八代亜紀インタビュー~ディズニー映画EDテーマからフジロックなどのフェス出演、そして熊本への思いまでを直撃で語ってもらった~

インタビュー
音楽
2016.7.28
八代亜紀 撮影=大塚 秀美

八代亜紀 撮影=大塚 秀美

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昨年ブルースアルバム『哀歌-aiuta-』をリリースし、今年に入ってからはFUJI ROCK FESTIVALやRISING SUN ROCK FESTIVAL、などのフェスへも積極的に出演をしている八代亜紀さん。ディズニー映画の声優からエンディングテーマまで、更には絵も描き続けている。そんなアグレッシブな活動を続ける八代さんの「今」と「これから」を直撃。未だに現役で前に進み続けられる秘訣、そして故郷熊本への思いまで、改めて八代亜紀というシンガーの魅力を思い知らされるインタビューとなった。

 

八代亜紀 撮影=大塚 秀美

八代亜紀 撮影=大塚 秀美

――最初ディズニーから『ファインディグ・ドリー』で、日本語吹き替えの依頼が来た時はどう思われましたか?

声を聴いたら、誰もがすぐその人だとわかる日本人がいいというお話で、それはシンガー八代亜紀だということでオファーを頂いきました。すごく光栄でしたね。びっくりしたのは、このストーリーの中に八代亜紀で出て欲しいと言われたことでした。最初どういう役かはシークレットだったんですね。みんなはきっとドリーのお母さん役なのかなとか思っていたようで。

――ドリー役の室井滋さんとのやりとりのところで、本当に「こんにちは。八代亜紀です」って言うんですよね。

そうなんです。アフレコの時になんか不思議な感じでしたね。

――アフレコはすんなりいったのでしょうか?

海洋生物研究所の案内役で、普通に「八代亜紀です」と言うのですが、淡々としつつちょっと優しく笑顔を残してという要望で、最初自分なりに演技をしていたら、普通でいいですって(笑)。

――アフレコだけではなくエンディングテーマ「アンフォゲッタブル」も歌っています。

そうなんです。嬉しいですね。映画にすごく合うの!って自分で言っちゃう(笑)。ナット・キング・コールのスタンダードナンバーのカバーで、性質的には非常に流れるような感覚の音楽で、ワクワクしながら歌いました。

――忘れんぼうの主人公のお話しで、エンドソングが「アンフォゲッタブル」っていうのが、またいいですよね。

この映画の中に流れるメッセージは若い人たちに観てもらって、感じて欲しいです。やっぱり親は死ぬ想いで子供を守って育てて、でも「なんで産んだんだよ」って言われちゃう辛い時期もある。でもそれを越えてわかりあう時代が来るということが、この映画でわかると思います。

――親子愛と友情も描かれていて、世界中でヒットするワケがわかります。

そうですね。忘れん坊のドリーを周りが助けようとして、でも「ドリーはどうしようもないよね」って誰も言わない。忘れん坊のドリーの勇気を仲間はみんなが認めていて、そういうところが勉強になりますね。親子や友達同士で是非観て欲しいですね。あ、日本語吹き替え版のほうね(笑)。

――最近、若手ミュージシャンから、どんどん八代さんと一緒にやりたいとオファーが来ていると思いますが、八代さん自身は自分の音楽のジャンル以外のミュージシャン、若い世代のミュージシャンと何かできたらいいなと、常々思っていたのでしょうか?

そうですね、色々お話をいただいて、なんかこう不思議な感じでした。全然違うジャンルからオファーがあったりとかすると、へぇーという感じでした。私結構シャイで、人見知りなんです。でも会うと「どうも~」という明るい感じなので、相手の方もホッとするみたいです。みなさん会うまでは心配で仕方ないんですって(笑)

――そうだと思います。大御所です。

全然そうじゃないんですけどね。オファーが来ると、ふーん、という感じなんですよね。

――どんなオファーでも、まずはお話は聞いていただける感じですか?

いえ、スケジュールが決定になってからですね(笑)。マネージャーが判断して、もう事後報告ですから(笑)。私が若いミュージシャンのことをほとんど知らなくて、マネージャーが詳しいから「素敵ですよ」とか言われると、「じゃあやってみようか」という感じになります。私にとっては音楽は全部一緒なんです。ジャズもブルースもロックもヘヴィメタルも、フォークソングも流行歌も浪曲も、全部一緒なんです。だから今日はこれやりますよって言われたら、自分の引き出しから引っ張り出してきて歌うという感じです。

