東京アンティーク散歩vol.9 下北沢にある”楽しきわが家” アンティークショップ『ナンセンス』

レポート
2017.8.14

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東京近郊にある、上質なアンティークショップを巡っていく連載『東京アンティーク散歩』。今回は、下北沢にあるアンティークショップ『ナンセンス』を紹介する。


若者の街として知られる下北沢。演劇をはじめとするサブカルチャーが盛んで昔からアンティークショップが多いことで知られている。

筆者は下北沢近辺に10年ほど住んだ経験がある。下町の人情や物を長く使い大切にする暮らしに親しみ、ぶらりと下北沢の街に出かけては個人経営のアンティークショップや喫茶店、古本屋を回るのが楽しみだった。にぎやかな中心地から少し外れ、三軒茶屋に抜ける茶沢通りはさらに個性的な店が点在しているエリアだ。菓子屋、洋服屋、ジャズ喫茶……。面白そうな店が並ぶ通りをしばらく三茶方向に歩くと、ひときわショウウィンドウが魅力的店がある。雑貨インテリア店のような雰囲気だが、並んでいる食器や小物は本格的だ。

今日ご紹介する店はここ、下北沢のアンティークショップ「ナンセンス」である。

 

インテリアショップ的な展開のアンティーク店

ナンセンスは今年で開店17年。インテリア系の会社に勤めていた益子さんご夫妻が経営するアンティークショップだ。夫婦二人三脚で、夫が仕入れと修理、広報やディスプレイは妻、という理想的な役割分担で運営している。今回のインタビューは奥様に伺った。

「主人は10代からアンティークコレクターで、幅広い知識と技術を持っているので仕入れや商品修理を任せています。私はコレクションすることより器やインテリアの組み合わせを考えてお客様に提案するのが大好きなんです。週一でディスプレイは替えて、インスタやブログは随時更新しています」

その言葉通り、暑い日に訪れた店内は夏らしい青や白を基調としたディスプレイが涼やかだった。季節の植物やファブリックを上手に取り入れ、今風のインテリア感覚を演出している。アンティークによるモダンなインテリア店といった雰囲気だ。

そう見えてしまうのも品物の質の良さである。全体的に状態が良く新品に見えるものが多い。そして器はだいたい数千円から。気軽に買えるシモキタ的な価格だ。

 

感性を育ててくれる道具

ナンセンスではこのようにアンティークの敷居をとった、誰もが日々使えるアンティークを重視しているという。

「今はアンティークでもイケアや無印と同じ土壌で見られる時代なんです。だからこそ私たちは比べていただいて価格と質を納得してもらうことを大切にしています。それには手にとっていただいて、重厚感や肌感をじかに味わってもらいたい。実物に触れると違いがわかります。まずは日用品として古いものを使うライフスタイルから入って、目利きになれば自然にさらに良いものを求めるようになります。そんな風に感性を育ててくれるよい道具を次世代に残していきたいと思っています」と益子氏は語る。

 

アンティークと人の出会いはお見合いと同じ

アンティークの良さは実物に見て触れてみないと分からない。だが今は多くの人々が現物を見ずにネットの画像と価格帯だけで買い物を済ませてしまう時代だ。

「実際に訪れるお客様はウェブで写真をまず見てから、実店舗に来る方がほとんど。だから店舗に来ていただくための工夫をしています。季節感を意識したディスプレイ、日常の暮らしのワンシーンが連想できるようなスタイリング、見た方が共感してくれてインスピレーションが沸く組み合わせを常に心がけています」

それでもなかなか売れないものもあるという。「何年も店にいる商品もあります。でも私はアンティークとお客様の出会いはお見合いと同じだと思っているんです。売れないんじゃなくて。出会うべき人と出会っていないだけ。人はそれぞれ価値観が違うし、何かに心を惹かれるタイミングもある。物がフィットすれば合う人のところに行くんです。なかなか出ていかない物を見ると私まだまだ魅力を引き出してあげてないんだって思います」

これは人間にもあてはまることではないか。魅力を引き出せば出会うべき人と出会うとは!まるでお母さんみたいですね、と問いかけると笑いながら「そうそう、逆にずっと店にいた物が売れるととうとうあの子がお嫁入りした!ってなる。旅立つときは『よくぞ見つけてくれました。この子はあなたをここで待っていた』って思う。なかなか売れない物を主人と一緒に囲んで『うーん、これすごくいいよね。どうしてだろうね~』って語りあうこともあります」

まるで益子夫妻はアンティーク達にとって実の親のようである。

 

アンティーク達の楽しきわが家

店舗を構えて17年ともなると、ここ最近は一度売れたアンティーク家具が里帰りのように店に戻ってくることがあるという。

「最近もお客様のご都合でオープン当初に売れたテーブルが戻ってきました。せっかくならナンセンスさんに戻したいと言ってくださって。主人と二人で感激もひとしおで。汚れを丁寧にクリーニングして修理を済ませたらすぐに次の引き取り手がつきました。このテーブルなんです」と中央に飾られた三本足デザインの丸テーブルを見せてくれた。

和風クラフトの味わい深い品だ。

「現在は三本足のテーブルは規格の問題もあって、あまり国内製造されません。使われている材も貴重なものです。捨てないでうちに連絡してくれて本当に嬉しかった」と益子氏は顔をほころばせる。

益子夫妻に送りだしてもらえるアンティーク達はなんて幸せ者なのだろうか。

長い時を旅して疲れていても、ここに戻ればアンティークたちは魅力を充電できる。まさにホームスゥイートホーム、楽しき我が家だ。

今日もナンセンスでは、夫婦の愛情をたっぷり浴びた品々が和やかな表情で並んでいる。

 

店舗情報
ナンセンス

住所:155-0032 世田谷区代沢5-6-16
TEL&FAX:03-3418-0530
営業時間:13:00~20:00
※火曜日(不定休)・水曜日
※祝祭日は営業

公式サイト:http://non-sense.jp/

 

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