初演の良さに新たな魅力をプラス 三谷幸喜×草彅剛×香取慎吾、舞台『burst!~危険なふたり~』会見&公開稽古レポート

レポート
舞台
2022.10.1
(左から)草彅剛、三谷幸喜、香取慎吾

(左から)草彅剛、三谷幸喜、香取慎吾

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三谷幸喜が作・演出を手がける草彅剛と香取慎吾の二人芝居『burst!~危険なふたり~』。2015年の初演以来、7年ぶりとなる再演が実現した。舞台やドラマ、映画と多彩な分野で話題作を次々に生み出している三谷、同じく舞台から映像まで幅広いジャンルで活躍している草彅・香取。これまで多くの作品でタッグを組んできた三人が久々に集結し、さらに洗練・パワーアップした作品を生み出す。2022年10月1日(土)の初日に先駆け、会見と公開稽古が行われた。


会見で初日に向けた思いを聞かれた三谷は「僕が着ているジャンパーは初演の時のもの。この作品が好きなので、このメンバーでまたやりたいという思いを込めて7年前からずっと着ていました。夢が叶って感無量ですね」と再演への喜びを語る。続いて草彅が「慎吾ちゃんとの二人芝居。慎吾ちゃんと三谷さんは色々な作品で一緒にやっていますが、僕が三谷さんとガッツリやったのはこの作品がほぼ初めてでした。7年前もとても楽しく公演を終えた記憶があります。初演のいいところに、再演ならではの発見をプラスできるんじゃないかと、1日からの公演をすごく楽しみにしています」と意気込む。香取も「三谷さんとは色々なお仕事をさせていただいていますが、いつも刺激的で、経験したことのない時間を作ってくださいます。今回は再演ですが、面白かったのは初演の映像や資料が一切残っていなかったこと。思い出しつつ新しい要素もたくさん入れました。でも、新しいと思っていたら”7年前もやってましたね”と言われることもあって。そんな発見もしつつ楽しい時間を過ごしました。三谷さんの作品もそうですが、僕は草彅剛という俳優さんがとても好きなので、一緒にできるのがとても楽しいです」と笑顔を見せた。

草彅・香取の印象を尋ねられた三谷は、「二人芝居を作るのって難しいんですよね。この二人はサラッとやってしまうけど、二人しか出ていないのに、顔を合わせるのは一度だけ。実は演劇的にかなり高度なことをしているんです。知らなかったでしょ?」と二人に確認。草彅は「そうだったんですか?」と驚き、香取は「嬉しいけど、なんだか三谷さんが自分の作品を褒めているみたいな感じですよね」と笑わせる。三谷は「僕の作品というより二人の作品だと思うから自画自賛できるんですよ(笑)」と、息ぴったりな二人による完成度を讃えていた。

最後にファンの方々へのメッセージを求められると三谷は「僕はとにかくこのお二人の大ファン。二人のために作品を作ることができたことを光栄に思っています。1時間40分ほどの作品ですが、お客さんからしても、生の二人をこんなに長く見られるチャンスってあまりないと思います。存分にこの機会を楽しみ、味わってほしいと思います」と期待を寄せる。草彅が「コロナ禍で色々と問題がある中、こうして舞台を行えることが幸せですし、来てくださるお客様に本当に感謝しています。慎吾ちゃんとの30年以上の絆だったりとか、お互い自分自身も分からないようなところで繋がってる気持ちだとか、二人の人生が交差して何かが生み出されるというか。お互いの人生の全てをかけるような素敵な舞台になればと思っています。来てくださる方に幸せを持って帰ってもらいたいです」と話すと、香取も「コロナ禍でエンターテインメントがどんどん形を変える中、足を運んでいただける機会があるのはありがたいことです。1時間40分を、皆さんにとってずっと忘れられない良い思い出にしたいです。楽しい時間の中でハラハラも味わえるので、たっぷり楽しんでほしいです」と意欲を見せつつ、「僕はこの舞台に人生をかける気はないです」とおどけて会見を締めくくった。

(左から)草彅剛、三谷幸喜、香取慎吾

(左から)草彅剛、三谷幸喜、香取慎吾

 
※以下、舞台写真とネタバレあり
 
 
【あらすじ】
ある日、青木誠二のもとに警視庁からかかってきた一本の電話。爆発物処理を行う警視庁警備部第三機動隊の根上大五郎によると、青木の家に爆弾が仕掛けられているという。突然のことに驚く青木に向かって、自分の指示に沿って爆弾を解体するように言う根上。「素人の自分がリモートで爆弾解体なんて」と拒否する青木だが、根上の説得を受けて挑戦することに。二人は協力して爆弾処理に取り掛かるが――。


会見でも出たように、二人芝居でありながら二人の視線が交わるシーンはほとんどない。香取が演じる青木は埼玉にある自宅、草彅演じる根上は警視庁におり、電話が二人を繋いでいるという構図だ。お互いの姿や状況が見えないからこそのすれ違いや絶妙な間が面白さを生んでいる。

香取は、ある日突然大事件に巻き込まれ、戸惑いながらも爆弾処理に挑む男を好演。1時間経たずに爆発してしまうという緊迫感の中で自分を奮い立たせる様子や、緊張がふっと緩む瞬間をうまく見せ、緩急のついた芝居で物語に引き込んでくれる。対する草彅は、優秀だがどこか頼りない爆弾処理のプロフェッショナルとして青木と観客を振り回す。テンションの浮き沈みも自然で、理不尽な言動も納得させてしまう不思議な魅力のあるキャラクターに仕上げている。

二人の息の合った掛け合いは、目を合わせて芝居をするシーンがほとんどないということを忘れさせる。セリフ、映像や小物によって次々に繰り広げられる笑いのテンポの良さが楽しい。セットも立ち位置もほぼ固定という作りでありながら、二人の会話から周囲の様子や周りにいる人間といった光景が鮮やかに浮かび上がってくるのもさすがだ。電話での会話を通して変化していく距離感や関係性に和んだり、口から出る言葉とは印象の違う表情にゾクッとしたり、物事に対する二人の反応の違いを見比べたり。たった二人でありながら見どころが多く飽きさせない。

また、途中で二人の役柄が入れ替わり、後半は草彅が青木、香取が根上を演じる。パジャマ姿とスーツという2パターンの衣裳と2人のキャラクターの演じ分けを見られるのも魅力と言えるだろう。同じ人物であることがすんなりと受け入れられる一方で、それぞれの個性によってキャラクターの新たな一面が見えてくるのが面白い。前半の何気ないセリフが後半に繋がっている部分も多く、繰り返し見ても発見があるだろうと感じた。爆弾処理というミッションを前にした二人がどんな結末を迎えるのか、ぜひ劇場で見届けてほしい。

終演後は二人によるフリートークの時間も。会見で「まだ(台本を)8割しか覚えていないから緊張する」と言っていた香取だが、公開稽古で見せた堂々たる演技に草彅は「やっぱり天才」と称賛する。本編から地続きのような息の合ったトークに加え、作中で披露した歌を草彅によるギター演奏に合わせて歌う場面も。最後まで二人の魅力をたっぷり味わうことができた。

本作は10月1日(土)より26日(水)まで、日本青年館ホールにて上演される。

取材・文・撮影=吉田沙奈

公演情報

『burst!~危険なふたり~』

日程:2022年10月1日(土)~26日(水)
会場:日本青年館ホール

作・演出:三谷幸喜
出演:草彅剛 香取慎吾

企画・製作:㈱CULEN

料金:S席 12,500円(税込)/A席 7,500円(税込)

公式サイト:https://burst-2022.com/
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