Kero Kero Bonitoインタビュー “インターナショナルTANOSHIサウンド”はどこから来てどこへ向かう?

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2017.9.5
Kero Kero Bonito 撮影=大野要介

Kero Kero Bonito 撮影=大野要介

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今年2017年7月に日本デビューアルバム『ボニトジェネレーション』をリリースし、国内最大級の都市型ロックフェス『SUMMER SONIC 2017』(以下、サマソニ)にも出演。『サマソニ』で観たいアーティストとして真っ先にピコ太郎の名前を上げていたKero Kero Bonito(ケロケロボニト)は、セーラ(Vo&Rap&アートディレクション)、ガス(サウンドプロダクション)、ジェイミー(サウンドプロダクション)からなるロンドン在住の音楽ユニット。イギリスと日本のハーフのセーラが歌う英語と日本語をミックスしたゆるふわラップ、ブリティッシュダンスミュージックにJ-POP/J-RAPをミックスしたポップミュージック、原宿カルチャーに共通するようなビビッドでカラフルなアートワーク。「初めて聞いた瞬間、声の落ち着かない感じ、女1男2の構成、視覚的なアプローチ、他人とは思えず、ドキッとしました!」と水曜日のカンパネラのコムアイも大注目の“インターナショナルTANOSHIサウンド”について3人に訊いた。

――さっき来日したばかりということなので、日本語で自己紹介をしてもらって、そのあとにいまの気分を教えて!

ガス:ワタシはガスです。ニホンゴはヘタです(ここまでは日本語)。気分はいいです。

セーラ:セーラ・ボルトです。まだ日本にいる実感がないです。

ジェイミー:I’m Jamie.さっき昼寝から起きたばかりなので、フレッシュな気持ちです!

――水曜日のカンパネラのコムアイさんがアルバムについてコメントを寄せていましたが。水曜日のカンパネラは知ってる?

セーラ:はい、もちろん。「桃太郎」を最初に聴いたとき、いままで聴いたことがないようなラップで面白いなって思いました。

――ケロケロのサウンドの背景にはJ-POP/J-RAPをすごく感じるんだけど。日本のポップカルチャーの影響は受けてる? 受けてるとしたら、興味を持ったきっかけは?

ガス:僕は最初はビデオゲームから。『ゼルダの伝説』、『星のカービィ』などのゲームの音楽から入って。ネットサーフィンしてるときにアメリカ人とイギリス人が沖縄で結成したテクノユニットの琉球アンダーグラウンドを知って“あー不思議だな”と思ったんですね。そこから YMOとかテイ・トウワから始まって、HALCALIなどに影響を受けました。

セーラ:中2の夏まで北海道にいて。そのときにクラスメイトが聴いてた曲、ORANGE RANGEとか流行ってて。それが初めて聴いたJ-POPです。ガスがいってたゲームの話に続けてなんですけど、子供の頃に日本でやってたゲームやアニメがイギリスに行っても流行ってて。みんなポケモンとかカービィとかやってたんですよ。アメリカの人でも「小さい頃何して遊んでた?」って聞くと、同じようなゲームをやってるから。同じ世代の人なら違う国でも話題は万国共通なんだと思います。

ジェイミー:僕はガスと近いんですけど、音楽的なところではYMOとかFantastic Plastic Machineですね。ビデオゲームをやってる頃はそんなに音楽を意識したことはくて。大人になってから、ゲーム音楽の素晴らしさを知った感じです。

Kero Kero Bonito セーラ 撮影=大野要介

Kero Kero Bonito セーラ 撮影=大野要介

自分の中では英語と日本語がひとつの言葉で、それが自分だと思ってる。地球に住んでる地球人だから、どんな言葉で歌ってもいいんじゃないかって。

――そんなみなさんがグループを結成し、現在の音楽性にたどり着いた経緯を教えてください。

ガス:このグループを作るときにセーラに「ラップを入れてみて!」ってデモを渡したら、日本語と英語、バイリンガルで入れてきたのが始まりで。なんて素晴らしいんだろうと思ったんだよね。そのとき僕らはこの方向で進んでいけばいいんだと確信したね。

セーラ:ありがとう。

ガス:サウンドメイクはゲームミュージックを作ってる戸高一生、DJ CodomoやTEAM DOYOBIに僕は影響されてきましたね。

――戸高さんからDJ Codomoまで、そういう日本のマニアックなクリエーター情報はどこから仕入れているの?

ガス:全世界の音楽オタクなんです! Yeahhh!! 全然オタクといわれても恥ずかしくない。僕はオタクにプライド持ってます。

――いまオタクという言葉が出ましたが、皆さんは自分を何オタクだと思います?

ジェイミー:僕は本オタク。

セーラ:ツアー中にいっつも読んでるよね?

ジェイミー:2つの本を同時に読むのがクセ。

セーラ:私はなんだろう?

