青柳 晋(ピアノ) 神への愛で結びつく2人の作曲家の調べ
青柳晋
ピアニストの青柳晋が2006年から毎年開催している自主企画リサイタル『リストのいる部屋』が今年で11回目を迎える。このシリーズでは、リストを“ホスト”に据え、毎回“ゲスト”作曲家を一人選んでプログラミングする。今回はリストと同じ時代を生き、交流もあったフランク。両者ともキリスト教徒として信仰が厚く、オルガンのための作品も残しているなど、共通点は多い。
「彼らには共通点がたくさんありますが、敢えてそれを意識し過ぎるのではなく、聴いたときの美しさやつながりを重視して並べました。また、全体が自然に流れるように、ホ長調やイ長調、ロ短調など、近い関係にある調でつなげる工夫もしています」
フランクからは「前奏曲、アリアと終曲」と「前奏曲、コラールとフーガ」を選曲。彼はピアノ曲をあまり残していないこともあり、主要なピアノ曲はこれでほとんどカバーしている。大曲をまとめて演奏することで、フランクという作曲家から何か見出せるものはあったのだろうか。
「ピアノは減衰楽器なので、レガートを作るのが非常に難しいですよね。絶えず音が伸びているというイメージを保ち続けることが重要です。フランクの作品はオルガンの音色を意識したものが多いので、特にその意識を持たなければなりません。また、フランクの音楽は非常にロマンティックでありながら品格も持ち合わせています。音色のコントロールにはかなり気を使いますね」
“ホスト”役を務めるリストからは「巡礼の年」から「ジュネーヴの鐘」、「詩的で宗教的な調べ」の終曲「愛の讃歌」が選曲され、フランクの間を埋めるように並ぶ。
「リスト自身がそうであったように、彼の作品は解釈の許容範囲が広いですよね。そのためか、他の作曲家との組み合わせがすごくしやすいんです。今回もとてもうまくいきました」
プログラムの最後では、国際的に活躍するヴァイオリニスト、玉井菜採との共演でフランクのヴァイオリン・ソナタも演奏する。
「やはりフランクの最高傑作ですし、入れたいなと。フランクの比重がかなり大きくなり、リストの作品は“箸休め”のようになりましたが、今回リストにはフランクをそっと支えるようなイメージで登場してもらいます。玉井さんは様々な曲で何度もご一緒していて、最も信頼している音楽家の一人です。フランクは特に第1楽章が共演者によって雰囲気が大きく変わりますし、どんな演奏になるか今からとても楽しみです」
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ 2016年12月号から)
青柳 晋 ピアノリサイタル
12/22(木)19:00 浜離宮朝日ホール
問:ジェスク音楽文化振興会03-3499-4530
http://www.susumuaoyagi.com/