山下健二郎「みんなで青春を感じて!」舞台『八王子ゾンビーズ』会見&ゲネプロレポート
舞台『八王子ゾンビーズ』初日会見
三代目J Soul Brothersの山下健二郎の初主演舞台『八王子ソンビーズ』が2018年8月5日(日)に東京・TBS赤坂ACTシアターにて初日を迎え、本番前にはゲネプロと初日会見が行われた。本作は放送作家としてのみならず、映画や演劇の脚本、監督、演出とマルチな才能で活躍する鈴木おさむが「音楽×ダンス×ゾンビ」をテーマに手がけた完全オリジナルの舞台。
幅広いタイプの豪華出演陣が顔ぶれに並び、主題歌をm-flo、劇中曲を☆Taku Takahashiが務めるなど話題に事欠かない舞台であったが、ゲネプロで一足先にその様子を目撃して、本作がエンターテインメント炸裂する話題以上の舞台であることがわかった。そこで、今回は初日会見での様子を交え、本公演の魅力を紹介する。
ゲネプロ前の会見には、山下、久保田悠来、藤田玲、駿河太郎のほか、脚本・演出の鈴木が登壇。一同、談笑しながら姿を現し、朗らかな雰囲気で会見がスタートした。現在の心境を尋ねられた山下は「お客さんに早く見てもらいたい」と答え「笑いだったり、演者の呼吸であったり、歌や踊り、心動かされる物語と全ての要素が詰め込まれた舞台。多くの客さんに楽しんでいただける作品になったと思います」と作品の魅力を紹介。
舞台『八王子ゾンビーズ』
続いて、山下の座長ぶりを尋ねられたゾンビの琉斗役を演じる藤田は「分け隔てなく、同じ目線でみんなと接してくれたので、座組みにクリエイティブな雰囲気ができました」と語り、ゾンビの仁役を演じる久保田は「山下さんがダンスにオリジナルのアレンジを加えたり、みんなにダンスを教えながら引っ張ってくれてました。あと、この前は中華をおごってくれましたね(笑)」と笑いかける。寺の住職・孔明役を務める駿河は「下積み時代を経て様々な経験をされているので人の痛みがわかる座長で、それって最高だなって(笑)」とおどけつつも山下の人間性を称賛。
鈴木は「売れてる人の共通点って『根性がある』ことだと僕は考えています」と切り出し「自分の知らない座組みに入るって怖いと思うんですよ。でも、山下くんはそこに突っ込んでいく勇気と根性、そして何より三代目の看板を背負って戦っている感が半端なくて、その姿がゾンビのみんなや出演者を引っ張っていたと思います」とコメントした。
それに対して山下は「(鈴木)おさむさんが、顔合わせの日に『みんなで青春を感じながら作っていきましょう』と仰ってくれて、僕もそういう青春をこの作品で感じたかったし、結果、稽古場でみんなとめちゃめちゃ青春を感じながら一体となって作ることができたので、早くその成果を舞台でお見せしたいです」と誠実なコメントで座長としての意気込みを述べた。
舞台『八王子ゾンビーズ』
舞台は、鳴かず飛ばずのダンサー羽吹隆(山下)が30才になったことを機に夢を諦め、自分を見つめ直すため八王子にある「希望寺」に体験入門するところから始まる。
高額の入門費用を支払い希望寺に入った羽吹。住職の孔明(駿河)の言いつけ「満月の夜は外に出歩いてはいけない」を破り、寺の墓場でこっそりダンスの練習をしていると、希望寺にいる謎の剣客・一刀(いちは)が孔明に連れられゾンビに斬りかかる場面に遭遇してしまう。
ゾンビの存在に驚く羽吹であったが、ゾンビ退治を終えた孔明は一刀とともに「ここで見たものは忘れろ」と言い残し去っていく。すると山下のもとに浮浪者の太山(酒井敏也)が現れ「明日、もう一度ここに来い」と意味深な発言をするのであった。次の日夜、羽吹は訳も分からず墓場に行くと、太山に「音楽をかけてみろ」と言われ、半信半疑のまま音楽をかけるとゾンビたちの群れが再び現れ、山下に「ダンスを教えてくれ」とせまるのであった。
ゾンビたち曰く、彼らは「八王子ゾンビーズ」という元ヤンキーの集まりで、今は住職に邪魔をされ成仏できないままでいるようだ。事情を飲み込んだ羽吹は陽気でイケメンばかりのゾンビたちにダンスを教えることに。こうして羽吹と八王子ゾンビーズたちの交流が始まるのであった。