ガス:僕がすごくびっくりしたのは、フィルムに対するセーラの知識。

セーラ:おー、ありがとう。映画が好きなんです。

――ケロケロのカラフルなアートワークには日本の原宿カルチャー、カワイイ文化の影響をすごく感じるんだけど。

セーラ:あー、そこは日本とかイギリスとか特に考えてないです。カラフルなのは、自分たちを色に例えたらカラフルだなと思ったから。そうやって頭に浮かんだアイデアをそのままやってるだけです。いまはラメとかキラキラしたものがきてて(←本日のメイク、ネイル、パーカーの裏地、靴などもラメ尽くし!!)。昔からキラキラしたものが好きだから、なんでだろうと思って調べてみたんですね。そうしたら、人間がキラキラしたものに惹かれる理由は、本能的に水を連想するからだそうです。

――へぇー。

セーラ:太陽の光が当たると海はキラキラするでしょ? 古代から人は水を探すときにキラキラしたものを目指していたというのを読んだとき、自分的にしっくりきて。いまはラメをいろんなところに取り入れてます。

――セーラの日本語と英語をミックスしたラップスタイルはどこから生まれたの?

セーラ:私はどっちの言葉も聴きながら育ったから、自分の中では英語と日本語がひとつの言葉。それが自分だと思ってるから、英語だけだと自分を50%しか表現できない気がして。だからラップも、気づいたら自分的に一番自然な書き方が英語と日本語を使った書き方だったんです。2人と出会う前から日本語と英語を使ってなにかをしたいなと思ってたから、彼らと出会ってラップを書いたとき「これだ!」と思いました。あとは、いまはイギリスにいるから英語だけとかじゃなく、私は“地球”に住んでる。地球人だからどんな言葉で歌ってもいいんじゃないかっていう主張でもあります。

――深いですね。彼らに日本語を教えてあげたりするの?

セーラ:日本に来たときは教えるんですけど、ラップで日本語を使ってても意味は聞いてこないので(笑)。

ガス:いわれても意味分かんないし。

ジェイミー:でも、いまは分かるよ? RECのときは分かんないってだけ。

ガス:僕は言葉の意味よりも、耳当たりがいい“響き”にすごくこだわっていて。それは英語でも日本語でも同じなんです。耳当たりがよくないなと思ったら、その言葉はキャンセルするし。HALCALIも、言葉の意味は分からなくてもあのゆるふわなラップがよくて聴いてたからね。

Kero Kero Bonito ジェイミー 撮影=大野要介

Kero Kero Bonito ジェイミー 撮影=大野要介

日本のファンには感謝しかないです。未来は明るいから、みんな前進していけば大丈夫。僕たちと一緒に未来を進もう!

――なるほど。ケロケロボニトというのは名前も響きもユニークだと思うんだけど。サンリオのカエルのキャラクター「けろけろけろっぴ」からきてるの?

セーラ:「けろけろけろっぴ」は知ってるけど……。

ガス:グループ名は、元々はオノマトペを書いてるとき、カエルの鳴き声って日本語ではケロケロだけど、英語では“ribbit”っていうんですよ。同じ意味なのになんでこんなに違うんだろう、面白いなと思って。それが結果、ケロケロの世界観を作るきっかけにもなってて。そんなケロケロにポルトガル語で美しいという意味のBonitoをつけたんです。

――では、日本デビューアルバム『Bonito Generation』について。こちらはどんな作品になったと思う?

ガス:すごくカラフルで、ケロケロの世界観を表現できてるんじゃないかな。

セーラ:そう。まさにこれが“ケロケロワールド”です。

ジェイミー:いろんな曲があって。さっきの名前の話じゃないけど、曲のなかにすごくポジティブな面があったと思えばネガティブな面があったり。両極端なものが入っていたりするんだ。でも、最終的なゴールとしては、すごくポップアルバムというカラーが強いインパクトとして耳に残る作品を作りたかったから。完成したものを聴いても、それがうまく表現できたなと思いました。

ガス:音だけじゃなく、メッセージでもそういう部分が伝わってくれるといいな。日本のアルバムは歌詞が封入されてるので。

セーラ:歌詞カードがついてるのは日本盤だけなんですよ。だから、日本以外のファンの人たちからはよく「歌詞を教えて」っていうメールが届くんです。

――歌詞では「Trampoline」の<どん底の底の底ってなにがあるか知ってる? どんどん落ちていくとTrampolineがあるんだよ>とかすごくよかった! グッときた。

ガス:この曲を指摘してくれたのはすごく興味深くて嬉しいよ(笑顔)。アメリカとかでは「うわー、めっちゃテンション上がる!」というリアクションで終わっちゃったりするんだけど、「楽しい曲だね」っていわれるその裏には、“Trampolineはずっと落ちつづけることはできない。どんなにつまづいても、一番下まで落ちたらそこからまた上に跳ね上がるから大丈夫”という深いメッセージがあるんだ。

