小物デザイナー tanaka|こんな日本アーティストがパリで活躍中 【第18回】

インタビュー
アート
2017.7.18

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小物デザイナー  tanaka

パリの高級ブティック街にある石造りの教会の脇。日本とフランスの国旗が立つ、不思議な空気を醸し出す小さなお店があります。この店で自らデザインしたアクセサリーや雑貨を販売する日本人女性がtanakaさん。フランス人アーティストのパートナーと共に開店したばかりというコンセプト・ストア「brigitte tanaka」にて、tanakaさんが来仏し、このお店を開店するに至った経緯を伺いました。

tanakaさんとパートナーのbrigitteさん。お店の前にて。

tanakaさんとパートナーのbrigitteさん。お店の前にて。

――パリに来られたキッカケを教えてください。

小さな頃から、お寿司やラーメンなどの日本食がどうしても合わなくて、母はよく私にキッシュやグラタンなんかを作ってもらっていました。食べ物だけでなく、どうも日本は自分に合っていないという感覚は大人になっても同じでした。そして、いつかヨーロッパ暮らすのだろうとは分かっていたので、訪れてみてしっくりきたパリに住むことにしたんです。

パリで生活をはじめたの2008年の終わりごろです。実際に住んでみると居心地がよく、自分に合っていると感じられました。具体的にいうと、フランスは“全て自分でしなければいけないこと”がとても多くあります。例えば、お店で買い物をしても、包装をしてくれる事は日本のように当たり前ではありません。ちょっと日本だと不便だと思うようなことが私には向いていたというのでしょうか。

ほかにも、公共機関とのやりとりなどなかなかスムーズにいかないこともこちらの生活ではよくあります。適当だったり オーガナイズの欠けている感じも、むしろ人間らしく、生きている感じがするので気に入っています。

brigitte tanaka 店内の様子

brigitte tanaka 店内の様子

――つい最近に「brigitte tanaka」を開店されましたが、それに至るまでの経緯を教えてもらえますか?

パリ滞在から半年後、滞在資金も尽きて仕事をしなければと思ったとき、たまたまアクセサリー会社の求人を見つけて働くようになりました。日本にいた時としていた仕事と遠くなく、ちょうど自分に合う仕事に就くことができました。この経験を経て、フランスでも働けるという実感を得たのです。

その後ビザが切れたので、今度はアクセサリーに関する仕事をしようと決めて再渡仏しました。自分に合いそうな アクセサリー・ブランドにコンタクトを取って就職先を探したところ、気になったブランドが、たまたま同じ年のフランス人の女性のものだということがわかりました。彼女に送った私のポートフォリオに、ピンとくるものを感じてくれたということで会ってもらえることになりました。その彼女がお店を一緒に開くことになったブリジッドです。

最初は仕事ではなく、友人としてのお付き合いが始まったのですが、次第に仕事のパートナーとして、そして今では家族のように深い付き合いになっています。そして先月、念願のこのお店を二人で開店するに至ったというわけです。


 

――こうしたお店はパリでも初めて見る、なんとも形容しがたい面白いお店ですよね。

「コンセプト・ストア」という風に言っていますが、私とブリジッドが旅先などで探し集めたもの、そして二人で制作したアクセサリーやインテリア雑貨、そして、革や陶器などの職人たちとコラボした作品を取り扱っています。

日本人である私と、フランス人であるブリジッドの文化・テイストが混じったもの。蚤の市などで発見した古いものに手を加えて、コンテンポラリーなテイストを加えたものなど、「二つのものが出会ってひとつになる」というテーマがあります。

また、洋服や陶器、革製品にはそれぞれお名前入れサービスをおこなっていて、世界でひとつだけのものを提供させて頂くのも「brigitte tanaka」の特徴です。

brigitte tanaka オリジナル、日本とフランスの国旗がリバーシブルになる指輪

brigitte tanaka オリジナル、日本とフランスの国旗がリバーシブルになる指輪




あとがき

brigitte tanakaには、実際にまだ動く古い黒電話が鳴ったり、アンティーク調なのだけれど、見た事もない不思議な雑貨やアクセサリーたちが並んでいます。一歩このお店に足を踏み入れると、この世界に身体をふーっといざなわれてしまうような感覚があります。

こんな素晴らしい世界空間をパリの街角に造り出しているtanakaさん。お店の作品の一部のような彼女もまた不思議なオーラを持った女性でした。

ちょっと珍しいキッカケでパリ在住をきめた彼女は、この街に呼ばれ、パリに住むべくして住んでいるといえるでしょう。まるで、パズルのピースがしっくりはまり込むようにして生きてきたような、そんな女性でした。

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