花の都フィレンツェに渦巻く人間ドラマ ツェムリンスキーの悲劇とプッチーニの喜劇を新国立劇場で一挙上演
新国立劇場『フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ』より 撮影:堀田力丸
2025年2月2日(日)~2月8日(土)新国立劇場 オペラパレスにて、2024/2025 シーズンオペラ『フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ』が上演される。
2018/2019シーズンに新制作上演した、迷宮都市フィレンツェを手掛かりに夢幻の世界へ誘う“フィレンツェ・ダブルビル”。この度、オペラパレスに再登場する。
新国立劇場『フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ』より 撮影:堀田力丸
『フィレンツェの悲劇』(1917年シュトゥットガルト宮廷劇場で初演)は、耽美的で豊麗な音楽で知られるツェムリンスキーの代表作。デカダンス文学の旗手オスカー・ワイルドの戯曲を原作に、夫婦と妻の愛人の3人が繰り広げる奇妙な悲劇を描く。ツェムリンスキーはマーラーに見出されて世紀転換期のウィーンで活躍していた作曲家で、豊潤な前奏曲や終盤の官能的な二重唱では、後期ロマン派ならではの色彩豊かで壮麗な音楽が堪能できる。
新国立劇場『フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ』より 撮影:堀田力丸
そして『ジャンニ・スキッキ』(1918年メトロポリタン歌劇場初演)は富豪の遺産相続をめぐる強欲な人間たちの騒動と若いカップルの恋をテンポよく描いたプッチーニ晩年の1幕物。「三部作」を締めくくるとびきりの喜劇だ。ラウレッタのアリア「私のお父さん」は、ソプラノの名曲としてコンサートで歌われることも多く、テレビCMなどでもお馴染みの人気曲。ともに20世紀初頭を代表する作曲家による、1幕に人間模様が凝縮された秀作が、フィレンツェという奥深い芸術の街を舞台に繰り広げられる。
新国立劇場『フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ』より 撮影:堀田力丸
新国立劇場『フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ』より 撮影:堀田力丸
フィレンツェの闇、裏社会に光を当てるのは粟國淳による演出。
幕が開くと、舞台には植物の根に浸食された重厚な建築が登場し、欲望の渦巻く『フィレンツェの悲劇』のグロテスクさを暗示。腹を探り合う男女3人の心理劇が、官能的な音楽と共に繰り広げられる。対する『ジャンニ・スキッキ』では舞台が一転、巨大な書斎机の上で、ミニチュアになった大勢の登場人物たちがちょこまかと私利私欲に邁進する姿を、一種のブラックジョークとして観察することになる。フィレンツェの裏社会を覗き見するようなプロダクションは、贅沢極まる大人のエンターテインメントとなっている。
新国立劇場『フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ』より 撮影:堀田力丸
そして出演者には世界随一の名バリトンが登場する。
『フィレンツェの悲劇』3人のキャストは、ワーグナーやR.シュトラウスをレパートリーに、艶やかな声と深い表現力で圧倒的人気を誇るバリトンのスター、トーマス・ヨハネス・マイヤーと、強靭で輝かしい声を誇り、オペラ夏の祭典『トゥーランドット』のカラフでもその声を印象付けたテノール、デヴィッド・ポメロイ、そして輝かしく強い声と繊細な表現で“ブリュンヒルデ歌い”として躍進中のソプラノ、ナンシー・ヴァイスバッハという贅沢な顔合わせ。
『ジャンニ・スキッキ』タイトルロールにはブッフォを得意とするイタリアの人気バリトン、ピエトロ・スパニョーリが登場します。ラウレッタとリヌッチョの若いカップルには、イタリアを拠点にスター街道を駆け上っている大注目のソプラノ砂田愛梨、国内トップテノールとして活躍する村上公太と、新国立劇場オペラ研修所出身のふたり。共演者にずらりと揃う実力派歌手陣にも注目したい。
(上段左から)沼尻竜典、D.ポメロイ、T.J.マイヤー、N.ヴァイスバッハ(下段左から)P.スパニョーリ、砂田愛梨、村上公太、粟國 淳
指揮は後期ロマン派を特に得意とする、日本有数のオペラ指揮者沼尻竜典が、絶賛された2019年の本作の初演に続き登場する。共に豊麗な管弦楽を伴う対照的な秀作2作を一挙に楽しめる、贅沢な一夜を楽しみにしよう。
『フィレンツェの悲劇』
商人シモーネは、妻ビアンカとフィレンツェ公グイードの浮気を疑う。夫の死を願うビアンカ。男2人は決闘することになり、シモーネがグイードを絞め殺す。ビアンカは夫の強さに恍惚となり、シモーネは妻の美しさを讃える。
『ジャンニ・スキッキ』
亡くなったばかりの大富豪ブオーゾの寝室。遺産が修道院に寄付されると知り、親類たちは愕然とする。ブオーゾの甥リヌッチョと結婚したい娘ラウレッタに懇願され、ジャンニ・スキッキは遺言状を書き換える計画を立てる。
公演情報
アレクサンダー・ツェムリンスキー『フィレンツェの悲劇』
Alexander Zemlinsky / Eine florentinische Tragödie
全1幕(ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付)
ジャコモ・プッチーニ『ジャンニ・スキッキ』
Giacomo Puccini / Gianni Schicchi
全1幕(イタリア語上演/日本語及び英語字幕付)
会場:新国立劇場 オペラパレス
予定上演時間:約2時間35分(休憩含む)
【指揮】沼尻竜典
【演出】粟國 淳
【美術】横田あつみ
【衣裳】増田恵美
【照明】大島祐夫
【舞台監督】CIBITA斉藤美穂
『フィレンツェの悲劇』
【グイード・バルディ】デヴィッド・ポメロイ
【シモーネ】トーマス・ヨハネス・マイヤー
【ビアンカ】ナンシー・ヴァイスバッハ
【ジャンニ・スキッキ】ピエトロ・スパニョーリ
【ラウレッタ】砂田愛梨
【ツィータ】与田朝子
【リヌッチョ】村上公太
【ゲラルド】青地英幸
【ネッラ】針生美智子
【ゲラルディーノ】網永悠里
【ベット・ディ・シーニャ】志村文彦
【シモーネ】河野鉄平
【マルコ】吉川健一
【チェスカ】中島郁子
【スピネッロッチョ先生】畠山 茂
【アマンティオ・ディ・ニコーラオ】清水宏樹
【ピネッリーノ】大久保惇史
【グッチョ】水野 優
【料金】 S:26,400円 ・ A:22,000円 ・ B:15,400円 ・ C:9,900円 ・ D:6,600円 ・ Z:1,650円