞い落ちる雪が桜へと変わる演出で魅せたのは「SNOW SOUND」だ。ここで川上1人がサブステージに残り、「最初は俺の他に5人いたんだけど、一週間で全員抜けた(笑)」と、この瞬間のステージ上と同様に1人から始まったバンドの歴史を振り返る。その後出会い、歩みを共にしてきた3人に対して「最高のメンバーを持ったな」と感慨深げに口にすると、彼らに捧げる格好で弾き語りによる初期の楽曲「かえりみち」を歌い上げた。

[Alexandros] 撮影=岸田哲平

[Alexandros] 撮影=岸田哲平

再びメインステージに戻っての「Dracula La」でハートウォーミングな空気を吹き飛ばし、一気にライブ空間へと引き戻してのアッパーな締めくくり。かと思いきや、再びのアンコールに応えてくれた4人。庄村と川上の2人によるブルースセッションのような装いの「Kaiju」のあとは、長年彼らを追い続けているファンにはたまらなかったであろう「You’re So Sweet & I Love You」~「city」で大団円。ここまでのセットリストがあらゆる形で最新モードの[Alexandros]を提示することで、冒頭にも書いたロックバンドの在るべき姿――つまりロックバンドはかっこよくあり続けねばならないという強烈な自負を叩きつけていたとすれば、ラスト2曲はこれまでの道程において自分たちに夢や憧れを預け愛してくれた聴き手に向けられ、その間に流れる歴史全てを肯定するかのような、そんな風に響いていた。

[Alexandros] 撮影=西槇太一

[Alexandros] 撮影=西槇太一

これは常々言っていることなのだけれど、2017年の音楽シーンおいて随一、ロックバンドの美学に忠実に、ちゃんと格好つけてくれる存在が[Alexandros]だと思っている。やはりその認識は間違いなかった、そう確信させてくれたこの日の3時間だった。最後、花道の先端で一度「シーッ!」というジェスチャーで大観衆を静めたあと、オフマイクで「愛してるぜ、幕張!」と叫んだ川上。そして拍手に送られながら、4人で肩を組んでステージへと戻っていく後姿の、なんと格好良かったことか。そして下がり際に「気をつけて帰れよ!」「ゴミは拾って帰れよ!」「仲良くしろよ!」など親しみを込めた呼びかけをしたあと、一拍おいて高らかにもう一度。
「愛してるぜ、幕張ーー!!」
で、20000人を狂喜させ、颯爽と去っていってしまった。とどめはスタイリッシュなエンドロールで、あ、やはりこの3時間は大作のロックムービー仕立てだったのか、と気づかされる仕掛け(クレジットでは笑いの要素も忘れない)。

……ダメだ、完璧すぎる。やっぱりこの人たちには敵わない。


取材・文=風間大洋 撮影=岸田哲平、高田梓、西槇太一

[Alexandros] 撮影=西槇太一

[Alexandros] 撮影=西槇太一

セットリスト
Tour 2016~2017 ~We Come In Place~ 2017.4.23 幕張メッセ 9-11ホール
1. ムーンソング
2. Burger Queen
3. For Freedom
4. Kaiju
5. Claw
6. Girl A
7. Kick&Spin
8. O2
9. Aoyama
10. Feel like
11. The & Tokyo 2pm 36 Floor
12. Buzz Off!
13. Stimulator
14. 言え
15. Waitress, Waitress!
16. クソッタレな貴様らへ
17. 今まで君が泣いた分取り戻そう~サテライト
18. Swan
19. Run Away
20. Starrrrrrr
21. NEW WALL
22. Adventure
[ENCORE]
23. ワタリドリ(Acoustic)
24. SNOW SOUND
25. かえりみち(弾き語り)
26. Dracula La
[ENCORE2]
27. Kaiju(Acoustic)
28. You’re So Sweet & I Love You
29. city

 

ライブ情報
[Alexandros]「Premium V.I.P. Party」
2017年7月2日(日)愛知県 日本ガイシホール

 

リリース情報
『We Come In Peace Tour & Documentary』
7月26日リリース
■Blu-ray
○初回限定盤 品番: UPXH-9021/2  価格:¥7,300 +税
DISC1:ツアーファイナル幕張メッセ公演
DISC2:ツアードキュメンタリー+初回特典映像:横浜アリーナ&岡山CRAZYMAMA KINGDOM公演から抜粋
○通常盤 品番:UPXH-1052  価格:¥5,800+税
ツアーファイナル幕張メッセ公演、ツアードキュメンタリー
 
■DVD 
○初回限定盤 品番:UPBH-9541/2  価格:¥5,800+税
DISC1:ツアーファイナル幕張メッセ公演
DISC2:ツアードキュメンタリー+初回特典映像:横浜アリーナ&岡山CRAZYMAMA KINGDOM公演から抜粋
○通常盤 品番:UPBH-1434/5  価格:¥4,800+税
DISC1:ツアーファイナル幕張メッセ公演 
DISC2:ツアードキュメンタリー
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