新国立劇場2016/2017シーズンプログラムを発表

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2016.1.24
左から宮田慶子(演劇)、飯守泰次郎(オペラ)、大原永子(バレエ&ダンス)芸術監督

左から宮田慶子(演劇)、飯守泰次郎(オペラ)、大原永子(バレエ&ダンス)芸術監督

バランスよいプログラムでより充実したシーズンを目指す

1月15日(金)、新国立劇場のオーケストラリハーサル室を会場に新国立劇場の2016/2017シーズンラインナップ説明会が開催され、各ジャンルの芸術監督より注目のプログラムが発表された。以下、発表の順にレポートしていこう。

まずオペラのラインナップについて、飯守泰次郎芸術監督が新制作の三公演から発表する。「ニーベルングの指環」より第一夜「ワルキューレ」(2016年10月、シーズン開幕公演)、第二夜「ジークフリート」(2017年6月、シーズン閉幕公演)とベルカントオペラの名作「ルチア」(2017年3月)は新シーズンの目玉となるだろう。

2015年の「ラインの黄金」から開始した新しい新国立劇場の「ニーベルングの指環」は、故ゲッツ・フリードリヒ最晩年の演出だ。2016/2017シーズンの「リング」は、昨年の「ラインの黄金」の上演を踏まえてより密度の高い舞台として磨き上げられた舞台として登場することとなる。ゲッツ・フリードリヒとの交友もあった飯守泰次郎ならではの踏み込みに期待したい。また、「ワルキューレ」を東京フィルハーモニー交響楽団、「ジークフリート」を東京交響楽団が担当と、オーケストラの起用についても各団の個性を踏まえて芸術監督が求める最高の上演のための起用がなされることも発表された(そしてさらに次のシーズンに上演を予定している「神々の黄昏」では読売日本交響楽団が新国立劇場のピットに初登場することもサプライズとして発表された)。

もう一本の新制作、ドニゼッティの「ルチア」には「幸いなことに欧米で大活躍するソプラノ、オルガ・ペレチャッコを迎えることができた」と芸術監督は胸を張る。彼女はウィーン、METほか世界の歌劇場で活躍する新世代のディーヴァだ。また、今回の上演においては高名な「狂乱の場」に作曲者指定のグラスハーモニカを用いるという。共演者、指揮者にも信頼できる面々を迎えての新制作、大いに期待しよう。

新制作以外では、プッチーニの「ラ・ボエーム」(2016年11月)、「蝶々夫人」(2017年2月)、ロッシーニの「セビリアの理髪師」(2016年11~12月)、ビゼーの「カルメン」(2017年1月)、ヴェルディの「オテロ」、モーツァルトの「フィガロの結婚」(二作とも2017年4月)と、名作オペラを定評あるプロダクションで再演することで、より広いファン層の獲得を目指した格好だ。「蝶々夫人」に新国立劇場生え抜きの安藤赴美子(新国立劇場オペラ研修所第3期生)を迎えられることは、舞台の上演に加えて次世代の育成をも担う新国立劇場の成果として注目される。

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続いて大原永子芸術監督からバレエ&ダンスのラインアップが発表される。大原監督は、近年バレエに取り組む人は増えているが、バレエの観衆はそこまで増えていない」現状を踏まえて、「ロメオとジュリエット」(2016年10~11月)、「シンデレラ」(2016年12月)、「コッペリア」(2017年2月)、「眠れる森の美女」(2017年5月)、「ジゼル」(2017年6~7月)と、ドラマティック・バレエの再演でより多くの観衆を獲得したい、と語った。また、再演によってカンパニーとしての新国立劇場バレエの成長を示したい、と大原は熱を込める。

ダンス、コンテンポラリー作品についてもバレエ団とのコラボレーション(恒例となったDANCE to the Future 2016 Autumn/2016年11月)やアウトリーチプログラム(カンパニーデラシネラ「ふしぎの国のアリス」/2017年6月)などでより広い観衆へのアプローチをしていく、と語る。

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発表の最後は演劇だ。宮田慶子芸術監督発表された演劇ラインナップでは、2カ月にわたって上演するシェイクスピアの「ヘンリー4世」(2016年11~12月)がまず目を引く。シェイクスピア没後400年の今年、新国立劇場がこれまで取り組んできた一連のシェイクスピア史劇(「ヘンリー六世」「リチャード三世」)の流れを継いで、小田島雄志訳・鵜山仁演出のシェイクスピアがまた新たに登場する。上演に際しては、長大な作品を一部・二部それぞれの単独上演、そして連続上演を設定するという。

2016/2017シーズンは、2014年ピュリッツァー賞を受賞した注目の作品、アニー・ベイカーの戯曲「フリック」の日本初演で開幕する(2016年10月)。そして「ヘンリー四世」をはさみ、明けて2017年にはシリーズ「かさなる視点 -日本戯曲の力-」として、昭和30年代の三島由紀夫、安部公房、そして田中千禾夫による戯曲に、谷賢一、上村聡史、小川絵梨子と三人の気鋭の演出家が取組む。また、これまでも過去の名作を上演してきたシリーズ「JAPAN MEETS… -現代劇の系譜をひもとく-」ではサローヤンの「君が人生の時」(2017年6月)、そしてオズボーンの「怒りを込めてふり返れ」(2017年7月)を取り上げる。大作の上演と、演劇作品を通じて過去を捉え直す試みがバランスよく配されたシーズンプログラムと言えるだろう。

新国立劇場が提示する2016/2017シーズンに対し、発表の後には質疑応答が行われ、熱い議論も交わされた。各分野ごとにアプローチの方向は違うけれど、シーズンを目指す芸術監督の姿勢は同じもの、それぞれにより良い新国立劇場を創りあげようと前を見ている。そう強く感じさせられるシーズンラインナップ説明会であった。


■新国立劇場 オペラ ラインアップ
■新国立劇場 バレエ&ダンス ラインアップ
■新国立劇場 演劇 ラインアップ

 

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