栄華と没落、その生涯のすべてを辿る『マリー・アントワネット展』 居室の空間再現や豪華なグッズなどみどころをレポート

レポート
アート
2016.10.31
『ヴェルサイユ宮殿《監修》マリー・アントワネット展 美術品が語るフランス王妃の真実』会場入り口

『ヴェルサイユ宮殿《監修》マリー・アントワネット展 美術品が語るフランス王妃の真実』会場入り口

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世界で最も愛され、憎まれた王妃マリー・アントワネット。しかし、その人物像を正確に捉えられている人はどれだけいるだろうか? いよいよ開幕となった『ヴェルサイユ宮殿《監修》マリー・アントワネット展 美術品が語るフランス王妃の真実』(2016年10月25日~2017年2月26日)では、約200点におよぶ絵画、愛用品、空間再現によって波乱に満ちた彼女の生涯を描き出す。ヴェルサイユ宮殿が監修するこれほどまでの大回顧展は、フランス国外では類を見ない。早速、前日に行われた内覧会より、多すぎるみどころをダイジェストでお伝えしよう。

エリザベト=ルイーズ・ ヴィジェ・ル・ブランと工房《フランス王妃 マリー・アントワネット》1785年 ヴェルサイユ宮殿美術館 ©Château de Versailles (Dist. RMN-GP)/ ©Christophe Fouin

エリザベト=ルイーズ・ ヴィジェ・ル・ブランと工房《フランス王妃 マリー・アントワネット》1785年 ヴェルサイユ宮殿美術館 ©Château de Versailles (Dist. RMN-GP)/ ©Christophe Fouin

 

肖像画・調度品からフランス王家を知る

漫画や映画でも親しまれているマリー・アントワネット。しかし本展では、物語内のキャラクターではなく、実在した歴史上の人物として捉え直すことができる。

会場に入ってまず並んでいるのは、フランス王家の人々の肖像画だ。写真の無い当時、外交や縁談に用いられるなど重要な役割のあった肖像画は、肌、瞳、髪や衣装に至るまで緻密に描き込まれている。また、宮殿内で使用されていた調度品からも、同時の王家の絶大な権力を感じる。相関図が展示されているので、一読しておけばイメージを膨らませやすいだろう。

ジョゼフ・シフレ・デュプレシ《ルイ16世》1774年 ヴェルサイユ宮殿美術館 ©RMN-GP (Château de Versailles)/ ©Gérard Blot

ジョゼフ・シフレ・デュプレシ《ルイ16世》1774年 ヴェルサイユ宮殿美術館 ©RMN-GP (Château de Versailles)/ ©Gérard Blot

アンドレ・バセ(弟)刊《マリー・アントワネットのヴェルサイユ到着 1770年5月16日、結婚式の日》1770年 ヴェルサイユ宮殿美術館 ©Château de Versailles

アンドレ・バセ(弟)刊《マリー・アントワネットのヴェルサイユ到着 1770年5月16日、結婚式の日》1770年 ヴェルサイユ宮殿美術館 ©Château de Versailles

 

愛用品やファッションで垣間見る"素顔"

浪費家で派手好きの印象が強いマリー・アントワネットだが、彼女の意外な一面を愛用品やファッションが物語っている。母后マリア・テレジアから贈られ大切にしていたという日本の漆工芸品は、小ぶりで奥ゆかしい印象のものばかり。また、王立セーヴル磁器製作所製の食器セットには、繊細な小花やパールが描かれ気品漂う。

ファッションリーダーとして有名な王妃だけに、公的な場のドレスは極めて派手だが、プライベートではシンプルなドレスを好むなど、二面性も垣間見える。王妃としての立場と、内に秘めた純粋さに苦悩していたのではないか。そんな彼女の人間性を感じることのできる展示となっている。

マルシャル・ドニ クロード=ルイ・デレの原画に基づく《大盛装姿のオーストリア皇女、フランス王妃マリー・アントワネット》1775年頃 ヴェルサイユ宮殿美術館 ©Château de Versailles

マルシャル・ドニ クロード=ルイ・デレの原画に基づく《大盛装姿のオーストリア皇女、フランス王妃マリー・アントワネット》1775年頃 ヴェルサイユ宮殿美術館 ©Château de Versailles

エリザベト=ルイーズ・ ヴィジェ・ル・ブラン《ゴール・ドレスを着たマリー・アントワネット》1783年頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー、ティムケン・コレクション  Courtesy National Gallery of Art, Washington

エリザベト=ルイーズ・ ヴィジェ・ル・ブラン《ゴール・ドレスを着たマリー・アントワネット》1783年頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー、ティムケン・コレクション Courtesy National Gallery of Art, Washington

 

空間再現でヴェルサイユ宮殿にトリップ!

