毛利亘宏×南圭介「少年社中の追加戦士として新しい風を吹かす」舞台『MAPS』インタビュー

インタビュー
舞台
2018.5.12
(左から)毛利亘宏、南圭介

(左から)毛利亘宏、南圭介

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2018年5月から上演される少年社中20周年記念第二弾 少年社中 第34回公演『MAPS』。2018年1月に上演された『ピカレスク◆セブン』に続く記念公演 第二弾となる本作は、「楽園を目指して旅する冒険家」、「江戸時代、日本の地図を作ろうとした伊能忠敬」、「一人の漫画家が苦悩の果てに生み出す漫画」という3つの物語に関わる3枚の地図を巡るファンタジー作品で、劇団主宰の毛利亘宏による完全オリジナル戯曲だ。本公演で脚本・演出を担当する毛利と、主人公の1人である漫画家を演じる南圭介に作品にかける意気込みや役についての思いを聞いた。

ーーお二人が揃うとなると、やはり『宇宙戦隊キュウレンジャー』の脚本家・毛利さんと出演者・南さんということになりますが、お仕事をご一緒されてお互いの印象はどうでしたか?

毛利:『キュウレンジャー』の顔合わせで初めて会ったんだよね。

:東映での顔合わせでしたね。

毛利:鳳ツルギ/ホウオウソルジャー役に南くんが決まった時は、本当に嬉しかったんですよ。自分が初めてメインライターとして担当する作品でしたからね。追加戦士が赤い人というのは決まっていたので、主人公のシシレッドとのダブル・レッドとしてね。それで、もうすでに11人のキャラクターを立てた後での12人目のキャラクターということで、主人公のシシレッド並にキャラを強くしないといけないということから、演技力を必要としていました。僕はキャスティングにほとんど関わってないので、南くんに決まったと聞いてこれでツルギは大丈夫だと思いましたね。

:そう言って頂けると本当に嬉しいです。それで『キュウレンジャー』に出演することができて、今につながってますし、本当に感謝ですよね。『キュウレンジャー』の放送は最初から見ていたんですけど、追加戦士が出てこないんじゃないかと思うぐらいにスタートから華やかさがありました。追加戦士のお話があると聞いたタイミングが、特撮にもう一度挑戦したいということを自分の中で決めたタイミングでもあって、いろんな思いが一致して、ここまで来られたということがご縁だと思っているので。

毛利:ちょっとオールドタイプなヒーローを描きたかったんですよ。

:30代でしたから。

毛利:シシレッド役の岐洲匠くんの若々しさと張り合うには、ズシッとしたキャラクターでやって欲しいなという思いもあって、格好いい大人を描きたかったんだよね。

ーー確かに『キュウレンジャー』の役者さんは若い方が多い印象で、その中でも南さんはお兄さん的な立場でしたね。

:最初はどういう風に入っていいのか戸惑いました。もともと存在している作品の中に追加で入る、なおかつ年下ではなく年上が入るということなので。新しくできあがっているカンパニーに、年上で入るというパターンはあまり経験が無かったんです。私生活でなら、後輩キャラでとことん入っていくという経験はあるんですけど。どういう風に自分を出しつつ、どう溶け込めるかというのを考えていました。でも、それはツルギという役にすごく助けられて、入っていくことができたと思っています。そういう意味では毛利さんの脚本に助けられた部分がたくさんありましたね。

ーーその毛利さんが主宰されている劇団の20周年記念公演に出演されることになったお気持ちはいかがでしょうか?

:素直に嬉しかったです。毛利さんの脚本ということで、すごくホッとする部分もありますね。自分を知ってくれている人が書く役って、なんだか不思議な安心感があります。それに、『キュウレンジャー』もそうだったんですけど、半年以上もの間、同じ作品、同じ役に向き合ってきたことによって、「自分ってこういう一面があるんだ!?」という発見ができたので、その発見を今回、毛利さんが描く役を通じてできそうと期待もあります。毛利さんの言葉は自分の中に入り込みやすかったので、そういう意味では安心と楽しみがありますね。

南圭介

南圭介

ーー特撮と舞台という違いはありますが、やはり同じ方が脚本を務めるというのは役者にとって安心感があるんでしょうね。

:そうですね。関係性はやっぱりゼロじゃないですね。『キュウレンジャー』でも、毛利さんにお会いしてお話しするという機会が作品のポイントでありつつ、魂の脚本と毎週向き合っていました。

毛利:なんか文通みたい(笑)。

:本当にそういったやり取りでしたよ(笑)。

ーー南さんも20周年記念公演の第一弾公演『ピカレスク◆セブン』を観に行かれていたそうですが、いかがでしたか?

