Yogee New Waves これまでとこれからを角舘健悟が語り尽くす

インタビュー
音楽
2017.6.13
角舘健悟 撮影=河上良

角舘健悟 撮影=河上良

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Yogee New Wavesが2年8ヶ月振りにフルアルバム『WAVES』をリリースした。今年1月、中学の同級生でもある矢澤直紀(B)が脱退、新たに竹村郁哉(G)、上野恒星(B)が加入し、新体制でのスタートとなった。ファーストアルバム『Paraiso』をリリースしてから2年8ヶ月――聴く人の感情を揺さぶられる渾身の作品が届けられた。「もっと素直に生きるスタイルが素晴らしいってことを、もっとみんなに伝えたい。カッコつけなくても良いんじゃないの? って」とボーカル角舘健悟は話す。この作品を通して伝えたかった彼の想いとは? 不器用で真っ直ぐな人たちに寄り添う『WAVES』は、新たなWAVESの時代の始まりでもある作品となった。
 

撮影=河上良

撮影=河上良

――Yogee New Wavesが結成された経緯を教えてください。

中学生くらいからバンドをずっとやっていたんです。で、大学3~4年生の頃に、矢澤直紀と2人でバンドを組んで、何度かメンバーチェンジを経て今の形になりました。その当時、日本のポップスの素晴らしさをずっと感じていて。だけど、何か足んねえな……と思ってて、じゃあ俺らがやろうとなって始めました。

――元々、音楽に興味をもったキッカケというのは?

3歳くらいからパーカッションを習ってたんです。最初は、先生がスネアを叩いてるのに合わせて踊るみたいな(笑)。そこからだんだんステップアップして、木琴とか触らせてもらったりして、みんなで「スターウォーズ」を演奏してましたね。だから、物心つく前くらいにはステージに上げられてたんです。

――そこから自分の意思でバンドを組もうとなったのは、何か理由があるんですか?

まず、コピーバンドを組んだんですよ。先輩がバンドをやってるのを観て「カッコ良い」と衝撃を受けて、俺らもやりたいと思ったんです。その時、僕はドラムでしたね。ギターボーカルをやり始めたのはYogeeの時からなので、それまではずっとドラム叩いてました。最初にコピーしたのはハイスタのコピーバンドをやっていて。そのキッカケが僕をいじめていた、いじめっ子グループのリーダーがグループから急に抜けたんです。もう面倒くさいからって。そしたら次はリーダーがいじめられて……その後、僕に謝りにきたんですよ。で、音楽の話になって、最初にした会話が「Hi-STANDARD知ってる?」って聞かれて、「俺も超好きだよ」って言って盛り上がってバンドを組んだんです。

――今の角舘さんからは想像つかないというか……。

ですよね(笑)。メロコアとかパンクがすごく好きで、今でもパンクをやりたいという気持ちはあります。すごくカッコ良いし。

撮影=河上良

撮影=河上良

――それがどういうキッカケで今のスタイルになったんですか?

元々、松任谷由実さんが昔からずっと好きで。母が松田聖子さんをずっと聴いてたから、松田聖子さんも好きで。日本語を基調にしてる音楽が好きなんですよ。そこからサニーデイ・サービスとかも聴き始めて、“日本語最高だな~”って感じていて。それこそ銀杏ボーイズもすごく日本語的だし、日本語の歌詞に感銘を受けることが多かったんですよね。だから必然的に日本語で曲を作り始めたんです。

――初めてオリジナル曲を作った時のことは、覚えてますか?

大学1回生の時かな? その時はパンクバンドをやっていたので、そこで書いたりしてました。今みたいに多幸感溢れる感じではなく、めっちゃ過激なことを言ってましたね(笑)。その時に今のマネージャーと知り合って。その後、ファンクバンドを組んで「Hello Ethiopia」や「Earth」が出来たのは、ちょうどその頃です。今回の『WAVES』に収録されてる「World is Mine」の同じ時期ですね。その辺りが俺にとって初めての曲です。

