宝塚歌劇OG版『シカゴ』大和悠河に話を聞く
ブロードウェイミュージカル『シカゴ』宝塚歌劇OGバージョンより。右が大和悠河。左はヴェルマ役の和央ようか(トリプルキャスト) Photo by Maiko Miyagawa and Nobuhiko Hikiji
「ロキシー役によって舞台の印象が変わるので、すごく責任があります」
宝塚歌劇団の元トップスターたちが、ブロードウェイ・ミュージカルの傑作をオールフィメールキャストで上演した『シカゴ』。世界的に見ても女性だけの上演は例がないというこの舞台、今年7月にはニューヨークでの上演を実現し、8月10日からはいよいよ東京・大阪で凱旋公演が行われる。宝塚OGだからこその高い技術&女性だけだからこそ生まれるあでやかさで、これまで上演されてきた『シカゴ』の中でも強烈なインパクトを放つ名作となった本作。中心人物の一人であるロキシー・ハートを、朝海ひかるとダブルキャストで演じる大和悠河が、大阪で会見を行った。
セクシーな衣裳で会見にのぞんだ大和悠河。 [撮影]吉永美和子
「ブロードウェイに行ったら、必ず『シカゴ』を観ます」というほど、以前から本作の大ファンだったという大和。「映画版が有名ですけど、舞台版の方は真っ黒な箱の中で役者が演じて、衣裳もあえて下着同然のようなシンプルなもの。身一つですべてを表現する世界で、だからこそ腰の動き一つにも全部意味がある(ボブ・)フォッシーの振付が生きてくるんです。またリアルな殺人や不倫の話を詰め込んでいるけど、すごくジョークや皮肉を混じえながらやっているので、ブロードウェイのお客さんはずっと笑ってるんですよ。日本のお客様にも、そういう要素を伝えられたらいいなと思います」。そして何度も舞台を観るうちに、自らが演じるロキシー役の色合いによって、全体の印象が大きく変化することに気づいたという。「毎回“ロキシーで変わるんだ!”と思うので、そこはすごく(演じるのに)責任がありますね。ロキシーは、最初ヒヨコみたいな女の子だったのが、刑務所でビリーやヴェルマと出会うことで、夢だったスターを目指してたくましく成長していく。ある意味元気を与えるというか、夢にたどりつく強さと精神力を持ちあわせている女性ですね。そこはステキだなあと思うし、共感もできます」
2014年の初演では、殺人を犯しながらも様々な人たちを手玉に取って、名声と無罪の両方を勝ち取ろうと立ち回るロキシーを、元男役とは思えないほどキュートに演じ切った大和。今回の稽古中は、初演をなぞるのではなく、初めて演じる作品のつもりで挑んできたという。「『シカゴ』は決まりごとがものすごく細かいので、前回やったことが自然と出てきてしまって、ゼロに戻るのが大変でしたね。ニューヨークで上演するということで、向こう(アメリカ)の振付家には“前回はがむしゃらにやってたかもしれないけど、今回はそれをやらないで。ニューヨークはもっとクールなんだよ”と言われました。それは身体の芯は燃えているけど、それを“私、燃えてます!”って出すんじゃなくて、さりげなく出すということ。私たち舞台人は、どうしても“お客様にわかってもらおう”としちゃうんですけども、自分が本当にその役の気分になっていれば、やり過ぎなくていいんだと。そういうカッコよさを教えていただいたので、次はもっと楽しんでロキシーを演じることができるな、と思っています」
ニューヨーク公演で上演したレビュー・ショー「タカラヅカ・アンコール」 (C)MASAHIRO NOGUCHI
この会見が行われたのは、ニューヨーク公演の直前。この『シカゴ』が現地でどのように受け入れられるかは「すごくドキドキ感がある」と言いつつも、逆にオールフィメールだからこその良さは伝わるのではないか、という期待も口にしていた。「宝塚で育ってきた私たちがやることによって、(他の『シカゴ』と)振付がまったく同じでも、よりエレガントで品格がある世界を届けられるのではないかと思うし、それは私たちならではのもの。すごくリアルなことをやっていても、(男役があることで)リアルリアルしすぎなくて、でも真実をお届けすることができるという宝塚の世界観が、『シカゴ』ではいい部分に働いていると思います」
最後に「前回よりさらにクールにスタイリッシュになったものを、皆さんにお届けできると思います。今まで『シカゴ』をご覧になったことがない方も、本当にセクシーでカッコいい世界をぜひ観に来てください」と熱く語った大和。目が肥えたニューヨークの観客たちの視線と評価に鍛え上げられて、確実に一回りも二回りも大きくなったに違いない、大和を始めとする宝塚OGたち。そのセクシーでエレガントなステージは、宝塚ファンならずともドキドキワクワクで楽しめるはずだ。
ブロードウェイミュージカル『シカゴ』宝塚歌劇OGバージョン
■東京公演
2016年8月10日(水)~21日(日) 東京国際フォーラム ホールC
■大阪公演
2016年8月25日(木)~31日(水) 梅田芸術劇場メインホール
■出演:峰さを理、麻路さき、姿月あさと(ビリー・フリン/トリプルキャスト)
和央ようか、湖月わたる、水夏希(ヴェルマ・ケリー/トリプルキャスト)
朝海ひかる、大和悠河(ロキシー・ハート/ダブルキャスト)、他
※本編終演後、スペシャルカーテンコールやトークショー、ニューヨーク公演に密着した映像の上映会を日替わりで開催。スケジュールは公式サイトでご確認を。
■公式サイト:http://chicagothemusical.jp/