あらすじだけ聞くと、むちゃくちゃな設定に聞こえるかもしれない。しかし、鈴木らしいユーモラスなセリフ運びによって決して突飛ではない物語が展開されていく。また、羽吹演じる山下は、ダンサーとしての挫折や、ゾンビへの恐怖、そして交流と、驚きの展開に対して人間味あふれる演技で物語を観客とともに並走していく。
会見で鈴木は見どころを聞かれ「山下くんがゾンビたちにダンスを教える場面がおもしろいです。多分お客さんも一緒に山下くんからダンスを教わってる気持ちになれるだろうし、ゾンビたちの悪ふざけも楽しめるはず」と述べていたが、山下とゾンビたちのアドリブあり(?)の等身大なやり取りは、観ていておもしろおかしくもあり、つい見とれてしまうような可愛げがあった。
また、本作で登場する八王子ゾンビーズ8人もそれぞれのキャラクターが際立っていて、ゾンビの出現を心待ちにしてしまうほど楽しい存在であった。
舞台『八王子ゾンビーズ』
いわゆる“ゾンビ”と言えば一度死んだ人間が両手をぶらりと伸ばし、うめき声をあげながら、生きている人を追いかけ襲いかかる、そんなイメージがある。しかし、鈴木おさむが作り上げたオリジナルゾンビは、心があって、ラップでフリースタイルバトルもすれば、ダンスもする。一般的なゾンビの先入観を覆す、コミカルでユーモラスなゾンビたちは必見である。
また、m-floと☆Taku Takahashiが書き下ろした音楽に合わせて踊る山下と八王子ゾンビーズたちのコンビネーションも見ごたえたっぷりだ。
山下はダンスについて「ダンスに関してはなめられたくなかったので、みんなを“ダンス”のレベルまでもっていけるようギリギリまで攻めました」とコメント。また、現在のダンスの点数を聞かれると「100点」ときっぱり。「あとは本番を見たみなさんに判断していただきたいのですが、自信があります」と自信を露わにしていた。
しかし、山下も殺陣には苦戦したようで「(早乙女)友貴に怒られながら特訓したので、相当鍛えられました。今はもう完璧です(笑)」と発言していたが、山下の殺陣も緊張感高まる必見場面なので見逃さないでほしい。他にも酒井やアジアンの隅田美保、RIKACOなど脇を固める出演陣の体を張った芝居にも注目だ。
また、本作では「応援上演」という新しい試みが施され、舞台の途中でオーディエンスも手拍子や物販のタンバリンを叩いて、羽吹&ゾンビたちと一体となって舞台を盛り上げられる場面がある。「ハブキー!」などの黄色い声援もOKなので、オーディエンスも一緒になって舞台を盛り上げるとより楽しめるだろう。
舞台『八王子ゾンビーズ』
会見最後に山下は「この夏最高の舞台にできるようにがんばるので、みんなで青春を感じてどうぞお楽しみください!」と意気込んだ。
山下と八王子ゾンビーズたちが夜の墓場で繰り広げる一夏のかけがえのない青春をぜひ目撃してほしい。舞台『八王子ゾンビーズ』は8月19日(日)まで、東京・TBS赤坂ACTシアターにて上演。
取材・文・撮影=大宮ガスト
公演情報
山下健二郎(三代目 J Soul Brothers)
ダンサーになる夢が破れ、自分を見つめなおすために、八王子の山奥のお寺に辿り着いたタカシ(山下健二郎)は、とある満月の夜にお寺の墓場でゾンビ VS 住職(駿河太郎)の壮絶な戦いを目の当たりにする。このお寺は、夜な夜な無数のゾンビがうごめく、奇怪な場所だったのだ。「ここで見たものは忘れろ!」と意味有り気に住職に言われたものの、タカシは気になって再び墓場を訪れた。するとそこにはゾンビの姿。しかしよく見ると、そこにいるゾンビ達は陽気でイケメンばかり。彼ら曰く、満月にダンスをすることで成仏できるのだが、それを住職たちに邪魔されているとのこと。「俺たちにダンスを教えてくれ!!」とゾンビ達にせがまれ、何故か、タカシとゾンビ達の交流が始まったが…。不穏な動きを見せる住職の思惑とは?果たしてゾンビ達は、無事に成仏できるのか?