RADWIMPSが自らに問う「10年とは」――その答えを満天の空が広がる幕張メッセにみた

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RADWIMPS 撮影=植本一子

RADWIMPS 撮影=植本一子

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10th ANIVERSARY TOUR FINAL RADWIMPSのはじまりはじまり
2015.12.23  幕張メッセ国際展示場4~6ホール

「本当に10年間ってなんだろう、なんだろう? 振り返ると、バカみたいだけど“10年って10年なんだなぁ”ってだけなんだけど。早かったようで長かったようで、いっぱいあったけど何も無かったようで。ほんと不思議です。0歳だった人が10歳になって10歳の人が20歳になるんだなぁ、そういう時間の経過なんだなと考えると、僕らは0歳児が10歳になるのと同じだけの大きな成長をできたかなぁ?」
そう野田洋次郎(Vo/G/Pf)が表したように、10年という歳月は、それを過ごした人にとって長いようで短かったり、色々あったようで何もない、またその逆も然り。実感のないまま気付いたら過ぎているものなのかもしれない。僕もそうだ。だが、生まれたばかりの子供が10歳になり、20歳だった人は30歳になるという時間の経過、その事実だけは、当たり前だけれど全員に等しく訪れる。

RADWIMPSは今年デビュー10周年を迎えた。30歳になった彼らはこの日、3万人一人ひとりが過ごしてきた「RADWIMPSとの10年間」を全て受け止め、引き受けるようなセットリストで自身最大規模の会場に挑んだ。オーディエンスもまた、それぞれがそれぞれの過ごした10年間を心のどこかに抱いて会場を訪れていたはずで、当時から変わらず好きな人、まだ小さな子供だった人、途中から好きになった人、久しぶりに観に来た人……そんな全員の中にある「RADWIMPSの姿」と真っ向から向き合うだけの覚悟と説得力を、10年経ったRADWIMPSは獲得していた。

RADWIMPS 撮影=植本一子

RADWIMPS 撮影=植本一子

ゆるやかなオープニングSEが流れ出し俄かに色めき立つ場内を、ステージ上方から放たれる青い光が巡っていく。舞台はまだ暗転したまま。すると、SEが途切れた次の瞬間、ステージに張られた薄い紗幕の向こうから聴こえてきたのは<満天の空に君の声が>という「トレモロ」の歌い出しだった。演奏されれば必ずと言っていいほど歓喜に包まれるけれど、決して毎回やるわけではないこの曲がまさかのトップバッターである。即座にすさまじい悲鳴と歓声が巻き起こる。まだ現実に対応しきれないといったざわめきの中、幕張メッセの広大で高い高い天井一面に、幾千幾万、数え切れないほどの光の粒が映し出され、瞬たき、旋回している。まるで奇跡のような光景に、思わず一瞬放心してしまった。どうやら周囲も同じ状況だったようで、声にならない叫び声をあげながら、ステージに視線を送ったかと思えば、天井を見上げ、またステージを見つめている。こんな演出、反則ギリギリで最高だ。

まだまだ興奮冷めやらぬ場内に向けて放たれていく「ます。」、「億万笑者」、「ヒキコモリロリン」……陽性のグルーヴで大合唱を巻き起こしたかと思えば、抑えの聞いた中低音ボーカルとシャウトのコントラストで魅せ、ジャジーでディスコ調なグルーヴとアレンジの妙で踊らせる矢継ぎ早の展開を見せる。背後と両サイドの強大なスクリーンには笑顔の3人が映し出され、オーディエンスも全力で歌い、飛び跳ね、巨大な会場を揺るがす。前半で特筆すべきは、普段からライブのアンコール中に歌われるなどファンの間でも特別な最初期の一曲「もしも」から、一面に映し出される青空の下で野田がピョンピョンと飛び跳ね、桑原彰(G)と武田祐介(B)が左右の花道まで大きくひろがってピースフルな空間を創り出した「俺色スカイ」への流れだったのではないか。外見も内面も、歌う内容も、楽曲も、変わったことはたくさんある。同時に変わらない何かも確実に存在する。彼らは久しぶりに披露された2曲でその事実を僕たちに伝えてくれた。

懐かしい曲も多かった前半戦を終え、野田は「昔の曲やって、ちょっとこっぱずかしい気持ちとかあるから。盛り上がってくれねえと俺ら帰るからな! 結構な思いして15歳のときに作った曲とか歌ってるからな? 倍の歳になっちゃったんだから、畜生。お願いしますよ、ひとつ」と冗談めかしながら、オーディエンスに一層の奮起を促す。冒頭のたった一曲で頂点に達しているボルテージをさらに上げようというのか。そこからはシャッフルビートと跳ね回るピアノに乗せた「π」、あえてスカスカの構成が抑圧の効いたダークなサウンドを生み出す「G行為」とアルバム『絶体絶命』でも並んでいた対照的なナンバーを続け、一転してあたたかな空気が会場を包んだのは「Tummy」。中盤にして早くも「有心論」も飛び出すなど、「今年、残り何も(ライブの予定が)ねえからさ、俺たち。全部出します、ここで」と宣言していた通り、あらゆる角度と方法でオーディエンスを攻め立ててくる。演奏面は言うまでもなく高い技術レベルを誇る彼らだが、MCや組み立ての部分でも本当にライブ巧者だ(もちろん一部、噛んだり滑舌が悪かったりはする)。「大事な曲になった」と、ダウンライトひとつだけに照らされた野田が静かに奏で出したのは「ピクニック」。ライブでは初披露となる、儚い生を歌うあまりにも感動的なバラードだ。アコギではなく、ほぼクリーントーンのギターによる柔らかな音色であったことが余計にが情感を掻き立て、場内には涙を流すファンの姿も。<僕らは奇跡にも及ばない光>と歌われるこの曲。だがこの日の会場を照らした「光」は、決して儚くなんかなく、奇跡と呼ぶにふさわしい瞬間を幾度も生み出していたように思う。

