二宮和也主演映画『TANG タング』の三木孝浩監督×劇団四季『ロボット・イン・ザ・ガーデン』の演出 小山ゆうなが特別対談

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2022.7.28

作品を魅力的にした、二宮和也の演技力と劇団四季の底力

――映画版では、設定を日本に置き換えたということで、健の職業などいろいろ違いがありましたよね。なぜ変えたのでしょう。理由を教えてください。

三木:イギリスの夫婦観を日本に置き換えると、ウェットになりすぎる感じがしたので、日本人の観客が見ても違和感ないように、健と絵美の関係性はすごく意識したかもしれないですね。

また、原作でもいろいろな場所を旅しますけど、その場所の中で何かを得ていくというよりは、タングとの関係がどう変化していくかというところにフォーカスを当てていたので、場所選びもそんなに苦労はしなかったです。日本でやるなら、どこを旅したらお客さんがその場所場所の変化にワクワクできるかなというのを考えながら選びました。

『TANG タング』ポスタービジュアル

『TANG タング』ポスタービジュアル

――健の職業については。

三木:映画では特に、傷ついて前に進めなくなった人間が、タングと出会うことで、自分を見つめ直すきっかけを与えてもらって、それで一歩進むことを物語の核にしたいなと思ったんです。なので、彼のバックボーンというか、何を彼が問題視していて、何を乗り越えたいかと思っているかということをより強化するために、そういう設定にしてみました。

小山:お父さんとのシーンの関わり方が直接的になっていましたよね。

――それぞれ映画の見どころ、舞台の見どころ教えていただきますか。

三木:自分の作品で言うと、いろいろな場所場所で変な人が出てくるんですけど、それぞれのキャラクターたちにクセがあって。一番は健とタングのやりとりなんですけど、サブキャラたちがとても彩り豊かなので、そこをぜひ見ていただきたいなと思います。

小山:舞台は限られた人数でやっているので、一人の俳優がいろいろなことをやっているという点が楽しいかな。どこを見るかはお客様の自由なので、そこを楽しんでいただけたらなぁと思います。

映画『TANG タング』

映画『TANG タング』

映画『TANG タング』

映画『TANG タング』

――キャスティングをする際に大切にされたことはありますか。

三木:こういうファンタジーだからこそ、演技力が問われるんじゃないかなと思っていました。特に健と絵美の2人は、CGキャラクター相手にお芝居をしなくてはいけない。普通の映画だったら、相手のお芝居を受けて、キャッチボールをすることで、お芝居ができるわけですけど、今回はそれができない作品。芝居の技量が問われるので、キャストに負荷がかかると思ったんですけど……最初に二宮くんにこの話を持って行った時に、印象的だったことがあります。

彼は、タングは実際にはいないけど、いないことで、映し鏡のように、タングに自分を反射させて、自分のお芝居を見つめ直すきっかけになるのではないかな。それが今回のチャレンジであり、僕が面白いと思っているところだ、というようなことを言っていて。ああ、そういう意識でいてもらえるなら、この物語は健が自分を見つめ直す物語になっていくので、マインドがシンクロするなと。二宮さんにお願いしてよかったなと思いましたね。

小山:劇団四季の方たちは、歌やダンスはお出来になるので、その上で、外から来た私は、台本を担当した長田育恵さんとも話して、その俳優さんの人生がお芝居を通して透けて見えてくる方がいいなと思っていたんです。

例えば、ベンをやってくださった田邊真也さんは、オーディションも素晴らしかったんですけど、ご自身の順番を待っている時に、紙で作られた仮のタングを他の方が動かしている様子をニコニコしながら見ていらっしゃった。その姿が温かくて、美しくてチャーミングで、「この人ベンだ!」と思ったんです。タングとどういう風に関わってくれるかというのはすごく気にしましたね。

劇団四季オリジナルミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』(撮影=阿部章仁)

劇団四季オリジナルミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』(撮影=阿部章仁)

――撮影のエピソードを伺いたいです。二宮さんとのやりとりのなかで印象的だったことは?

三木:タングがいない現場で撮影しなくてはいけないので、悩むかなと思ったら、割とスッと悩まずにやっていました。二宮くんが一番タングと近いところにいるので、二宮くんがお芝居しているところをみて、周りも「こういうことなのね」と理解していく感じがあって。ある種、座長感がありました。言葉でなくて、この映画の世界の空気を示していくという感じがすごく素敵でした。背中で語るタイプでしたね。

――劇団四季とクリエイションをしてきた小山さん。その過程で感じた劇団四季の底力や印象的だったことは?

小山:日本の演劇界は、純粋に作品を作ること以外に考えないといけない事が多いこともよくあるのですが、劇団四季はすごく特殊で、本当に作品至上主義を貫いていらっしゃるんです。俳優さんたちもその思いでいるから、クリエイション自体がとても丁寧。作品をどういう風にしたら魅力的に立ち上げられるかということにみんなが向かっているんです。それがとても印象的で、劇団四季のすごいところだなと思いました。

――脚本の長田さんとはどのようなやりとりを重ねたのでしょう。作品を作る上で大切にしようと思ったことは。

小山:長田さんの中にはすごく明確なビジョンがあって、オーディションをしてからも、この人が演じるからこういう風にしようというアイディアがかなり脚本の中に盛り込まれていますね。稽古もこまめに見にきてくださって、本当に細かいセリフの修正も重ねました。作品を作る上で、大切にすることは、ベンとタングなど、人と人との関係性をどう見せていくか。そこに尽きると思います。

>(NEXT)実は、早稲田大の演劇サークル同期という縁も……

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