本展最大の見せ場は、ヴェルサイユ宮殿にある王妃の居室、浴室、図書室を原寸大で再現した空間だ。会場には同時代のバスタブや、宮殿から運ばれてきた家具などが並び、王妃の生活を追体験しているかのようだ。また、すでに消失してしまった図書室は、プロジェクションマッピングで再現。タイムトリップ感を盛り上げる凝った演出も見応え十分だ。

宮殿内にある王妃の居室の実物大空間再現

宮殿内にある王妃の居室の実物大空間再現

 

愛の手紙に、最期の靴――王妃の生きた証に息をのむ

自由奔放な20代を過ごし、母親になったマリー・アントワネット。その熱心な教育ぶりや子供たちを慈しむ姿、フランス革命後も王家の気品・威厳を保とうとした堂々たる姿には胸打たれる。

その様子は、直筆の手紙の写しや、捕えられてからの様子が描かれた版画、絵画、そして遺品から生々しく伝わって来る。そこに軽薄なイメージは一切ない。また、一世一代のロマンスの相手・フェルセン伯爵との新たな愛の証拠として、近年解読された黒塗りの手紙の複製や暗号表も展示されている。

ビュルマ社 シャルル・オーギュスト・べメールとポール・ バッサンジュの原作に基づく《王妃の首飾りの複製》1960-1963年 ヴェルサイユ宮殿美術館 ©Château de Versailles (Dist. RMN-GP)/ ©Jean-Marc Manaï

ビュルマ社 シャルル・オーギュスト・べメールとポール・ バッサンジュの原作に基づく《王妃の首飾りの複製》1960-1963年 ヴェルサイユ宮殿美術館 ©Château de Versailles (Dist. RMN-GP)/ ©Jean-Marc Manaï

ウィリアム・ハミルトン《死刑に処されるマリー・アントワ ネット 1793年10月16日》1794年 ヴィジル、フランス革命美術館 ©Coll. Musée de la Révolution française/ Domaine de Vizille

ウィリアム・ハミルトン《死刑に処されるマリー・アントワ ネット 1793年10月16日》1794年 ヴィジル、フランス革命美術館 ©Coll. Musée de la Révolution française/ Domaine de Vizille

 

音声ガイドで王妃のストーリーに心打たれる

王妃のストーリーをしっかり理解しながら観覧するには、音声ガイドの利用がおすすめ。本展オフィシャルサポーターの木村佳乃や、かつて宝塚歌劇団でマリー・アントワネット役を努めた女優・花總まり、フェルセンの吹替をした声優・平川大輔が、生き生きと王妃の一生を案内してくれる。

お土産売り場の一角には『ラデュレ』が出店

お土産売り場の一角には『ラデュレ』が出店

また、展覧会場を出ると待ち受けるお土産物コーナーも必見だ。パリの老舗パティスリーメゾン『ラデュレ』の会場限定マカロンをはじめ、見逃せないコラボ商品が多数。マリー・アントワネットの世界を存分に味わいつくしてほしい。

 

イベント情報
ヴェルサイユ宮殿《監修》 マリー・アントワネット展 美術品が語るフランス王妃の真実

開催期間:2016年10月25日(火)~2017年2月26日(日) ※会期中無休
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ 森タワー52階)
開館時間:10:00~20:00
※火曜日は17:00まで。
※入場は閉館の30分前まで。
観覧料:
当日:一般 1,800円、高校・大学生 1,200円、小・中学生 600円
※小学生未満は入館無料。
※全て税込価格。
企画監修:ヴェルサイユ宮殿

展覧会公式サイト http://www.ntv.co.jp/marie/

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