DAIZAWA RECORDSの次代を担う新星たちの"個"が輝いた『代沢まつり』ファイナル

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代沢まつり photo by Daisuke Miyashita

代沢まつり photo by Daisuke Miyashita

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代沢まつり<DAIZAWA RECORDS 15TH ANNIVERSARY FOR THE FUTURE> 2016.10.4 渋谷CLUB QUATTRO

DAIZAWA RECORDSの15周年を機に、現在の同レーベルを牽引していくバンドたち――ウソツキPELICAN FANCLUBpollyが全国5カ所を回るツアーを行う、しかもこうした対バン形式のツアーを持ちかけたのがバンドサイド(ウソツキ)からだったというのが、過日のこのレーベルの面々を知る者としては時代も感じ、そしてある意味頼もしい。

というのもDAIZWA RECORDSのバンドといえば、それこそsyrup16gや椿屋四重奏、レミオロメン、THE NOVEMBERS、きのこ帝国など、独立独歩、個としての存在が際立つラインナップの印象が強かったからなのだが。しかし、ファイナルの東京公演を見て実感したのは、ウソツキPELICAN FANCLUBpollyにも、明らかに先輩バンド同様、簡単に割り切れない感情の揺れや、物事の両義性を奔放に表現し、あらゆるギミックを排したところで、歌の核心と、アプローチは違ってもギターロック・バンドのオリジナルな音像を受け手の印象の芯に残す、という意味で、ツアータイトルである『代沢まつり<DAIZAWA RECORDS 15th Anniversary for the Future>』を体現していた。

二代目代沢ジェネレーションズ photo by Daisuke Miyashita

二代目代沢ジェネレーションズ photo by Daisuke Miyashita

定刻に暗転すると、DAIZAWAヒストリー的なナレーションが流れ、この日のオープニングアクトが登場する。「頭から見た方がイベントの意味がわかると思う」と事前に訊いていた意味がすぐにわかった。ここまでの4カ所でも出演バンドによる変名バンドや、3バンドのメンバーの有志で組まれたバンドが登場していたが、この日は竹田昌和(ウソツキ・Vo/G)、シミズヒロフミ(PELICAN FANCLUB・Dr)、飯村悠介(polly・B ※pollyではG)からなる“二代目代沢ジェネレーションズ”。演奏曲目はpaioniaの「東京」。竹田は数あるDAIZAWA RECORDSのアーティストの楽曲から、一番好きな曲だと告げた。故郷が福島であるpaioniaのボーカル・高橋勇成にとっての“東京”を歌ったこの曲が、その記名性の高い内容に関わらず、震災以降の東京を歌った一つのスタンダードになっていることに気づかされる。うなづくようにリズムをとりながらステージに見入る観客もいて、この曲の強さとイベントの意味を冒頭から見た思いだ。

PELICAN FANCLUB photo by Daisuke Miyashita

PELICAN FANCLUB photo by Daisuke Miyashita

この日の一番手は強烈なバックライトと強烈なフィードバックノイズから。「PELICAN FANCLUB始めます」と、エンドウアンリ(G/Vo)が宣誓する。00年代ギターロックの先輩たちの滋味を血肉化したような「記憶について」、クルマダヤスフミ(G)の雨だれのようなギターとエンドウの湧き出るようなメロディが牽引する「アンナとバーネット」「Capsule Hotel」はどこかThe Smithsにも似た透徹した音像だ。一転、エンドウのモノローグめいたラップとスクリームで、隙間の多い生音ヒップホップからミクスチャーへ展開する「説明」、そしてドリームポップというには硬質なビートで、ダンスを誘発しながら気持ちは冷たく透き通っていくような「Dali」まで一気に演奏した。

