南河内万歳一座『びっくり仰天街』座長・内藤裕敬が大阪で会見

インタビュー
舞台
2017.12.5
内藤裕敬(南河内万歳一座)。会見場所となった大阪市中央公会堂(国指定重要文化財)にて。 [撮影]吉永美和子

内藤裕敬(南河内万歳一座)。会見場所となった大阪市中央公会堂(国指定重要文化財)にて。 [撮影]吉永美和子

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「罠にハマってるんじゃないか? という感覚で観てもらえたら」(内藤)

関西演劇界を代表する劇団「南河内万歳一座」が、2010年初演の『びっくり仰天街』を7年ぶりに改訂上演する。劇団の座長で作・演出の内藤裕敬が大阪で会見を行い、今回の改訂ポイントや劇団の今後について語った。

同作は、内藤が近所を散歩している時に、古いアパートの一室から家財道具一式が運び出されているのを見かけたことが、執筆のきっかけになった。その時の心情について「普段人の生活の内部にあるものが、その人の生活の時間がなくなって、表に野ざらしにされているという風景にドキッとしました。お箸とか茶碗とか、本来地面に放置されてはいけないものが転がってるのを見ると、自分の方が動揺したり、哀しくなったりして、この気持ちは何だろう? と思いました」と語る。

南河内万歳一座の前回公演『守護神』より。 [撮影]谷古宇正彦

南河内万歳一座の前回公演『守護神』より。 [撮影]谷古宇正彦

舞台は、路上に家財道具が運び出された港町のアパート。そこにお通夜の会場を探すけど、どうしてもこのアパートの前に来てしまうオカマの一団が現れる。そのアパートの一室で暮らしていた住人は、偽の履歴で部屋を借りていたが、この部屋から忽然と消えた末に亡くなったらしい。しかもどんな人だったのかは「若い男性だった」「水玉模様の服を着た女だった」と、人によって証言が食い違う。さらには、オカマたちがお通夜に向かっていた、その故人本人の部屋ではないか? という説も浮上。ああだこうだと部屋の主の正体を探っていくうちに、やがてこのアパートの近所の商店街の人たちがもくろんだ、大きな計画が明らかになっていく……。内藤が得意とする「現代社会の問題をカリカチュアライズする」というスタイルとは違い、ミステリー要素の方が強い異色の作品だ。

お通夜というのは故人の付き合いとか世間とかが大集合し、その人の内側にあるものが全部バレる場所。そのことと、アパートの内部にあったものが外に出される……内側が外側に露呈してしまったことで明らかになる“何か”にこだわった物語です。初演の当時は、ややこしい人間関係や展開を上手く書く自信がなかったけど“もういいや、やっちまおう”と思って書いてみたら意外とできて(笑)。そこから原稿の上でも、奇想天外な遊びができんじゃねえか? と、台本を書くのがまた楽しくなった作品でもある。ただ前回は、僕の筆がまだ未熟な所があったので、もっと踏み込んだ展開にした方が、もっと面白くなるんじゃないかと思っています

そのリベンジとなる再演は、前半の展開は初演とほぼ一緒だけど、後半をガラッと変える予定だと言う。「アパートの謎の失踪者と、亡くなった人の姿がいつしかダブってきて……という謎の中にどんどん転がり落ちて、罠にハマってるんじゃないか? という感覚で観てもらえたら。バカバカしさもポエジーも残酷さもロマンチックも、すべてを散りばめながら遊べそうな作品になると思います」と期待を語る。また演出面では「今回は(万歳名物の)大舞台転換を使わず、屋外にある家具の配置を並べ直していくことで、いろんなシチュエーションを作っていきます。また僕は通夜に向かうオカマの一人で出演し、歌も歌う予定です」と、演出&役者としての自分の見どころも明かしてくれた。

内藤裕敬(南河内万歳一座)。 [撮影]吉永美和子

内藤裕敬(南河内万歳一座)。 [撮影]吉永美和子

前回の『守護神』の会見で「劇団創立40周年に向けて今から動いていく」と宣言した内藤だが、早速この会見で具体的なプランの一部を披露。「まずは来年から年1回、他の劇団との合同公演をやってみようと思い、第一弾は空晴(からっぱれ)と作ることが決まりました。以前万歳に出たことがある俳優たちを呼び集めた舞台とか、いろんな企画を考えています。ただその記念公演をどういう形で飾るのが、万歳一座らしいのか? というのは、まだみんなで検討中です」と「劇団創立41周年記念公演」に向けて、ロングスパンで考えていることを語った。

散りばめられた謎の中から、人間が内部に隠していたモノが外に出される時のドキドキ感と、それと同じぐらいの哀愁を強く感じる舞台になるであろう『びっくり仰天街』。大阪公演の後は、北九州、東京でも上演される。

内藤裕敬(南河内万歳一座)。左側は長谷川義史による今回の公演ポスター。 [撮影]吉永美和子

内藤裕敬(南河内万歳一座)。左側は長谷川義史による今回の公演ポスター。 [撮影]吉永美和子

取材・文=吉永美和子

公演情報

南河内万歳一座『びっくり仰天街』

《大阪公演》
■日程:2017年12月7日(木)~12日(火)
■会場:一心寺シアター倶楽
■料金:前売=一般3,500円、学生・65歳以上3,000円、青春18歳差切符(年齢差18歳以上のペア)5,500円 当日=各500円増

《北九州公演》
■日程:2017年12月16日(土)・17日(日)
■会場:北九州芸術劇場 小劇場
■料金:前売=一般3,000円、学生・65歳以上2,800円、青春18歳差切符(年齢差18歳以上のペア)5,500円 当日=各500円増
 
《東京公演》
■日程:2018年1月17日(水)~21日(日)
■会場:ザ・スズナリ
■料金:前売=一般3,500円、学生・65歳以上3,000円、青春18歳差切符(年齢差18歳以上のペア)5,500円 当日=各500円増
※18日昼公演は各500円引
 
■作・演出・出演:内藤裕敬
■出演:河野洋一郎、鴨鈴女、木村基秀、福重友、皆川あゆみ、鈴村貴彦、松浦絵里、市橋若奈、寒川晃/有門正太郎(飛ぶ劇場)、ことえ(空間悠々劇的)/池田愛美(吉田商店)、木下健(短冊ストライプ)、樋口弘紀、丸山文弥
■公演特設サイト:http://www.banzai1za.jp/bikkuri2017/top.html

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