すべての白雪姫と魔女たちに観てほしい―「*ASTERISK」牧 宗孝(MIKEY from 東京ゲゲゲイ)にインタビュー!

インタビュー
舞台
2016.5.26
牧 宗孝(MIKEY from 東京ゲゲゲイ)「*ASTERISK」

牧 宗孝(MIKEY from 東京ゲゲゲイ)「*ASTERISK」


その時代に輝く最高峰のダンサーで作り上げられる進化系ダンス・エンターテイメント「*ASTERISK(アスタリスク)」。“アスタリスク”には、かけ算や乗数の記号(×の代用)として使われる「*」の意味合いを込め、ダンスと言葉・物語、様々なバックボーンを持つダンサーのコラボレート、様々なかけ算の化学反応を表している。

2016年5月、グリム童話の『白雪姫』をベースに、人気作家中村うさぎが書き下ろし、牧宗孝(MIKEY from 東京ゲゲゲイ)の演出によりダンス作品として装いも新たな現代版『白雪姫』が産まれる。

毎回毎回、観客の心を揺さぶる衝撃のステージを魅せ続ける*ASTERISK。今年はどんなステージになるのか、牧に話を聞いてきた。


―― 前回と違って今回ストーリー性がより強くなっていると思うのですが、なぜ「白雪姫」をテーマにしたんですか? 

私がもともと中村うさぎさんの凄いファンで、彼女がやっているメルマガに登録しているんですけど、そこでうさぎさんが、白雪姫を題材に魔女視点でエッセイを書かれていてそれに凄い感銘を受けて。ちょうどその時期に「次のアスタリスク、お話をどうしよう」というタイミングがあったんです。誰もが知っている白雪姫の物語をうさぎさんの解釈で新釈の白雪姫にして舞台化したら面白いんじゃないかっていう発想にたどり着いて。それでうさぎさんにオファーを出したらOKが出たので、今回このテーマでいこうということになりました。

―― うさぎさんとは昔から知り合いという訳ではなかったんですね。

全然そうではなくて、私が一方的に、たまに新宿2丁目でうさぎさんの姿を拝見したりしていたんですけど、うさぎさんはレズビアンのイベント行って、私はゲイのイベントに行ってて、お互い行先が違ってたんです。エントランスで待っている時に、「あ、うさぎさんだー」みたいな感じで遠くから見ていただけだったんです。丁度知人のドラッグクイーンの方がいて、その人経由でうさぎさんを紹介していただいて、今回初めてうさぎさんとお会いできたんです。念願かなって!

―― 昨年は残酷歌劇「ライチ★光クラブ」にパフォーマンス演出として河原雅彦さんとタッグを組まれました。あの現場で得られたもの、影響を受けたことは何でしたか?

「ライチ」でいちばん面白かったのは、それまで作っていた私のダンスの舞台へのやり方みたいなものと異なっていたこと。もっと私は唐突なんですよ。私の場合、基本的に「きっかけ」が「音楽」なんですよ。でも河原さんの「きっかけ」は「動機」なんです。やっぱり、お芝居の流れとかがあって、そこで「踊りだすきっかけ」を常に探っている感じがあるんですね。私の場合だったら、音が始まったらそこからダンス、っていう感じなんですが、河原さんは音が始まっても、それをきっかけにはしないで「このセリフ、この発言があるからこういった踊りが始まる」みたいな感じで入れてくる。そのきっかけみたいなものが私からするとすごい新しくて!ミュージカルなど演劇ではそれは当然なんでしょうけど、河原さんの舞台の作り方に凄い影響を受けたかもしれないですね。

―― となると、今回の*ASTERISKに「ライチ」の経験が何かしら活かされたりするのでしょうか?
 
すでに脚本を書いている時点で結構「ライチ」の経験が活かされている気はしますね。

牧 宗孝(MIKEY from 東京ゲゲゲイ)「*ASTERISK」

牧 宗孝(MIKEY from 東京ゲゲゲイ)「*ASTERISK」

―― 一つの作品を作っていく時、牧さんは曲先行の方だとおっしゃっていましたが、今回の『白雪姫』はちょっとこれまでの作り方とは違ってきますか?