PELICAN FANCLUB photo by Daisuke Miyashita

PELICAN FANCLUB photo by Daisuke Miyashita

エンドウは「2年前の『UKFC on the Road』(のオーディション)に落ちたのに、今ここに立ってるのは不思議」と、感謝とシニックが入り混じった感想を漏らしたが、「いろいろ考えるより、曲を聴いてもらうことが大事だから」という言葉が最も正直なところなのだろう。少し懐かしい「Telepath Telepath」に続き、地鳴りのようなフィードバックノイズの壁を突き抜けるように輝度の高いギターが鳴り、その美しいレイヤーとたくましいアンサンブルで聴かせた「1992」で締めくくった。洋邦のギターロックを構造とメンタル両面で自然に吸収してきた彼らのセンスは、まさにDAIZAWA RECORDS的なるものの今そのものだった。

polly photo by Daisuke Miyashita

polly photo by Daisuke Miyashita

サウンドチェックから暴力的な轟音を出して期待値を上げてくれるpolly。ブレイクスっぽいSEに乗って登場すると、新作『哀余る』同様、オープニングナンバー「沈めてくれたら」の暴風のようなギターが吹きすさぶ。意識が遠のくようなそれが堂々と放たれ、この日の越雲龍馬(Vo/G)は正面から曲の強度を届けようとしているように見える。続いて、歌メロとその裏をいくギターがキャッチーですらある「ひとのよう」、音源で聴くよりキックやハイハットの感触がハウスっぽく聴こえ、ミニマルな歌メロをファルセットで歌う「哀余る」は、歌モノと声も楽器として捉えるアプローチ双方の良さをモノにしている印象があった。

polly photo by Daisuke Miyashita

polly photo by Daisuke Miyashita

中盤には「新曲やります。嫌いな人もいるかもしれないけど、サビで中指立ててください」とフロアに委ねる。ちょっとパッション・ピットの初期のようなニュアンスもあって、ポップに異議申し立て(!?)するイメージか。この日の越雲は今年の『UKFC on the Road』で見せたようなどこに逸脱していくかわからない危うさよりも、pollyの音が納得のいく演奏で届けばいい、そんな無敵感をまとっていたように思う。青春の甘酸っぱさを感じるギターポップ「雨の魔法が解けるまで」、対照的にラストの「hello goodbye」では荒野を体一つで歩くような体感と心地よい孤独を4人のアンサンブルが醸成し、残響に至るまでコントロールされた演奏でフィニッシュ。心からの拍手が起こっていた。

きのこ帝国 photo by Daisuke Miyashita

きのこ帝国 photo by Daisuke Miyashita

そして東京公演のみ参加したきのこ帝国は、他の3バンドには申し訳ないが、佐藤千亜妃(Vo/G)の演奏のタッチの研ぎ澄まされ方だけで、存在感と音の意味みたいなところで段違いな何かを見せてくれた。「退屈しのぎ」「海と花束」と、押し寄せる轟音と静寂の対比という、(今となっては)初期のきのこ帝国の最大の魅力であるダイナミズムを良い緊張感とともに届けてくれた。そしてこのイベントに集まるオーディエンスがDAIZAWA RECORDS的なるものを愛してやまないだけでなく、素直に心を開いているように見えた「東京」の普遍的な曲としてのパワー。フロアが自然に揺れた「クロノスタシス」では、メンバーにも笑顔が浮かび、鮮やかなエンディングに大きな歓声が上がった。

きのこ帝国 photo by Daisuke Miyashita

きのこ帝国 photo by Daisuke Miyashita

そう、この日の選曲はDAIZAWA時代のリリース作品縛りだったのだが、メンバーにとってもファンにとっても緊張を強いるというより、愛すべききのこ帝国の名曲がチョイスされた印象だ。佐藤は先輩面したくないと言いつつも演奏できっちりレーベルへのリスペクトを示し、そして「DAIZAWA RECORDSからデビューできて、本当に良かったと思います」と、ラストにデビューアルバム『渦になる』から「夜が明けたら」を丹念に、そして今や情念や後悔より“音楽を続けていくとは何か”という覚悟のゼロ地点に立つような、肩の力の抜けた名演で鳴り響かせた。この曲や彼らの存在自体がDAIZAWAの真骨頂だ。