:非常に華やかで、『キュウレンジャー』をご一緒していたからかもしれませんが、一人一人が本当に主役に見えるというのが、さすがだなと。脚本的に見て、みんなが輝いていましたし、それってすごいなと思いましたね。それと、少年社中さんの第1回公演である『EL ALQUIMISTA-アルケミスト-』という作品なんですけど、実はすごく好きな作品なんですよ。

毛利:そうなの?

:パウロ・コエーリョの原作(※『アルケミスト - 夢を旅した少年』)は、節目で毎回読み返す本なんです。それで、第1回公演で毛利さんが上演されていたと知ったので、それもすごく嬉しかったんです。

毛利:パウロの作品はいいよね。第1回公演で『アルケミスト』を上演するにあたって、パウロのホームページ経由でパウロに手紙を書いたんですよ。世界的な作家ですけど、「君がやりたいのに、やれないわけがないじゃないか」という健闘を祈る的な返事が来て、それがすごく嬉しかった。簡単にオーケー出したらエージェントにきっと怒られるんだろうなとは思ったんですけどね(笑)。勇気づけられましたね。この作品にちゃんと向かい合いたいとあらためて思わされました。

ーー南さんも好きだった作品が少年社中の第1回公演だったというのは運命的なものがありますね。

:そのことを知った時には、ドキッとしました。

毛利:それは嬉しいな。

:何回も読み返す本だったので、なおさらですね。本を読むのが好きなんですけど、基本的に1冊読み終わったら別の本をどうしても読みたくなるじゃないですか。でも、全ての本は一生かけても読めなくて、そのたくさんある本の中で選ぶことが出会いだと思うんですよ。その中で、もう何回も何回も読みたくなる本というのが『アルケミスト』だったので、毛利さんとマインドが似ているなと思いましたね(笑)。

毛利:まさしく運命的だね。ツルギとかの自分がやりたいことの根底にあの作品はあったんだろうと思うよ。自分らしくあるとか、そのままの自分を無理なく出していくじゃないですけど、やりたいと思ったらやればいいという。今思えば『キュウレンジャー』にもやっぱりパウロの影響があったんだなと。そういうマインドで、つながる部分があったんだろうね。

:確かに、つながる部分はありますよ。僕も『キュウレンジャー』のオーディションに行く前にあたって、読み返した本だったので、これはもう良い前兆だなと思いました。

毛利:良い前兆だね。この良い前兆を見逃しちゃいけないね。

毛利亘宏

毛利亘宏

ーー南さんをキャスティングした意図はどういったものがあったのでしょうか?

毛利:1年もの間『キュウレンジャー』でご一緒して、どこかでちゃんとやりたいなと思っていたんですよ。それで、お声がけして、こんなすぐのタイミングで出演に応えて頂けたのは嬉しかったですね。舞台も長くやっている方ですし、『キュウレンジャー』で演じてもらったツルギという役は、僕も思い入れが強く書いてきたキャラクターでしたから、すごく嬉しかったです。それで、今度はそのツルギという役と対照的なキャラクターとして、自分のホームである少年社中でいっしょにやってみたいなという思いが強かったんですよね。今回の役は漫画家という今の自分をすごく反映させた役になると思うので、どういう風に演じてくれるのか今から楽しみですね。

:今のお話を聞いていたら、毛利さんをもっと知りたいと思いました(笑)。

ーー『キュウレンジャー』の初代宇宙連邦大統領でオレ様キャラという役から、今回は毛利さんが自分を反映させた漫画家という役へとスケールに大きな変化がありますが、その役柄や物語について何か考えていることはありますか?

