二宮和也主演映画『TANG タング』の三木孝浩監督×劇団四季『ロボット・イン・ザ・ガーデン』の演出 小山ゆうなが特別対談

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2022.7.28

――それぞれ原作をお読みになったときの印象などを教えてください。

小山:ロボットが出てくるものの、夫婦の関係がリアルに描かれているなと思いました。ミュージカルにするときには、日本人には分かりづらいと思い、そこまで生かしていないこともあるんですけど、イギリス人独特のユーモアがある。そもそも『ロボット・イン・ザ・ガーデン』って、ロボットがイギリス特有のガーデンにいること自体がユーモアですしね。

(原作者の)デボラさんに子どもが生まれて、ご自身の子育ての経験の中から生み出された作品ということも影響していると思うんですけど、そのリアリティと、ロボットというものを使っている遊び心のバランスが絶妙で面白い作品だなと思いました。

三木:デボラさん自身、日本がお好きな方なんですよね。ロボットのキャラクターと主人公との友情みたいなものは、特に日本人的に違和感なく受け入れられました。鉄腕アトムだったり、ドラえもんだったり、日本人ならではのシンパシーを感じて。海外の原作ということで構えていたんですけど、スッと入れた部分ではありますね。

そして僕も小山さんと同じように思ったのは、ロボットがメインキャラクターとしているけど、タングはある種の狂言回しの役回りで、結局はベンの成長物語。いろいろなところを旅するけど、描く世界はすごく狭くて、身近な人と人との関係性の話に終着するところが素敵だなと思いました。

劇団四季オリジナルミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』

劇団四季オリジナルミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』

――それぞれ舞台化、映像化をするにあたって苦労したところや工夫した点を教えてください。

小山:演劇ってみんなで作るもので、行き詰まっても誰かが解決してくれることがある。そういった意味での苦労はなかったですけど……ミュージカルだから歌うじゃないですか。ミュージカルの歌って、基本的に自分の隠された気持ちを吐露するときに歌うわけですが、タングにはそんなに隠されているものはなくて、歌うのか?歌うとしたらいつなんだ?という議論は最初の頃からしていました。

結果、あんまりタング自身は歌っていなくて、周りの人たちが歌うんですけどね。基本的にタングとベンの物語だけれど、そこをどうミュージカルとして成立させていくのか。それは稽古の段階から試行錯誤しましたね。

――やはりタングに歌わせるのは難しかったのですか。
 
小山:そんなに歌う理由がないですから。でもタングが歌うと、お客様もドキっとするはず。歌うとしたら、それはどこのタイミングなんだろう……と、結構時間をかけて決めていったかなと思います。

――映画化にあたってはどうですか。

三木:タング自体は3DCGなので撮影現場にはいないんですね。だから役者もカメラマンも、そこにいるであろうタングをみんなで想像しながら撮っていく。一応声は事前録音したものを出すんですけど、タングがどういう動きや表情をするのか、いないタングに対してどうお芝居していくのか。足並みを揃えていくのがすごく大変でした。普段はあまりしないんですが、今回はアニメのように、全カット絵コンテを描きました。

小山:特に二宮さんの演技、すごいなと思いました。実際には撮影現場にはいないんですね?

三木:そう、いないところに向かって演技をしてもらっていました。

>(NEXT)タングは「何もできないから愛おしい」

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