Amelieに初撮りおろしインタビュー 自らを「カッコよくなれないバンド」と表すバンドの道のりと核に迫る
Amelie 撮影=風間大洋
埼玉県越谷発、紅一点のmick(Vo/Gt/Pf)による天真爛漫なボーカルを武器にしたバンド・Amelie。彼らが9月28日にリリースした1stシングル『君が為に鐘は鳴る / さよならバイバイ』がとても良い。両A面として収録される2曲はどちらも聴き手を元気にさせてくれるようなエネルギーに満ちているが、夢に向かってまっすぐ突っ走る人の背中を押すだけではなく、そういうふうに頑張ることができない人のことを守るような曲にもなっているのだ。きっとそれは、「伝える」ことに人一倍慎重になりながら――もっと言うと、メッセージソングが持つ「音楽が人を救う」という可能性と、それと紙一重にある「音楽が人を疎外する」という危険性の両方を自覚しながら――やってきたバンドだからこそなのでは?と思った。ということで、このバンドの核に一体何があるのかを探るべく、メンバー4人に突撃。今回のシングルに辿り着くまでの道のりを振り返った。
――みなさんが初めて正式にリリースした音源は去年(2015年)6月のフリーデモシングル「手のなるほうへ、光のほうへ」ですよね。この時から既に、今回のシングルにも通じるメッセージ性が確立されている印象がありますが、これは結成当初からあった要素なんですか?
mick:いや、無いですね。
直人:たぶん真逆にいました。
あっきー:それまではどちらかというと悲しさが前に来てて、「でも前向きだよね」って自分で思い込んでるような歌詞だったんですよ。前向きな部分も少なからずどこかにはあったと思うけど。
mick:いや、無かったんじゃないかな……(笑)。自分の身体の中から負の要素みたいなものを吐き出してただけだったんですよ。だけど「このままではいかん」って気づいて。言霊を信じてポジティブなことばかり言ってたら心もそういうふうになれるし……みたいな感じでやっていったら、「もしかしたら叶わないかもしれないな」と思ってたこともわりと叶うんだなっていうのを実感して。それからは前向きなことを歌うように心掛けるようになりました。
――それはいつ頃ですか?
あっきー:2年前ぐらい、[NOiD]に入ってからかな? そこから見せ方とかも変わったりして。
アサケン:4人だけで考えてるAmelieと、客観的に見てる人から言われるAmelieにズレがあったんですよ。特に歌詞においてだと思うんですけど、「伝えよう」っていう意識が実はそれまではそんなになくて。だけど、外から見てる人には「そこをもっと重視してやった方がいいよ」と言われて。そこでバンドの考え方が一気に変わったんですよね。それにたぶん、自分たちで自然と排除してたポップな部分っていうのがあったんですよ。「これはちょっとポップすぎるよね」みたいな感じでやってたり。
あっきー:あったあった。もう極端に陰の部分を前に出してたので。
アサケン:でも「あ、ポップでもいいんだ」って気づかせてくれたのがレーベルであって、そこからmickが作る曲も変わっていって。
あっきー:(mickは)本当は元々ポップだったんですよ。だって好きな音楽もポップだったもんね。
mick:YUKIちゃんが好きで。
あっきー:でも俺が最初mickとバンド組もうとした時のスタンスが、もう陰の部分全開でやっていこうっていう感じだったので。
――Amelieは元々mickさんとあっきーさんの2人が始めたバンドなんですよね。
mick:そうですね。オリジナルメンバーはこの2人なんですけど、結成した年にアサケンが加入して、そのあと直人さんが入って4人になりました。
――mickさんはAmelieを結成する前からライブハウスで歌ってたんですか?
mick:弾き語りをやってました。
あっきー:俺はその弾き語りの音源を聴いて、「あ、めっちゃ良いな」「この子とバンド結成しよう」って思ったんですよ。
――ということは、その弾き語りはどちらかというと暗めだったと。
あっきー:そうですね。mickに対して最初に良いなって思った部分は、暗くて、メロウで、雰囲気のあるアンニュイなところで。で、アサケンと俺はそういう音楽が好きじゃん。だからスリーピースの時はモロにそっち路線に行ったんだよね。
アサケン:そうだね。
mick:だから3人の時はすんごい暗かったんです。今とは別人です(笑)。
Amelie 撮影=風間大洋
――バンドとしてポップなサウンドを鳴らすようになったのは、直人さんが加入して4ピースになってからですか?
あっきー:そうですね、直人さんが入って4ピースになって、やれることが広がったっていうのがデカいですね。まあ直人さんも元々は陰だけど――
直人:(笑)。僕は元々Amelieと対バンしてたバンドにいたんですけど、Amelieはマイナーコードで哀愁漂うイメージだったんです。でも実際入ってみたらもっといろいろなことができるバンドだったので、結果的にこうなるのは自然だったとは思うんですけど。
――そういうふうに方向転換した時に、難しさや辛さを感じたことはなかったんですか?