撮影=河上良

撮影=河上良

――ここ5年くらいで、角舘さんの音楽に対する向き合い方が変わってきたんですね。

そうですね。音楽と本格的に向き合える環境が整ったのは、わりと最近なんです。結構現実主義なところもあるし。でも、周りで音楽をやってる奴らも居て、SuchmosのYONCEは前のバンド時から知ってて。“なんでこんなにカッコ良いのに売れないだ”って思ってました。他にもいっぱい超カッコ良いバンドは居るのに評価されない――そのことに絶望してて「音楽やらない」って決めてたんです。だから、結婚して家族を作るんだったらちゃんと仕事しなきゃと思って、大学を卒業して大学院に行って勉強し直しました。

――ちょうどファーストアルバム『PARAISO』をリリースした直後くらいですよね。

うん。リリースする前は、仕事しながらで良いやと思ってたし、それこそメンバー全員に仕事させようと思ってたんです。どうせ食っていけないし。だけど、その辺からYogeeが熱を帯び始めて。“あ、これはもうYogeeやるしかねえわ、やったー!”って喜んでました。でも、そこから2枚目を出すまでに2年8ヶ月かかったんですよ……。

――そうですよね。その間に、同世代のバンドがどんどん活躍していったと思うんです。この期間をどういうふうに捉えてたのかなって。

それこそSuchmosだったりnever young beachがすげえ頑張ってて。俺はシンプルに「カッコ良い音楽やってる友達が、頑張ってる」というふうにしか、思ってなかったんです。「俺もこんなことやりたいな〜、でもメンバー固まってないから無理か〜!」みたいな。当時は、その時にある問題を1つずつ解決することが優先で、そうじゃなかったら健全に音楽が出来なかったので。ひとまず、俺らには俺らのやることをやろうと思ってました。むしろ、俺たちは自転車操業だったから、「え、一緒に肩並べて大丈夫なの?」という感じで。彼らは彼らで上昇していって、俺たちは俺たちでもっと良いもの作っていくという空気でしたね。

――その解決しなければならないことって、具体的に言うと?

それこそメンバーが、俺以外は仕事していたので、ちゃんとライフスタイルとして成り立たせなきゃいけない。なんだったら、みんなに足並み揃えるなら俺も仕事した方が良いのかなって思ったりしてきて。だけど、矢澤直紀はバンドを組んだ時から「僕はちゃんと仕事をするよ」と言ってて。中学の時から一緒だったから、ずっと一緒にやっていたかったんです。でも、彼が抜けることは分かってたから、良いメンバー探さなきゃって。良い曲も書かなきゃって思ってました。

――次のプランと言うよりかは、ひとつひとつ解決してという感じですね。

うん。目の前のことを追ってたかもしれないですね。でもシンプルに楽しむしかねえなって。メンバーとどういう関係を築いていこうとかも考えてたけど、音楽楽しいし、生活も楽しい。友達付き合いも楽しいから、みんなでいるの楽しいねという感じでしたね。

撮影=河上良

撮影=河上良

――今回のアルバム『WAVES』は、ある意味アルバム制作期間というのは設けずに自然と出来たアルバムなんですか?

そうですね。俺は常にシンプルに曲を書くので、毎日いろんなことがあって、それを曲にしたりだとか。ボーっとしてても曲は書くので、どんどん曲は溜まっていきました。だから、そもそも制作期間とかはなくて、今までもこれからも“一生制作期間”って感じです。

――レコーディングは、新メンバーの竹村さんと上野さんが加入されてからですよね。

10月頃から、メンバーは決まってたんです。だから新メンバーでやれる練習はずっとやってました。直紀くんを送り出す準備をちゃんとしてあげて、どっちもやってたから、バンドを2つやってたみたいな感覚でしたね。大変でしたけど、楽しかった。

――完成した『WAVES』ですが、改めて今の心境を聞かせてください。

基本的に曲書いてレコーディングしてミックスするまでは、すごく自信満々だし、間違いないと思って作ってます。だけど、作ってみたら作ってみたで、不安がつきまとうというか。だから、実際にCDが店頭に並んだ時、「ちゃんと売れるのこれ?」みたいな(笑)。不安はあって、だけど周りの人やマネージャーも、「すごく良いよ」と言ってくれるので。俺としては不安はあるけど、自信作という感じですね。周りの人たちが押し上げてくれる。

――作品を改めて自分でじっくり聴いたりしますか?