ウソツキ photo by Daisuke Miyashita

ウソツキ photo by Daisuke Miyashita

そしてツアー・ファイナルのトリを務めるのはウソツキ。3バンドの中で最もバンドで表現するポップネスが強く、開かれたパフォーマンスをする彼らの堂々とした態度に、1曲目の「ミライドライバー」から自然とハンドクラップが起こる。おなじみになった「決して嘘をつかないバンド、ウソツキです」との竹田の挨拶から、テンポよくオーディエンスを巻き込んでいく「ネガチブ」、そして吉田健二(G)が“Shall We Dance?”と書かれたタオルを掲げると、これまたフロアの大半がそのリアクションをすでに知っている「旗揚げ運動」に突入。踊らされてるような毎日を逆手にとって、それもダンスにしちゃえばいいんじゃない? そんな意識が共有されているようで、見ていて痛快だった。そのままタフな8ビートと秋の空に突き抜けていくようなギターサウンドが心を解き放つ「ボーイミーツガール」でさらにフロアが自然に揺れていく。ミニアルバム『一生分のラブレター』を携えた9月のワンマンでも今の心情をMCで伝えていた竹田だが、この日も終盤前に「いつもひとりぼっちでした。でも音楽をやっていたら仲間ができて。この3人(メンバー)なんですけど。バンドを続けていたらDAIZAWA RECORDSが家族だって言ってくれて、ここにいる皆さんも家族なのかなと思っています」と、この日の「一生分のラブレター」はレーベルへのそれのようにも受け止められるものだった。

ウソツキ photo by Daisuke Miyashita

ウソツキ photo by Daisuke Miyashita

そしてウソツキが戻っていく場所である“銀河”への別れのナンバー、「新木場発、銀河鉄道」が汽車がゆっくり駆動するように推進力を増していく。それにしてもリズム隊の安定感がすごい。物語性のある楽曲をバンドの演奏で“歌う”ことが醍醐味のウソツキにとって、4ピースで演奏のダイナミズムが増していくことは曲の説得力を増すことに他ならない。これまでのDAIZAWAのバンドに比べて、歌モノのど真ん中を今の時代のあり方でもって掴み取ろうとするウソツキ。しかしそこはさすがにDAIZAWA育ちなだけあって、歯の浮くような表現はどうしたって出てこない。アンコールに応えて披露したのは「ハッピーエンドは来なくていい」。なんてことない若いカップルの日常は微笑ましいが、永遠が存在しないことから湧き上がる今の愛おしさがエモーショナルな感情の渦として空間を支配していた。

ジャンルが崩壊するような革新とか、音楽シーン最大のトピックとか、そういう種類の驚きとは違って、素の自分を見透かされたり、出会えてよかったと思えたりする、人間がそのまま現れた音楽。圧倒的という表現まではまだ時間はかかるかもしれないが、代替不可能なレーベルを牽引していくバンドとして、彼らのこれからを見続けていきたい。きっとさらに個々の色合いはオリジナルなものになっていくだろうから。


取材・文=石角友香 撮影=宮下太輔

セットリスト
代沢まつり<DAIZAWA RECORDS 15TH ANNIVERSARY FOR THE FUTURE>  2016.10.4 渋谷CLUB QUATTRO

オープニングアクト・二代目代沢ジェネレーションズ(ウソツキ・竹田昌和(V/G) / polly・飯村悠介(B) / PELICAN FANCLUB・シミズヒロフミ(Dr))
1. 東京(paioniaカバー)
 
PELICAN FANCLUB
1. 記憶について
2. アンナとバーネット
3. Capsule Hotel
4. 説明
5. Dali
6. Telepath Telepath
7. 1992
 
polly
1. 沈めてくれたら
2. ひとのよう
3. 哀余る
4. 新曲
5. 雨の魔法が解けるまで
6. hello goodbye
 
きのこ帝国
1. 退屈しのぎ
2. 海と花束
3. 東京
4. クロノスタシス
5. 夜が明けたら
 
ウソツキ
1. ミライドライバー
2. ネガチブ
3. 旗揚げ運動
4. ボーイミーツガール
5. 一生分のラブレター
6. 新木場発、銀河鉄道
[ENCORE]
7. ハッピーエンドは来なくていい
 
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