そうですね、*ASTERISKのコンセプト自体が、ここにも書いている通り、ダンサーたちが1度に集まって、一つの物語に繋ぐというのがコンセプトなので、「物語」から始まっているんですが、物語ができた時点で次に作らないといけないのが「音楽」。「物語」「音楽」そして「振りつけ」っていう流れは前回とも変わらないかな。私が普段作っている東京ゲゲゲイの作品とかは…同時進行かな。こういった規模のステージだと、いろんな人が関わってくるから、突然のひらめきがあまり通用しない。例えば今から私が「白雪姫じゃなくて、シンデレラにしたい」とか言っても無理じゃないですか(笑)でも東京ゲゲゲイならそれができるんですよ。

―― 東京ゲゲゲイのパフォーマンスだと、ひらめいた瞬間に内容を変えることもある?

全然あります(笑) それは私たちが勝手にやっていることだからできることなんですけどね。でもこういう企画の場合は、流石にオフィシャルすぎて。ひらめきとかでものづくりをすることに慣れている人間がやる場合、「あ、もう変えられない」っていう決定のタイミングが重大ですね。

―― ちなみに、子どもの時からこういったダンス・パフォーマンスが好きだったり、やりたいと思っていたんですか?
 
まず学生生活で「私は卒業後、普通には働けないだろう」ってことをもの凄い痛感したんです。私にとっての学校って、何が得意かを知る場所ではなくて、何が苦手かを知る場所だった。学校生活の中でいろいろやらされるじゃないですか。それがことごとくできないっていう。そうなると、そのまま大学を出て就職っていうレールみたいなものに乗ることが、「あ、無理」って小学校低学年くらいで察しまして。実際、高校に行かなかったんですけど、高校という学歴で左右されるような進路には進まない、ってその時から決めていた。から。小さい時から好きなことやろうと決めていましたね。

―― パフォーマンスのすべてがとにかく独創的だと思うのですが、いろいろ想像したり、妄想したりするのは好き?
 

それはあると思います。すごい妄想家な気がする。あと、何について妄想するかというと、いろんなシチュエーションの中で“やってはいけないこと”っていうのを常に考えてしまうんですよ。例えばお葬式一つ取り上げても、そこではやってはいけないようなことを常々考えてしまいます。「今ここで●●な事をしたら…」って常に妄想している。そこではやっていけないこと、タブー感みたいなのがけっこう自分の作品の根本になっているかもしれないですね。

牧 宗孝(MIKEY from 東京ゲゲゲイ)「*ASTERISK」

牧 宗孝(MIKEY from 東京ゲゲゲイ)「*ASTERISK」

―― 前回は、Koharu Sugawaraさんや、原田薫さんといった「主人公」を務める方がいらっしゃいましたが、今回は牧さんそのものが軸となってステージングしていくことになりますね。

演出して振りつけして、なおかつ主演。もうすごい恥ずかしい。出しゃばるなって自分自身思うんですが。*ASTERISKの第1回目はDAZZLEの長谷川(達也)さんが演出かつ、主演をされたんです。私は普通にダンサーとして出たんですけど、その当時、長谷川さんに「演出に主演に…ってもう、出すぎ!」とかってツッコんでいたんですよ(笑)なのに、今度はそれを自分がやっている。あー恥ずかしい。うさぎさんの原作じゃなかったらこの内容はやっていなかった(笑)

―― 当日まで様々な緊張や心労(笑)が続きそうですね。では、最後になりますが、*ASTERISKをどんな方々に観ていただきたいですか? 

こういった人たちに、という特別な気持ちはないですけど、すごく女性色の強いお話なので…結婚して自分の好きなことを諦めてお母さんになったりお嫁さんになったりした、このお話で言うと「白雪姫」がそういう人なんです。一方、独身を選び、自分の仕事なり好きなことを追及し続け自分の人生を生きている人を「魔女」としたんですが、こういう生き方を選んだ、私の「女としての選択」はどうだったんだろうって思う人がこの舞台を観て「これで良かったんだ」って納得できるようなお話にしているので、そういう人たち、つまり「白雪姫」と「魔女」両方に観に来てほしいですね。

「*ASTERISK」

「*ASTERISK」

 
 
公演情報
「*ASTERISK『Goodbye, Snow White』新釈・白雪姫」

■日程:2016年5月27日(金)~ 29日(日)
■会場:東京国際フォーラム ホールC
■原作書き下ろし:中村うさぎ
■主演・演出・振付:牧宗孝(MIKEY from 東京ゲゲゲイ)
■出演:
東京ゲゲゲイ(牧宗孝/YUYU/BOW/MARIE/MIKU)
DAZZLE
KUMI/REIKO/NANAKO/MAIKO
KITE/BLUE TOKYO/福澤侑/TUKIとKUMA
バニラグロテスク/PYON BOY(RYUSIN/KENSHO)
加藤諒

■公式サイト:http://asterisk-web.net/

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