たまにですけど聴きますね。うーん……、なんかね、客観的に自分の作品を聴けないんですよね。Yogee New Wavesって「こんなバンドいたらマジで最高なのに」って本気で思って組み始めたバンドなのに。俺聴けないんだな……って、最近思いましたね。だけど、本当に最高のアルバムが出来たと思ってるし、今こんなこと出来るバンド他にいないと思います。

――聴かないより聴けない。

そうですね。気持ちの部分じゃないですかね。完成までにいっぱい聴いたから聴けないというよりも、シンプルに自分が作った曲なので、全部知ってる感情なんですよね。俺が歌詞で「車のヘッドライトがチカチカして綺麗だ」って書かないのと同じで、俺は東京生まれでそれを知ってるから曲にしなくて。ビルが綺麗とか興味がなくて。それと一緒なのかなと思います。

撮影=河上良

撮影=河上良

――このアルバムには角舘さんの感情そのものが詰まってるというか。個人的に「SAYONARAMATA」は、別れをテーマに書かれてると思うのですが、すごくポップに描かれていて、寂しいはずの別れが少し前向きに思えるというか。

「SAYONARAMATA」は、それこそ直紀くんが抜けると決まってから書いた曲なんです。メンバー全員で送り出してあげたいという気持ちがすごく強くて。悲しい気持ちを悲しく表現するのは、すごく簡単だったんですけどね。だけど、やっぱ男というのは4人集まると、どうしてもわちゃわちゃするんですよ(笑)。2人だと深い話も出来るんですけど……だから全員揃うと子供が4人いるみたいな感じです。それはすごく楽しい。でも、1人になった時に考えることもあるというか。そういうのを曲にしたかったんです。俺はそういうやつなんですよね。泣き笑いというか、感情的にワーって泣くよりか、ジワッと友のために軽く泣く、くらいの曲にしたかったんですよね。友との別れは河川敷があって、そこに夕日が溶けてくのを想像して、言葉にして書きました。

――音楽に対しての愛情や想いがすごく溢れてると思うんです。今の時代、本当に熱心に何かを思ったり、言ったりすることが恥ずかしいとされる風潮があると個人的には思っていて。

本当にその通りです。例えばクラスで学級委員長が「頑張ろう! 一緒に運動会盛り上げよう!」と言ってるのを、「だるいなー」って言うカルチャーが今でもあるんですよ。俺はそれ本当に嫌いだし、冷笑のムードだと思ってます。最近クールな感じは流行ってて、「熱い男はおらんのかね?」って、俺はずっと思ってます。頑張ることだったり、一生懸命やることの何が悪いんだと。例えば、付き合ってることを隠すカップルっているじゃないですか。全然恥ずかしいことでもないし、俺はむしろもったいないと思ってます。別に周りが居てもくっつきゃ良いじゃんと思ってるし、全然恥ずかしいことじゃない。痴話喧嘩して大喧嘩してたら駄目ですけど、2人とも幸せそうなら別に良いんじゃないかなって。

――確かに隠す傾向ありますよね。

まあ、そういう人はまだモテたいんじゃないですかね(笑)。俺はどちらかと言うと、幸せに生きて幸せに死にたいと思ってる。あんまりチャラチャラするのは好きじゃないし。一生懸命生きるというか、若者らしく大人に楯突いて、下の世代には優しくするさまってのは、別に笑えるし笑えないというか……。俺は、それがすごく良いことだと思って生きてるので、こういう曲になっちゃうんじゃないですかね。だから、すげえ応援してるんですよね。世の中の不器用な人たちのことを。『WAVES』がぶっ刺さる人っているんですよ。これをシティポップだなと思って、シティポップで括ってくれる人も多分いると思っていて。それはそれで良いと思ってるけど、そこは外壁の部分だけで中は圧倒的にモノが違うと思ってる。全然言ってることが違うというか。そうやってこれに感動する人たちのことを“WAVES”と名付けたい。時代の荒波に揉まれて感情の起伏が激しくなってしまう人たちのことを。そういう想いが、今回のアルバムには入ってるから、タイトルも『WAVES』にしたんですよね。

 

――夜に『WAVES』を聴いてると、自分の感情と向き合いたくなるというか。もっと素直に生きても良いんじゃないかなって。

わかります。向き合いたくなるんですよね。俺がこうやって書いてるのが危なっかしいと思われてるところもあって。理由は、こういう感情って恥ずかしいと思う人が多いんですよね。今作の帯に「Yogee New Wavesの漂流」というキャッチコピーを付けたんです。だけど俺は本当のことを言うと「ひとりになるのが楽しみになる」って付けたくて。でも、それだと重たくなっちゃうから、少しライトにしようとなって今のキャッチコピーに変えたんですけどね。外壁の部分はすごくポップだと思うんですよ、今の時代を感じるし。だけど「Ride on Wave」でも言ってるけど〈つかんだら離さないだろう〉って、本気で思ってます。だから、すごく“毒みたいなアルバム”だなと思います。