――そうそう! ポップに見えて実は歌詞が深いのがケロケロワールド。

ガス:やっと分かってくれた人に出会えたよー(笑)。

セーラ:歌詞のそういうストロングポイントが日本語のラップだから、日本語が分かる人には届きやすいかもしれないですね。

Kero Kero Bonito ガス 撮影=大野要介

Kero Kero Bonito ガス 撮影=大野要介

全世界の音楽オタクなんです! Yeahhh!! 全然オタクといわれても恥ずかしくない。僕はオタクにプライド持ってます。

――<先生みんな、さようなら>、<100点満点全部けっきょく何のため?><鳥かごの扉を開けて空に向かって羽ばたけ>と歌う「Graduation」の歌詞もよかった。

セーラ:Thank you!! これは、私が一番好きな歌詞です。私たちは3人とも大学の卒業式に出てないんですよ。それぞれ違う理由で。

ジェイミー:僕は2015年、JAPANにいたし。

ガス:僕はケロケロのリリースの締め切りが迫っていたから、卒業式に出るよりもこっちを仕上げようと思って出てない。

セーラ:私はただ行きたくなかっただけなんですけどね(笑)。そのことについてどうしても書きたかったの。今回のアルバムのジャケットは、私たちが撮れなかった卒業写真。このアルバムを“これが私の卒業写真だよ”って親に渡そうと思って。

――このアートワークにはそんな意味があったんだ。

ガス:そう。ケロケロって、ポップに見えていろいろと深いんですよ。

Kero Kero Bonito『Bonito Generation』

Kero Kero Bonito『Bonito Generation』


――サウンドに関しては、アルバムのなかで「Fish Bowl」は一番J-POPから離れた楽曲で、逆に「Big City」は一番J-POPに近い曲かなと思ったんだけど。

ガス:そう? 興味深いコメントだね。実際、いまインディーズの音楽オタクたちの間では、日本のシティーポップスはすごいきているからね。“山下達郎最高!”とかみんないってたりするから。ただ、それはこの作品には直接影響はしてないと思うけど。

――ケロケロはこれまでいろんな音楽フェスに出てるけど。日本語が分からない人たちの前で日本語をミックスした曲をやったとき、どんなリアクションがかえってきた?

セーラ:この間アメリカでライブをしたときは、日本語のラップパートを完璧に覚えて歌ってる人がいました。みなさん、あんまり日本語とか英語とか関係なく受けれてくれてますよ。

――では今後、『サマソニ』出演に続き、ケロケロが日本でやってみたいこととは?

セーラ:北海道でライブをしてみたい。

ガス&ジェイミー:ぶはははっ(笑)。

セーラ:これは個人的な希望ね。中学2年まで北海道の小樽に住んでいたので、できたら小樽でライブをしてみたいんだけど。小樽にライブハウスってあるかな?

ガス:じゃあ僕は沖縄でやりたいな! 場所としてとても興味がある。

ジェイミー:僕はいまのままでいいよ。大満足! だって、いい感じだもん。

――じゃあ日本でコラボレートしてみたいアーティストは?

ガス:HALCALI?

セーラ&ジェイミー:Yeahhhhhhh!!

ガス:あとは、これは現実的ではないかもしれないんだけど、松任谷由実さん! ヨロシクオネガイシマス。

――最後に、日本のファンにメッセージをどうぞ!

ガス:僕たちを受け入れてくれてありがとうございます。今後もさらにいい音楽を作っていきたいと思います。

セーラ:これからもよろしくお願いします!

ジェイミー:日本のファンには感謝しかないです。未来は明るいから、みんな前進していけば大丈夫。僕たちと一緒に未来を進もう!


取材・文=東條祥恵 撮影=大野要介


 


 
リリース情報
デビューアルバム『Bonito Generation』
Kero Kero Bonito『Bonito Generation』

Kero Kero Bonito『Bonito Generation』

2017年7月12日(水) 発売
[通常盤] CD SRCP-438 ¥1,852+税
[初回生産限定盤] CD+DVD SRCP-436~7 ¥2,315+税
オリジナルロゴステッカープレゼント(なくなり次第終了)
<収録内容>
[CD](通常盤・初回盤共通収録)
1. Waking Up
2. Heard a Song
3. Graduation
4. Fish Bowl
5. Big City
6. Break
7. Lipslap
8. Try Me
9. Paintbrush
10. Trampoline
11. Picture This
12. Hey Parents
Bonus Track for Japan
13. Forever Summer Holiday
-Bonus Tracks-
14. Picture This (Felicita Remix)
15. Fish Bowl (Frankie Cosmos Remix)
16. Heard a Song (CFCF Remix)
17. Trampoline (Saint Etienne Remix)
18. Lipslap (Makeness Remix)
19. Break (Jonah Baseball Remix)
[DVD] (特典映像:初回生産限定盤のみ収録)
1. Break
2. Lipslap
3. Trampoline
4. Forever Summer Holiday

◆対象店舗での購入者特典として、オリジナルロゴステッカーをプレゼント!
・オリジナルロゴステッカーTOWER RECORDS ver.…TOWER RECORDS(全店オンライン含む、一部店舗除く)
・オリジナルロゴステッカー応援店ver.…Kero Kero Bonito応援店(オンライン含む、一部店舗除く)

 

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