あっきー:ありました。「これでいいのかな?」って思いながらやってて。
アサケン:でも出来上がった曲を聴いてみたら「あ、これでいいんだな」ってすぐに確信できるようなものでした。
あっきー:「ポップにはするけど、あくまでロックバンドっていうのは崩さないようにしよう」っていうギリギリのところでずっと作ってたんで。だから曲調が変わったとしても別に芯はブレていないと思います。
――なるほど。そして2015年末に1stフルアルバム『グッバイ&ハロー』をリリースしてから約半年に及ぶ全国ツアーを行っています。このツアーについて、いただいた紙資料に「ある会場ではライブ中に大粒の涙も流した」と書いてあったので、一体何があったのかなと……。
一同:ははははは!
mick:ツアーファイナルがeggmanでのワンマンだったんですね。eggmanはお世話になったハコで、今のAmelieを取り巻く人たちと出会った場所でもあるし――私たち地元は埼玉なんですけど、第2のホーム的な感じで闘ってきた場所だったんですよ。ガラガラのeggmanもいっぱい見てきたし、自分たちのことを全然観てくれないお客さんばかりのライブもいっぱい経験していって。それなのに「今はAmelieだけを観たいっていう人がこんなに集まってるのか!」って思って、感動して泣きました。
――ということは、嬉し泣きだったんですね。良かった!(笑)
直人:(笑)。そうですね。
――そして8月14日には越谷のEASYGOINGでワンマンを開催。これはみなさんにとって凱旋のような感じですよね。
直人:そうですね。(EASYGOINGには)Amelieを組む前からメンバーがそれぞれのバンドで出てたし、だからそこで出会ったようなもんなんですよね。地元のバンドがワンマンしてソールドさせる、っていうのが今までいなかったらしいんですよ。それをやっと自分たちが果たせたということもあって、いろいろと思い入れがあってヤバかったです。感動でした。
――その越谷ワンマンには「越谷で鳴らす、始まりの鐘」というサブタイトルが付けられてました。
直人:さっきも言ったとおり、本当にAmelieが始まった場所だったので。一旦フルアルバムのツアーが終わって、越谷でワンマンして、自分たちがこうやって結果を出してるよっていうのを地元にも見せて、再スタートしたいなって思ってそのサブタイトルを付けました。
Amelie 撮影=風間大洋
――ということは、そのワンマン明けにリリースする今回のシングルは、再スタートにおける初めの一歩かと思いますが、この2曲はいつ頃作ったんですか?
直人:2曲とも僕が作ったんですけど、1曲目の「君が為に鐘は鳴る」は元々自分の中にあった曲で、改めて歌詞を読み返したら今のAmelieにすごいハマるなと思ったものなんです。2曲目の「さよならバイバイ」はツアーの合間にやってた曲作りの合宿で作った曲ですね。
――ワンコインでこんな良い曲を2つも出しちゃっていいの?っていうのが正直な感想なんですけど(笑)。
mick:安いですよね!(笑)
――激安ですよ! この2曲によって、明るくてポップな部分と陰りのある歌謡曲っぽい部分っていう、Amelieが持つ2つの面が表されていますよね。だからまだ自分たちが出会ってない人たちに向けたシングルでもあるのかなと思ったんですけど。
直人:そのとおりですね。改めて「Amelieってこういうバンドだよ」っていう名刺代わりの1枚ということでこの2曲を選んだし、そこでレーベルも力を貸してくれて「なるべく手に取りやすい値段に」ということでこういう形になりました。
――あと、歌ってる内容にも2つの面が表れてるんですよ。「君が為に~」は夢を持ってる人の背中を押すような曲だけど、「さよならバイバイ」はどちらかというと1曲目に出てくるような人みたいに頑張れないような人たちに向けられてるというか、そういう人たちのシェルターになってくれるような曲で。このコントラストは意識的に出したものですか?
直人:意識したというよりは自然とそうなりましたね。1曲目は背中を押すっていうスタンスで、自分に対する応援歌として作ったんですよ。「夢があるなら頑張れよ」ってただ言われても分からないし、誰かが何かをしてくれるわけでもないから、そうじゃなくて「まず何か始めなきゃ」っていう意味で作ったんですけど。それが結果的にこうやってAmelieで歌うようになったらすごくポジティブな歌になったというか、自分に対して作ったものを人に対して歌えるっていうのはすごいなあって思ってますね、自分でも。「さよならバイバイ」もすごくネガティブなところから作ったんですけど、やっぱり自分自身がそういう――
mick:「光に向かいたいけど実は……」みたいなね。
直人:うん。
あっきー:変な言い方になっちゃうんですけど、自分たちもそんなにポップな人間じゃないというか。
アサケン:「ついてこいよ」みたいな感じではないんですよ。
直人:スーパーマンじゃないし、普通の人間として落ち込むときは落ち込むし……っていうのを曲に出したいなっていうのは思ってて。「普通の人ではあるんだけど、こうやってAmelieをやってるんですよ」っていうところをこの2曲で出せたら、という感じです。
Amelie 撮影=風間大洋
――なるほど。だから2曲ともただ明るいだけではないんですね。「頑張れ!」って言葉を投げかけたところで全員が全員頑張れるわけじゃないというか、「そう言われても無理だよ」って思ってしまう人も必ずいるじゃないですか。今回のシングルを聴かせていただいて、2曲とも、そういう人のことをちゃんと分かってあげられる心を持った人が書いた曲だと感じたんですよね。つまり、みなさんご自身もひたすら前だけを向いて突っ走れるような性格の人たちではないんじゃないかなと。
アサケン:本当にそうです。若いうちからどんどん成功してきたわけではなくて、散々挫折を繰り返してきた人間たちが作ってる曲なので、それが表れてるんじゃないかなと。いろいろな難しさを分かったうえで、「それでも頑張ろうぜ」っていう曲だとは思います。
直人:本当に言われたとおりで。僕自身、ただポジティブなメッセージだけを投げつけてくるような曲がすごく苦手で「いや、そんなの分かんねえし」って思っちゃうんで。だからこういう曲になったんだと思います。
――そうやってみなさんの地の部分がよく伝わってくるからとてもいいシングルだからこそ、ここに至るまでは「メッセージをどう伝えていくか」で悩んだ経験も多かったのかなとも思いまして。曲作りもそうですけど、例えばライブとかで自分の考えや感情を相手に伝えるのって難しくないですか?