――そんな“毒みたいなアルバム”『WAVES』を引っさげてのツアーや夏フェスが始まりますね。

今回ワンマンツアー自体が初めてなんですよ。東京ではやったことあるんですけどね。やっぱもう30分ではライブ中には全部を伝えられないんですよ。本当に上げてくしかなくて。30分だとそれで終わってしまう。俺らの力量不足でもあるんですけど、感動までもっていけないというか。だけど1時間半あれば、もう好きなように出来るんですよ、お客さんの感情を。だから絶対に虜にさせれる自信があって楽しみ。“やっと出来る!!”って感じ。フェスに関しては上げていきますよ。楽しい方が良いし、開けてる場所だから開けてる曲をやったりとか。もうちょっと箱っぽい場所だったら、ちょっとダビーな曲とかもやったり。来てくれてる人が“WAVES”を感じて貰えれば嬉しいですね。

インタビュー・文=YUMI KONO 撮影=河上良

ライブ情報
RIDE ON WAVE TOUR
2017年6月16日(金)
会場:北海道 札幌 KRAPS HALL
場所 : 北海道札幌市 中央区南4条西6丁目5−1
時間 : OPEN 19:00 START 19:30 
料金 : オールスタンディング 3500yen + Drink
出演 : Yogee New Waves (ONEMAN SHOW)
 
2017年6月20日(火)
会場:東京都 赤坂BLITZ
場所 : 東京都港区赤坂5−3−2 赤坂サカス
時間 : OPEN 18:30 START 19:30
料金 : オールスタンディング 3500yen + Drink
出演 : Yogee New Waves (ONEMAN SHOW)
 
2017年6月30日(金)
会場:沖縄県 那覇 Output
場所 : 沖縄県那覇市久米2-5-7 久米ビルB1 
時間 : OPEN 19:00 START 19:30
料金 : オールスタンディング 3500yen + Drink
出演 : Yogee New Waves (ONEMAN SHOW)
 

イベント情報

2017年7月9日(日)
会場:岐阜 河川環境楽園
場所 : 〒501-6021 岐阜県 各務原市岐阜県各務原市川島笠田町
 
FUJI ROCK FESTIVAL ’17
2017年7月28日(金
会場:新潟県 湯沢町 苗場スキー場
 
2017年8月6日(日)
会場:国営ひたち海浜公園
場所 : 茨城県ひたちなか市馬渡字大沼605-4
 
 
SWEET LOVE SHOWER
2017年8月27日(日)
会場:山中湖交流プラザ 
場所 : 山梨県 山中湖交流プラザ きらら 山梨県南都留郡山中湖村平野479-2
 
OTODAMA'17〜音泉魂〜
2017年9月2日(土)
会場:泉大津フェニックス
場所 : 大阪府泉大津市夕凪町
 
りんご音楽祭 2017
2017年9月23日(土)
会場:長野県松本市アルプス公園
場所 : 〒390-0861 長野県松本市 蟻ケ崎2455番地
 

 

リリース情報
アルバム『WAVES』
Yogee New Waves『WAVES』

Yogee New Waves『WAVES』


2017年5月17日(wed)Release!
<初回盤>
形態:CD+LIVE DVD (2DISCS)
価格:¥3,300(税抜価格)
品番:ROMAN-012
JAN:4522197126043
<通常盤>
形態:1CD
通常盤:¥2,300(税抜価格)
品番:ROMAN-013
JAN:4522197126050
発売元:Roman Label / BAYON PRODUCTION
販売元:PCI MUSIC
《tracks》
01. Ride on Wave
02. Fantasic Show (album ver.)
03. World is Mine
04. Dive Into the Honeytime
05. Understand
06. Intro (horo)
07. C.A.M.P.
08. Like Sixteen Candles
09. HOW DO YOU FEEL?
10. SAYONARAMATA
11. Boys & GirlsⅠ(Lovely Telephone Remix)
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