:とにかくリアルを追求してみたいなと思っています。なので、人間味をどれだけ出せるかですね。これから脚本を読んで役作りをしていく中で、その場で生きているような感覚で取り組んでいきたいなと考えています。リアルに「毛利さんって、こんなに大変だったんだ!?」みたいな。それぐらいの人間の深みというものを出すことができたらと思います。

毛利:最近、漫画家の人たちと色々とお話する機会があったんですけど、みんな面白いんですよ。『キュウレンジャー』つながりだと、漫画家でキュウレンジャーのキャラクター・デザインをされていた久正人先生は面白い人ですね。僕が久正人先生の大ファンで、うちの本棚に先生の本がズラッと並んでいるんです。だから、久正人先生が『キュウレンジャー』のキャラクター・デザインをされると聞いた時は驚きました。チャンプやガルというキャラクターのデザインを初めて見た時なんかは、「これがヒーローで大丈夫?」と思ったりしたんですよ(笑)。あれぐらい強い個性のものを描ける人というのは、どんな人なんだろうと思って、お話してみると本当に面白い人なんですよね。

ーーそういう影響から漫画家にしようという思いに至ったんですね。

毛利:そうですね。自分を投影するというと、劇作家、小説家、シナリオライターとかになっちゃうんですけど、あまり自分に近すぎても、嫌だったんですよ。そこからちょっと飛ばしたくて、興味を持った職業としての漫画家が出てきました。

ーー多和田さんらが演じる冒険家たちのストーリーを描く漫画家という立場ですよね。

:僕が多和田くんを描くということですよね。

毛利:そうだね。

:僕は絵が下手なので、あらかじめ多和田くんに謝っておかないといけませんね(笑)。

毛利:(笑)。

:刺さる人には刺さるかもしれない個性的な画風です。

ーーそれはぜひ舞台上で披露して頂きたいですね(笑)。

:そうですね(笑)。

毛利:観に来て下さったお客様にプレゼントしますか(笑)。

(左から)毛利亘宏、南圭介

(左から)毛利亘宏、南圭介

ーー共演する多和田さんについて、南さんから見た印象はどうですか?

:過去にミュージカル『テニスの王子様』で手塚国光という同じ役を演じていたこともあって、多和田くんとは雰囲気も似ていると周りからよく言われるんです。お芝居での共演は今までないんですけど、一度いっしょにお仕事をしたことがありまして、その時、話した時はすごくいい子だなという印象でしたね。あらためて舞台上でしっかりと共演するので、楽しみです。

ーーその多和田さんと、伊能忠敬役の岩田有民さん、そして南さんという3人の主人公が異なる時間軸の中でどのように関わっていくのか気になります。

毛利:直接は交わらない3人になっていくんじゃないかと今は考えています。描き方としては、それぞれの精神性が最終的に交わっていくことになるんじゃないかと。他のメンバーはいろんなことで交わっていく可能性はあるんですけど、逆に主人公の3人は一切交わらないかもしれないですね。“共演”という意味ではラストシーンにあるかもしれないですけど。

ーー岩田さんや、その他の少年社中の劇団員の方々について感じていることはありますか?

:本当に全員が初めましての方なんです。できあがっている中に入るというのは、『キュウレンジャー』で追加戦士として経験させてもらいましたし、それによって、少年社中さんというベースの中に僕らがどのように新しい風を吹かせていけるかですね。

ーー少年社中への追加戦士ということですね。

:そうですね(笑)。

ーー『アマテラス』では2つの時間軸をベースとした物語が展開されていましたが、今回はそこが3本ということになりますね。今回のような複雑な物語を構築する際には、ヒーローが12人もいて、いろいろな場所や時間で物語が展開する『キュウレンジャー』のメインライターを務めた影響もあるんじゃないでしょうか? 

毛利:おっしゃるとおり、影響はあると思うんですけど、逆に劇団を持っていなかったら『キュウレンジャー』を描くことはできなかったんじゃないかと思う時があるんですよ。劇団を持って、その中の劇団員はそれぞれが別々な色で、個性的で。さっきの話で言うと、これも良い前兆なんですけど、劇団員は『キュウレンジャー』と同じく12人なんですよ。

:そうですよね!

毛利:そういう奇跡がやっぱり起こるわけですよ。

:いろいろな奇跡が起きていますね。

毛利:それもあって、『キュウレンジャー』が戦隊シリーズのスタンダードな5人とか3人のチームではなくて、9人から始まるというのを言われた時は、それこそラッキーだと思いましたね。他の脚本家ではできないことだし、僕が得意なことだと思っていたのが『キュウレンジャー』でしたから。

(左から)毛利亘宏、南圭介

(左から)毛利亘宏、南圭介

ーー『ピカレスク◆セブン』には、多数のキャラクターが主人公格として登場しながらも、スピーディーさとテンポの良さを感じました。それも『キュウレンジャー』をやってこそでしょうか?