RADWIMPS 撮影=植本一子

RADWIMPS 撮影=植本一子

後半戦に入り、ライブはラストスパートに入る。MCでもバンドは絶好調で、桑原が年々太ってきていることや顔が大きいことを自虐的に語れば、それに乗っかった野田も「DADA」の頃に撮影したアーティスト写真で桑原の顔だけサイズ感がおかしかったため最終的に合成して仕上げたーーという爆笑秘話で会場を盛り上げる。そのまま話題の「DADA」へ。めまぐるしく変わる刺激的で立体的な映像をバックに激しい演奏が展開され、野田はトレードマークの帽子が吹っ飛ぶほど暴れ倒す。もちろん、曲終わりにはお立ち台から身を乗り出すようにして「よくできました」で締めた。「おしゃかしゃま」でも高いテンションはそのまま。武田のスラップと桑原の高速ギターの応酬はいつも以上にキレキレで楽しそうで、森瑞希(Dr)と刃田綴色(Dr/Prc)がそれに加わると、もはやステージと会場はカオス状態と化した。

コール&レスポンスからなだれ込む「君と羊と青」「会心の一撃」という破壊力抜群のコンビネーションが繰り出されると、悲しいかな、ライブが終わりに近づいているのを感じてしまう。最近はこの2曲を連打して華々しくステージを後にすることが多い。だがこの日は「これからも次の10年、大きな変化を、成長を、人間としての喜びを味わいたいなって思ってます。これからもよろしくお願いします」と静かなる決意を口にし、最後にもう一曲を披露した。

RADWIMPS 撮影=植本一子

RADWIMPS 撮影=植本一子

アンコールは会場の後方に設置されたサブ・ステージで、メンバー3人のみのアコースティックセットで行われ、まずは桑原がマンドリン、武田はウッドベース、野田がアコギを奏でながら、互いに向かい合うようにして届けた「お風呂上がりの」だ。少しの哀愁と暖かな音色が日常と人生を紡ぐ。3人だけのアンサンブルはナマの音と温度で会場全体を包んでいた。途中、オーディエンスが後方に殺到し過ぎて演奏を中断するハプニングはあったものの、彼らはその無事を気遣い、再開まで即興でギターを爪弾いて場を繋ぐ。そんな優しさも印象的だ。

野田がピアノに移った「シザースタンド」までサブステージで演奏し、その後メインステージまでオーディエンスの間を通り、ハイタッチしながら向かうという嬉しい演出も織り込みながら、さらに「05410(-ん)」「ふたりごと」と2曲を演奏し終えた彼らは、5人でゆっくりとステージを巡りながらお辞儀を繰り返して感謝を伝えていく。その姿に送られ続けるファンの声援の中には、「ありがとう」という言葉がたくさんあった。きっとそれはこの日のライブに対してだけでなく、その人の10年間の中にRADWIMPSとの出会いがあって、そばにあり続けてくれて、この場を共にすることができたという、全てに対するものだったのではないだろうか。

RADWIMPS 撮影=植本一子

RADWIMPS 撮影=植本一子


本編最後のMCには続きがある。

「今日ここには3万人っていう人がいるけど、なんか……ライブにどれだけの人が入ったとか、CDが何枚売れたとか、どれだけの人が聴いてるとか、綺麗事に聞こえるかもしれないけど、本当に結構どうでもよくて。こうやって相対するまでは、僕にとってはいつ「嘘だよ」って言われても良いように思えるもので。だって現実感は無いから、そこに。あなたの顔が見えないから。僕はいつでも「ふーん」って言ってます。事務所とか、会議室とか、スタジオでそういう話を聞くと。……だけどこの今目の前にいるあなたは本物で、それだけは、僕は逃げられないくらい圧倒的な事実として突きつけられて。その事実が僕らをこれからも音楽に駆り立てるし、その視線が僕らを突き動かします。本当にあなたがRADWIMPSに出会ってくれて、本当にありがとうございます」

歌われたのは「オーダーメイド」だった。

<強い人より優しい人になれるように>と願った彼らには、純粋な想いとそれゆえの葛藤や苦悩があっただろう。あらゆる出来事を乗り越えてきたのだろう。そしてこの日を迎えた。だから自分にとっての『大切』ってなんなのかが分かっていた。左側に一つつけられた心臓で相対する3万人の鼓動を確かに感じながらこの曲を歌った。その確信こそが、「10年間ってなんだろう」という冒頭の問いに対する最大の答えにして、次の10年へと踏み出すRADWIMPSのはじまりに違いない。

 

撮影=植本一子 文=風間大洋

RADWIMPS 撮影=植本一子

RADWIMPS 撮影=植本一子

 
セットリスト
10th ANIVERSARY TOUR FINAL RADWIMPSのはじまりはじまり
2015.12.23  幕張メッセ国際展示場4~6ホール

1. トレモロ
2. ます。
3. 透明人間18号
4. 億万笑者
5. 遠恋
6. ヒキコモリロリン
7. もしも
8. 俺色スカイ
9. π
10. G行為
11. Tummy
12. 有心論
13. ピクニック
14. 25コ目の染色体
15. DADA
16. おしゃかしゃま
17. いいんですか?
18. 君と羊と青
19. 会心の一撃
20. オーダーメイド
[ENCORE]
21. お風呂上がりの
22. シザースタンド
23. 05410(-ん)
24. ふたりごと

 

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