mick:難しいなって思いながら、「私は何が言いたいんだろう」ってずっと考えながらツアーをまわってたんですよね。でも終盤で何か「あ、いいんだ」と思えたんですよ。今までは「こういうmickでいてほしいんでしょ」っていうところに向かおうとしてた気がするんですけど、そうじゃなくて、今思ってることを言えばいいんだと思えたんです。100%心を解放したmickの状態でライブをしてたから、ライブ中にでも泣いたんだと思うし、曝け出したというか。
――今までは誰かにとっての理想的なヒーロー像を目指してたということですか?
mick:そうですね。かもしれないです。
――何でツアー中に変われたんでしょうね。
mick:うーん……カッコつけてもカッコつかないし……何でですかね?
あっきー:いい意味で諦めたんじゃない?
直人:実際に(フロアの)景色を観て、ヒーローじゃない自分でもこうやってついてきてくれる人がいるんだっていうことに気づけたとか?
mick:ああ~。
Amelie 撮影=風間大洋
アサケン:ボーカルっていうのは絶対的に一番経験値が必要なパートではあると思うんですけど、アルバムをちゃんとレーベルから出してツアーをして、精神的にも技術的にも成長できたから、mickもそうなったというか。今までは考えて考えて一生懸命やってたのが、自然と伝えられるようになってるんです。
あっきー:前は4人でバッとカッコつけて、キメキメでライブして……っていうスタンスだったんですけど、今はもうこの人(mick)に好き勝手やらせて、大人3人がそれに対して文句も言わずに支えるっていうスタンスの方が――
mick:あ、確かに文句言わなくなった!(笑)
アサケン:それはmickが成長したからだよ。
mick:何か、対人(たいひと)でいいんだなって分かったんですよね。だから、なんて言えばいいんだろうなあ……自然体?
直人:こういうふうに、元々自分の意志を伝えるのが苦手なタイプの人なんですけど(笑)。
mick:うん。でも自然体でいることにしました!
直人:たぶんみんなそれを求めてると思うし、僕らもそこに惹かれてバンドをやってるし。カッコつけたものを押し付けてもしょうがないなって。だってカッコよくなれないしね。
mick:カッコよくなれなかったね!(笑)
直人:それが良さなんだっていうことに前回のツアーを通して気づいた結果、今こういう心境になってるんだと思います。
――だからこそ今がまさに初めの一歩だということですよね。
mick:はい。そうですね。
――そんななか、11月には東名阪ツアーが控えてます。ツアーファイナルの東京公演のみワンマンですが、TSUTAYA O-WESTはワンマンとしてはバンド史上最大規模の会場ですよね?
直人:そうですね。チャレンジです。O-WESTも実は思い入れのある場所で。僕とmickはバンドを組む前に普通に客として行ったことがあるんですよ。「こういうところでやりたいな」って各々思ってたんですけど、そこで自分たちがワンマンをやるっていうのはドラマがあるし、絶対すごい日にしたいと思います。
アサケン:今思うと、前回はゆっくりAmelieというバンドを作り上げていくツアーだったので、今回はもう最初っから「Amelieです!」っていうのをバーンと出していけたらいいですね。
あっきー:うん。200%のライブをしていきます!
mick:はい、出します!
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=風間大洋
Amelie 撮影=風間大洋
2. さよならバイバイ
※3,000枚限定発売
品番:NOID-0013
価格:¥500(+tax)
発売元:[NOiD] / murffin discs
販売元:Japan Music System
Amelie / 絶景クジラ / SpecialThanks / 九十九
OPEN/START 18:30/19:00
ADV/ ¥2,500-(+1D)
2016年11月22日(tue) @大阪LIVE SQUARE 2nd LINE
Amelie / sumika
OPEN/START 18:00/18:30
ADV/ ¥2,500-(+1D)
2016年11月30日(wed) @渋谷TSUTAYA O-WEST
Amelie(ワンマン)
OPEN/START 19:00/19:30
ADV/ ¥2,800-(+1D)