SUPER BEAVER『RUSH BALL 2023』ライブレポートーーfrom ATMCのライブバンドが成し得た「過去最高の『RUSH BALL』、過去最高の大阪の夜、19年目にして最高の夜」
SUPER BEAVER 撮影=渡邉一生
『RUSH BALL 2023』SUPER BEAVER
「SUPER BEAVERって追い込めば追い込むほど、いいライブをするらしいですよ?」と、THE ORAL CIGARETTESの山中拓也(Vo.Gt)からズシリと重たいバトンを渡されたSUPER BEAVER。2015年にATMCに初出演以来、8年という歳月をかけてたどり着いた大トリ。『RUSH BALL』においても不変のスタンスで一歩ずつ前進し、ついにつかみ取った大舞台に登場した彼らを今年も泉大津フェニックスが迎え入れる。
「『RUSH BALL』25周年おめでとうございます! 先輩から後輩へ、後輩から先輩へ、大事に大事につながってきたこのバトン、ありがたく頂戴しました。しかし! あいにく楽屋に忘れてきたので、俺らの時間は勝手にライブハウスとしてやらせていただきます。申し遅れましたfrom ATMC、俺たちがSUPER BEAVER!」
渋谷龍太(Vo)の口上の時点で、今日は忘れられないライブになると確信する。オープニングナンバーの「証明」は、それこそ8年前のATMCでもセットリストに入った一曲で、あの頃とはケタ違いの観衆を前に、あの頃と地続きの信念で鳴らされるその音楽に、SUPER BEAVERが今ここに立っている理由が証明されていた。ドン底からはい上がり4人がまた一つ成し遂げた絶景に鳴り響く、彼らの生きざまそのものの「ひたむき」では、細胞にまで生きる希望が染みわたっていくかのよう。
SUPER BEAVER
ここで、「別に先輩と仲良くするために、後輩と出会うために、裏で乾杯するためにここに来てるわけじゃない。俺たちはもらった時間にあなたと一対一の対峙、真剣にこの場所にいます」と、バンドの信条を改めて表明した渋谷は、こうも続ける。
「現場にあるものは、ルールではなくモラルだと思ってる。俺はあなたが自分で考えて「やりたい」と思ったことを否定する気は全くないわけ。ダイブ=衝動だから。だけど自分本位にしろという意味じゃない。「楽しい」は自分一人じゃ作れないと思ってる。誰かと共有して初めて楽しいんだろ。あと、楽しそうにダイブしてる人間のことを頭ごなしに悪く言うのも違うぞ。それは分かってあげて。ただ、ゆっくり見たいヤツのことを絶対にバカにするなよ。それぞれの見方、楽しみ方がある。それを信じた結果、『RUSH BALL』は25年続いたんだろ。何が言いたいか分かるか? 「一緒に作ってください」ということです。何で俺らがここにいるのか……愛だとか夢だとか希望だとか、そういうことを胸張って言うヤツを守るためにここにいるんだよ。19年目の新人、SUPER BEAVER始めます!」
どんな注意事項より深く優しく突き刺さるそのMCに、小さなライブハウスのトップバッターでも、大きなホールでのワンマンでも、25年続いた野外ロックイベントの大トリでも、いつだってSUPER BEAVERはSUPER BEAVERだったと思い出す。音楽は音楽でそれを鳴らす人格は関係ないと言う人もいるだろう。だが、このメッセージをもらって聴く「アイラヴユー」が、やっぱりそれだけじゃないと訴えかけてくる。見る者の心臓に感動というガソリンを注ぎ込む「青い春」、そして「儚くない」。アフターコロナの世に目の前に広がる、決して当たり前ではなかった奇跡みたいな光景に、問答無用で胸が熱くなる。
SUPER BEAVER
「最初にATMCに出たことを超覚えてます。いいなぁと思った、こっちのステージ(笑)。そのときから思ってることは何も変わらなかったりして。一緒に音楽ができて心の底から楽しいです。25年はあなたがいなかったら続かないんだよ。あと、向こうに出たときから思ってることがもう一つあって。あなたがもしも一緒に音楽をやってくれるなら一等賞を取りに行く、ただそれだけ!」(渋谷、以下同)
8年前のATMCで歌われたもう一曲が「東京流星群」。変わらぬ4人が変わった景色に包まれて、泉大津フェニックスの大きな夜空に響きわたる大合唱……最高に決まってる!
「愛すべきあなたのお手を拝借!」と満場のクラップとジャンプが共に作り上げたラストナンバーは「美しい日」……いやもう一生忘れられない。渋谷が残した最後の言葉が、全てを表わしていた。
「過去最高の『RUSH BALL』、過去最高の大阪の夜、19年目にして最高の夜、ありがとうございました!」
SUPER BEAVER
取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=渡邉一生
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