――その引き出しが沢山あるのがすごいですよね。

そっか、そういうことですね。だからすごく楽しいんです。

八代亜紀 撮影=大塚 秀美

八代亜紀 撮影=大塚 秀美

――去年リリースしたブルースアルバム『哀歌-aiuta-』も素晴らしかったです。

ブルースは元々哀しい歌。人間の生き様の語源ですね。哀しい生き様の物語がブルース、日本でいうと浪曲。つまりそれは私の元々の土壌で、2、3歳の頃から父に浪曲を聴かされて育ってるんですね。母娘ものの、哀しい歌を唄う女性の浪曲師さんがいらしたらしくて、その方の哀しい歌声に2、3歳だった私はボロボロ泣いていたんですって。きっと音の魂だと思うんです。それがブルースでもあるし、浪曲でもあるし、のちの昭和歌謡という感じがしています。その方の浪曲が父は大好きで、父も歌うのが上手いんです。浪曲やギターを弾いたり、絵を描いたりという私が好きなものは、全部父の影響なんです。浪曲は魂が入ってるんです。今回モンゴルの歌をレコーディングしたのですが、すごく素敵な曲で、曲間に「アドリブ浪曲風」って書いているだけで、お任せしますので自由にやってくださいと言われ。「八代さんがやると馬頭琴が鳴っているようで、魂を感じます」、とおっしゃってくれて。1発OKでした。

――今お話に出ましたモンゴルでもライブやられますよね?

政府から正式に任命されて、文化大使に就任しました。モンゴル大使ともう25年くらい前から懇意にしていて、大使が当時からモンゴルで「舟唄」を聴きたいとおしゃっていたんです、大平原で聴きたいと。それは叶えなければ!みたいな感じで、今回実現にこじつけました。7月31日にモンゴルのスーパースター、ドグミド・ソソルバラムさんと『モンゴル・日本友好コンサート』を、首都ウランバートル市のオペラシアターで行います。

――その3日後は、砂漠に野外ステージを作って歌うとお聞きしました。

そうなんです、モンゴルならではの草原にステージを作って、そこで歌うんです。見渡す限りの大平原で、地平線が見えるくらい。

――またすごいところにステージがあるんですね。お客さんは……?

来ないと思います(笑)。だってそこは羊とかラクダとか馬しかいませんし(笑)。私の夢はステージの前に、馬とかラクダとか、羊がいっぱい集まってきて、聴いてくれたら嬉しいなって(笑)。

――動物の心も震わせたい。

八代 それが私の究極の想いですね。

――そのモンゴルでのライブの前に7月22日に『FUJI ROCK FESTIVAL’16』にも初出演されました。「ROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRA」のゲストボーカリストとして参加されましたが、若い人達や、海外のアーティストも多く参加している中で、八代さんの歌が注目を集めていましたね。

最近若い人たちの前で「舟唄」を歌うと、最初の♪お酒はぬるめの燗がいい~ってところで「カッケ~!」って言われるんですよ。カッコイイとこ見せなきゃ(笑)。

――最高の褒め言葉です。

表現が面白いですよね、若者は。

――そして、『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO』にも出演されます。

そうなんです。先日北海道でライブをやった時に、そこで関係者の方が、「ライジング~」はバックヤードにお野菜とか果物がたくさんあるので楽しみにしていてくださいと言っていました(笑)。もちろんステージも楽しみだけど、裏も楽しみ(笑)

――そうやってどんどん積極的にフェスに参戦する八代さん、素敵です。

本当ですか?年齢関係ないから大丈夫でしょ。昔、20代の時にずっと日比谷野音で10年間バースデイコンサートをやったり、あと沖縄の飛行場跡でやっていた野外ライブに出たり、野外でもたくさんやっているので全然行くよ!という感じです。

――やっぱりその唯一無二の声、歌、響きは老若男女関係なく、みんな聴きたいと思っていると思いますし、芳醇なウイスキーのように年月を重ねて、さらに味わい深くなっていっていると思います。

ブルースやジャズは年を重ねるとどんどんよくなるんです。20代だとまだ若い声なんですよ。今はものすごくいいですね。この声の出し方の妙というか、技というか…。それからマイクの乗せ方の技というんですかね。そういう部分ではやっぱりベテランの技が出せるし、わかってくるんですよね。それは若い頃はなかなか出せない。自分でもそう思います。

――やっぱり喉のケアには相当気をつけていらっしゃるんですか?

それが全然やらないんです。ただ、普段の大声を出すのが声帯に良くないので、絶対出さない。怒鳴ったりしません。それは気をつけていますね。

――八代さんのジャズのライブを映像観たのですが、すごく軽く歌っている感じなのに、ものすごく太いというか、ガッと掴まれる感じがしました。

そうなんです、そういう声帯らしいんですよね。これも父譲りの声なんですが、時には細く、時には太く出せるみたいです。

――先ほど、音楽のジャンルは関係ないとおっしゃっていましたが、これからもっとこういう感じの人たちとやりたいとか、こういう音楽をやりたいとか、希望はありますか?

色々な音楽をやらせてもらっていて、差別化ができているのが面白くて、通常のコンサートは今も年間150ステージやっています。それ以外にジャズやブルースのライブがあったり、フェスがあったり、ものすごくメリハリがあってすごく楽しいんです。歌うことが飽きないというか。だから時間が合えば色々なことをやってみたいんです。それと、桑田佳祐さんとはいつか一緒にやってみたい!桑田さんに昭和歌謡みたいな曲を作ってもらいたいな。歌いたいですし、聴きたいです(笑)

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