トップリーグも大詰めの11節 順位決定を左右する試合の行方は?
近鉄戦でトライを決めるWTBの長友泰憲。サントリーの攻撃をNECがどう止められるかが鍵となる ©2017,JRFU Photo by K.Demura
8月から始まった社会人ラグビーのトップリーグは、フランス遠征など日本代表戦のため一時中断していたが、12月2日の10節から再開した。24日の13節でリーグ日程は終了する。
2日に行われた10節で注目の一戦となったのは、ともにレッドカンファレンスの神戸製鋼コベルコスティーラーズvsNTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦だった。同カンファレンスで2位につけていた神戸製鋼は、NTTコミュニケーションズを下して上位2チームに残る計算をしていただろう。しかし、28-21で迎えた後半40分に、CTB山中亮平が故意のノックオンでシンビン(一時退場)。続けてLOアンドリース・ベッカーがハイタックルで同じくシンビンとなり、13人対15人という厳しい状況に陥った。
さすがの神戸製鋼も2人欠けては、NTTコミュニケーションズの攻撃を防ぎきれない。終了間際の44分を過ぎたころ、ゴール前のラインアウトからモールで押し込まれ、日本代表にも選ばれているNo.8のアマナキ・レレイ・マフィにトライを許してしまう。FB小倉順平がキックを決めて28-28の同点で試合終了。神戸製鋼にとっては手痛い星を落とし、3位と一つ順位も落としてしまった。
NTTコミュニケーションズは5勝4敗1分と5位のまま。現在レッドカンファレンス1位のサントリーには勝ち星で追いつけないものの、2位の可能性を持ちながら最後の3節を迎えることになった。
NTTコミュニケーションズが秩父宮ラグビー場で9日に対戦するのは、ホワイトカンファレンスのキヤノンイーグルスだ。4勝6敗(勝ち点18)で同カンファレンス5位と今年は苦しいシーズンを迎えているキヤノンだが、南アフリカ出身のSOジャン・クロード・ルースの活躍もあって、10節は豊田自動織機シャトルズを31-10と一蹴。世界最強リーグ・スーパーラグビーの日本チームであるサンウルブズのキャプテンだったNo.8のエドワード・カークや、日本代表のPR五十嵐優などのフォワード陣がまとまってきており、トップ2入りを諦めてはいない。
こうなると、別カンファレンスながら同じ5位と中位につけている両チームは、9日の戦いが“奇跡の優勝”を成し遂げられるかの大一番となる。4日にサンウルブズのメンバー発表があり、NTTコミュニケーションズからはNo.8としてヴィリー・ブリッツが選ばれた。ロックもできる巨漢フォワード(193センチ、108キロ)で、この試合でもキーマンになることは間違いない。
9日に秩父宮ラグビー場で開催されるもう一試合は、現在レッドカンファレンス1位のサントリーサンゴリアスと、ホワイトカンファレンス4位のNECグリーンロケッツの一戦だ。サントリーは現在9勝1敗で、唯一負けているのがホワイトカンファレンス1位のパナソニックだけという安定した戦いぶり。各カンファレンスの2位以内で戦うベスト4トーナメントに一歩一歩近づいている。昨年も17連勝無敗でトップリーグを制し、日本選手権も勝って二冠達成した。今年はパナソニックには負けたものの、狙うはトーナメントを制しての2連覇だ。一昨年の総合9位という結果から、沢木敬介監督の戦術、ディフェンス強化が実を結び、新しいサントリーの勝ち方が確立されつつある。
対するNECは現在5勝4敗となかなか中位から抜け出せない。元々フォワードで押すチームだが、日本代表選手が抜けてしまい、チームとしては過渡期に差し掛かっている。現在、ホワイトカンファレンスではキヤノンと熾烈な順位争い中。もし“下剋上”的にサントリーを倒せば、同カンファレンス2位の座も狙えるとあって、なんとか気合で一泡吹かせたいところだ。
日本代表とサンウルブズはジェイミー・ジョセフヘッドコーチが兼任する。スーパーラグビーも含め、2019年のワールドカップまでの国内戦は、日本のレベルを押し上げる貴重な試合となる。サンウルブズに8人と最も多くの選手を選出されたパナソニックワイルドナイツは、熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で宗像サニックスブルースと対戦。選出選手の発表直後だけに、選手たちの気持ちもかなり入る試合になりそうだ。
フランス遠征でこれまで勝ちの無かったフランスと引き分けるなど、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ、リーチ・マイケルキャプテン効果が結果に結びつきつつある。社会人リーグも終盤で、各チームとも順位が気になる時期。さらに、ワールドカップに向けて成長過程を確認できる好機でもある。ぜひ、日本のラグビーの成長ぶりをその目で確かめたい。