海宝直人は「頭脳派」、平間壮一は「人たらし」?~二度目の共演を果たす二人が語る音楽劇『ダ・ポンテ』その魅力とは

インタビュー
舞台
2023.3.20
左から 平間壮一、海宝直人

左から 平間壮一、海宝直人

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音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』が、2023年6月21日(水)~25日(日)に東京・シアター1010にてプレビュー公演、7月9日(日)~16日(日)に東京建物Brillia HALLにて本公演が上演される。(その後、愛知、大阪公演あり)

本作はモーツァルトの三大名作オペラ『フィガロの結婚』『ドン・ジョバンニ』『コジ・ファン・トゥッテ』の台本を書いた詩人、ロレンツォ・ダ・ポンテの数奇な人生を描く音楽劇。モーツァルトの名曲をモチーフにしたナンバーとオリジナル楽曲を交えて、エンターテインメント性豊かに若き天才たちの軌跡が描き出される。天才詩人の主人公ロレンツォ・ダ・ポンテ役に海宝直人、ダ・ポンテと運命的な出会いを果たし、革新的なオペラを作った作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトを平間壮一が演じる。2016年以来二度目の共演だという二人に、役柄や作品への意気込みを聞いた。

■ダ・ポンテは「新しいタイプの主人公」(海宝)、モーツァルトとの共通点は「変わり者」?(平間)

――まずはそれぞれの役柄について教えてください。海宝さんが演じられるのは詩人ロレンツォ・ダ・ポンテという人物ですが、彼の魅力や面白さはどんなところに感じていますか。

海宝:ダ・ポンテは素晴らしい作品を遺しているのにも関わらず、世の中では意外と知られていない存在なんですよね。僕自身もこの作品のお話をいただいて初めて彼のことを知ったのですが、まずそのことに驚いて。調べていくうちに、数奇でドラマチックな人生を歩んでいて面白い人物だなと興味が湧きました。

名声を求めて、アーティストとして成功することを妥協せず貪欲に求めていった人で、ある地点までは成功するけれども、その才能や苦労に見合う成功を収めたかというと、そうでもなかったりして……。でも、彼の人生を辿っていくと、「生きる」ことを全力楽しんでいた人なのかな、っていう印象を受けるんですよね。当時、まだオペラなどの芸術が浸透していないアメリカへ渡って、芸術文化を広めようと精力的に活動を続けて。最後の最後まで、自分が作ったオペラというものを大衆に聞いてもらいたい、観てもらいたい、自分の才能を認めてもらいたい、そういった思いで生きていた人なのかなと思いました。

――“女好きで詐欺師”という一面もある人物ですが、海宝さんがこういった役柄を演じられるのは意外性がありますね。

海宝:そうですね。今回、どういうテイストでそういった部分を描いていくか、僕自身も楽しみにしています。とくに冒頭では、そのあたりがコミカルに描かれていきそうな感じですね。これまでにない、新しいタイプの主人公という感じがしています。自分に正直なキャラクターなので、楽しんで演じられたらいいなと思います。

――そんなダ・ポンテと運命的な出会いを果たす作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトを平間さんが演じられます。

平間:僕はこれまでモーツァルトに深く触れた経験はなくて、小学生の頃にいちばん最初に習う音楽家というイメージです。音楽室に写真が貼ってあったりとか。作品を通してこれからいろいろ知っていくのが今から楽しみです。

モーツァルトの役を演じるのは、自分ではちょっとイメージが湧かなかったんです。でも、周りの方たちは「すごいぴったりだね!」って言ってくれて。自分ではよくわからないんですが、唯一無二の感じとか、奇想天外というか、ちょっと考え方が変わっていたりするところが似てるよね、っていうニュアンスみたいですね。僕自身はあまり変わってるっていう意識はないんですが……。

――ご自身としては、モーツァルトとの共通点や共感する部分はありますか。

平間:結局、最終的にはピアノの鍵盤にある音でしか「曲」は作れないわけじゃないですか。それはもう行きつくところ、誰が作っても同じになってしまうんじゃないか、「同じ音」であることには変わりない、ということに対してストレスが溜まりそうだな……とか考えているところが、ちょっと自分とも重なりそうな気がします。

――そういう風に捉える方ってなかなかいらっしゃらないような気がするので、とても興味深いですね。モーツァルトを演じるうえで、今の時点でこういうところを大事にして演じたいという構想があれば教えてください。

平間:最近、自分は物事を広く視ているなっていうことに気が付いたんです。でも、モーツァルトに関しては、ひらすらに音楽のことを考えていた人だと思うので、もっと自分中心で突き進んで、あえて視野を狭くして演じていきたいなと思っています。人への迷惑とかもあまり考えずに、自分がやりたいことをやっていく、という風にできたらいいなと。

■作中の出会いは「それぞれの欠けた部分がバチッとはまる」みたいなもの

――作品の構成案を読まれてみて、物語としてはどのような印象を持たれましたか。

海宝:まずは、これが主題だと言ってもいいくらい、ダ・ポンテとモーツァルト、二人の関係性が大事に描かれているな、という印象を受けました。あと、思った以上に歌う楽曲が多いのかな、と。“音楽劇”と謳っていますが、ミュージカルと言ってもいいぐらい、歌で作品が進んでいくような印象を持ちました。曲に関してはまだこれから聴かせていただく段階ですが、音楽の面でもすごく楽しみですね。

――これはよく疑問に感じることでもあるのですが(笑)、ミュージカルと音楽劇の明確な違いって何かあるんでしょうか。

海宝:色々な説がありますよね。「音楽の中で物語が進むとミュージカルで、進まないのが音楽劇」という話も聞いたことはありますが、これという明確なものはないのではないでしょうか……。きっと皆さんそれぞれの中に基準を持って命名されているのだと思います。

――平間さんはいかがでしょうか。作品の魅力についてお聞かせください。

平間:まだ全体像が見えていないところもありますが、歌えるキャストが集まっている中で、芝居中心で進んでいっても面白そうだな、と思いました。海宝くんとは、芝居で二人の関係性をしっかり描いていきたいね、っていうお話を少しさせていただいていて。ダ・ポンテに関してはまだわからない部分も多いですが、“モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才”というところで、光と影から生まれるエネルギーやパワーのようなものも描かれていくのかもしれません。

――ダ・ポンテとモーツァルト、今の時点では二人の関係性をどんなふうに描いていきたいと思われていますか。

海宝:この作品においての二人は、それぞれの欠けた部分がバチっとはまる出会いみたいなものを感じるんです。モーツァルトはモーツァルトで、自分の音楽にインスピレーションを与えてくれるような才能を求めていて、ダ・ポンテは自分の詩や台本に見合う音楽を作れる音楽家をずっと求めていて。お互いにとって奇跡的に巡り会えた存在なのかな、と。お互い「ようやく分かり合える人と出会えた」という歓びと、そこからすれ違っていってしまう過程を、コミカルな要素も含めて魅力的に描いていけたらと考えています。

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