毛利:そのスピーディーさに関しては『キュウレンジャー』でかなり学びました。脚本家として強化されたと思っているところです。『キュウレンジャー』は、とにかく9人を描くには尺が足りなかったんですよ(笑)。そこに追加戦士が登場して12人に増えるし、役者は役者で1話の中で、1人につき台詞がひと言あるかないかの状態でも頑張ってくれるしね。そういう中で何かギュッと圧縮していこうという技術が身に付いたところもありました。だから、『ピカレスク◆セブン』では30分番組のスピード感を持ち込もうと思ってやっていたんですよ。

:『キュウレンジャー』では、みんなが基地の中で会話によって物語を回すところにスピーディーさやテンポの良さが特にありましたね。

毛利:最近の自分のトレンドじゃないですけど、脚本で、同じ状態で1ページを引っ張らずにとにかく変化を入れていこうという思いがありますね。そもそも舞台を観るというのはそんなに楽なことじゃないと思っています。2時間も座って観ること自体が苦痛だったり、この時間にここに集まれと指定されたり。何かしゃべってもいけないし、何か飲んでもいけない。舞台って過酷な状況にお客様を置くので、少しでも楽しいことをしないといけないと思うんですよ。観劇はつらいものだというのが前提で考えるのもどうかと思うのですが…(笑)。だからこそ、自分が作る物はエンターテインメントでありたいというか、ちゃんと楽しいものでありたいと考えていますね。

ーー南さんとしては、『キュウレンジャー』から続いて同じ脚本家の方の作品というのは非常にやりやすいのではないでしょうか。

:毛利さんは脚本も書かれていて、さらに演出もされるので、確実にそのイメージを伝えていただけそうだと思っています。脚本と監督が違うと、監督の好みや、脚本家の意向が一致しない場合もありますよね。あとは自分の考えというものがそこに混ざったりもして。もちろん混ざったことで良い物が生まれたりするので、悪いことだとは思ってはいませんが、とにかく非常にやりやすい感じはしています。

ーー全てが良い前兆に向かっている感じがしますね(笑)。南さんとして、本作のストーリーに期待することはありますか?

:ストーリーがどういう風に展開するのかが本当に楽しみです。漫画家、冒険家、伊能忠敬の3人がどのように交わって、最後にどうなるのか。そして、僕の役に関わってくる漫画家のアシスタントや、カウンセラーという人たちがこれからどうなっていくのかとか。アシスタントの方が漫画家よりも強い方なのかとか、そのアシスタントやカウンセラーとどういう掛け合いがあるのかも期待しています。

ーークリエーターの持つ悩みじゃないんですけど、創作活動で精神的にちょっと病んでしまうことでカウンセラーも出てくるんですね。

毛利:ネタのために、実際にカウンセリングを受けてみましたが、これが面白いんですよ。発見がいっぱいあって(笑)。すぐにそこからネタを拾いました(笑)。

:その発見をこの舞台でこの役を通して、発見していきたいですね。良い意味で自分を壊して、新しい自分を見つけたいです。

ーー最後に公演に向けての意気込みや、お客様へのメッセージをお願いいたします。

毛利:みんながみんな、いろんな悩みを抱えたりとか、目標を持って生きていく中で、少しでも背中が押せる作品になればいいなと思っています。それこそ、かつて『アルケミスト』でパウロに背中を押してもらったような体験というか、前に進もうと思える作品であったり、過去の自分を肯定できるような作品にできたらいいなと思っています。

:僕もさきほどの『アルケミスト』の話を聞いて、この作品が観て下さるお客様の何か一つのきっかけになってくれたら嬉しいです。ですから、お客様との出会いも今後大事にしていきたいので、ぜひ劇場に観に来て下さい。

(左から)毛利亘宏、南圭介

(左から)毛利亘宏、南圭介

取材・文・撮影=櫻井宏充

公演情報

少年社中20周年記念第二弾 少年社中 第34回公演『MAPS』
 
【東京公演】
日時:2018年5月31日(木)~6月12日(火)
会場:紀伊國屋ホール
【大阪公演】
日時:2018年6月22日(金)~6月24日(日)
会場:ABCホール
 
■脚本・演出:毛利亘宏
■出演:井俣太良、大竹えり、岩田有民、堀池直毅、加藤良子、廿浦裕介、長谷川太郎、杉山未央、山川ありそ、内山智絵、竹内尚文、川本裕之、南圭介、多和田秀弥、 山谷花純、小野健斗、伊勢大貴、柏木佑介、あづみれいか、中村誠治郎
 
■チケット料金:5,500円(税込)U-19 ¥2,000(税込)

■公式サイト:http://www.shachu.com/maps/
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