『鈴木敏夫とジブリ展』が開幕 超巨大な湯婆婆像の前に、鈴木敏夫と女優・夏木マリが登場!
巨大湯婆婆の前でフォトセッションを行った鈴木敏夫と夏木マリ
2019年4月20日(土)に開幕したスタジオジブリ約3年ぶりの東京展覧会『鈴木敏夫とジブリ展』。神田明神に新設された文化交流館「EDOCCO」内神田明神ホールおよびその周辺エリアで5月12日(日)まで開催されている本展は、高畑勲、宮崎駿とともにジブリ設立時から作品作りの中核を担ってきた鈴木敏夫プロデューサーの「言葉」に注目した展覧会だ。開幕前日には鈴木敏夫本人が来場してフォトセッションを開催。『千と千尋の神隠し』で湯婆婆の声を演じた女優の夏木マリもゲストで登場し、本展の開幕を盛り上げた。
ジブリ作品プロデューサーが繰り出す「言葉」の源泉に迫る
展示風景
本展は、一昨年から広島、名古屋、金沢で好評を博した『スタジオジブリ 鈴木敏夫 言葉の魔法展』をバージョンアップしたもの。『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』『かぐや姫の物語』などジブリ作品の宣伝に使われるキャッチコピーやコンセプトメッセージ、題字の制作に携わってきた鈴木敏夫の「言葉」に着目し、鈴木自身の手書きによる数々の書や作品資料が展示されている。鈴木の少年時代からこれまでの足跡を辿りながら、高畑勲、宮崎駿両監督の思いを汲みながら、繰り出される名言の源泉がどこにあるのかを探る内容になっている。
夏木マリ「湯婆婆は“鈴木さんの女版”と思って演じた」
会場を埋めるほどの報道陣が押し寄せたため、当初の予定を変更して急きょ2度にわたって行われた開幕前日のフォトセッション。大勢の記者に囲まれる中、艶やかな着物姿の夏木マリとともに登場した鈴木は、「未練たっぷりにモノを残しすぎて、役に立つかなんて何も考えてなかったんですけど、こういうことやる時に役に立ちました」と本展開幕を前に率直な感想を語った。
会場に登場した鈴木敏夫と夏木マリ
『千と千尋の神隠し』で、主人公に対して意地悪な湯屋の湯婆婆(ゆばーば)の声を演じた夏木は、声を演じた際に心がけていたことを質問されると、「ある時に声の先生から『ジブリっていうのはね、一番上で鈴木敏夫が金勘定してるんだよ。だから、そんな悪役だと思って張り切ってやらないで、湯屋を立て直すひとりの働く女性としてやってみれば』と言われて……。そこから目の前が一気に明るくなって、『そうだ鈴木さんの女版をやればいいんだ』と思ったら収録が楽しくなった」と当時のエピソードを披露。
貴重なエピソードを披露してくれた夏木
その上で司会から「湯婆婆のモデルは鈴木さんじゃないかという噂も……」という話を振られた鈴木は「ジブリを経営しているのが僕で、湯屋を経営してるのが湯婆婆だから、アニメーターたちも僕を湯婆婆にかけて、声を演じる夏木さんにもそういうことを言ったのでは……」とコメント。そこにすかさず夏木が「突き詰めていくと、お金勘定しながらも愛があるという人間像を提示してくれたんだと思う」とフォローを入れるなど、息の合ったトークを見せた。
鈴木敏夫「最新作の公開は3年後……」
続いて本展を見た感想を聞かれ、「やっぱり素敵な字をお書きなる方だから、素敵な人なんだね」と語った夏木。すると、鈴木は「夏木さんも本当に(字が)上手いんですよ。もう、本当に嫌になるくらいなんですよ……」とやや照れた様子。「穴があったら入ります」と冗談を交わして会場を沸かせていた。
終始笑顔だった鈴木
2人は、本展でお披露目された約3mの超巨大オブジェによる「湯婆婆と銭婆の“開運・恋愛”おみくじ」も体験。夏木は開運おみくじで見事「大吉」を、鈴木は恋愛おみくじで「中吉」を引き当てていた。このおみくじにも鈴木の書がプリントされていて、ジブリ作品の名言を持ち帰ることができる。
フォトセッションには「カオナシ」も登場
最後に、今後の活動について質問された鈴木は、宮崎駿監督の新作について「実は今、ちょうど絵コンテが完成しようとしているところ」と述べ、「まだ、わからないけど」と前置きした上で「ちょっと口を滑らすと(公開は)3年後……」と語っていた。
アニメとは異なる視点で、ジブリ作品のメッセージを噛み締める
本展は、ジブリ作品の名言など数々の書の展示に始まり、「少年期~青年期 鈴木敏夫になるまで」「鈴木敏夫の愛した昭和の映画」「徳間書店時代」「ジブリにまつわるエトセトラ」「自分のためでなく他人のために」「言葉の魔法」という流れの6章構成になっている。作品そのもののコンセプトにつながるような設定資料もあれば、裏話的な小ネタになるような資料もあって、興味深い。また、高畑勲、宮崎駿はもちろん、声優キャストや数々の著名人との知られざる関係が伺える資料も鑑賞できる。
展示風景
「少年期〜青年期 鈴木敏夫になるまで」展示風景
鈴木が書く題字やキャッチコピーは、ジブリ作品のポスターには欠かせない要素である。数文字の中に強弱を付けて書かれた独特な文体は、ジブリ作品から滲み出ている生命の力強さを体現しているかのようだ。そして、その言葉の中には現代社会を生きる我々が見失ってはならない大切なことへの思いが込められているようにも感じる。数々の書や資料は、アニメーションとは異なる感覚でジブリ作品の持つメッセージを噛み締める貴重な体験になるだろう。
「ジブリにまつわるエトセトラ」展示風景
『鈴木敏夫とジブリ展』は、神田明神 文化交流館「EDOCCO」内神田明神ホールおよびその周辺エリアで5月12日まで開催中。
イベント情報
会場:神田明神 文化交流館「EDOCCO」内 明神ホール <御茶ノ水駅 徒歩5分/秋葉原駅 徒歩7分>
会期:2019年4月20日(土) ~ 5月12日(日) ※計23日間、 会期中無休
時間:10:00~18:00 (最終入場 17:30) ※営業時間は今後変更になる可能性がございます。
お問い合わせ:ghibli-suzuki@nomura-g.jp (一般問い合わせ用窓口)